累計の中の数字として消える
死者数の分の好きだった花

土星蝕　隙間だらけの人の骨

松の防風林つめたく
街から隔離されたような
私の仕事を父は知らない

神様が欲しい時
わたしはニンジンを甘く煮る

「ごはんができたよ」
お母さんの声がなつかしい
お母さんがなつかしい

湯ざめして翅もがれたる痕かゆし

冬の虹化石は水を懐かしむ

ローファーの底
すこしずつ擦り減って
そつぎょう、までの日々へ夕映え

恋を終えたセーラー服
を
ぬぎ捨てて
ぐんじょう色にはじまる脱皮

せっけんの泡
ほむほむ
と生みだして
神話のようなきみの手のひら

神の留守探偵の死ぬミステリ―

白テント伏して運動会前夜

名月を片隅にして青い街

小春日をちよこれいとの大股で

冬紅葉人の記憶の残り方

冬夕焼ひかりの素足に履く木靴

褒められるための毎日冬菫

薄は揺れる鉄琴の音は湧き続ける

鬼房も賢治も長子水仙花

折れているクレヨン空が青かった

外孫の寂しさに似たからっ風

音を食う雪を踏みつけつつ歩く
ヒトと名乗った覚えなどない

初雪に
赤い長靴
張り切って
寒くないんか
ラララのアトム

新雪だから
おっきな足跡をつけたい

雪催オートミールを温めて

割れた瓶を避けてどこの引き出し
を開けても同じ紙がでてくる

海の家よりも家だね
ゲレンデの食堂に靴下のまぶしさ

改札を通る父の儚さ
健康でなど口ごもる

　南天は
　色づいたり、
大人のズルに気がついたり、
　　する

それぞれに過ごす日曜日の朝に
透きとおるまで冬瓜を煮る

眼裏の暗がりへ火を呼び寄せて
夢を灯している冬の午後

音は
揺れるものに乗り
集まって光って
なくなります

土砂降りで逃げ込む
野うさぎの穴は
養護教諭の美しい耳　

空き瓶を洗うあいだに透明な
句読点へと雪は近付く

水星の昼夜の温度差を解き
サドルの雪を払う左手

下手なテトリスみたいな
霊園の中
カマンベールチーズに花束

耳鳴りを神様からの返事だと
そばだてている
冬の真ん中

肺のなか蛍がひかるたび痛む

寒月が積もる流星群を待つ

初雪にガラスの靴を捧げたい

木曜の毛布がうまい嘘をつく

風邪の日の壁が迫ってくるような

前髪にまばたき触れて雪催

小寒のテレビの照らすカップ麺

先生が好き　水仙の丘にいて

不純物によって色が変化する
水晶みたいだ心、割れるし

ホワイトノイズ途切れたら綿虫が

甘やかにポインセチアの街軋む

ゆきだるまに手袋をゆずる妹

足裏の砂をはらって君の夏

淋しげな猫抱き上げて君の秋

オルガンへ斜めに光今朝の冬

十代を持て余したら起き抜けの
わたしのからだを舐めるのは猫

街灯に頭のなかの霧がくる

よい子にはつめこみ教育をあげる

シュトレンに糖衣はうすく冬銀河

むかごめし東京はいつ行けるのか

ゆうやみのやみのさなかの赤い靴

林檎剥くときは素直でいいんだよ

カルメラはうつろのおかし
四月馬鹿

舐めあえば傷は浅くて
ゆうぐれの
パフェスプーンの置き場所がない

うつぶせたままに鏡を運ぶとき
シーラカンスの肺のくらがり

泥沼をさまようごとくブーツ脱ぐ

缶詰のなかは清潔クリスマス

三人の左利きいる棚卸し

川べりに腕をひろげて立っている
あなたはだれへ開かれた檻

あらゆる風が
名を持つわけではないことの
うれしさにシロフォンをたたいて

サンタクロースの橇
宇宙人の自転車
かれらは影を隠さない

微睡む正午
陽だまりは月曜日

右脳の涯の紫の林檎が墜ちる

冬の川べり
二人歩いて
故郷の
山は碧いと言って欲しくて

空を残して裸木が銀に光るよ

湯たんぽの専用の鍋
曾祖母が
六人分も沸かしてくれる

東京の夜景
イコール文化祭の余韻
ひとりで鍋をつつく

小学校の校庭に
銀杏の匂い
未来も過去も無かった匂い

西日のカーテンで光を遊ぶ

海へゆくメロディーロードの
緩やかなカーブへ
トロンボーンの夕陽

ぬるま湯で皿を洗えば
なおさら明日

箱庭の西洋騎士道物語

夜の私は
昼の私がやったことを
何もかも知っている

隣り合う花に生まれてまた会おう

前髪を寄せればまっすぐに
陽だまり

薬を包んで飲んだら消える紙
今でもあるの？あの詩みたいな
やつさ。

途切れた物語も
きっとどこかに繋がっている

朝日照る坂を立ち漕ぎ登ってく
君よ今年初めての雪よ

初雪を喜ぶ君よ帰るなよ
どんどん積もれ帰路埋まるまで

図書館が赤字だという政治家に
行政の意味をたずねてみたい

散り咲きて空より広し銀杏道

月白の
ワンピースを着て
追いつけそうな
野風の電車

声なき言葉が
往来する
映写機の
ふるえる光量

トイピアノの
ド
順番待ちの
雪

凍る語尾

掌にひとひらの
雪の痕

しらじらと泥土に眠る葱の純潔

つくすもうらぎるもむねの血潮
柘榴をぎやまんに盛れば昼の月

ああ今、今を無駄にするという
贅沢をしているところなのです

残像のハルキゲニアがいいにおい

約束に似た遠雷だ
第二走選手の足のふるえがきれい

その小さな興奮を
冷製スープで抑えながら
春を待つのも
貴方の為だというのに

野生の飴玉を舐めたら
すっぱかったです　冬

葡萄齧ればよみがえる情けなさ

あらたまの世界経済ごと鬱る

朝焼けを撮るので
少し遅れます

子育てが終わる
もらった合鍵を
ドアのポストに落とすみたいに

店員がケースをあけた肉まんの
湯気を吸い込む風邪気味の朝

重さのない光の粉粒
古い部屋に降る
傷んだ青いソファを覆う
静謐な平安を見た

ブレーキの軋み十五回目の九月

秋薊と言う口が手羽の骨はずす

一人時間差
　　　　　　　　　　で、泣く。

病院へ向かう途中

目の前で落ちる椿

虚脱した歯車のダンス
平行四辺形の未来
怯えるオレたちは鳥

踏切を越えた自転車を弟かと思う

炬燵で鶴折り
翼を開けば新芽の香りほのかに

陽に当たる冷たいサドルを撫でる
朝

手袋つければ手先が冷える

耳たぶが
ほのぼのとあたたかくなる
桜前線をくぐり抜ければ

僕たちは真夜中の公園で
光る街灯の下に集う幾つもの
過去と未来だった

土星蝕　隙間だらけの人の骨

冬の虹化石は水を懐かしむ

アドベントカレンダー空っぽの朝

冬夕焼ひかりの素足に履く木靴

秋空に雲が広がる叱らないで

薄は揺れる鉄琴の音は湧き続ける

大丈夫以外、消えて
大丈夫になる町

FRIENDのENDの部分
全部ほしい、て言ったばかりに
増える瓦落多

割れた瓶を避けてどこの引き出し
を開けても同じ紙がでてくる

光線が届くより早く
僕たちはひとつの大きな
火になっていた

若白髪きれいためらう胡麻団子

眼裏の暗がりへ火を呼び寄せて
夢を灯している冬の午後

星の名を借りずに生きていける人
ばかりで講義室がまぶしい

土砂降りで逃げ込む
野うさぎの穴は
養護教諭の美しい耳　

空き瓶を洗うあいだに透明な
句読点へと雪は近付く

氷河期に
やさしくかける
カーディガン

覗いたら気球から呼ぶ声がする

灯り消しシェードのすきま瞬いた
白色矮星目をすこし焼く

粉砂糖から革命を始めたい

先生が好き　水仙の丘にいて

薄橙の影絵が見えているのなら
もうここはきっと洞窟の外

眼を擦って富士フイルムの秋渚

ちからこぶ確かめ合って雪解けの
ような裏声響かせ合った

街灯に頭のなかの霧がくる

雪のふる浜辺　誰もがこけいぶつ

手に職があって月でも懐かしむ

友達の恋人のみみ
除夜の鐘

カルメラはうつろのおかし
四月馬鹿

舐めあえば傷は浅くて
ゆうぐれの
パフェスプーンの置き場所がない

まばたきが星座を逃がす
どうするの
お金があって暮らしがなくて

三人の左利きいる棚卸し

川べりに腕をひろげて立っている
あなたはだれへ開かれた檻

塩と嘘かがやく夜半に蓄音機
百合のかたちの口をかがけて

あらゆる風が
名を持つわけではないことの
うれしさにシロフォンをたたいて

ひと春のひとびとが歯に隠しもつ
金のあるいは銀の王冠

煮汁を回し掛けながら銀鱈煮てゐ
て　優しい叔父にもう逢へないの

冬の川べり
二人歩いて
故郷の
山は碧いと言って欲しくて

小さな手　服の裾が
伸びるくらいに引っ張って
まだカウントダウンは嫌

陸橋に陸橋の影
重心は
重なって移ろって二人乗り

投げ縄のようにあなたの海馬へと
風景画家はその手を放つ

革靴の輪廻をそれて蝶結び

箱庭の西洋騎士道物語

ポケットに
いっぱいのメモ
クリスマス

いつか
あなたに似るのでしょう
無言のまま殻を剥いて
少しずつ　蟹になる

ブレーキの軋み十五回目の九月

胎生のあかるさ
くしゃみをふたつして