手の影を生む栞を抜くために

こんぺいとう
水に溶かせば虹の匂い

ビル街の青さが雨に溶け
私を描く

風の音にまぎれて
祖母の声が聞こえた

天の川　貸出欄に父の名前

風に溶ける水仙の白
人はみな
詩人のような夢を見たがる

かさぶたをめくる
母さんが出ていく

いつ雨に降られてもいいような空

大きめの金魚鉢をさがす

ベランダへ
伸ばす
素足はふたりぶん
おかめいんこのような土曜日

すいれんの閉じる
に併せ
ねむる祖母の
まぶたに溜まる月光のあお

校正で誤字を見つけた春の日の
桜ざわざわ咲く吉野山

言い訳に使うミモザを買いにいく

鼓笛隊だから両手で食べる雪

今、今を巻き取っていく
エンドロール
叫びのようにのびる夕影

一月の打楽器隊が橋渡る

長靴の汚れをホースで流すときの
冷たくはない水の感触

戦争の噂で液晶明るくて

松籟も空也最中も寒の中

空想しずか
冬薔薇開きゆくように

生きている理由のひとつが
きびなごの酢味噌が好きって、
それでいいかな

バスの窓は
きゅるきゅると鳴く
仔イルカの記憶を
手放せないでいるの

被災地の心をまずは守りたい
いまだに癒えない傷を抱える

鯨骨の中で始発を待っている

「月面着陸！」
書斎にカンカン帽飾る

にほんごであそぼで育ち日記買う

真ん中のドを弾くだけの小春日和

透明な星に座れば向こうにも
鏡のように少年がいた

日常を逃げ出すためになけなしの
金で人気の無い馬を買う

うつくしいものを
わすれてしまっても
曾祖母はまだ海を見ている

鉛筆が折れずに終われますように
キットカットを割らずに食べる

花曇り老婆が犬を太らせる

風船の
　紐が離れて 
　　親　
　　　べっ　　　
　　　　　　きょ　

青空を撮る人がいて青空が
美しくなることの悲しみ

戦前もあと何回か来るんだろう
今日も学食の米は硬い

日の入りも梅の開花も少しだけ
遅い所に帰りたい夜

忘れたくない事ばかりふくらんで
月は欠けているほうが眩しい

本を抱き
羽毛のちぐらで丸くなる
寒いね　冬のぬくもりが好き

昼寝しても不幸せな気持ち
白い光が鬱陶しい

恋人と水族館へゆくときの
ピアスの揺れのように歩くね

ももなのか
もごもごなのか分からずに
きみのはなしを夢越しにきく

海に行く
ふりして塗った日焼け止め　
バスの窓から見える交番

ぼんやりと花蔭が伸び縮みする
事故多発地点の昼下がり

重くならん感じの
大好き届け

布団の角をカバーの中で見失う

今日は天気がいいから日向を歩く
多分その程度のこと
あなたからのLINE

四温
車椅子押せる幸せ。

見舞い後のバスに揺られて寒の雨

かさついた葉擦れの音の
やさしくて
冬の夕べの短い散歩

目覚めれば夢はたしかに
終わるから
芒野原にふかぶか沈む

無人駅降りて帰った家は消え
躑躅の坂だけ今も続いて

澱んだ街底から
ふっと浮き上がる
赤風船を見上げた

雪にはね
一年ブランクもってたから
夢の中埃のような舞い方だった

また会って
成長痛の傷跡を
隠さなくてもいい百日紅

スマホの熱で蕩ける雪は
電車を止められない雪

神さまが固く絞ったような梅
だからひとりでいるほどきれい

きっと冬生まれの親指姫もいて
寒椿ふわりと花開く

蜂蜜を多めに入れた朝の空

平静を装っているけど
内心
消えたExcelのことを
引きずっているのよ

友達がへってさみしいヨ
これが大人ってこと？
先生もいなくてかなしいヨ

次次に吊吊吊吊吊革に吊吊吊吊
吊下げられる

正当な理由で野球少年は金属製
棍棒を所持する

家を出るお金がどうしても足りず
代わりにカラーマスカラを買う

静岡旅行の折のお土産で
近所に起こすしらす革命

ポインセチア傷つく方を選ぶなら

エゴサーチ指を冷たくして終わる

マリンバの森は冬日を遊ばせて

消えない火ひとつあげよう子狐に

一月の
　痛み
　　石ころ
苺ジャム

黄泉に風花　空っぽの観覧車

冬芽に触れて
もう
戻らない
覚悟

水掻きは持ってない
けど、泳げるよ
夕日が降るちょっと前のまちを

お湯が沸いたから
日差しを揺り起こす
八月はもう来なくても朝

雪の声集めて　熱気球

翼散るとこに似ている自動ドア

目の中に無数の花火の残像を
飼ったまま金魚を覗きこむ

失敗したフェルト人形ふわふわと
みんな生まれたことを喜ぶ

透明になりたい夜だ大根煮る

マーガリン塗れるだけ塗る春隣

クローンは僕の方かも黒葡萄

だとすれば
踏んだのは空蝉じゃない

爪切りを
無くしたままで生きている

あなたを抱いたまま
海を見ている
祈りの形はまるいと思う

こんぺいとう
水に溶かせば虹の匂い

天の川　貸出欄に父の名前

さいげつがどこから見ても
ぼたん雪

もう少し歩くペースを合わせてよ
って君に言われて潰すピザまん

校正で誤字を見つけた春の日の
桜ざわざわ咲く吉野山

両親がモンシロチョウに招かれる

おとなしく蛍の下につきましょう

長靴の汚れをホースで流すときの
冷たくはない水の感触

三学期の空洞みたいなまちで飲む
珈琲が僕の輪郭をつくる

じゃんけんで負けたら死ぬよ
手毬唄

相づちがうまくなったね夕時雨

うっすらとした死にたさを打ち明
けてもらった夜にはじける荷物

春うらら細胞二つ混じりあう

寒の内メイプルソープの凍る花

「またね」って言葉を
ぞくりと飲み込んだ
さよなら真冬の小児病棟

浴槽のなかで栓を抜いたから
浴槽のなかで座礁を始めるわたし

クラス皆こちら指差し皐月闇

アラームをかけない眠り死後の春

芒野にセーラー服の浮いている

ソプラノを失ってまた夏が来る

左手が
刃物をもっていなかった事を
右手はその後しった

精神科の窓から見える
自転車の前も後ろも
子を乗せるひと

泣いている天使を見た。すべての
黒がオレンジの筈だった夜の事。

くらやみがまだ友達でいてくれる
もうすこしだけよふかしをする

学ランの袖のボタンがからからと
神社の鈴のリズムでゆれる

うつくしいものを
わすれてしまっても
曾祖母はまだ海を見ている

鉛筆が折れずに終われますように
キットカットを割らずに食べる

森下に
がんばろうね、と渡された
さくさくぱんだまだ取ってある

黒飴の割れて夜学に迎えくる

乗り込んで春を信じるのり弁当

脱脂綿みたいな雪が降りしきる
消毒液がしみた日のこと

ゴールシーンだけを見ている
月曜朝のマクドナルドで

北風と花いちもんめ　バスは来ず

円卓の真ん中自転している酢
冬の速度でまわしてあげる

眼裏のずっと消えない絵にふれて
プルシャンブルーの海、真冬の

笑っちゃうほど青い海だったこと
溺れていたからわからなかった

ふれあった指先の温度花がるた

おでん酒そんな顔して笑うんだ

爪先をせりあがりくる冬、のそり

見舞い後のバスに揺られて寒の雨

髪のない少女のために雪兔

月凍つる精神病棟の窓にて

故郷での雪を知らせる発車標

説得はされないままで冬になる
手前をバスはバス通りへと

寒いからあたたかいこと知れまし
た　半紙がちりと燃える夕べで

自殺した人たちが見るＮＨＫ

やさしいね冬は全部を白くする
パピプペポでもさようならでも

歩道に打ち上げられたイチョウ
雪に隠れなければ春まではきいろ

二人ごと燃やしてほしい
手すりから身を乗り出せば
夕日が近い

月の橋わたれば影がすべりゆく
運転席のしずかな肩を

蜂蜜を多めに入れた朝の空

夜を研ぐ螺鈿細工に変わるまで

鋏って漢字かっこいいなぁとか
いつまでも中学生みたいなこと
考えてるよ

つくられる風つくられる私たち
窓辺で抱きしめられるカーテン

結ばれて冬の星座になる僕ら

マリンバの森は冬日を遊ばせて

雪の声集めて　熱気球

さようならカーテンはそのままに
してゆきますねただしい閉じ方で

東京の氷柱の一つだけたろひ 

ゆっくりと駄目になる林檎も僕も

ラジオ体操で中古の朝が来た

恋に恋、鋏に鋏、まきもどる

手の影を生む栞を抜くために

こんぺいとう
水に溶かせば虹の匂い

朝　起きる
昼　ラーメンに
夜　スマホ
弱い私が最強
の私

いつ雨に降られてもいいような空

大きめの金魚鉢をさがす

すいれんの閉じる
に併せ
ねむる祖母の
まぶたに溜まる月光のあお

りんご飴舐めながら君が落ちて
ゆくとこを見ている弱虫な俺

校正で誤字を見つけた春の日の
桜ざわざわ咲く吉野山

おとなしく蛍の下につきましょう

粉雪を睫毛に刷いて馬たちは
僕と曇天を同じ目で見る

焼きジャケの骨
陸上は疲れるね

肌寒い夜に逢いたい君の背に

幼い頃
何を考えていただろうか
解読出来ないのだ
言葉なんぞを得てしまって

間違った話を訂正せずにいる
着衣水泳みたいな生き方

春うらら細胞二つ混じりあう

戦争の噂で液晶明るくて

絵双六振出し戻るに慣れ過ぎて

元日に地震津波の凶兆を

におやかな閃輝暗点去年今年

人の日と聞けば尚更顔逸らす

オルゴール一櫛撓み春隣

広い空なら
割れた卵と
同じくらいの意味

生きている理由のひとつが
きびなごの酢味噌が好きって、
それでいいかな

四百字　全ての枡を埋め尽くし
いかによい子であるかを聞けよ

浴槽のなかで栓を抜いたから
浴槽のなかで座礁を始めるわたし

クラス皆こちら指差し皐月闇

二度言えば二度淋しい淋しい

家ふるえ
足がふるえて
声ふるえ
ふるえる指が
「震」の字をうつ

火と帯と棚板でできた国があり
そこではみんな息をしている

大花野ダイナマイトを見ずに死ぬ

目的としての歩きは好きだけど
手段としてはもう疲れたわ

鬼嫁と自称する妻横顔に
重ねる泣いた赤鬼の顔

もし生きていれば日本の政治家も
伸してくれるか李小龍は

長女より幼いうちに
弟妹は
「みさいる」という言葉を知った

象の尻、奨学金が返せない

虹彩のふちでまた会えたらいいね

風船の
　紐が離れて 
　　親　
　　　べっ　　　
　　　　　　きょ　

仕送りの茶封筒
口に糊をして。

気付かせず道を譲って去る人に
夢で食べれる飴をあげてる

うつくしく花鋏をもつ人だから
薔薇はまた咲いてしまうだろう

傷つけることばかりした
守るため囲った有刺鉄線だった

忘れたくない事ばかりふくらんで
月は欠けているほうが眩しい

スプリンクラー
ことばはつむじからあふれる

回らないお寿司はいつも
回れない（涙）と言いながら
食われる

白湯とかを
バカにしないで飲むんだよ
冬が僕らを諦めるまで

大いなる他人事だと水底で
籠のひしゃげた自転車を押す

ぐっと近づきたい音符の傍らで
詩はダンスを抑えてる

空も汗水たらして働いているのに
中央分離帯ときたら

白い手に冬菊の映えては嫌。

説得はされないままで冬になる
手前をバスはバス通りへと

海兵として死んだ祖父の戒名に
刻まれた「海」がこちらを見る

いつだっけ

きこえる寝息を真似ながら
少しだけ柔らかくなる夜

まだ居ると思ってふりむく
恐竜を知らない
シーラカンスふりむく

月の橋わたれば影がすべりゆく
運転席のしずかな肩を

この惑星は静かにまわる万華鏡
きみの欠片とまた巡り合う

ぬぬぬ、
ぬぬぬぬぬぬ！
キッチンと
私と節足動物

家を出るお金がどうしても足りず
代わりにカラーマスカラを買う

縁側に背伸びをしてるかたつむり
それはあなたのあきらめた夢

なまはげが陰謀論を言い負かす

熱を出すと嬉しかった
どこからか
私を撫でるやわらかな過去

菓子パンを口にした時
能登を想う

空白か読点ならば迷うけど
改行ほどはない水たまり

目の中に無数の花火の残像を
飼ったまま金魚を覗きこむ

初笑い使っちゃったよこんなので

天竺に行くことにした本当は
コンビニでいいような気分で

こんぺいとう
水に溶かせば虹の匂い

へし折られたあの信号機の
本当はあと数秒は維持できた青

戦争の噂で液晶明るくて

うなじひかる 銀木犀に雨しずか

イヤホンを着けて
死なない振りをして
乗り込む電車
春の風吹く

火と帯と棚板でできた国があり
そこではみんな息をしている

こんなにも
明日があるとは思えない
カレンダーは嘘をついている

吠えるとき窓の一枚厚すぎる

北向きのパジャマを季節で
変えない　暖房入れて風鈴が鳴る

猛禽の爪をなるたけまとってる
冬の桜はあたたかく寝る

いつか出逢う人とすれ違うように
降りない駅のホームを見送る

背中を呼気であたためる
お父さんの口から
火が出ると信じてた

古井戸に蛍を放つ左手は
夜の重さを叩き割れない

大いなる他人事だと水底で
籠のひしゃげた自転車を押す

やさしくて静かなひとを
鎮めてる湿布の
剥がれてくる言葉を

雨の人電車で荷物手放せず
傘巻く左手かじかみ込みの

いとおしい猫がどんどん痩せてゆ
く　なでてもなでても痩せてゆく

犬だった
頬に畳の痕をつけ
青い草原　ああ、水だった

ベランダでふたり
線香花火すれば
いのち余って
あかるむ睫毛

神さまが固く絞ったような梅
だからひとりでいるほどきれい

会話の束
増えるほどに
言葉の祈りは失われ

別人のような昨日の持ち主に頼ま
れてしかたなく鳴る目覚まし

液晶と呼ぶみずうみへ放った火

八朔をばりりと剥いて
涙目の
守られた生にくちづけをする

まぶしいね夜は神社にかけるもの

生涯に
一体いくつ
詩を書けば
わたしはわたしの
神になれるの

手の影を生む栞を抜くために

ママチャリを偏平足で漕いで
いるあなたのなかをずっと倒木

校正で誤字を見つけた春の日の
桜ざわざわ咲く吉野山

鼓笛隊だから両手で食べる雪

おとなしく蛍の下につきましょう

白球以外９９％青
違うよ、全てがＣＭの渋谷

間違った話を訂正せずにいる
着衣水泳みたいな生き方

気持ちとか
わからないけどいいですか
あなたの花瓶として生きていく

空想しずか
冬薔薇開きゆくように

咀嚼する生き物、
ひかりを企てて
踊り場に立つ。

ぱさぱさの緑髪でも愛してた
Instagramの対義語は君

鏡越しに目があっている時
とても
私たちって人だとおもう

左手が
刃物をもっていなかった事を
右手はその後しった

箸二膳雪の日の呼び鈴が鳴る

指広げ豚の蹄で待つ耳鼻科

痒みにもたくさんの種類があり
マグダラのマリアが零す涙

ずくずくだよ、パジャマ
わたしが言うはずの言葉を
花に奪われてから

生霊に行かせて部屋に溶け込んだ
僕はオールインクルーシブ

アンラッキー
彫刻はぜんぶ傷だらけ
いずれ違いもなくなっていく

演奏のしずかにヒトデ重なって

吠えるとき窓の一枚厚すぎる

ぱろぱろとコートを叩く
あられにも
あんな時代があったんだねえ

家系図の二回戦には進みたい
欲を言えばいつかの決勝に

街中にあぐらをかいた
矢印に従い続けて北極へ邁く

戦場のベッドの人と目が合った
ボリューム下げた瞬間だった

円卓の真ん中自転している酢
冬の速度でまわしてあげる

つまりは積もり
つもりのつまり
恐ろしいほど風が強いので
今日は家にいます

戒名は君の名前にしたいから
僕より速く歩かないでよ

私が引くまで開かなくて
私が押すまで閉まらない
電子レンジが壊れた日

さよならに
さようならって返される
小一だけど人間なのに

火傷する温度で髪を温める
at寒くて暮らせない街

古井戸に蛍を放つ左手は
夜の重さを叩き割れない

ぼんやりと花蔭が伸び縮みする
事故多発地点の昼下がり

大いなる他人事だと水底で
籠のひしゃげた自転車を押す

一月の夜に光る赤と緑のように
膿がぐずぐずとだらしなく

鼻梁より滑り落ち来る確信を
強く瞬き神がぱらつく

空も汗水たらして働いているのに
中央分離帯ときたら

茶封筒
舞台の隅で
薄い春

緑草
足の踏み場もない部屋に
僕にしては、お金があるし

そこに小川があれば
どんなものでも
苗字にはなる

遠くから奇妙に見えた陸橋を
シンプルに越え、いい夜ですね

犬だった
頬に畳の痕をつけ
青い草原　ああ、水だった

海に雨、目に目薬を
引き入れる
星の手つきのしずかなる午後

神さまが固く絞ったような梅
だからひとりでいるほどきれい

https:このときのそのとき
のあのときのどれもが

右利きになって空から電柱は抜け
てどこかへ行ってしまった

冬枝に茶色
手折って、淡緑
を見てしまいました。

誰も　駅の天井を 知らない

さようならカーテンはそのままに
してゆきますねただしい閉じ方で