手を浸して
あたたかいプール

金木犀のいま降るところ

芝刈機のエンジンの音

あなたには小さい舌がある

滝がくずれる音を
聴いていると
この身体にも飽きる暁

会いたいと同じくらい
会えなくていいと思う
林檎しゅかっと囓る

秋の冷たさは
居残りの教室の中に
似ている寂しさ

空が大きな口を開けて
私が落っこちるのを
今か今かと
待っている

金木犀薫るひつじ雲
隣の席の子の色えんぴつは
いつも橙色ばかりが
ちびていた

どんぐりみたいな靴下を
椅子にはかせてやる。
嬉しそうに足を上げる。

真ん中より
少し左よりの
わたしのからだが
痛いという

逆上がり今ならできる
そう思い、残業帰りの公園に寄る

俳句で別れを告げられた


季語は、
ハンカチだった

駐車場ばかりが増える
この街では階段の踊り場に
たましいが溜まる

本を閉じれば聞こえてくる雨
氷はいつか水に変わり
妹はぼんやり光る

皮膚に張り付く蜥蜴が私の中の
闇を見る
遮断機にも積もりゆく雪

冬服は夏服よりも
正しくて
灯油の匂いのする美術室

銀杏ともうすぐ夜の靴の裏

遺骨は花の瀬か手と手
風の名は初恋

まだ大丈夫


若い子の作った歌で
泣けるからと彼女は言った

階段の埃を育てている
成長期の少年たち
キラキラはきれいですね

夜の外側に雪虫　がいる
夜の外側に鏡の色がある

人生に取り残されていて蛇口

理科室の
　むこうに雨が降る
理科室は静か

青空の要約として買うレモン

王権の象徴としての色鉛筆

自習する天窓に雨あてながら

夜になる
肉体になる
やわらかくぼろぼろと
崩れる
鍋の中の　　　月のおと

やることを書いておくメモ
でも全部できるわけない
夜のあじさい

醤油かけごはんで空腹を逃れる
火を禁じられていた少年期

ある朝の幻想よ、ガムシロップの
自重で沈みきるまで黙る

普段からひとに感謝をしていても
すぐに汚くなる足の裏

ももいろの雲のひろがる明け方に
比喩の頻出するほそい道

天井で
腕時計から反射したひかりが
必死に泳ぐ学校

富豪系ユーチューバーの
配信を楽しめる
平凡な人生

お守りのように栞は挟まれて
日当たりのいい実家の書斎

冗談が飛び交っている飲み会の
途中の間の静けさのくらやみ

静脈も動脈も信じられない
夢の深くで木犀揺する

砂嵐みたいな寮生活だった
みしりと開ける納豆パック

生殖など迷惑そうな花曇

自販機の灯りに腰をおろす帰郷

吹きさらし
の
オカリナが
　孕む焦燥

引越の荷解き 新しい町の花屋

兎の剥製
わたしが生れる前のこと

葉脈の一番端で
空に触れる役になりたい
僕は墓守

寒くなる
山を登るにつれて
細胞がひとつひとつ
すきとおっていく

つくつくし貧しくっても君がいる

工事現場に秋の夜が滑り落ちた
自販機は
ガゴンとふるえた

夕焼けを卵でとじる
労働のうた

壊れた地球儀を直す土曜日

にわか雨の校庭を
駆け抜ける
鉄棒の匂いのついた
手で

夜のジャングルジムに
雪が積もる

あの頃の　はしゃいだ声を
嫌悪する

空のボトル越しに
アルコール臭い陽の光
救われた気になってんの

孤独の深さに近づく秋晴れ
店先で季節外れの風鈴が鳴る

イントロで梨を齧った音がする

進路指導受けても
まだ雪になりたい

本気とか恥ずかしいやん大試験

水こぼしやすくて老いる秋日和

冬雲雀ユンボは昼の佇まい

風光るネクタイ曲がる警備員

天国に近い芒の獣道

ドーナツの箱乗せる膝冬のバス

抱卵季一人称が定まらず

丸の内署所轄雪のハイヒール

十月来る岩塩を掘る鑿の音

掌の熱を移して捨てるため木の実

中也忌の空は縹に崩れ簗

秋燕忌ひとりの部屋に影と棲む

遠回りをしている
いつまでもたどり着かないように
雨の日を待っている

濡れたコップの水滴の
仲間なんです、わたし。
蒸発できずにシンクで待ってる

お裾分けしたの、柿を。
つっけんどんなあの人にひとつ
笑ってましたよ。

毎日死んで、毎日生まれて、
たくさんの私が肩を重くする

冬の星まだ溶けきらないハッカ飴

石鹸玉離れる地軸傾いて

血液が耳まで届く冬の虹

耳掻のささやかな白秋灯

だから私、夜になると
片目をぐうぅと身体の中に
押し込むみたいにするの

うすく歯形のついた空

金魚が宙を跳ねるみたいに
不思議な響きをふくんだ
身体になりたい

ほころびが光る、
流れる雨の中

きみの言葉は鳴るのだから、
いい加減に弾いていないで

空を縫うように光がはねている
初めてきみに涙を見せた日

陽のあたる席の人が言う、
光を閉ざして。と
あまりにも簡単に言う。

なつかしい匂いがした
未来は私の肌に眠るもの

木瓜の花散るころの
ぬくもり

真珠色の空
冴えた空気を鼻から吸い込む
秋だけが、
寂しさを肯定してくれる

この場所で
生きていくのよ君たちは
コットンキャンディみたいな呪い

かなしいひと
さみしいひと
がいたことで
溶け続けてる椅子があること

　　世界は今日も表面張力

教室の窓から見える飛行機が
羨ましかった受験期の午後

午後五時を告げる
サイレン鳴り響き
真面目に帰る子だった
犯人

死ぬことの不安を
こっそり抱きながら

クリープ溶けてく渦を見ている

君がくれたギザ十使う日が来た

　ずっと
　ベンチに座ってました
　何も考えず
　ただひだまりの中で

　たぶん、とか、
　それで、って
　間接的な
　秋の夕暮れ

でしょう。
語尾が優しい
父でした。

　とてつもなくとか
　レモンケーキの箱とかの
　明るい午後

　優しいぞう
　のような　
　涙を流す
　祖父でした。

　いままでの
　ことなんて
　なかったような
　朝日、おはよう。

　冬の電車から
　みる
　キラキラは
　温かい匂いがした

本棚の跡、四角い縁取り
ベッドの跡、足の数だけへこみ

そらまめが優しいみどりに
ゆであがったから
祖母の命日を空豆忌と呼ぶのです

病院に行ってきました


リノリウムの床に
足音を響かせてきました

ギンナンを拾う
黄色い葉がまじる
もひとつ、ギンナンを拾う

このように
子どもが帽子を叱ってた

シャツが燃えたらバジルの香り

これ、傘立てが歩いた跡らしい

のぱのぱは未来が鳴いている音

きみが立っ、ているから
光をかぶって

とおい雪　ふれるための儀式

風はどっちふく、しまはあっ、ち
たぶんね

苔の一人称を知った日

気がつくと違う風景にいる小指

ローマまで歩きたいなら
１０６日かかる
グーグルマップによると

ガンになり
癌という字を覚えたと
箸を止めずに打ち明けた君

「お母さーんお尻ふいてー」と
　トイレから
　息子は叫んだ九歳までは

ほしぐでもでぎねし
　いらねぐでもでぎる
それが子どもと
　ばあちゃん言った

カーテンの向こうに現れる明日を
明日のまま見ることはできない

本人が気づこうとしない本心が
なぜか周りに透けて見えてる

赤ちゃんの広めのおでこ綿帽子

階段を下って運動場へ秋

秋寒のカレードリアへ生たまご

海ひとつ山ふたつ越え涼風に

露寒のハッピーターン個包装

百本の薔薇に罪などないけれど
明日はたしか燃えるゴミの日

折紙のみかん勤労感謝の日

おばさんはわたしの方か朱欒朱欒

ホテル聚楽のＣＭの
お色気ポーズを
練習していた頃は
世の中も元気だった

わたしはどうして液体になりたい
んだろう
基礎生態学の講義のさなかに

小さな宮崎県の小さな宮崎市の小
さな口座から、引き落とされる後
期の、学費

今朝の冬櫛る髪しんとして

仄暗き
夜明けの川をじゃくじゃくと
鹿渡る音霧越しに聞く

春愁が自販機でしか売ってない

薫風を頬に貯めてはトロンボーン

水にさえ致死量があり枯れ野原

小夜時雨 ツノが薬になる種族

銃撃戦が繰り広げられ
味噌汁があったまる

ひとをころすゆめ凶器は二日月

宵月夜ちょっと憂鬱そうな犬

魔女の料理が煮えたって流れ星

朝四時の寝なくていいや秋の海

ピーマンが死ぬ準備している途中

いるようで
いないようなら
しろたえの
マスク取っちゃう
秋の霊園

友達が
すぐ敵になる兄さんは
野球少年だったからです

遠くに街の気配を感じる小窓

秋はなんねんぶりだろう
毛糸のように晴れていて
思い出せない塗り絵がある

冬風の匂いを詰めて浅葱色

金木犀薫るひつじ雲
隣の席の子の色えんぴつは
いつも橙色ばかりが
ちびていた

お届け物ですよと赤蜻蛉がとまる

俳句で別れを告げられた


季語は、
ハンカチだった

スキップをしてみる
月が大きくて
秒針の青い時計を見ている

本を閉じれば聞こえてくる雨
氷はいつか水に変わり
妹はぼんやり光る

君の寝息にかさなる暗闇が
点滅しはじめた信号機の青で
立ち止まる

夢で最初に死ぬのはいつも母さん

先生は何かを言って教室を
砂にしてから授業はじめる

放置自転車たちつてと

紅葉する森の中
水溜りに
油膜が浮いていて
秋
の面積

五線譜　　　　を
くぐれば　　森は
　　　あたたかい

秋だから　　　（とうめいな
自分の骨を買いに行く　　　）

理科室の
　むこうに雨が降る
理科室は静か

君の名前を
呼ぶ
ケーキを６等分する
　　ときのように慎重に、
わからなくなる

　　砕氷船は砕けた氷の音になる

やることを書いておくメモ
でも全部できるわけない
夜のあじさい

僕はいま恋をしてます
古本の新書の目次だけたしかめて

地下鉄の
シャッターは閉められていて
あなたは初期のころが好きでした

殺されてみたいし
殺しもしてみたい
なるべく波の音を聴いていたい

冗談が飛び交っている飲み会の
途中の間の静けさのくらやみ

信号を青でも待ちたい夜だから
きっと生きてて良かった気がする

駐車場を挟んで並ぶ
葬儀屋と老人ホーム
ぼくには関係ないけれど

病室で
タツノオトシゴになった曾祖母
あるいは胎児のような
静かで

次死ぬの誰なのだろう鳳仙花

一万本の煙突が
冬を待っている
霧の中で、コーラを飲む

夜のジャングルジムに
雪が積もる

内定は花野にあるって聞きました

進路指導受けても
まだ雪になりたい

模試の結果
捨てられないのに成人式

咲けばみな名前呼ばれる花畑

音階を幾度も数え冬銀河

空室のテレビ画面のような夜

ドーナツの箱乗せる膝冬のバス

囀りの中に恐竜だっていた

水よりも重い経血ヒヤシンス

丸の内署所轄雪のハイヒール

虫の夜弟も銀河に加わりて

栗を焼く父の悲しさ知るヨセフ

水羊羹優しい人の字がきれい

冬の星まだ溶けきらないハッカ飴

　　死
　　　　な　なくたって
　星　に　
　　　　　　なり　た　い

深夜二時牛丼チェーンの店内に
人がいること知った冬の日

　コンクリートが泣いた
　ような
　秋の雨です。

　秋の風は
　焼き立ての
　スポンジケーキの
　匂いがした。

とおい雪　ふれるための儀式

葬式の帰りに買ったあまいパン

斎の字に
懺悔の意味があることを
なぜか得意気に語る斎藤

起し絵のひとつがずっと風の部屋

夏なのにただ星を見る嘴広鸛

秋分の日のマニュアルの
　　　　　　　　　真面目かよ

縁側で冬の蝗とにらめっこ

お歳暮はハム裏庭の豚のハム

水着きれい眼鏡の学級委員長

ゴム着けるあいだに急に明日とか
ひろしとカラオケやんて思う

折紙のみかん勤労感謝の日

ショベルカー秋夕焼を掬ってる

栗買って秋夕焼の中にいる

歩道橋の下のお迎へ冬隣

スタッドレスタイヤの
ＣＭ流れると
母は毎年ため息をついた

鮭の不漁を聞くと
帰れないわたしと
同じだなって思う

包丁をはじめて人に向けて夏

初電車 他人に肩を貸していて

梅雨は闇 治安のための少女たち

靴下の
ちっちゃいリボン
揺れている朝

滝がくずれる音を
聴いていると
この身体にも飽きる暁

会いたいと同じくらい
会えなくていいと思う
林檎しゅかっと囓る

秋うらら墓地につながるだけの窓

おじさんに苺のシール貼る剥がす

本を閉じれば聞こえてくる雨
氷はいつか水に変わり
妹はぼんやり光る

遠くまで泳ぐために必要なのは
忘れることじゃなく
きっと
思い出すこと

元彼を呼び出すならばリング上

人生において
アクセルとブレーキの例えが
通用しなくなる世界が
すぐそこに

王権の象徴としての色鉛筆

何度でも思い出すため言葉には
しなかったことを思い出せない

夕焼けは今日見たものを聞く
ぼくが話したことは盗まれていく

平たくて全部スタンプされたもの
横断歩道もわたしの痣も

鯨の目が
新品の
黒電話のようだ

公園のベンチはなべて濡れていて
暴かれていく花の前例

一人って楽だし
鳥にも取られずに
ごはんを食べる方法がある

給食は日に日に簡素になるけれど
痩せる気配のない指導者たち

サブスクに
軍歌が登場して以降
何かが狂い始めた９月

砂嵐みたいな寮生活だった
みしりと開ける納豆パック

海苔巻きを買う帰路後ろ振り返る
居たのは過去の私だけです

獅子舞が大衆をすぐ噛む理由
それはおそらく悔しいからさ

釣瓶落とし恋しないまま五十年

恋愛は字余りくらいの方がいい
君と見ている雨上がりの空

さくらんぼ　私が兄の世界線

咲けばみな名前呼ばれる花畑

春炬燵噛むのが下手でまだ子猫

抱卵季一人称が定まらず

水よりも重い経血ヒヤシンス

オリオンの配置変わらぬ戒厳令

お釈迦様もイエス様も
文章を残していないじゃない
感想文を書かない理由か君

自由とは
何たる厳しさ
民主主義
何たる面倒
それでも求める

思考が現実化すると言うならば
戦争を望む人がいること

originは不可算名詞後の月

独り居の音声入力夜は長い

それらしき比喩のジョーカー
みなしぐり

石榴食う恥辱（はじ）のバケツに
種子を吐き

ハロウィンに泣いた赤鬼菓子配る

石鹸玉離れる地軸傾いて

ゆびさきを感じて、
星がすべるように肌が鳴る

添削。
ゆるやかな呼吸の下、
つめたいネイルが光る。

梅の古い枝は
少しのひかりを与えられ
浮世絵のように
はっきりとしてくる

不始末の生命が暴れておりますが

スキャンダル如きで
この星から出てさ
コロニーへゆく日も来るのかな

へその緒が保管してある
引き出しは二段目だけが
少しぬくたい

　ごめんなさいと
　ありがとうさえ
　言えれば
　人生なんとかなるさ。

　カマキリは
　優しい夢を
　みてしまった。
　こっそり

　自分と仲よくしないと
すぐにロシアとウクライナ
みたいになるだろ。

　泥だらけになってさ
　ひょい、ひょいと
　道なき道を
　すり抜けてきたのさ

おおらかな概念だから、
吹いてみて

のぱのぱは未来が鳴いている音

葬式の帰りに買ったあまいパン

いわし雲の等間隔を埋めよ
男子生徒のバリトンサックス

ガンになり
癌という字を覚えたと
箸を止めずに打ち明けた君

ほしぐでもでぎねし
　いらねぐでもでぎる
それが子どもと
　ばあちゃん言った

一茶忌の積み木の家を片づけて

飯蛸は手鍋にたまご吐き出して

苗札のハイカラな名は何なのさ

あの窪みに玉兎特別保護エリア

ましら酒きこりと踊るシンデレラ

眉くらい描けよ紫苑の遊園地
入籍のタイミング逃して

母さんのリンボーダンス小六月

冬近し呑気な母のリコーダー

彗星の
尾を漉くように手を伸ばし
星座を一つ教えてくれる

「夕方のワンちゃんだよ」と
お隣の白いチワワを
ピンクに塗る子

満席の電車に立ってギャルの前
つまさきの幅を合わせてみたり

僕ら化け物じみている。
二十三数える十の指を生やして。

卵の星あり飛び立てる雷鳴の
沈黙深く深くかすがい

未明は誰の手に
つくられた踊り場か
湯呑のふちが濡れている

霧　何もみえなければ
するどい字幕のように
それこそが
僕の呼吸とおもえ

芝刈機のエンジンの音

あなたには小さい舌がある

ゆうらりと林檎を持って夕の庭

仮の宿みたいに丁寧に身体を洗う
いつの日か
次の誰かに渡す日が来るまで

先生は何かを言って教室を
砂にしてから授業はじめる