嵐の日のエンターキーの音静か

何処かで
羽根になることを
願っている
唇に塗るニベア

蝿を打つ山川倫理用語集

寂しさが離さないでと泣く夜は
いたずらに甘いカフェオレを飲む

水引の花のこぼれて木婚式

幻に
なりやしないか
真っ赤な秋は

前かごに
榊を一対
十九歳

きのう今日
生駒の桔梗
あすに咲く

成り行きで透明な水に抱かれてる

おーいお茶みたいに妻を呼ぶ声帯

うつくしいお前を祝うためだけに
あらゆる炎が風に吹かれる

百合の花を
　ひとふさ
胸に垂らすとき
かなしみ　だけが液状である

ぬるく発光
している
きみのたましいを
きんもくせいは濡らしつづける

神話にはない
しゅうえんを抱いている
熟れたぷらむのような　しんぞう

ぶきように
つむいだ手話の
つばくろ、が
あなたの胸で羽ばたいている

きみの髪を
かわかしながら
みるゆめの、すべて
に満ちる すいぎんの影

おとうとに
背をぬかされた
はつゆきの朝を
死ぬまでおぼえていたい

加速する
センチメンタル／リズム
あの、
夕日がねむるまでの残響

呼んでくれればすぐに行くから
知らない街の知らない川に花筏

踏切が朝を待ってる　なんとなく
君とコンビニまで行く冬の夜

まだ雨はおおきな森と答えます

こっちこそ蛸を仲間にしてごめん

梟のおともだちならしょうがない

信号が変わるのを待つ僕たちの
待つこと以外は異なる人生

負け惜しみさえ可愛い
拗ねても駄々をこねても
愛おしかった
永遠に三歳の妹

帯電の身体で泳ぐあおみどり

釣人は洗濯夫かも詩人かも

十月の天使につむじ踏まれたわ

毛布を蹴飛ばして窓を開けた
密室は孤独がうるさすぎて

飯を掻っ込みながら漠然と
死にたくないって思ったが
普段は死にたいのかな

もう会えない
人がいるっていいことよ、と
祖母は巨峰を剥きながら言う

風薫る道路標示の強い青

電柱はときに墓標で空に立つ
〈天野洋品店〉閉店

まだ寝たくないから
椅子に本を置く

紫陽花と名付けるために犬を飼う

ピアニカをファンと鳴らせよ
惜しみなく
大人になってもきみはひとりだ

はらこをばらして
いくらの醤油漬けを作る

息子の声が聞こえる

林檎抱く
カウンセリングの日を忘れ

初恋は突き指みたいに痛いから
夏雲に似た蚕を触る

蟷螂の目が藍色になる角度

帰るのに飽きて茸を取ってみる

老犬を寝かしつけして小鳥来る

月代のこそばゆそうな猫の耳

素十忌の点字ブロック影を持つ

フトーコーフトーコー
また小鳥来る

十五夜の犬のきれいな鼻濁音

神社に月
天使の羽を持つ猫は

駐車場発券機から声がする
帰らなくてもいいのか君は

※報復の意図は一切ありません
　しろやぎさんとくろやぎさんは

水筒に注ぐ珈琲銀杏の木

深秋の夜景に家族葬の文字

マンションの隣のドアが軋む音
夜はくじらの声に聞こえる

　　睡眠と猫と緑黄色野菜

並木道 僕と同じ名の犬が
僕より幸せそうで嬉しい

秋雨が暗く重たい
寒がりな君が
一度も寒いと言わない

童謡の
とおりゃんせ
を唄いつつ
かっこうと鳴く信号を渡る

神様はあんま前髪作んない

コンビニで買えるおでんを
待つ君が深夜の雨に
冷やされていく

南天が赤でも緑でもない日
彼が作ったパスタを食べる

方舟に乗れない側の人類だ
卵の賞味期限も切らして

タタタタとタルトタタンと
くだる坂

帰るたび幼子の目で見る祖母に
自己紹介から始めるただいま

霜の降りたコズミン鱗
ちじょうはしんかいよりつめたい

近所に住む九七歳のばあばが
昨日、
冷蔵庫を買い替えました。

クッションを叩きまくって
上階の生活音をやり過ごす夜

鳥葬の夢ばかり見た自習室　
今も背骨に風が絡まる

雨上がり道路のひびは空色で
多分世界が綻びている

あなたにも
いつかの私が散らばっている

値下げした弁当喰らう
この僕は一体何割引なんだろう

コハクチョウ飛来する
種を探しに

ut
pictura poesis

許すとか許さないとか僕とんぼ

空き地には土管もないし
猫型のロボもいなくて
僕だけがいる

君がいた駅を見ないふりできる
ようになるまでまだかかる夜

草むらに
　はずかしそうな
ひがん花

壁に貼られたポスターの右下の
画鋲が落ちて見つけられない

神話にはない
しゅうえんを抱いている
熟れたぷらむのような　しんぞう

きみの髪を
かわかしながら
みるゆめの、すべて
に満ちる すいぎんの影

くちびるを
きみの
瞼　にのせるとき
銀河は森
のようにまたたく

おりおんの話をやめて
みかづきが
刺さったままの胸
に、ふれてよ

カントリーマアムのない味を
言い合って言い尽くしてから
渚になった

踏切が朝を待ってる　なんとなく
君とコンビニまで行く冬の夜

まだ雨はおおきな森と答えます

会議室　あとは代入するだけの

煮崩れを流れ星だと思うんだ

父がいたベンチの上に赤とんぼ

十月の天使につむじ踏まれたわ

今はただここにいたいの箒星

もう会えない
人がいるっていいことよ、と
祖母は巨峰を剥きながら言う

菊膾唇（くち）に冷たく中也の忌

＊中原中也忌　１０月２２日

紫陽花と名付けるために犬を飼う

朝になれば、
すてきな断面図

予備校の星のかけらのようでいて
机に置いたままの花丸

特急列車の四角いオレンジは
ばらばらばらと小さくなって
金木犀をかすめてく

人生をゴールしてしまったような
気がして、海水ひとくち含んで吐
いた。

公表しない彼女のような夏は過ぎ

林檎抱く
カウンセリングの日を忘れ

ティーン誌の実家に積まれ入社式

私から虹はじまって素数の そ

野菜室の奥に眠ってたひらがなに
触れると転調していく世界

印鑑をプールカードに押すときの
ように義務的に触れる唇

フトーコーフトーコー
また小鳥来る

赤とんぼ
ずっと決まらない文末

人間の写っていない
写真から捨ててく
一人いなくなる時

掃除機をかけて床で読む歌集
ソファーに全部の夏服がある

６Ｐチーズの容器で眠りたい
舐めた石鹸がにがくて起きたい

大陸が三つになった日別れてない
方が初めて悲しかったと思うな

長靴に昨日の雷雨
つまさきを浸して
光の死を確かめる

付け爪で夜と朝とを切り分けて
明るい方をわたしにくれた

海をなぞりながら
静かに貶し合う
親の車で流れてた曲

染色体見せてよ君の過去だとか
全部の答え合わせするから

マンションの隣のドアが軋む音
夜はくじらの声に聞こえる

秋風になりたい
何よりもすき通りたい

信号が点いている

秋鮭と初めて使うガラスペン

割り算と雷 道なりの素数

ガラ空きの電車みたいな人が好き

三角の底辺撫でる月曜日

空気って音がないから心臓を
祈るみたいにふたつ重ねた

巻貝の階段降り秋の浜

木曜日、明日の夜を考える

東京の改札くぐりぬけるとき
ぼくは透明人間になる

輝きを増してく君はよろめいて
破片できっともっともっとね

濁音ひとつ寄せつけない秋の夜

さよならの手解きとして
ペンを取る
雪の積もった分娩台で

蝶も蛾も　
フランス語ではパピヨンで
あなたはめんどくさいから吉田

走り出す
僕の知らない
おばさんが

理論武装した抽象画を見たあとに
パパ活してる友人と会う

ゆっくりと歩くのが向いていると
知ったから君が消えた日は良い日

もう来ないでと言う
素麺を茹でながら

思い出を可燃と不燃で分けていく
あなたがどっちかまだわからない

少しずつ薄くなる影
ぼくだけが
取り残された街の遠景

約束をしない小指で叩かれる
Back spaceキー
離島めいて

梟のおともだちならしょうがない

信号が変わるのを待つ僕たちの
待つこと以外は異なる人生

輝きは相対だから
東京の夜景に瞳を凝らせば尸

全員が裸眼で眠る冬銀河

生活の二文字が怖い
痛まない食材ばかりを
買ってしまう

刺繍して
裏側をなぞる
世界をうつくしく
たとえられないまま

ことばから旅立ってゆく
花を脱ぐように
あなたはここへ生まれた

夕暮れの〈帰れチャイム〉に
囲まれて
僕らは大人にならざるを得ない

性愛を知った
女の子が焼いてくれた
カルビが噛み切れなくて

音速を声は超えられないんだよ
これほど文字が喋らなくても

公表しない彼女のような夏は過ぎ

重力に負けて生まれて春の雷

春ショール巻かれ地蔵に五円玉

枕木に横たわってるような夜
ああ一日が通り過ぎてく

人格について触れない約束をした
鏡とは今も仲良し

たすけての曲線にゆるく腰かけて
立てもしない　座れもしない

フルムーン
ぼくらこれから
願ったり叶ったりする
一生かけて

君の背中を押してみた
ちょうど特急が来たもので

おれたちは水にはなれないで
ただ国とか市とかに関係がある

終わらせてしまった恋を畳んだら
子猫を包めそうな気がした

良かったね
ありがたいね
あたたかい鎖が
ぼくを締めつける

深海で泳いでいるもんだから
みんな毎日ひしゃげていくの

歩けてた時の母だけ秋の浜

指でする約束は透明なリボン
君の蝶々結びはきれい

巻貝の階段降り秋の浜

親指で
あなたに送る文を打つ
すみだまりなど作るつもりで

柔らかいうちに沢山触りたい
棺の中の頬は硬くて

月光を遡れずに透明な
くびれを持て余す砂時計

這い上がる炎を模した紅葉に
前世を告げる螺旋階段

言葉のない会話しか
したことがない二人
お互いを未だ知らず

１歩引き下がり躊躇する事を
繰り返している
ただそれが正解だと思っている

鼻詰まり
色気よどこだ
あばれだせ

おいそこのぉ
はみでてるからぁ
しまっとけぇ

付ける程
共感性の無い筋肉

走り橋 迷い泣き 飛び恋 
闇を抱き抱え 眠りに堕ちる

理論武装した抽象画を見たあとに
パパ活してる友人と会う

「母」の絵だと思った

髪一本まで艷やかな女性の
手指に刻まれた皺の深さに

光を束ねたよ
うなレタスを
持ち帰　る
部屋
一人ぐらしの

信号が変わるのを待つ僕たちの
待つこと以外は異なる人生

満ち引きのサスペンス呼吸して
小銭の絵文字の絢爛なこと

帯電の身体で泳ぐあおみどり

びいどろを吹いて吸う咲く草の花

沃野にて情事を手放し僕らは
〈草刈りボラ〉さ古城の石垣

どんぐりが
頬に落ちると痛いこと
知っているからやさしくなれる

花野あちら

心療内科はこちら

翌日に刺す通り魔が今日に逃げ
今日とは今日である他はない

眠るとき
瞼は少し明いていて
姦淫を火にたとえてくれる

水という物体は
あやふやで
時に美人画を買ってくる。

掃除機をかけて床で読む歌集
ソファーに全部の夏服がある

おれたちは水にはなれないで
ただ国とか市とかに関係がある

花束がガードレールに寄せられて
見る度に問う何守ったか

そして、一篇の詩を生むために
私は、わたしを処刑する

ガラ空きの電車みたいな人が好き

にっぽんの夜で一番光ってる
場所は塾です星座を描き

橋の上競馬に負けた人影も
川に映れば自然にかえる

シャンプーを
こぼさず詰め替えるように
言葉を選んでも殴られる

鼻と喉　血の塊を　二度寝して
そうやって私は産まれ直すの

水はけの悪いこころにつく足跡

あしが砕けた
椅子を必死でもがく
腕と神

１粒だけ剥いた葡萄に貼る切手

齧れば恋に育てれば粥になる

物心ついたときには滅びそう

怪物を心に飼って冬木立

前かごに
榊を一対
十九歳

靴下を履かせた半島夜明け前

ゼリーに指を刺す

生きていると錯覚する

うつくしいお前を祝うためだけに
あらゆる炎が風に吹かれる

ジェネリック猫として抱き、
カシミアの毛布のヤギ の
尊厳を消す

百合の花を
　ひとふさ
胸に垂らすとき
かなしみ　だけが液状である

呼んでくれればすぐに行くから
知らない街の知らない川に花筏

秋めいて鼠と嵐くらい似て

レモンのかきごおりはふぶかない

いいのいいの、夜も相対的だから

その夜を夜だと感得できない蝶
幸も不幸も、みんな解釈

これは専ら、
寮住まいの要領で
私たちが見守る月の先端恐怖症

ポケットに入れて
喉まで打ち明けて
もっと噴水の試食だった

白鳥色のゆでたまご煮る
美化した夜の寝言はきれい

梅雨の山
コンビニバイトに会いにいく

十月は入れ過ぎた塩戻す日々

ひび割れて
こぼれ落ちても向日葵で
ここはゾンビに見張られている

採血後の絆創膏風に曝され少し
恨めしい行ったり来たりの秋口

それぞれに怖いと思うＣＭがあっ
てじゃあねにまたねと返す

じゃあ逆に何ならできそう？って
聞かれて手鏡２枚買ってかえった

段々と破滅を望まない方の
私になってひらひら泣いた

猫背なら動かせるかも秋の虹

あなたには
ととのった色を渡したい
深呼吸して話しはじめる

綿の上ずっと歩いていたんだね
寝転んで知る床の表面

ビニール傘の
骨みたいに弱かったっけ？　
雨粒の数だけ類義語がある

野菜室の奥に眠ってたひらがなに
触れると転調していく世界

十月の心にダルメシアンがいる

掃除機をかけて床で読む歌集
ソファーに全部の夏服がある

濃紺で犬、イヌ、いぬの帰り道
ちゃんぽんにして川また走って

ひさびさに文字書くペンの息遣い
土砂降りだ　部屋いっぱいの模倣

傘の先があたまかおしりか言い
合って人は世界のせいにしている

共食いが始まりそうなテラス席
白いものばかりを頼むから

二択から煙草選んで星月夜

ガラシャンと崩れた部屋を
カーンへと導く
レモンによる福音書

おれたちは水にはなれないで
ただ国とか市とかに関係がある

人情にゆかりがなくて給油する

木漏れ日のぬるさに
胡坐を
かいている
演劇の木のような人生

紅葉の裏でなかなかツモれない

第２土曜日は「無重力デー」、
こしひかり買いに行こ

歌わなくていい
踊らなくていい
回ればいい
車輪は安心した

水圧で開けられないのなら
溜まった涙を私が飲んであげる

オイスター パチンと跳ねて
空の縁

手首だけ老いてしまった君を追う
秋の海辺で骨でも探そ

ファミチキのメモ欄よりも
必要でありたい 霰になりたい

ご自由に持ち帰っては捨てている

一滴が無数の子孫につながって
他人に戻るコーヒーミルク

木立から
4000Hzが消え失せて
秋の嗚咽が響く草むら

コーヒーが飲めない
音量に厳しくて
常夜灯で眠れない
君はひとりを気にしない

燃えるスカート
ひるがえって 泳いで
いつかおさらの上

茶化せども浮く虹の没年月日

川岸で反射する子どもの日々が
生きる寂しさをちらり照らす

何度も同じフレーズを繰り返して
しばらくは忘れられる
きらきらの嘔吐反射

脈絡もないよ脈もないんだし
葬式できみの脈をたどった

冠がくだけるほどのわらいごえ
電光石火の夏は吹きます

柔らかいうちに沢山触りたい
棺の中の頬は硬くて

さよならの手解きとして
ペンを取る
雪の積もった分娩台で

犬を抱く
私の頭で折れた雷

中指を吊り革に乗せ
頬の余韻

手ぶらの母が指先で生む荷物

１粒だけ剥いた葡萄に貼る切手

週末は
右目と左目に おなじ世界が映る

適当にあしらっている返事をされ
幽霊のいるジオラマつくる

巻き戻しできないからだ花咲いて

秋の陽の俺が書き足された絵本

バランスのとれた言葉で話すとき
言葉は心から遠くなる

泣きたくて頬寄せたくて広辞苑

おーいお茶みたいに妻を呼ぶ声帯

ここは生き狂いの街だね、と
青いまま落ちた
君の中身が染みついた
ワンルーム

百合の花を
　ひとふさ
胸に垂らすとき
かなしみ　だけが液状である

神話にはない
しゅうえんを抱いている
熟れたぷらむのような　しんぞう

はたかれてとびだす
ようにうつくしい

煮崩れを流れ星だと思うんだ

白鳥色のゆでたまご煮る
美化した夜の寝言はきれい

十月は蝶を模写する昼休み

帯電の身体で泳ぐあおみどり

十月の天使につむじ踏まれたわ

もう会えない
人がいるっていいことよ、と
祖母は巨峰を剥きながら言う

旅本に付箋を生やす春の雨

剥製は落葉たくさん踏んできた

本たちの夢溶けている秋の雨

ピアニカをファンと鳴らせよ
惜しみなく
大人になってもきみはひとりだ

月球の光の子どもを受け入れる
君のやさしい鼻母音のなか

味のしない涙を
ぼてぼて落としても
父の血圧はまだまだ高い

春吹けば まみこ先生に胎動

十月の心にダルメシアンがいる

唇の降りる一瞬金木犀

ちょ、と打つと
チョコより先にくる貯金
溶かしてしまえば戻らないほう

パーカーが回る
晴れた朝が揺れる
さっき見た夢の続き