大好きな人に大好きだと告げる
こともなく夏は日が長い

呼んでみただけと言われて
呼び返す
世界が一枚の布みたい

①マジしんど
②マジ無理ぴえん
③マジ卍
ここから私の気持ちを当てよ

夕立にあなたを探す
優しさだけじゃ
生きていけないけれども

VRの空飛ぶやつで遊んでる
うちに太もも刺されていた
蚊に

忘れてた
栞挟むこと眠ること
切符買うこと冬が来ること

寝たふりの人が唾をのむ音

ばら肉の
「ばら」について
考える冬

冬銀河少女のイヤホンよりジャズ

うれしくて
ついついお互い
飲みすぎて
夜のスーパー
しじみを買ってる

「さみしい」を
口封じする ままどおる

自分の車で診察を受けた
予防接種を怖がる犬以来
二十年近くぶりだった

今年から
サンタは来ないんだよね
じゃ、お小遣いちょうだい

夢の跡

引っ越しを手伝えば
そこはなにもない空間
思わず引っ越したくなる

靴下が嫌いで家では
裸足です
裸足のままで
師走を迎えます

冬至がくる
　だんだん
　　昼間が
　　　短い
　　　　ね

幸せにしてあげる
とか言わないで
不幸になろう
と手を引いてよ

スプーン　嘘　
　　コーヒーに落とすクリーム

いったいだれ
ゴキブリホイホイの箱に
幸せな家を描いたの

流れ星この村に皆生まれ死ぬ

「僕らは同じ星から来たんだよ」

夕陽から
まっすぐ愛された
河畔のススキ

可愛いイモリを掌に乗せる
可愛いイモリは変温動物

ちいさなちいさな作品の
著者校正依頼
直すとこなんか無いのに
何度も目を通す

海へゆくなら
私にリボンを結んでね
鴎になってしまっても
私だとわかるように

優しいね、って言われても
冷たいね、って言われても
違う
って泣きそうになる

一週間の歌よりあっけなく
一週間が終わる
テュリャテュリャ
テュ　リャ　リャ

ラッコに倣い
ほっぺたで指先を温める
歯医者の看板をくまなく読む
駅のホーム

会う理由が無くなったから
終わるんじゃない
理由が必要になったから
終わるの

恋。
ずいぶん深く降りて気づく
ああ
地上に
カナリアを忘れてきた、と

時々
あたしを思って欲しかっただけで
思い出になりたいわけじゃ
なかった

お礼には
お役に立てて光栄です
と応えるんだ
Ｓｉｒｉから
大人の返し方を学ぶ

掌をおでこの上で
（　にする
日差しが強くて
信号の色が分からない

青空と青年の青が目に染みて涙

今日は
くもりのち晴れでした
今のところ雨は
思い出の中にしか
降っていません

難しい判断　①
「どんな色？」
「変な色」
「いつまでに？」
「早めに」

暗号で書く日記
暗号を忘れ
異国の記号になった日記

「ごみ箱を空にする」
「初雪が降る」

ドラえもんの
四次元ポケットじゃなく
鈴が欲しいと笑う君
そんな君が欲しい僕

わたしの正義は燃えるごみ
あなたの正義は不燃ごみ
残ったからだは分別できず

まめめすすししままちこ
ちりりかかごごままちこ
こいいかかここままちこ

僕の独り言の八割は君への質問

耳をふさいで路上に捨てた
別れの後の壊れたメロディ

水のないプールにも浮かぶ悲しみ

白いブラウスがベランダで
無表情のまま夕日を見てる
私の恋のシルエット

電線で伸身トカチェフ七回ひねり

君の恋まで徒歩二分
もったいないから匍匐前進

雨上がりの深い森を泳ぐ紋白蝶

あなたの言葉が鳥居をくぐる時
わたしは絶滅した恐竜に出会う

あなたが告げるさよならを
ソフトクリームで流し込む
恋はそんなに甘くない

君が僕を好きな
物的証拠はないが
状況証拠ならある
消しゴム拾ってくれたとか

生きるって毎日が生放送なんだね

酒に強い君と弱い僕
酔っ払うのは君が先

ボクからオレになった息子
次は
私がママからオカンになる

詩を詠むと死刑になる
星に生まれた私の夕焼けは
ただの夕焼け

仮想通貨に仮想モンスター
すべてリアルで起きていること

何になりたいかじゃなくて
どんな自分になりたいか
それが大事

わたしの死体が歩いてる
昔なくしたサンダル履いてる

ギブアップ言えてたら
俺の肋骨は
今でも左右
同じ本数

なびくカーテンが二人を包む
教室の隅の奇跡の個室

無人のエレベーターに
人影が見えた
あれは確か
二年二組の時の僕だった

ひとりも死んでいない新聞を
読んでみたい

行き詰まる舌戦
君からの無言の接吻で
即、白旗上げた僕

目も鼻も口も耳もない
自画像を描いたら
誰だかわからなかった

今日は心を裏返しに着て
生きてみた。
たまには悲しみにも
風を、

高校に行ったら
青春がしたい
そう笑う娘いて
青春はするものと知る

伝説の詩のレシピが届いた
どうやら文字ではないようだ

初恋はさざんかの宿歌う人

口移しのサヨナラ
校舎の裏から冬になる

ブランコが春の季語と知ってから
秋は一層寂しく揺れる

美しい別れほど傷は深い

始発電車から見えた病院の明かり
看護師が廊下を走っていた

カギはポストに
入れときます。

おはようの代わりの
行きずりのサヨナラ

マッチ箱を開けると
秘密のトンネルがあった
どうやら
孤独への近道らしい

銀杏の葉が一枚
秋の空に手を振っている
ただ一枚だけが
終わりを知っている

順番に白い歯を押してたら
五回目でワニに噛まれた君

今日は三日月
月と私の
ソーシャルディスタンス
良い感じ

自然観察部の息子を持つと
玄関が川の匂いがする

離婚届を引き出しに隠して
指輪物語を生きはじめ
宇宙を取り戻す

クラゲへの憧れと
ママとパパがくれた愛
その折衝が
ミカちゃんにとっての水泳

バナナケーキと
ジンジャーエール
あとガスストーブ
付き合っちゃいなよ

ぱらぱら漫画の一コマに
突然現れ消えたような人

やたら明けない夜は
どうやら太陽が
トイレで酔いつぶれている
らしい

腹が減ったなぁ
数分後には
痩せなきゃなぁ

身勝手なお国柄だなぁ

ロボットが
宇宙で戦うときだけは

音が鳴ります
ビームも出ます

しりとりで
「キリン！」と私が
言った後
笑った君が
返す「ンジャメナ」

君と町の通りで会う
爽やかな表情で会話
別れて一本道を曲がり
ガッツポーズ

片足に体重乗せてそっけなく
きみを待つのも簡単じゃない

明日には見えないものが
今ここにあるかもしれない
月が笑った

前髪を切る音が好き
いっそこのまま
ぱっつんにしちゃえ

高橋さん、
そっちには北極しかないょ

珈琲をこぼした時に
君の言う
すごくきれいな川を見たんだ

世界は無意味に意味に満ちている

諸君私は休日が好きだ！
怠けるのが好きだ！

だが案外、
働くのも好きなんだな

犬猫に
ぬくもり求め
秋の夜
うるせえこれがホントに
幸せなんだ

ストローでブクブク
ぷちぷちでプチプチ

あ、プチプチは登録商標です

回転扉のように
一時的に人を閉じ込めて
みんなあなたから
すり抜けていく

肌寒し
Alexsa
温度二度上げて

切なさの正体
実は
あの子の香水の匂い

自分探しの旅に出るの？
世界に一人しか居ない君は
もう其処に居るのに？

猫を飼ってみたいなぁ
わたしに似て気まぐれな

宇宙の外側が気になって仕方がな
い
凍れる冬夜

引っ張り蛸な君に
ぼくは烏賊になって絡まりつく

記憶力はいいけど流行に疎いぼく
記憶力は悪いけど流行に敏感な君

相手の気持ちなんか
分かりっこない
でも
全力で想像するのは
できるでしょう

あなたから貰った
腕時計して
これ以上進むなと
語りかけてもらうために

想像の羽が
重すぎて飛べない
鳥たち

押しつけは嫌だ
と思ってたら
透明人間に　なっちゃった

昆虫と象の
足の太さが違う理由
知ってる？
だから大人はアリスになれない

辞書は循環論法で話し
言葉なんて
(部屋に空集合がいます)

誰にも伝わらない

インスタグラムを開くと
孤独を忘れることができる
同時に孤独の良さを忘れる

大好きな人に大好きだと告げる
こともなく夏は日が長い

呼んでみただけと言われて
呼び返す
世界が一枚の布みたい

ひらがなにひらく
あなたのそばにいて

Wi-Fiを振り切りながら春霞

たましいの
欠片を零してゆくように
白い息を吐き
駆けてゆく　鹿

枯れ葉の匂い
だけ追いかける
夕焼けに攫われてゆきそうな
自尊心

死ぬまでの道を訪ねているような
手帳に書き込む
「二時　君に会う」

立ち上がり
座る前に
紅葉の椅子取り

忘れてた
栞挟むこと眠ること
切符買うこと冬が来ること

母の指輪をつけている妹

寝たふりの人が唾をのむ音

冬の星を点けてまわってくる立冬

生活の隙間で揃えていく調味料

図書館の本を逆さまにして帰る

バスタブが狭い
なんにも悲しくない

すべて一つの海
無数の渚をもつ

いつだって
あたらしい世界の
入り口は
東北本線郡山駅なの

「さみしい」を
口封じする ままどおる

蟹ほじる仕草が
シンクロしていると
母とわたしを笑う会食

里芋の
煮っ転がしを作りつつ
母の味から離れた実感

おたまにボウルに
フライパンの音ばかり

今からでもドラマーになりたい

言葉には、質量があるのか
こんなに動かしづらいのは。

もうみんな
忘れてしまいました、と海

首都高とビルの間に挟まれて
破片が刺さる 三角の空

ホチキスの芯からまっている九月

静脈は手にあおあおと寒卵

流れ星この村に皆生まれ死ぬ

重力に永久に溺れて蝶も人も

部活帰りの少女らの
今日をしたためる
筆圧の濃さ

此の寒空を見上げながら、
私と私と私を
数として換算してみたよ。

何かを落とした気がして
振り向いた
アスファルトに白く
とまれ
の文字

振り向いた君の
襟足で切り揃えた
毛先が揺れた
思い出にもならぬ
密やかな記憶

流暢に言葉を紡ぐ
ということについて
ラップの端を探しながら
考えている

私の「ライナスの毛布」を
毎日こっそり切り取って
ハンカチサイズにした母

恋。
ずいぶん深く降りて気づく
ああ
地上に
カナリアを忘れてきた、と

かつて
児童公園の遊具の上で見た
夢中と無垢を
捕らえるための
ことばを探す

真夜中
遠くで列車の音がする

銀河鉄道には
まだ乗らないでおく

驚きと悲しみとともに
記憶してしまった言葉は
結局消えずに
掻くと赤く広がる

海へ行って
かもめのこわい顔を見る

何かの黄色いジャム
のままではいられずに
檸檬と名乗り
檸檬らしく振る舞う

風にあおられた
あの時
身を固くしなければ
赤い傘で
きっと遠くへ行けたのに

岸田劉生の麗子像を
左側から横目で見る

庭の死角で
私とは
まるで無関係に
咲いて散る山茶花

青空と青年の青が目に染みて涙

後頭部のはるか上を
ヘリの音が遠ざかる
つま先の泥を小枝で削った
校庭の隅で

心細い
と言えずに
煙突を指さして
煙が流れてゆくね
と言った

今日は
くもりのち晴れでした
今のところ雨は
思い出の中にしか
降っていません

コンクリートの壁に落ちた影が
扉のかたちをしている

前髪を上げて三十六度四分

透明になれたのにまだ夜が寒い

「ごみ箱を空にする」
「初雪が降る」

空き瓶に気持ちを詰め込めば寒い

日が昇り日が沈む


地球誕生からの奇跡のマンネリ

差出人不明の悲しみが届いた
階段の踊り場に初雪が舞う夜

僕なんかどうせ君の
好きな人ランキング
７８４９２位だよね

ネバーギブアップ

水のないプールにも浮かぶ悲しみ

ボンネットに月を乗せて海を走る

あなたの言葉が鳥居をくぐる時
わたしは絶滅した恐竜に出会う

君が僕を好きな
物的証拠はないが
状況証拠ならある
消しゴム拾ってくれたとか

地上に届くはずのない
光を浴びて
奥まで染まる
無花果のジャム

寝不足の空 静かにはしゃぐ月

君1：僕1.618…

この恋を美しくデザインする

完売した幸せ
ただ外反母趾をなでるだけ

８分前の僕と
５分後の君なら
きっと
相性が良い

放置自転車が一斉に空を飛ぶ

わたしの死体が歩いてる
昔なくしたサンダル履いてる

君が星々を落としていく
僕が下で拾い集める

文化祭の後片付け

今日は心を裏返しに着て
生きてみた。
たまには悲しみにも
風を、

伝説の詩のレシピが届いた
どうやら文字ではないようだ

神の留守鼻づまりにはルルが効く

ブランコが春の季語と知ってから
秋は一層寂しく揺れる

人人人人人人人人人人人人人人人


１５針 全治１０日

始発電車から見えた病院の明かり
看護師が廊下を走っていた

放し飼いにされた言葉が好きです

重くぼってりとした夜の帳
ケケケと嗤う透明な虫の声

この街を去った君の教室に冬

私のための
希望が広がっていく
美しい東の空
朝焼けを見た

今日は三日月
月と私の
ソーシャルディスタンス
良い感じ

自然観察部の息子を持つと
玄関が川の匂いがする

やりきれなさをまごころと呼べば
シュガースポット

地面と地面のあわいに
金平糖を食べるため
生きている

光の泳ぐ川底で
石になっても触れてやる

マヨネーズを逆さに戻したって
明日生きてないかもしらん

太古の祭から帰る道
子どもの振りしてようやく泣ける
墓地を覆った甘い風

弾む手足を鎮める朝日
だし巻き卵にかけたラップが
光を蓄える

今の僕は
マトリョーシカの
二番めくらい

もう先約済みの空と
売れ残りの腹痛
どちらも僕の古い友達

書斎に父がいないときでも
人がいるような音がする
呼び掛けても返事はない

写真立てに住む両親は
ぼくの知らないひと
ぼくを知らないひと

明日には見えないものが
今ここにあるかもしれない
月が笑った

張り詰めた糸を切りつつ
大声で「ただいま」と言う
消えないように

最後までエアマックスは脱がない

高橋さん、
そっちには北極しかないょ

先輩が日高屋のドアに挟まれて
ぼくらの星はまだまだ遠い

天国が地獄になるまでかき混ぜる

沈丁花ほどけてゆれる淵のいろ

珈琲をこぼした時に
君の言う
すごくきれいな川を見たんだ

人が好き　強い力でみかんを握る

しにたいつくえのかどがするどい

こんな夜は明朝体がやけに怖い

蚊を殺す手で蟻を逃がす

あの子の名前は忘れたけど
嫌いな食べ物は覚えてる

荒れ狂う風よ
さらに強く荒れ狂え
自転車カバーだけは残して

星空を見ていると
吸い込まれそうになり
それでもいいと思えてしまう

イオのくびすじ
白化した脊椎
あんまりきれいだった
砂浜で僕は
まだ夢だった

わざわざ同じ店で買った
ワイヤーハンガーの頭
なぜか揃わない

石って、ほんのり甘いんだ

空に森をみつけた夜に
両の手を器にして掲げる
満ちた水を呼ぶのだ

何処の誰でもない
たくさんの水の 
息継ぎになる

人差し指が私をささないように
沈めた場所を
誰にも知られてはいけない

忘れてた
栞挟むこと眠ること
切符買うこと冬が来ること

「ごみ箱を空にする」
「初雪が降る」

差出人不明の悲しみが届いた
階段の踊り場に初雪が舞う夜

沈黙の感触を背に
冬の待つ終着駅に向かう

雨だけが饒舌な夜

クラゲへの憧れと
ママとパパがくれた愛
その折衝が
ミカちゃんにとっての水泳

きみの眼は哀しく光る
ぼくの背に乗ってみないか
ステゴザウルス

高校生の夏、森田童子で泣いた

練炭とともだちごっこしてなさい

裁断機のある生活

セイタカアワダチソウ
穂先から枯れて
そこから冬が
始まってくる

悲しみは
何処まで続くの
寒空に
その身を晒し白鳥の来る

私が死んでたら
貴方は後を追ったかな
アイビー
両手伸ばすみたいに広がる

たましいの
欠片を零してゆくように
白い息を吐き
駆けてゆく　鹿

枯れ葉の匂い
だけ追いかける
夕焼けに攫われてゆきそうな
自尊心

母の指輪をつけている妹

寝たふりの人が唾をのむ音

肉に擦り込む香草でまみれる手

灯が漏れている
天井まで充ちていく

図書館の本を逆さまにして帰る

バスタブが狭い
なんにも悲しくない

日帰りで
サンドバッグを目にするだろう

冬銀河少女のイヤホンよりジャズ

かつての通勤ルートを
散歩してみる
木々はすっかり落葉している

いつだって
あたらしい世界の
入り口は
東北本線郡山駅なの

蟹ほじる仕草が
シンクロしていると
母とわたしを笑う会食

泣くことを我慢しながら
への字口
幼いわたしを
抱きしめてやりたい

寒いよと泣く弟の
手を引いて
通った学校
閉校になる

ベランダのない
二階の窓から雑巾で
拭きつつそこから
落ちたかったんだ

広瀬香美の声を聞きながら
ガソリンスタンドで
トラックの窓を拭いていた

検温の
サーモグラフィー
精密で
体の線まで
晒される恥辱

太陽を見つめた魚

ゆうわりと故郷へ帰る

おした
おした
おちた
おっしゃ。

雨も上がったし
目玉焼きでも作ろう
こんにちは、金木犀

静脈は手にあおあおと寒卵

重力に永久に溺れて蝶も人も

遠雷　　　排他的な笑い

小春日のアンサンブルの中にいる

独りだと
ちくわだらけになるおでん

だから、貴方は依存したい
鷹は猛禽の類いにつき
鋭く鳴いた。

公園の遊歩道で
ふとした瞬間に
木の実が落ちたら
青春みたいだよね。

原っぱで
くっつき虫の運び屋になる
赤いネルシャツ

ラッコに倣い
ほっぺたで指先を温める
歯医者の看板をくまなく読む
駅のホーム

独り北国へ越した友人の
初雪のＬＩＮＥで
目が覚めた
心が近くにある朝

車椅子に乗って
メープルの落ち葉を踏みに行こう
君のはしゃぐ顔が見たいんだ

車窓に
、　、
　、　　　、
　　　、、　、
　　　　　　　と雨

窓辺のひだまりで
光に透ける父の白髪
寝息にあわせて
かすかに揺れる

一円玉一枚に対し
一時間かけて作られた調書
七歳の善意への
お巡りさんの敬意

傷口を水で洗った
あたしの血
金魚みたい

河川敷で失くしたボール
みたいな
何でもない筈の喪失が
時々
胸の奥で白く光る

天真爛漫な新人くんの
大丈夫っす

今『手袋を買いに』の
子狐を待つ母狐の気分

コンクリートの壁に落ちた影が
扉のかたちをしている

うたたねの
猫がしっぽで
返事する

「ごみ箱を空にする」
「初雪が降る」

地上に届くはずのない
光を浴びて
奥まで染まる
無花果のジャム