最後まで水が入っている体

鏡になったあなたを投げつけられ

友達の友達　骨は嘘つかない

からころと噛んだ飴玉
目を閉じて
パイン風味の皆既月食

北風の通る道から染まってく

陰口を言って鬼灯つま弾く

沸騰の火を止め寒の雨となる

冬は青
合わせ鏡の
どこかに
私

保育園の頃描いた海に
そっくりな
ビル街で
溺れる

僕だけに来る夜がある十二月

古書店に秋光いちまいずつめくる

お前が逝って
わたしは
くしゃみみたいに
涙が出るよ

ブランコのコが公園を出て行った

クリスタルグラスが触れ合う
イメージで
コトバが朝につける傷あと

大海に打ちつける雨
かなしみは波紋ではなく
飛沫と知る日

ペダル漕ぐ音を静かに聴いている
ここはわたしの夜の外側

幻を見ているようにごろごろと
脳裏の海に沈む漂流物

ウルトラマンが
Ｍ７８星雲に
帰るころ
わたしはカップ麺を啜りはじめる

赤よりも黄のパプリカを選ぶ時
わたしは明日に期待している

銀色の雨だとはしゃぐ子らがいて
泣くための理由を忘れるわたし

右耳をラップに包み
しまってたことを忘れていた
野菜室

静けさに耳を傾けている夜
あなたが去ったあとのパン屑

片方の靴だけ売られている街の
見えないものにぼくはなりたい

遺伝子の青の部分を吐き出せば
閉じられてゆくいくつかの窓

ペンギンに投票権を譲ります

嘘をつく理由がひとつも
ないような
空き広告の看板の白

夕べみた夢の続きの猫がいて
激しく右にハンドルをきる

真昼間の月のひかりの優しさに
似た切実な薄荷の匂い

告白をしたあとの音のない空に
飛び立つヒッチコックの鳥たち

私たちにはそれぞれの役割が
あってわたしは猫を埋めてる

起き抜けの枕のへこみ秋惜しむ

もう送ることのできない
住所だけあつめて準備をはじめる
年賀状

また今日もあいつらがいる　

コッペパン
踏まれた分だけ空が高い

水槽を綺麗に磨こうとし過ぎて
水槽を割るような父でした

たましいと声に出すとき
この夜の背後に横たわる孤独

寂しさに慣れてきた頃
手に取ったペットボトルのへこみ
を戻す

脱ぎ捨てたサンダルが裏返り
その溝に染み入る犬の遠吠え

死ぬことも死ねないことも
こわいから
カンナで削るたましい一枚

ハナちゃんが投げた花瓶の
割れた破片が
美しすぎて静まる病室

定年の日に降る雨をしのぐのは
コンビニで買ったワンタッチ傘

俯いてホームの端に立つ僕に
電車がはこぶ風のはなびら

どんなに傷んでも
ジェルで覆い尽くす
つめはカワイイから意味がある

皿をつつつと歩く
プリンの脚を数える

迷うんだったら長岡京の中がいい

冷たい雨が
ぼつぼつと降る中
でいだらぼっちに尾行される

ポイントを細かく気にし
どうすれば
効率いいかで削るいのち

祖母がいない庭で
金木犀は咲く
夜の濃度を吸い上げながら

親権のはなしを終えた
叔母さんが畳にずっと
つけている頬

花びらを手渡しながら
十代のおわりは
切った檸檬の匂い

ティディベアを抱え直して
いもうとは雨降る
冬の街を見つめる

見送りに振る手を下ろし
客人の背中は闇に
つぷんと沈む

声変わりした君が呼ぶ
わたしの名
かすかにひかり出す

わたしの名

胸骨のおくに止まない雨がある

やさしい義父をさん付けで呼ぶ

渡された受話器は
ひどく冷えていて

わるい知らせは蓬のにおい

もう　ぼくを
覚えていない祖母だから
今日みた夢のはなしからする

すこしだけ丸まっている
母の背にふれて
パートのいちにちを聴く

空蝉は青い夜空の果てにある
祈りをそっと抱えるかたち

ふたしかな輪廻を泳ぎ
なんどでも
やさしい母の子にしてほしい

青い鳥から
じゅんばんに取り出して
胸のこまかな棘を食わせる

すり下ろす林檎のような
やさしさで
祖母はゆっくり狂っていった

臍のした辺りに
きみの詩があって
やがて溢れる海として抱く

ばいばい、と手を振り返し
塾に行く
友の背中の翼を見てる

算数をがんばる君のそばにいて

冬の陽射しがまるまっている

理科室の無音に座る
ひらがなの
カーブぐらいの愛がほしくて

押し寄せる闇を
やさしいものとして
抱きしめている自販機の白

秋澄んで
例えるならば石段を
二段飛ばしで駆けるあなただ

席替えを終えて
ぼくらはまた違う
ひかりの放ち方をしている

おとうとの
握りこぶしをひらかせて

夕日が荒れた夏野をすべる

体感としては
惑星みっつぶんぐらい

あなたに手が届かない

オルガンを踏む
秘め事をとりだして

希望とか捨て
ぼそぼそのイカリング

イヤフォンを外し
いちめんの菜の花

春の日の
まだ鋭くはなさそうな
朝のひかりに置く角砂糖

消し跡に
あの子の分かりたいという
気持ち見つけて赤ペンを置く

木星に行ったらクッキー焼きまし
ょう　果たせなかった約束が好き

小鳥の
魂の中で
森の魂が
息づいてゆく

グリーンピースを除いたら
五感が不満だと言うんだ

何のため生きているのか　卓上に
捨てれる容器ばかりを並べ

セブンティーンアイスの
グレープシャーベット
自死からいちばん遠いところに

ファミレスのテーブル席に
降り注ぐ流星群は眠い水色

順番に水やりをしたガーベラが
咲いてしまって停電の街

じいちゃんが火葬されてる建物の
二階で従兄弟と寿司ばかり食う

ハンカチで顔を覆って仮眠せよ
めくられるまではきみの惑星

風鈴の壊れてしまう音がした
言葉しかもたないぼくの胸で

柘榴食む正しい人がこわいこわい

りっぱな角を持つ鹿に見つかり
そうな夜だからこたつにもぐる

しぬときは
ライチみたいなひとだったって
言ってねって姉が言った

まっぴるまだけ生えてくる大天狗
のはねたいせつなひとはいません

日がおちる瞬間ソーダばらまいて
空あらうお仕事をください

シーツのしわは海のしわに似てる
とほんのり笑うきみの命日

てんせんのシャワー流れる
排水口にじゅうくじかんの
感情つまる

ルールは守るべきものと鳴く蝉が
白線のうちでじょうずに死ぬ

いっぱいのしろいてがみが届く
こと海のしたでは祈りといった

さんずいのつく名字がほしいから
じゃぶじゃぶ
お水を飲んでいるのよ

泣き顔がゆうだちだった恋人の
好物だったくりーむたいやき

テーブルを透かして光る紫の
ゼリー泣かずにティッシュで包む

何人も犯すことないから夜に
念入りに折り紙を尖らす

ランドセルの内に溢れた海のこと
思い出すたび胸のひらける

あんそくこうさんなとりうむ
息を引き取る音

日暮れ時
娘の瞳だけが鴉に
狙われている

どこでもドアが
目の前にあるのに
行き先のない深夜三時

小さめの鳥籠の中で死にたい

思い出の中のあなたは
目薬をさす時いつも口が空いてる

何もかも誰かの欠片のようで、夏

ビル街に空き地が一つ
悪ガキが指でほじった
障子みたいな

だんだんと空は重たくなっていて
支えるためのビルも増えていく

母さんの皿のカレーは
星形に抜かれた後の人参ばかり

必ずや迎えに行こう
消しゴムの角がみんな丸くなる頃

おはようもおはうよも同じ挨拶と
みなせる人の目の柔らかさ

洗い立て淡いブルーのセーターを
全部
ほどいて
毛糸に戻す

砂浜に指を一本差し込んで
気づけば地球の裏側にいる

待ち針のまるい頭に日がともる

この壁はずっと前から凹んでる
誰かの心の形のままで

もしうっかり落としても
気付かないくらい
一番小さな星をください

人間の倍の数ある目が全部
こちらを見ているような気がする

日が暮れるまでの少しの間だけ
父の背丈を越して歩いた

ベランダに吊るしっぱなしの
洗濯バサミのように
パチンと終わる

もし今日の午後に
ゴジラが来たとして
私は踏まれて死ぬのだろうね

ウインナーを床に落とし
世界滅亡を回避する朝

スーパーで男と歩くみかちゃんと
鉢合わせないようたまごを買った

近代はどこから現代？
綾ちゃんはどこまで綾ちゃん？
私も綾ちゃん？

緑茶の一杯目は薄く
二杯目は濃すぎて
母の背中に縋りたくなる

いつからか柿を分け合う家二軒

ピアノ雨の日君に
譜めくり頼まれて

お弁当に　
入れそびれた煮っ転がしを
温め直す　ように日が差す

ささくれを
目の高さにした時の世界
宇宙は案外こんなもんかも

夏の夕方の
田んぼの寂しさを
知る人ならば結婚しましょう

卒業と入社の間の
何者でもない私を
北へ向かう電車に
乗せて祖母に会う

初めてマスカラを塗った日は
ただの健康診断だった
大学一年生の春

駅の鳩
たるんだ首の
間から
時々ちかりと
みどりが光る

来世は道端のぺんぺん草か、
サービスエリアの五平餅がいい

酒を飲まなきゃ膝もすりむけない
ような大人になった

おつきさまから
つまさきまで夜

痛いの飛んでけと
泣いてる娘を抱きしめる
私の中には何もない

夕焼けに滲んでしまう公式は

木星に仕掛けたわなに
アルタイルがかかったという

決裂の
青さは
すごいわよ

駄目だって言ってるのに
詩になりたがるきりん

大好きなの
火曜日のほとり

鼻と右肩をフォトショで消せば海

初デートカタバミだよと
言えなくて一緒に探す幸福の形

ホチキスの針がなくなる瞬間の
空振りみたい君のバイバイ

水鳥の夜におばあは透きとおる

透明な水鳥が
おばあちゃんを
連れていってしまった

龍田姫のけたけた笑う山で
ばあちゃんを焼いた

ふたりぶん
洗濯物がある家で
ひとりぼっちになれる幸せ

脳みそを一本の長いひもにした

永遠を
えいえん
という四文字の
牢屋に入れて可愛がってる

最後まで水が入っている体

正月が嫌いだった
酔っ払いや尊大な親類と
走り回る母と我慢する私たち

友達と
スキップしながら駆けていく
修学旅行がうれしい小六

勤労感謝の日も出勤の
グループ会社カレンダー

傷跡になってしまったピアス穴

湯の鍋の底に
パスタをにゅんと折る

沸騰の火を止め寒の雨となる

冬は青
合わせ鏡の
どこかに
私

古書店に秋光いちまいずつめくる

季語の価値を下げたい

一定の高さに来れば一定の
速さで落ちて行く噴水の粒

コンビニの元もコンビニだった街

ウルトラマンが
Ｍ７８星雲に
帰るころ
わたしはカップ麺を啜りはじめる

赤よりも黄のパプリカを選ぶ時
わたしは明日に期待している

銀色の雨だとはしゃぐ子らがいて
泣くための理由を忘れるわたし

静けさに耳を傾けている夜
あなたが去ったあとのパン屑

悲しみの質感だけが手のひらを
くすぐるように匂わせている

準急の停まらない街
川沿いに綺麗な桜が咲く君の街

ペンギンに投票権を譲ります

嘘をつく理由がひとつも
ないような
空き広告の看板の白

ひび割れたフロントガラスに
降り注ぐ朝日は傷を讃えるように

ブランコを立ち漕ぎしたい
寂しさは揺らせば
消える
そんな気がして

真昼間の月のひかりの優しさに
似た切実な薄荷の匂い

海底に沈めた記憶が浮上して
クリオネみたいにただよう子宮

むなしいを虚しいと書く人よりも
空しいと書く人が好きです

起き抜けの枕のへこみ秋惜しむ

脚のない虹を見ながら温める
身重の君のためのカルピス

消し忘れられたスナックの
看板のネオンが輝くこんな真昼間

足繁く通ったカフェの
午後三時
ひとり遊びの指のスクラム

あの頃はただ
かっこいいと思っていた
みんなで描いた壁のゲルニカ

ハナちゃんが投げた花瓶の
割れた破片が
美しすぎて静まる病室

定年の日に降る雨をしのぐのは
コンビニで買ったワンタッチ傘

俯いてホームの端に立つ僕に
電車がはこぶ風のはなびら

小さな虫と思って踏み潰したら
ただの毛玉で
私は本当は何がしたかったのか

子供の頃はいつだって
家の絵を描いていた
誰の家かは分からないけど

夜の蔦屋は孤独の連隊
みんな一人でみんな愉しい

詰まるところ
強いのは
紙だ

獣臭のする翻訳家さんのおうちは
今は別の誰かが棲みついている

シルクロードの
青いケシを見ないと
死ねません

快晴に
わたしが覆いかぶさる

わたしは猫だし秋の空

祖母がいない庭で
金木犀は咲く
夜の濃度を吸い上げながら

やあ、冬の気配がするね

裏切りも
赦してしまいそうな夜だね

ティディベアを抱え直して
いもうとは雨降る
冬の街を見つめる

終電に眠るふたりを主役とし
まるい大きな月が出ている

渡された受話器は
ひどく冷えていて

わるい知らせは蓬のにおい

本柚子の香を
ほのぼのと立てながら
母がほおばるわたしの夜食

サバンナの王が眺める
朝焼けのようなたまごを
ごはんにのせる

もう　ぼくを
覚えていない祖母だから
今日みた夢のはなしからする

十代のおわりを少し
かんがえていたら
愛鳥だけがやさしい

雑踏に駆け出すぼくら

置き傘を少年兵のように掲げて

すこしだけ丸まっている
母の背にふれて
パートのいちにちを聴く

アルバムの上に
のすっと乗っかって
猫は未来の方を見ている

おはようを交わしてついた食卓に
並ぶわたしが掘ったじゃがいも

空蝉は青い夜空の果てにある
祈りをそっと抱えるかたち

夕焼けに満ちる教室

頬杖を崩して君は眠ってしまう

思い出を
ブーケのように抱えたら
前が見えなくなってしまった

すり下ろす林檎のような
やさしさで
祖母はゆっくり狂っていった

ばいばい、と手を振り返し
塾に行く
友の背中の翼を見てる

ローファーの潰れたかかと

花びらはいつも
螺旋をたどって落ちる

アルバムの幸せそうな君を焼く

わたしばかりが背伸びしていた

まちじゅうを
歩き煙草で行く人の
こむら返りを祈りつつ寝る

かあさんの夢は
いつでも綿菓子のようで
わたしをしあわせにする

耳の裏まで
こしょこしょと洗い上げ
いとこをちびな猿の子にする

嘘を抱くかたちで
きみの
のどぼとけ

おかえり、のトーンで
わかることもあり
今日はわたしがシチューをつくる

対岸の祖母は微笑む

できるだけ
荷物は軽くしてからおいで

かなしみを
洗い流せぬ雨もあり
紅茶が冷めるまで泣いている

秋天の高いところを
ひとくぐりさせた
あなたの絵画が並ぶ

イヤフォンを外し
いちめんの菜の花

春の日の
まだ鋭くはなさそうな
朝のひかりに置く角砂糖

今日の日に
付箋を一枚
貼りましょう
薄桃色で
そっとやさしく

水たまり
すまして映るあおぞらを
傘でこちょこちょ揺らしてみれば

逢うこともなくなって君が置いて
いった　いや、捨てていった傘に
短夜

銀杏から孵ったような風が吹く

暴風に身体を委ねている記憶
アップルジュースの果肉は沈む

ファミレスのテーブル席に
降り注ぐ流星群は眠い水色

順番に水やりをしたガーベラが
咲いてしまって停電の街

海沿いの詳細不明の工場が
寒空のもと稼働している

じいちゃんが火葬されてる建物の
二階で従兄弟と寿司ばかり食う

雨も止み車は水を散らかして
反射するものすべてが虚構

叶わないことばかり増え窓際の
くすんだぬいぐるみを捨てにゆく

気怠げに冬のホームで整理する
鞄に散らばる色鉛筆を

雨雲が近づいてくる
足元にやけに眩しくある鳥の影

フィジカルな孤独のために
四つ打ちのビートを刻んで
ふらついている

革命を知らせるような警笛が
鳴り響いてる夜ふかしの船

学生にやさしい値段帯の宿が
ひとつもない観光地の真冬

旧友は愚かピンク色の象か

柘榴食む正しい人がこわいこわい

日がおちる瞬間ソーダばらまいて
空あらうお仕事をください

種のある果物は好きになれない
人の頬にもひかりのぬるさ

ぱちぱちと薪は夜どおし軋みつつ
ささくれ痕を浮かび上がらす

乾杯にありとあらゆる声が揺れ
メメントモリの響きを溶かす

その子は
生まれてきたとき
モーツァルトの香りがした

何もかも誰かの欠片のようで、夏

ビロードを別珍と呼ぶ
その方が私に近いような気がして

エコバッグを忘れてしまって
帰り道卵を温めながら歩いた

美容師と誰かの後ろ頭とが話す
悩みやパーマの丸み

眠り姫なんて可愛いもんじゃない
すこぶる寝相の悪い僕らは

洗い立て淡いブルーのセーターを
全部
ほどいて
毛糸に戻す

人間の倍の数ある目が全部
こちらを見ているような気がする

日が暮れるまでの少しの間だけ
父の背丈を越して歩いた

えんがわをイカだと信じてた私
手を繋いでも怒らない君

死んだあと私の夜はどうなるの
あの日みた夢羊飼いの夢

鼻痛むほど澄めば末枯の原

仏語の発音に慣れて黄落期

星の胞子が地に舞い降りて
私の街がとてもきらきら
しております

風のなりたちと、
道行きの足音

凍滝や犬ふがふがと臭い息

営業車停めてある家　蔦の壁

光とりどり海月に遠い眩しさを

近道のゲームセンターにも聖樹

ヒヤシンスに鬱と名付けて
長く咲かす

やっぱりあったかいじゃん温室は
サボテンの花を嗅ぎあう僕ら

ピアノ雨の日君に
譜めくり頼まれて

喧嘩して布団きちんと君畳む

虫の闇ギターの内に木の素肌

スナフキンは
ギターと共にいるから
不思議とさみしくないのさ

小春日の
ぬるさを映す
みるくここあ

外出を
せぬ日は他人事のように
北風笛吹き
シチューがとろむ

イザナギと
イザナミの国造りの如く
湯船かき混ぜ　家族育む

初めてマスカラを塗った日は
ただの健康診断だった
大学一年生の春

犬が行く
秋の並木道を犬が行く
すべての晴れは
君のためにある

墓に囲まれ
きんのトランペット
照り映える

来世は道端のぺんぺん草か、
サービスエリアの五平餅がいい

ちょうどいい温もりになるまで
缶コーヒーを夜風に晒す

ひとりで食べても鍋は美味しい
今日も悲しくなりきれずにいる

「Power!Power!」と
啼くカラスが居り

おつきさまから
つまさきまで夜

部屋に独り　案外よく笑う

やらない理由を
探さなくても
膝にのる猫

ひとりぼっちと感じる朝
手を握る
私がいるじゃないか

親のかけた呪文にまだ囚われて
日々が過ぎゆく