墨を磨る　死の香りして冬霞

出口を探し歩いた
そして自転車の鍵みたいに
わたしをどっかにわすれてきた

旅人が白鳥の影を売る

ダンベル置けば手に鉄匂う雪催

月のないよるだから君が光る

斜陽転じてぼくだけのぺるせぽね

洗い終えた
犬のたましいごと撫でる

くろわっさん
わしゅわしゅ齧りきみ
と見た星のすべてをおもいだす朝

おうごんの
うぶげに
頬をまもらせて
土偶のようにいもうとねむる

取り込んだシーツの
海をたゆたって
ぎんがを知っているねこのひげ

台湾で買った緑油精は
懐かしい理容室の薫り
銀色懐炉と杖が助手席で待ってる

したり顔ってフレーズが
気になりすぎる
ハシビロコウを目の前にして

崩れやすい寒天みたいなこの朝を
光らせているのはなにか

台湾有事前の告白

青い空
ピンクの野花
墓標のように
吹き抜ける風に揺れて

吾亦紅夢の中なら笑う君

悴む手缶コーヒーであたためて
冬の星座はゆっくり回る

初しぐれ本屋もおもちゃ屋も跡地

夕べの聖鐘マフラーの巻きゆるむ

水車に陽回って回って秋蝶に

プールサイド
かいだことのある景色
まだあたたかいあまつぶ

参考にならない
だれかの
しあわせ

終電車ひとり昔へ戻る街
掃除の時間に聴いたシャンソン

棺桶の四隅を持ってくれるぐらい
友達がいればいいという悪友

上澄をすくってぶちまけるように
優等生をやめていいかな

町へ行く
町から遠い人たちは
町の人より早く目覚める

大通に粉雪宝石店に夜

病棟に消灯のある冬銀河

銀杏並木に光さすから学校は
世界のはじまりみたいな夕べ

冬夕焼コンビニのケーキを奢る

骨折の手術の話をしていたら
むねに浮かんでくるはんだこて

コート着る釦は多いほど素敵

就活で何がしたいか分からなくな
って水族館にいました

病棟の橙色の窓を見る
ぼくは明日の重さを知らない

彼女と手を繋ぐとき
それは祈りによく似ている

幽霊の肖像画を描いてたころ
冥王星は惑星だった

死んだ蝶の羽を蟻が引き摺って
秋風は鍵束を鳴らした

ミニチュアの太陽系を包み込む
レインコートを燃やした匂い

怪物になりそうだった夕暮れを
綺麗に畳むための前屈

賞状の鳳凰枠の金箔が
べたべた光り地中に潜る

冬構え画鋲落ちなくなるまで刺す

ふるさとは信号だけが生きていた

透明な母親を売る市がある

折り紙の金銀あつめ墓に入れ

夕暮れ達が騒ぎ始める頃
闇の中へ落ちていく
膝を抱えたまま
ただ今は眠りたい

グルテンを作る粉からのもちもち

消灯を。父が優しいから夢だ

ポタージュが満ちて
輪廻の果ての朝

天使からミトンの手袋を借りる

唇の間やわらかくまんじゆさげ

曇り空に閉じ込められて
先生は
それでもゴッホは幸福だと言う

天国の花　ずっと咲くから淋しい

しぐれ虹は
天使が落ちてしまったから

哀しさは
色も形もとりどりな果実みたいに
すこし酸っぱい

着膨れて
かにくりーむころっけになる

お湯浸かり
"all of us"響かせる
allのときの遠吠えの口

君の名を書いてみたくて
書いてみる
綺麗な光だけ差す部屋で

立冬の明日映りにゆく鏡

マヨネーズ逆さに置いて初時雨

揚げ浸し割れば赤子の色をして
無花果の旬はいそいで終わる

体温を知ったら負けよあっぷっぷ

凍星の落ちて鎮まる父の書庫

寂しかろ
浅く深く鳴く踏切の
老けたかんかん
ひぐらしは無く

この世界は何度きみを
くすぐるだろう
あたたかな陽が照らす日々

燃えるものばかりの部屋を冬の蝿

自画像という名の自傷行為すら
客観視というリボンで包んだ

たましいの
抜け道になる
蔦からまる   家

与えれば愛は返ってくるものと
している我のつつくちくわぶ

方向をふらっと変える人にぶつか
る　その夜魚をきれいに食べる

祇園精舎のたちつてと
　盛者必衰まみむめも

ほがらかな政敵たちのお弁当

宇宙塵を引き寄せていて君らしい

れるられるせるさせる
澄む
隅田川

蟹玉炒飯昨日見ていたはずの夢

妹のひとさしゆびが秋の影

賢治忌の星の明るさ電子辞書

ひとりっ子だから
庭じゅうとりのほね
抱きしめているようにさびしい

このビルを一瞬で消す。いいね？
　　　　　　　　　　　　　蛸。

冬空にりんごおんと貝殻
鳴らないや悲しくないから

料理終わって
帰る小人たち

ひねもす
あねもね
ひるねする

闇を来いポインセチアの前で待つ

軽トラの滑ってばかり春の泥

サボテンに水遣りしたいし
月に帰らない

棲みにくい水道都市の冬星座

電飾の海月は冬を越せるのね

蒟蒻を切る

淋しさの自由律

窓を
開けよう　ひとりの

十一月の雨が止んだ

冬の野の光で優しい父を編む

天窓を開ければ月の光たち
が隔絶されてバニラの香り

街頭占い。
年末ジャンボ。
マライアキャリー。
希望信者だった頃。

地の果てにチーズバーガー置きに
行く

冬が聞こえる

絵本見て
座敷童に変身し
待ちくたびれて眠る四歳

親ガチャも
トラウマも伏線回収で
報われてくれ、人生

高速はラブホをかすめ駆けてゆく
修学旅行の夜は賑やか

うつくしいものを殺して
食べた日の夜寒に
息は白くかがやく

山茶花を想ってドアに手をのばす

伯父さんの四駆から見た冬の虹

全ての光源が輪を描いて
暗闇の真ん中 私を覗いている

日がな一日
柱時計の振り子を
見ていられた頃に
戻りたいと思う
光り差す黎明

三日月のかたちでねむる
君を乗せ
新幹線は夜風のはやさ

べーぐると言うとき
やぎとおそろいの
くちびるを陽に差し出している

凍蝶のバレッタとめて定積分

いつもより
ちょっとおしゃべり
きみのとなり
こいぬみたいな
わたしのしっぽ

ドーナツの
円環崩す
大雨の
夜はわたしで
いたくはなくて

電話を握り
ふふ、と　しかくいチョコレート

水平線
銀の栓抜きちらちらと

現実を見ろ
そんな安直で無責任な正論が
我々を失明させた

薔薇風邪の患者のやけに多い日だ

みなさんで
分けてくださいの
みかん箱

碧い傘
を畳む朝
アスファルトに咲く
水たまりの雲

昨晩の夢に出てきた俺が
まれにみるザコだった件

太陽の当たった木から色付いて
常緑樹なんかもうやめたい

誰もいない場所ばかり
人工灯は照らしてた
硝子越し
夜景を見せる街

たとえば旧石器時代でも
あなたを好きになったと思う

都会での満員通勤四十年
北の大地に戻り二月

私が消えたら私の覚えている
母の声は
どこにいってしまうのだろう

人の手に渡った実家見に行けば
共に育った植木がまだある

自転車のカゴからはみ出し
散歩待つ太った犬は
メロンパンのように

長いねと君が撫でてる髪だけど
会えない夜より長くはないわ

ガザ地区の戦死者、
七割近くが女性と子供　国連発表

蔓の迷いを
見上げている
遊び疲れた
幼獣のまま

色硝子の反射
戻らない人の
席
宴はつづく

そらの水飲み場
ならんで
ふざけて
飛沫く光

私とはいくつあるものかしら
きっとすれ違う人の数だけ

ぷてらのどん
てんどん
かけぶとん

挨拶を交わしながらのピザカット

スキー板担いで渡る湯の花街

君は手元の先まで泳いだ
逆光に充実する背が見える
水音はここまで届かない

肋骨を皮膚の上からさわるたび
運命論者に近づいていく

幸せを擦りきるように食べている
君のフォークのケーキの薄い

すこし傾いだ
かぁちゃんの家の敷居を踏む
木のきしむ音　おかえりのかおり

対象さえない
不安感が占領している
甘い砂糖菓子を舐めながら
溶かす夜。

雪が降る
ふるさとより
寒い
雪が降らない
この街

現実を直視したくないから
絵はデフォルメで描く

言えないよ初恋は花蟷螂なんて

六畳　思い出の絵本
会いたい　お母さん

冬が来るほどに生まれる
マトリョシカ

ナップサック絞れば
霧ヶ峰のにおい

馬車にして？
だめですこれは煮物用

ユニクロの
チェックのシャツをはためかせ
素数が好きだという君　フフン

熱帯夜でも電話ボックスは透明

着ぶくれて心臓すこし遠くにある

友の名に死ぬまである雪羨ましく

毘沙門の
漁港の先のプロペラの
さらに向こうに風は見えない

しぐれて街は錫色　傘を忘れた

故郷は逃げていかないあの夏の
一番線の君を除いて

白鳥座が見えなくなると
白鳥はやってくる
言い訳をいつも考えている

墨を磨る　死の香りして冬霞

斜陽転じてぼくだけのぺるせぽね

くろわっさん
わしゅわしゅ齧りきみ
と見た星のすべてをおもいだす朝

おうごんの
うぶげに
頬をまもらせて
土偶のようにいもうとねむる

悴む手缶コーヒーであたためて
冬の星座はゆっくり回る

崖へ向かう道の途中であなたから
こぼれる螺鈿をなんども拾う

まだぬるいような切株冬苺

プールサイド
かいだことのある景色
まだあたたかいあまつぶ

膣口縫合の慣習を持たない俺達の
ひらがなにしては尖鋭な明朝体だ

休日の図書館を出る秋時雨

大通に粉雪宝石店に夜

病棟に消灯のある冬銀河

銀杏並木に光さすから学校は
世界のはじまりみたいな夕べ

骨折の手術の話をしていたら
むねに浮かんでくるはんだこて

就活で何がしたいか分からなくな
って水族館にいました

一点を春につかれた風船が
半年かけてしゅららとしぼむ

病棟の橙色の窓を見る
ぼくは明日の重さを知らない

彼女と手を繋ぐとき
それは祈りによく似ている

バタ足で澱を底に落としながら
市民プールの箱のなかにいて

ポタージュが満ちて
輪廻の果ての朝

唇の間やわらかくまんじゆさげ

天国の花　ずっと咲くから淋しい

しぐれ虹は
天使が落ちてしまったから

着膨れて
かにくりーむころっけになる

胸もとを月の光に曝したら
私が抱えはじめる音色

マヨネーズ逆さに置いて初時雨

体温を知ったら負けよあっぷっぷ

凍星の落ちて鎮まる父の書庫

波音の見える辺りの障子です

かあさんと二人で待ったきつね色

アンドロメダ贄として泣く星月夜

方向をふらっと変える人にぶつか
る　その夜魚をきれいに食べる

すりきれていくせっけんを
羽にする

祇園精舎のたちつてと
　盛者必衰まみむめも

賢治忌の星の明るさ電子辞書

空想をあなたの語彙にみるときの
四角い骨のようなまぶしさ

満員の電車に浮かぶヘッドフォン

ひねもす
あねもね
ひるねする

新聞がぱたんと入る冬の朝

凩がつむじを曲げているところ

冬が聞こえる

高速はラブホをかすめ駆けてゆく
修学旅行の夜は賑やか

伯父さんの四駆から見た冬の虹

にくまんで
暖とる　君は
冬の星

シーツには母のシワあり宵蛍

ドーナツの
円環崩す
大雨の
夜はわたしで
いたくはなくて

ロープウェイ星が震える空をゆく

夜明け前
キッチンに消える
冬の息

凍て返る朝信号待つ娼婦の手 

ぷてらのどん
てんどん
かけぶとん

花火消え夏のしっぽを見失う

浅瀬には
名も知らぬ魚と
母がいた。

あこがれの
辞めどきを知る
貝殻忌

六畳　思い出の絵本
会いたい　お母さん

足もとにかつて初雪だったきみ

東京の空はうすいみずいろで
もう会えない人うすむらさきで

湯船から食器を洗う音を聞く
明日も晴れだといいなと思う

蛍光灯が銀河を結び秋の夜

林檎齧る月の満ち欠けのように鬱

旅人が白鳥の影を売る

ダンベル置けば手に鉄匂う雪催

冬の辞書文字ども衤着だす

紫陽花が枯れる

母から冬になる

洗い終えた
犬のたましいごと撫でる

おうごんの
うぶげに
頬をまもらせて
土偶のようにいもうとねむる

取り込んだシーツの
海をたゆたって
ぎんがを知っているねこのひげ

人生とは
常に不意打ちで
力抜いて出たものというのは
すごい力があるんですよ

困ったらタロットめくれ神無月

悴む手缶コーヒーであたためて
冬の星座はゆっくり回る

初しぐれ本屋もおもちゃ屋も跡地

まだぬるいような切株冬苺

落葉浴び回想の川泳ぐ午後

傷口を広げにいくよ流れ星

参考にならない
だれかの
しあわせ

ぽるぽるとつぶやけば
どうでもよくなって

「歴史　塩」
と言ったら平八郎なのに
ＡＩは塩の話ばっかり

膣口縫合の慣習を持たない俺達の
ひらがなにしては尖鋭な明朝体だ

ありがとう
その正体が句点なら
君との別れ、近づいていく

大通に粉雪宝石店に夜

冬夕焼コンビニのケーキを奢る

食べていいフルーツなのか
分からずにティーだけ啜る
都市とは覚悟

火曜日は恐ろしいほど火曜日で
水木曜日はなんか金曜日

左手が僕を見ているぴったりと
満員電車の窓は割れずに

心臓で光られたとて気付けない

病棟の橙色の窓を見る
ぼくは明日の重さを知らない

うすずみの東京
極彩色のむら
箱を開けたら浦島太郎

幽霊の肖像画を描いてたころ
冥王星は惑星だった

歯ブラシを岸に残して
死に顔と寝顔を隔てる川を泳ぐ

冬構え画鋲落ちなくなるまで刺す

ふるさとは信号だけが生きていた

どんどんと
内側から叩かれて
ほんとの気持ち
ようやく気づく

ふわふわが好きだからって
今の関係がいいわけじゃない

透明な母親を売る市がある

折り紙の金銀あつめ墓に入れ

マスクする鼻息の白恥ずかしく

偏愛は、わかっているよ
玉虫のからだの
はるかな不思議のように

しぐれ虹は
天使が落ちてしまったから

哀しさは
色も形もとりどりな果実みたいに
すこし酸っぱい

具の沈むおでん
テレビは二画面に

立冬の明日映りにゆく鏡

磁針すぐ保健室さす神無月

寂しかろ
浅く深く鳴く踏切の
老けたかんかん
ひぐらしは無く

燃えるものばかりの部屋を冬の蝿

与えれば愛は返ってくるものと
している我のつつくちくわぶ

ただ待つ
傲慢な漁を
仮に恋と呼ぶ。

博学に
ひざまづくと
ぼくらはいつも古本になる

赤あげて
白あげている間に
愛しあえないぼくらは
人間がへたすぎる

ほがらかな政敵たちのお弁当

妹のひとさしゆびが秋の影

蛍つかみたくて君かもしんないし

白鳥を水の旗って呼びたくて

絶対と言わないことを生業として
わたくしは愛想が良い

蒟蒻を切る

淋しさの自由律

冬の野の光で優しい父を編む

あきらめてしまえばきっと
旅になる

心太
ほんのりさわやか
希死念慮

べーぐると言うとき
やぎとおそろいの
くちびるを陽に差し出している

言いかけた言葉の行方
はなびらの落ちる様子に
まつわる記憶

夕暮れに
四季のすべてを乗り過ごし
海へと垂れる赤栞紐

予防線　張るだけ張って
崩れ落ち去る城
ここに春は来なくて

昨晩の夢に出てきた俺が
まれにみるザコだった件

太陽系以外は、
実は無いんじゃないかという
ロマネスク

かなしい、と口に出しては
閉じていく扉を前に
立ち尽くしてる

私が消えたら私の覚えている
母の声は
どこにいってしまうのだろう

地に伏して蚯蚓の如く慟哭す

抱きついて止めればいいのか
躁の友

はじめまして
悲話を焚く
けむりのような
雪の日に

肩透かしくらって伸びる運命線

真空で風船売りは役立たず

浅瀬には
名も知らぬ魚と
母がいた。

あこがれの
辞めどきを知る
貝殻忌

ドーナツの輪を切る歯形
「すき」と言うときの
口の形の記録

謙虚に生きろと、悪魔が囁く

馬車にして？
だめですこれは煮物用

飛びこえていく
私の中の
砂時計を
あなたは

着ぶくれて心臓すこし遠くにある