これはただの手、
夜になるまでは

鏡を見る僕を　覗き込む僕

みんな壁薄いと思ってんのかな
アパートという楽しい楽器

劇中劇
君を演じてみる夜

アンインストール
歯ぎしりと手汗

バーベキュー
人間の形のハイエナが
いることを知った
ホッケを返してー

年金の支給日
懐ぽかぽかの
おじさんばかりの
屋台に雪降る

あっ
　　　あっ
　　　　あーーー
　　　　　　　　グシャッ
　　　　…

いつどこで
なにしているかが
わからない
そんな息子を
動く点Ｐと呼ぶ

疲れてもいいんだって
知らなかった

スパークリングはロゼ

魔法瓶の魔法がとける時間頃
お茶しませんか 猫舌の君

海ですら銀河規模なら金魚鉢

大掃除
まだ捨てられないダンボール
「夢」と書いて封をしておく

外の空気をこたつに持ち込んで
みかんからのおかえりと
靴下のただいま

重力と机が桃に尻与え

正義の出会い
それは戦争
悪の出会い
それは共謀

上手く描けないたびに
あなたの顔が捨てられてく
くしゃくしゃにゴミ箱に

彼氏ができたことも
旅行も秘密
やたらと「密」を気にする
ひそやかな一年

星っていつも囁き合ってて意地悪

霊感？　無いよ

視えてても気づいてないだけでは

……それは自信ない

灰色の叔父さんが
いつも猫背なのは
ふくらみ過ぎた
ポケットのせいと思ってた

犬の鼻先が私の眼を
小鳥や虫たちの世界へ
誘ってくれていたのだと
今更気づく

バラのマークの牛乳屋さんの
雪ちゃんは
無論、
黒髪の色白な女の子なのでした

自分が納得できたことだけを
「本当」だと信じる。
「本当」にそれで大丈夫？

縁側の猫と眠い幼女の無表情

家出しようと思ったけど
寒いから今日はやめる

嘘の下手な嘘つき男が
正直者になってしまって
何を考えているのか分からない

稲妻が樹を引き裂き
たちまち森中が燃え上がる
号泣ってそういうものでしょう

八十九歳が
九割冗談で
「車買いかえるべ」
周囲は十割真顔で
「免許返納しろ」

パーはパイナップル
チョキはチョコレ－ト
グーはグリコのおまけ？

ありがち①
顔認証で
すぐに変顔をしてしまい
認証に時間がかかる

古い教科書を
ぱらぱらめくる
どの教科書も
パラパラ漫画が
描いてある

教科書の偉人たちは
みな
サングラスをかけた
ちょい悪になっている

小さな声の悪口は
針でちくちく
刺すような
ズキンズキンと
痛むもの

あいまいな言葉ばっかり
おでん煮る

イントロだけで泣ける曲が
私には五曲あります

正解です。
失恋した数です。

窮屈な愛を突然の夕立が連れ去る

少年の頃
遊び半分で遠くに投げた
蛙が見た空は
大人になった僕の
憂鬱のブルー

退屈な林檎がつく嘘は
静かに降る雨の
夜更けの声にさえ
かき消される

命に別状のない恋ばかりしてきた

冬に口笛が似合うのは
四季の中で冬だけが
母音ウだけの
唇のかたち

ブランコを
漕ぐ時のように空を蹴り
あなたに飛んで
行ければよかった

傷口からマンモスが見た夢

ありのままの蟻のままで生きる
蟻のままでありのままに生きる

この世界に純粋なものが
あるとしたら それは
教科書に書いた 落書き

翼が無くても飛べること
僕らがそれに気づいたら
風がココロを運んでくれる

無音のピアノ叩く音
初冬の空に飛び跳ねる猫

ラララで歌う歌手がいて
私もラララで詩を書くよ
ラララララララララララら

死んだフリいつまで
してればいいのかな
世界の闇に薄目を開ける

ひとりでさみしいより
ふたりでもさみしい
ほうがもっとさみしい

凍らせた秋刀魚であなたの
心臓を刺したあとの
秋刀魚の味は少し塩辛い

殺人現場にある白い人型に
すっぽりハマった私の孤独

無実の罪で
今も心の中に
収監されてる
わたしの初恋は
無期懲役の刑

靴を履き
ドアノブ手にし見る結露
私を待ち構えてるキツネ

サンタさんの
クッキー食べ残し跡の
是非について
夫と議論し更ける夜

君から借りた小説
最後のページに
足された一行

あなたはまだ私の愛を知らない

英世さん
五人寄れば
一葉さん
十人寄れば
諭吉さん

寝言で呪文を唱えるあなた
金縛りで動けなくなった私

ロマンスの神様
いるなら教えてよ
恋降る町の
Z I Pコードを

ハナ！  と呼ぶ
君と仔犬が振り返る

いないいない
いるいるいるいるいるいるばあ

さっきから隣に寝る人誰だろう

自動ドアに気づかれない私は
ひょっとしてもう死んでる？

アドリブで私の心に
全身麻酔かけてみた
あとはあなたのオペ次第

この嘘が嘘になるまで二年半

太陽に向かって走るか
山に向かって歩くか
太陽は動く　山は動かない

おでんには和からしを
人生にはスパイスを
私には夫を

みかんゼリーだけが癒せる、
平気で
孤独と傷を
取り違える人には
ならないで

光る、という言葉には
それまで光っていなかった、
という意味もある

潮の匂いをめくって
わたしを通りぬける鉄の味が
わたしたちの正体でしょう

こんな話で分かり合えちゃ
うれしくって嫌になるよ

君にだけ見えた光
その残像が暖かさとして
残っている

「近道を教えてあげるよ」

「ここに立ち止まっておくのさ」

逆子だったミカちゃん
正体はカミさま

逆立ちする犬
群がる信者たち
DOG GOD

亀よりわたしの政治を見てよ

はるちゃん、ラーメン伸びてるよ
世界はきみの奴隷じゃないよ

郵便太郎が遠くに行って死んだ

人類が滅びたあとのスーパーで
蛍の光が流れている

消しゴムを擦る音から苛立ちが聞
こえる

ピーマンは寂しい野菜
空っぽが詰まっている

夕日がさみしい
沈む夕日と同じ速度で
人は終わっていくから

秒針に羊の心臓は刺せない

父多忙
母はお化粧
ぼく妄想

君はぼくだけのものと言われても
わたしは死ぬまで
わたしだけのもの

看取るために帰省するなんて

左利きの人に
不自由な時はありますかと尋ねた
改札を通る時だと教えてくれた

左利きの人に
改札通る時不自由ではと尋ねた
右手首の
多機能時計を光らせた

法律イコール正義ではない
と知った十七歳

「無理だけはしないで」
短く笑って
「その言葉ブーメラン」
と答える友人

「限定」に弱い友人
クスクスと隣で見てた
十七の年

魅力あるものには
毒が潜んでる

スピードを
も少し下げて時間さん
加速度がなぜ
そんなに増すの

値引き品
探すだけのクリスマス

銃口を母親へ向け引き金をひいた

初対面
笑顔で気さくに話すのに
知り合いになると
止まらぬ脇汗

黄色い手
母に怒られる冬は果物が高い
みかんの食べ過ぎ

じいさんはリモートワーク
ばあさんはUber Eatsの
配達に行く

ていねいにむいた
蜜柑の皮
けんかがほぐれる

これはただの手、
夜になるまでは

不器用で悪かったわね、
そう言って
地軸は23.4°傾く

非正規の非は羽のよう
コピー機が吐き出す
書類の束が羽音で

リース編む
円環の外に出られない
君にも君の絶望がある

鏡を見る僕を　覗き込む僕

みんな壁薄いと思ってんのかな
アパートという楽しい楽器

ちょうどよい雑音がほしくて
耳たぶをこねて
夕日で焼くの

手洗いで皺を伸ばして陰に干し
広げてください平たいからだ

十円が一枚足りない時にだけ
まぶたに浮かぶ南の島よ

かつては海だった人
まだ少し揺れている

寝てるときに吸った空気で
生きてる

劇中劇
君を演じてみる夜

雪に雪が降って
すべて雪と呼ばれる

父憎む同時に自分の腕を噛む

沸いた鍋をみつめて
年末の余白

焼き畑をじっと見る
そこになかった火

「風待ち」と言って体を開く君

柚子シロップ
氷砂糖が溶けていく
わたしの故郷は
雪が降っている

いつどこで
なにしているかが
わからない
そんな息子を
動く点Ｐと呼ぶ

眠れないのなら
おにぎりを握ろう
溶けてゆく塩のおと

「なにかあったら」
暮れに母からもらう真珠

菜箸と薄いスポンジ突っ込んで
茶渋と格闘する冬 ひとり

冬薔薇 切られたあとの赤い茎

寝る前のお茶をきちんと淹れる時
魔法使いと話をしてる。

魔法瓶の魔法がとける時間頃
お茶しませんか 猫舌の君

ひとりきり

冬の空気を吸い込んで
肺の形を自覚させよう

海ですら銀河規模なら金魚鉢

外の空気をこたつに持ち込んで
みかんからのおかえりと
靴下のただいま

マスクして耳あることを思い出す

たんぽぽが無邪気に
摘まれるように死はきっと

彼女の手編みマフラー付けてる父

もう一度生まれてきてよ冬銀河

寒の雨素直な彼を許さない

海に溶けて世界に還り
私はわたしに戻ってゆく

上手く描けないたびに
あなたの顔が捨てられてく
くしゃくしゃにゴミ箱に

息が白いことに気付く
何度もぽわりと吐き出す
すきとおる夜だ

しんしんと夜に耳だけ熱くなる

来年の手帳を買って　また、
1ミリメートル今年が短くなる

たがいのこと
よく知らなかったから
私達は
あの時
楽しくなければならなかった

犬と私を包み込む
繭みたいな日々
黄昏ゆく空を見ないようにして
砂に絵を描く

星っていつも囁き合ってて意地悪

冷えた夜空
出たり隠れたりする月
にわかに明日という日を
途方もない
と思う

初夏
眼に入ったレモンの飛沫が
今頃になってあたしを
にぎやかな気分にする

蝶々が飛んでない
可愛さが足りない

ペインティングナイフに
波打際の青を取り
ざはりざはりと
君の胸に塗りこめる

教室の
古びた木製オルガンで
和音
牛とロバと山羊が一斉に鳴いた

私の手の中で
光りかけた丸いもの
あの未完成の泥団子はもう
崩れて跡形もない

道しるべはパン屑にして
いずれ小鳥が食べて
私達を
森に閉じ込めてくれるから

土鍋で飯を炊く
吹き零れる瞬間を待ち
白から透明になりゆく
米とわたし

窓硝子
真冬の白い朝顔が
呼吸ごとに咲く

犬がフガ、となってから
クシャミが弾けるまでの
数秒間の陽だまり

茶色い衣を剥いで
色紙の極彩色を纏わせた後
あの蓑虫を
どうしたのだったろう

霜の降りた土を踏み
生きていたら二十歳、と
犬の年齢を数える朝

珈琲の湯気が
あんまり上手に
朝の光を纏うから
君のこと
忘れてしまいました

転がる毛糸玉
いつも
ほんの一瞬
永遠に追いつけないかもしれない
と過る

アーカイブ
ポケットの暗闇で
保管されていた記憶

線をなす極小の詩　蟻の行列

私の耳に
シラップのように
秘密が流し込まれる間
従姉の鎖骨の窪みを見ていた

本日
海馬から取り出しましたのは
金魚の埋葬
瞼に透ける春光の白と
吹奏楽の音

稲妻が樹を引き裂き
たちまち森中が燃え上がる
号泣ってそういうものでしょう

ねえ、
ニット帽を脱いだら
わたし
白菜みたいになってしまうの
それでも好き？

今年最後に宝箱に入れたのは
白い貝釦でした
無論
君には関りのないことだけど

白鳥が書くことをまだ止めるなと

君と犬だけがすべてであとは雪

君に訊けなかったことを鴨に訊く

離した手私から去るセーターの青

久々に５Ｂの鉛筆使ったら
芯から冬の匂いがしてきた

時計をはずしたあとの手首を触る

十五には十五の夜が来て
四十五には四十五の朝が来る

赤い三角屋根のアパートに
雪が積もってる
あなたはそこに住んでいる

二階に上がってきたけど
一体何のためだったっけ
西日射す六畳間にひとり

この橋を渡る時だけ眼鏡を外す

靴を履き
ドアノブ手にし見る結露
私を待ち構えてるキツネ

絡まった光をほぐしながら
風が近づいてくる
廃墟には出口はあるが
入口はない

さっきまで君がいたような淡い雪

結び目を真っ赤に染めて
泣くのを我慢するリボン

冬という殺意を抱き家出する

肋骨に挟まる冬が泣いている

失恋の傷から立ち直るため
徹夜で完成させた心の模型

そっと本を閉じると誰もいない冬

この嘘が嘘になるまで二年半

棺桶はどこでもドアの待合室

かみさま と呟いてみる
世界は何も変わらないのに

光る、という言葉には
それまで光っていなかった、
という意味もある

潮の匂いをめくって
わたしを通りぬける鉄の味が
わたしたちの正体でしょう

あなたの吐息越し
移動遊園地から見上げた
六等星の光に生まれ変わる

伝えたい言葉に似合う
息の出し方を一本選ぶ
結び目だらけの見えない糸

屈むのは
飛び跳ねるためじゃなくて
ちゃんと一人で泣くため

理解されないこともまた
私であるということ

こちらは雪です
あなたとの距離を知る

中洲の青鷺です
のばしたら凍って
北風に
折られてしまうから
首すくめています

異国語の
少しも分からぬその響き
広い世界の窓となる

戸を開けて三千回目の夜が来て
冷えますね、と呟いてみた

洗濯槽の底で百円玉を拾った
五マスすすむ

はるちゃん、ラーメン伸びてるよ
世界はきみの奴隷じゃないよ

まだ大丈夫な人の自画像かな

電気を消して
また終わりたいから

びしょ濡れの短歌の僕が先に行く

人類が滅びたあとのスーパーで
蛍の光が流れている

ピーマンは寂しい野菜
空っぽが詰まっている

夜が冷たくなったので
ハリネズミを飼いたい

病院で作ったナマコ色の小皿
焼き終えた竈の中に
小さな地球が生まれてた

頼らずには
生きていけないものと出会う
世界が狭く
狭くなる

自分の中に隠れてしまえば
鬼にも　自分自身にも
みつかることは　ない

眠りの頭と尻尾の　
向きを
整えること
おはよう

時刻は9:34だった
あのとき一瞬にして　　が消
滅　た
わた　はただ立
　然

黒い空
流星群を待ちわびて
流れた気がする現象起きる

ラジオさえ
うるさく感じる帰り道
ナンバーの語呂に慰められる

キライだと
思い続けた父親の
好きだった歌
口ずさむ夜

きぬさやの
筋取りながら思い出す
床板きしむ
水屋の光景

ふと触れて驚く
小さな蕾の重み
しぼんで落ちた大輪の軽さ

海は灰色
 
写真は色褪せていて
若くて他人のような母

あれは魚に似ているね
淡水でしか、きっと
生きていけはしないような　

隣人は人魚だろうか
午前二時壁の向こうで波音がする

深海で眠りにつきたい
息もできないほど、
優しさに押しつぶされて

サービスエリアは
竜宮城のようで
深夜、
ざぶりざぶりと
日常が遠ざかっていく

冬の夜
一人で台所に立って
聞いていた生活音が
耳の奥に残っている

重ねる時間の美しさと
止まった時間の美しさ
どちらが欲しいかと
天使が問う

天高くト長調の銀杏並木

別に誰もみていないけど
休載をしますと書いた
九月のブログ

みんな壁薄いと思ってんのかな
アパートという楽しい楽器

卒業をした瞬間に
おじいちゃんになりたい
落ち葉しゃらしゃらと踏む

猫に間合いをはかられているとき
ずっと視界の隅にある月の暈

たがいのこと
よく知らなかったから
私達は
あの時
楽しくなければならなかった

まだ大丈夫な人の自画像かな

ゆっくりと歩いて
選んだ貝殻を
花壇に置く母
眺めてる父

受話器の向こうを
ウミガメが泳ぐおよぐ

漁火のようにあなたの胸元で
灯って
すぐに消えるライター

可哀想な子なんです
母を亡くしてから、
ずっと
霜に枯れてゆく菊

非正規の非は羽のよう
コピー機が吐き出す
書類の束が羽音で

卒業をした瞬間に
おじいちゃんになりたい
落ち葉しゃらしゃらと踏む

猫に間合いをはかられているとき
ずっと視界の隅にある月の暈

ポインセチアを抱えて帰る

あの風を追おう
家の鍵はもった？
夜に帰ってこようね
そうだね

右投げ左打ちでも幸せです

磨りガラス越しに冬
灯油売りの声

「納税」と呟く
真夜中の国民です

寝てるときに吸った空気で
生きてる

雪に雪が降って
すべて雪と呼ばれる

ぬいぐるみを枕にする
うつ伏せで寝る

花畑駅で毎朝下りる人

柚子シロップ
氷砂糖が溶けていく
わたしの故郷は
雪が降っている

電気ケトル
コトトトカタタタする音が
冷えた寝室の
耳温める

福太郎
故郷の名を持つ
その犬は
一面真っ白な
雪を知らない

姑が
送ってくれた白菜を
包む新聞
地方紙に替わった

病床が足りないのか
医療従事者が足りないのか
もはやなんだか
色々足りない

次の満月がきたら
にんげんを脱ぐね

眠れないのなら
おにぎりを握ろう
溶けてゆく塩のおと

「なにかあったら」
暮れに母からもらう真珠

寝る前のお茶をきちんと淹れる時
魔法使いと話をしてる。

ミルク入れ
アブラカタブラ唱えつつ
シナモンスティックひと回しする

迫る冬
高く落ち葉を蹴り上げろ

並木道
落ち葉の乾く甘い香は

亡き祖母の居た部屋に似ていて

外の空気をこたつに持ち込んで
みかんからのおかえりと
靴下のただいま

予備校のはめ殺し窓も冬に入る

春光に瞳孔閉じてゆく痛み

彼女の手編みマフラー付けてる父

寒の雨
　　ばりばりと噛むチョコレート

まだ吹雪く研究室に君と居る

こんな夜は
けけけという笑い声が似合う

上手く描けないたびに
あなたの顔が捨てられてく
くしゃくしゃにゴミ箱に

あの風貌で家事してるとこ
想像すると笑えてくる

しんしんと夜に耳だけ熱くなる

犬と私を包み込む
繭みたいな日々
黄昏ゆく空を見ないようにして
砂に絵を描く

落葉前に枝はらわれる落葉樹

蜂蜜で暗く濁る紅茶
甘くしたかっただけなのに

山羊の眼と珈琲豆は
やけに陽気で哀しいし
空なんか
馬鹿みたいに高いだけ

灰色の叔父さんが
いつも猫背なのは
ふくらみ過ぎた
ポケットのせいと思ってた

茶色い衣を剥いで
色紙の極彩色を纏わせた後
あの蓑虫を
どうしたのだったろう

びょうびょうと
風が窓を叩きます
自転車をこぐ君の耳は
赤くて痛いでしょうね

本日
海馬から取り出しましたのは
金魚の埋葬
瞼に透ける春光の白と
吹奏楽の音

理由を後付けした途端
自分の本心を見失う

あの町の昔の姿も
もう思い出せない

教科書の偉人たちは
みな
サングラスをかけた
ちょい悪になっている

君と犬だけがすべてであとは雪

あいまいな言葉ばっかり
おでん煮る

君に訊けなかったことを鴨に訊く

蟻をコーラで溶かそうとした僕の
影が無邪気に溶けて赤味を帯びた