我が家に
どんぐり奉る者あり

蜜柑僕の部屋に不幸などいない

精神科のしろばらすこしきいろ

オリオン刷り終えプリンター停止

靴のまま遠泳のこと話す

鏡張りの部屋
戸を押せば万緑

カーテンは帆だ月光に膨らんで

初雪
(初恋の温もりほどの
モルモット)

海に来て秋思の君がうんと言う

アボカドを種に沿い切る雪時雨

自分の顔だけ思い出せない
今夜は満月だねと
人混みの中から声がした
団栗拾う

走馬灯になりそうな
モンブランを食う

母さんが売れたひまわりが枯れた

割り箸を割ればジュラ紀の頃の空

父さんは売れない寒椿が咲く

通過待ちばかりの駅で
この夜の
何かが僕を追い越していく

何らかの寓話が込められている
絵の
ガラスの花瓶に映り込む猫

母ひとり子ひとり地球儀を回す
介護ベッドのように添い寝する

米を研ぐ母の背骨は青ざめて
雨が雪へと変わるふるさと

夕焼けのあとの自販機
人間も
もっと泣いたらいいのだろうか

吹きつける風
真っ黒な空

母をひとり残して働きに出る

女でも男でもない桃を剥く

七分の二を少数にする時の
割り切れなさに気づく火曜日

留守にした心

チューリップの球根

掌底で蚊をやっつける

村山富市はいま九十八歳

上を向く蘇る父と母の足

〝これからは一人で生きて〟
の付箋ごと冷やされている
君のパエリア

人間は余白がすきだ
オレンジを剥くとき
指を嗅ぐようなこと

何日も微熱に甘やかされている
部屋がちらばることをしている

平日にひとり泳いでいて
区営プールのぬるい水を誤飲する

クリスマスなのに僕も姉も実家で
ローストビーフのタレかけすぎる

隣人はおかずを作りすぎることの
なくまた僕もなく日の暮れて

体温を測らなければ
入れない教室で
恋できるわけない

風呂上がりに踊るなどして
人生を楽しくする沢山の試み

窓ガラスのうつろな瞳の僕たちを
都市の夜景が希釈する、零時

誰のものであっても葦のような影

飛び込めど
僕は飛沫の方じゃない
やがて鳴らなくなる黒電話

母が出ていった日
空気を入れ替える
変わりないよと笑えるように

赤ちゃんも西瓜も冷やす金盥

青空やアブラカダブラ
タブラ・ラサ

何もできなくなった時だから
解けた靴紐を結び直せる

少年のひざのうらには傷がなく
冬の朝の思い出すちから

空腹で寒いので本を見に来た
足の裏がすこしあたたまる

閉じたドア映る俺はニット帽を
思ったより、目深に被っていた。

めんつゆのような祈りを捧げます
汎用性はすごく高いです

友だちが子どもを産んだ。

ウミガメにも
鎖骨があるって思い出した

日常に歌を
例えば、買い忘れた
小葱のことを思い出すように

頑固で仕方ないと
母の声

化粧水が馴染むまで待つ

肉片が肉にめり込む必然を
優しい言葉にして編む

進化

春を待つ濃縮還元一〇〇％

イタリアンドレッシングの冬日和

リュック抱く通勤電車年の内

メルカトル図法のロシア去年今年

倫敦橋落ちる気配か雪催

冬銀河山窩の裔の夜の旅

冬銀河おおかみのゆめひとのゆめ

変声期冬至の夜の英語塾

Ｑ．冬林檎
　　ここから恋にしてみせよ

パーマをあててみたの
失敗したなあと思ったの
こんがらがってみたかったの

切ろうと決めて下ろした髪が
急に可愛く見えたから
もう少しこのまま

わたしいつまでもここにいたい
誰かの猫になれるまで
私の猫を飼えるまで

耳朶が冬の空へと逃げたがる

大雪の居酒屋石の忘れもの

木の葉は
空の落としものみたいに光るね。

卵かけご飯みたいにどぅるるんと
夢の中から抜け出した午後

通過するつめたい光が絡めとる息

ゆきふる
　　ろうそく
　のとけた
におい

初七日を迎える家にも雪が降り
掻き分けながら学校へ行く

どこかしらみんな痛みを抱えてて
だから嫌いじゃないの病院

今は亡き観光地でのポラロイド
モデルの父母は夢でいっぱい

ありふれた冬に
そのまま埋めといて
幼いわたしの
風邪の日の午後

　あの娘はきっと
　高速バスの中で
　泣いていた。

　群青色の
　ポケットに
　隠れていたい
　夜だった

柳は泣いていると思っていた

笑われたのだ
しゃらりしゃらりと
憐れなぼくと

水草はうごかない
月は溶ける
防護服には見えないようだ

凍った池のなか

ぼくらは部分的真実を生きている

付き合ってもなんともない
恒温動物だし

人の心はレンズに似ている
光線を乱反射して
なのに光を探し続ける

郷愁は濃い塩鮭に宿ってる

母に富有柿
父に太いハムを送った
サンタさんありがとうと
父が電話をくれた

数の子の値段に
目玉が飛び出して
子孫の繁栄は諦めました

いちごショートにも
陰くらいあるさ

春巻の中身見る
そういえば雪が降っている

こんばんは
きょうはひどく寒いですね
コロッケ要りますか

神経の振り向く音を嗅ぎとって
それを
デジャヴというのだよ、ポチ

ピンク色が好きな父の口癖は
「乙女座やけん乙女なんです😅」

カンテラの灯の先導のある霜夜

はちみつの専門店へ花野道

草枯れて西の倉庫の鍵もらう

食卓のひとりに慣れた頃が秋

監視所にストーブ一つあり独り

骨壷を抱く夜の底 鐘凍る

穏やかな山火事としてシクラメン

地毛証明書書き終えて虎落笛

ただ自分のために林檎むくような
手のひらサイズの孤独をひとつ

磨りガラスの
冬銀河に
身を浸す

電線といえば冬な気がする

極月の錠剤なめらかに落ちて

柊の咲いて昨日の天気予報

メトロノームの馬鹿騒ぎ

冬うらら
空をとびたいスクーター

筋トレに兎まで
巻きこんでいる

生まれてきてごめんなさいと
打った時サジェストされる
ごめんの絵文字

銀杏の降り積もった墓石が
少し明るい

予測変換が忘れてくれない

君がいて頬をなでゆく風があり
風の向こうの街のパノラマ

頬杖の君は春陽の窓際で
飛べない鳥として空を見る

後ろ手に閉めるファスナー
秋の薔薇

合掌の父の深爪雁渡る

石鹸の箱に描かれている牛の
子牛の頃を誰も知らない

向かいあう遠景を
だっこひもに頼って
くすんでいく
鳥の声がきこえた

うす汚い病院
腕のない雪達磨

精神科のしろばらすこしきいろ

雪のこえ開いたままの解剖図

海に来て秋思の君がうんと言う

血痕は拭かれて黒く冬の駅

大声を出せば白く染まるピアノ

母さんが売れたひまわりが枯れた

割り箸を割ればジュラ紀の頃の空

ふいに来る夜に記憶は捲られて
紙で手を切れば出る赤い血

運河ではなくて溺れる母の声

笑わなくなった母
泣くことさえも忘れてしまった私
施設の冬にひとりと
ひとり

月曜日の朝につく嘘
カーテンを閉め忘れたリビングの
白

真夜中の電話はこわい
ひとりずつ
並んで服を脱がされてゆく

七分の二を少数にする時の
割り切れなさに気づく火曜日

地下鉄のホームで出口を探してる
紋白蝶のような僕の明日

さくしゅって柑橘系の音がする

息継ぎするたび襲名しちゃう

気づいたら木に
されているえびふらい

雨宿りと称して並んだバス停で
待つバスのある誰かになりたい

永遠に妊娠できない僕たちは
街中の産声を燃やしたりした

指の手が止まるバスの雨

防災無線のスピーカーを壊してま
わるきみの脇腹に望むだけの痣を
あげたら

なに食べても味しないけどレスポ
ールは平仮名だとなんか甘いボン
デージも

いとおしいきみの春眠覚めてきみ
が白いサメの群れの夢を語る間に
指輪やる

星間無線だきみ真白い声にてメル
トダウン口遊む

少年のひざのうらには傷がなく
冬の朝の思い出すちから

友だちが子どもを産んだ。

ウミガメにも
鎖骨があるって思い出した

歯ブラシの毛並のような雪木立

二重線に印影を置く初時雨

冬銀河おおかみのゆめひとのゆめ

変声期冬至の夜の英語塾

うすぺらいすきにきづいて
あさぼらけ
ぬるいふとんをおりにして

冬の朝電子レンジが火花して

トイレットペーパー
すっと切れて雪

木の葉は
空の落としものみたいに光るね。

ゆきふる
　　ろうそく
　のとけた
におい

背伸び色のリップが似合いたい
中学２年の冬

春巻の中身見る
そういえば雪が降っている

石膏の海を泳いでいくハープ

春うららみんな季節のパンケーキ

錠剤の血へ溶ける音 蜃気楼

身を投げるための改札 冬の蝶

紅のドレス脱がせば
ピーラーで
剥かれた林檎、
やがてくすんだ。

冬の模試
「始め」を待つ間に歌う鳥

栞すり抜けて聖夜のワンルーム

せせらぎのうるさい夜を空き缶に

春の雨弁当箱のオムライス

読みさしの詩集に
精神薬の包み紙を挟み込む

逃げていく世界を捕まえようと
して白いコートの裾をえぐった

hold up
うつくしい当てつけ

我が家に
どんぐり奉る者あり

雪のこえ開いたままの解剖図

柿ひとつ
もぎ取るように憎しみを
受け入れている

生きるしかなく

言いそびれた言葉をさがす
言いすぎた言葉の
海の
一番深い場所で

だるまさんが転んだ

コンビニにないものばかり
さがしてる

女でも男でもない桃を剥く

目の前で一心不乱に咲く花の
今日という日を忘れるぼくら

ついつい
関係を良くすることを選び
自分を犠牲にしてしまう

りふじん　が　ふりつもる

人間は余白がすきだ
オレンジを剥くとき
指を嗅ぐようなこと

落ちそうで落ちない花びらの逡巡
スカート丈に少しくすぐる

富士山を見るたびに
富士山だ！と叫ぶことが
どれだけ大事だったことか

さくしゅって柑橘系の音がする

クリスマスなのに僕も姉も実家で
ローストビーフのタレかけすぎる

ペンギンが並んで歩く水際の
のんびり屋さんを目で追っている

風呂上がりに踊るなどして
人生を楽しくする沢山の試み

この街は
意識せずとも要塞で
君の翼の価値を阻むよ

てふてふに乳房与えて姉妹

タツノオトシゴのオトシゴの部分

煎餅のまわしものではないはずが
ひたすら丸を世界にこぼす

あると呑んじゃうから
これで最後と晩酌する
飾らぬ言葉並べ
言葉飾るように

閉じたドア映る俺はニット帽を
思ったより、目深に被っていた。

約束を破けば君の猛毒の寛容
また僕の罪悪は軽薄にも水溶

二重線に印影を置く初時雨

満月の毛並みそれぞれ尾に終わる

草の花駄菓子屋だった奥行きの

ヒト科の成熟は
三大欲求を自覚してから
開き直るに至るまで

メルカトル図法のロシア去年今年

コーラを飲んで
コーラを飲んだ
私に

雲踏むと底が抜けます日雷

雪催行使認容黙秘権

冬木傾ぎ仕置きのように山羊繋ぐ

羽根を持つ天使も餃子も鯛焼も

近松忌貫目足らずの若頭

(享保９年１２月２２日没)

切ろうと決めて下ろした髪が
急に可愛く見えたから
もう少しこのまま

　判断する力と
　育つ力は違う

私たちのためのあなたの墓


私たちが去るまで
そこにいることとする

降り注ぐもみじは永久機関かも

小さな喧騒が抱える
自然発生の愛情を
見失わないように
絶やさないように

祖母の名は陽子といった
僕もまた
きっと誰かの素粒子である

付き合ってもなんともない
恒温動物だし

賽銭箱みたいな男を愛したつもり

　　　なかったのに

巣立ちゆく子は生意気の言い納め

穏やかな蟹座もカニも
目に見えるところに
大きなハサミがふたつ

春の宵 舌裂くほどに飴の鋭

ビーカーに沈みゆくふたり
極性を持たない愛は水に難溶

才能は
ないのか
コンドラチェフの波

必要とされていたのはわたしでは
なくてわたしの愛だったのね

年送る
ブランコに見る作用線

風呂鏡と肩を並べて冬深し

しゃぼん玉
ぜったいそんなことはない

生まれてきてごめんなさいと
打った時サジェストされる
ごめんの絵文字

本を閉じてもう少し歩こう
　——俺は栞をなくしたみたいだ

なまはげに攫われた悪い子を
じっくり煮込んでできたシチュー

スカートを捲ればそこは鍵盤で
あなたはそれを大いに弾いた

麻雀卓を塞いで
吹く風はとても若く
仕方ない、瓶が寄ってくるなら

化粧水の第一印象は
あらそういぬを
雪に規範づけるか次第
だとして

うさぎでできた霙に
傘を打たれて
懐かしい袖口があったこと

クラーロ、知っている
クラーロ、
雪を食べて腹をくだす

大晦日なにかを嘘のまま過ぎる

鏡張りの部屋
戸を押せば万緑

いつもいる人がいないバス停留所

割り箸を割ればジュラ紀の頃の空

真夜中を待つ夕闇みたいに
悪意は徐々に色彩を失う

きらきらのすね毛が
朝日を浴びに浴びて
そのまま滅ぼしてほしかった

上を向く蘇る父と母の足

さくしゅって柑橘系の音がする

この世には神も天使もいないけど
僕がいますよ板橋区には

ベランダを
むきだしの足で立つとき
持てあましている冬のサディズム

平日にひとり泳いでいて
区営プールのぬるい水を誤飲する

ちょっとした言いあいのあと
中華屋が奥にひろくて
たすかったんだ

寒がりな恋人たちは身を寄せて
のっそのそのっそのそ池袋

生きていて増える思い出
減るこころ
ゆらゆら波が海をのぼって

謝って楽になりたいこころ透ける
あなたの身体に
ウエディングドレス

美しい車のコマーシャルに
引き締まる
心の余裕の部分

体温を測らなければ
入れない教室で
恋できるわけない

夜明けには天皇陛下になる君を
呼び捨てにした最後のハイウェイ

火焔瓶に性交渉交渉人の実印詰め
て投げてしまう

ここあ練るつむじの向きを考える

少年のひざのうらには傷がなく
冬の朝の思い出すちから

雪踏むとしししっていう
それ以外もう言うことがない

句読点の数かぞえるように降る
雪はもう雨粒の整列

生活リズム崩しきって
草書体の死が滲む

裸木が電線に触れる
地球の声がテレビから聴けたら

ホテルのタオル
大きくて
固くて
踏まれても水を吸う
確かに私を包み込むもの

年越の首都高明るさに続く

冬木傾ぎ仕置きのように山羊繋ぐ

耳朶が冬の空へと逃げたがる

歯の裏のざらつきに似て冬の星

箱ティッシュ
ぎっしり
詰まって取りづらい

ことばが、
古い約束事のように
私のなかに芽吹く。

卵かけご飯みたいにどぅるるんと
夢の中から抜け出した午後

揺蕩ういのち、
蛇口を閉める。

母を追い冷えた布団に潜る子の
熱盗らぬよう伸びる足先

郷愁は濃い塩鮭に宿ってる

雪が音をすいこむときの音

降雪に抗う紅葉
心中をせず有限に懸けてよかった

錠剤の血へ溶ける音 蜃気楼

ぷちぷちと細胞生まれていて朝寝

鼻をかむたびに沁みいる
金柑を搾るような寂しさ

行先のない人だけを運ぶバス
名前のない場所で降りたりもする

野次馬のみんな手袋してロケ地

恨みだか愛だかわからないものが
林檎とナイフの間から湧く

しゃぼん玉
ぜったいそんなことはない

クリスマスローズ私の夢で死ね

ごみ箱に捨てる案山子の目玉だな

白菜を記憶のように剥がしつつ

要求の多い日向だ

顔を伏せてさようならと呟く君が
少しだけうつくしくなってしまう

しん　とする中に
ドンと音が鳴る
それは怒りをはらんでいる
くりかえす

綺麗に映ってもこっちみて　
ころんと鳴くクリームソーダ

他人の自転車は大きい

誤射が山をあらわにする
（あ、いい匂い）
血の所有を守るために

知ってる、溶岩
ってあかくて気持ちよくて
夜更かしが
馬を通過するみたいだと

精神科のしろばらすこしきいろ

カカオ率で計量する
空気中から吸引せしめん
喜びの、せいせいした場。

腹話術みたいに夜を持て余す

自分の顔だけ思い出せない
今夜は満月だねと
人混みの中から声がした
団栗拾う

怖いもの見たさに僕はグーを出す

潮騒を浴びる教室
先生もうたたねしている日の
カスピ海

無名であることばかり
美化されている
私にできるヘアドネーション

真夜中の電話はこわい
ひとりずつ
並んで服を脱がされてゆく

つまらない方が母には楽だから
サランラップで束ねたひかり