羽根のある
生き物だった時の夢を見る

バイクの音すとんと止んで寒桜

春のかぜ
ひよこのまわりで
大はしゃぎ

実はもう忘れてしまっている鳥を
もとのかたちにもどしてあげる

サバンナのひかりを
髪にふくませて
ぶらんこを漕ぐおとうと、ごさい

さくらがいの
触れ合うようなこわいろで
きみがしるした離散数学

ねこだけの惑星があり沈丁花

自傷行為
として
こおりを噛むときの
日焼けしてゆくセーラーの襟

白ばらのように
海辺をふみながら
すべての春を見過ごしている

ばんそうこう
剥がしきれずに夜光虫
など
をあなたと見ていたいだけ

きずぐちが
薔薇のしんめを育むと
しんじてるから　じっとしている

なだれ込むばかりの
濡れたかなしみを
春のこかげとして受け入れる

じだんだを
すすきのように受け流す
母の　ほっきょくぐまのまなざし

にゃふ、にゃふと
ふたつ咳き込む友の手に
あぶらつやめくゲルニカの模写

雪が音を引き込むから
子守歌が聞こえてくる

月光が、
アルツハイマーの祖母を照らす
僕が覚えておくからいいよ

留守録にタイ語の叫び寒の朝

テーブルの水滴と一瞬の倫理
箱ティッシュの一枚目裂けた

春光の中に鏡が一つ足りない

蝶の昼さりさりさりと砂時計

水温むまっすぐ栞紐垂れる

ひかりへと
まっすぐ溺れていくひとの
呼吸よ、しばしさざなみを待て

うるうび
あたらしい
万年筆

日記にも残さなかった日々にある
翼の形に歪んだペン胼胝

少しずつ傷つけられて光り出す
こころの一番透き通る場所

２月２９日（木曜日）
深夜２８時まで営業　　の張り紙

金魚鉢の明るい水に手をひたす

風光る あなたの歳を追い越して

上履きを洗う

ママがずっとみてる

隠れてよ、
パパ似のうさぎに見つかっちゃう

花曇りフリーダイヤルから電話

七三もセンター分けも
角刈りもマッシュルームも
雪積もる屋根

その昔
獣だったにちがいなく
４つのタイヤで買い物に行く

わたくしのいない屋根裏花の風

かばん放れば
春の野に
ひとりぼっち

ちゃんと考えてはいたんだよ
手を挙げなかっただけで

先月もパンダ
昼寝のパンダ
信じこむパンダ

青春は 25 までと
聞いたので
もう少しだけ足湯にいます

ゆきどけ   は
いつも
いのちのところから

完熟をすぎた果実のくるしさの
かつてひとつの花だったこと

レントゲンうすく曇って
家族だと思えなかった人の隣で

なごり雪 星のかたちに握りしめ

君の言う大事な話が聴こえない
水道水が冷たいせいだ

午前二時　洗口液の青を吐く

遠くから叫んでくれてありがとう
伸ばし棒ばかりのきみのメール

天国に命を返すみたいだね
君の綺麗なフリースローは

湖の底に沈んだ集落の
末裔なので地上は嫌い

傾国の歌集しっとりと
ゴム手袋さらさらの羽音

催促を
けんけんぱして
逃げる兄

天候が雨ならえくぼは香ります

洗濯が終わるまでは銀河を見てる

常夜灯が孤独へ手招いている

フキノトウ舌にじゅわりさびしい

ちがう。春菊が言わせたの

長葱の白い部分が寒そう

夕ぐれに
カニバリズムは匂い立ち
鳥が樹の影に呑まれつづける

せわしない気持ち
ことこと煮込んでは
手放すまでのミネストローネ

綿あめを作るみたいに神様は
春の空気をやわらかく編む

夕間暮れ
カフェオレ
別れ
小夜時雨

錆びて
　淋しい
残雪の
　　　三輪車

春の雨ほのかに甘い粉薬

豆を投げパパを返せと
泣いていた

幼いままじゃなくて、よかった。

熱のある母さんのため買ってきた
ばにらあいすをゆるりとすくう

真夜中に
羽化をしているアコーディオン

音の無いトムとジェリーが
繰り返し流れる待合室で眠った

春色に殴られながら会社員

いつまでもパジャマ
りんごをすりおろす

鱗削ぐこんなに銀河つけてきて

めがさめて
わたしになるまではすもも

夏の間はラムネの底に人魚がいた

月光がうすく糊化してぼくたちを
寝かしつけたらほんとうの夜

喉仏、朝日のように上下する
ただぼくを飼うためだけの母

作文のなかにだけいる兄と凧

とっておき
エネルギー
イデオロギーたまご

もふもふ草原猫耳山脈
怒らせないようかき分けて

お土産の高級チョコの箱のように
古い携帯電話取っておく

バイクの音すとんと止んで寒桜

春のかぜ
ひよこのまわりで
大はしゃぎ

実はもう忘れてしまっている鳥を
もとのかたちにもどしてあげる

ベランダに出れば満場一致の春

じだんだを
すすきのように受け流す
母の　ほっきょくぐまのまなざし

寂しくて会いたくなって携帯の
ゲームを消してそんで朝焼け

ゆうれいになっても夕立ちは怖い

蝶の昼さりさりさりと砂時計

謝れるかもアネモネの中でなら

雪の日に満ちた光の影が生む
ぬるいきぼうをわかちあいたい

半額のダッフルコート
来年に着るために買う
生きるため買う

ボトリと落ちた卵焼きの臓器感

きょうりゅう、の、
言い方まるいね、
春うらら

もう帰ろう、
もうかえろうよと言う花野

上履きを洗う

ママがずっとみてる

ここにいるぜんぶに名前をつけた
長いこと
手すりにもたれかかりながら

これを
君は保健室の匂いと言った　
ぼくは病院だと思ってた

弟に殺されちゃった雪だるま

きみたちがやってくるから
ぼくたちもむかっていくよ
おうだんほどう

まだだれも
あるいたことのない
ゆきのうえをあるくよ
ほそうどうろの

ともだちを撮る
ためだけにチェキを買う
今がいちばんって流石にわかる

よろこびの海に片手をひたすとき
胸の底からとおくなる夜

履歴書の　文字少なくて　

疲れました二月総務課

もう二度と使えないだろう近道に
僕の名前を置いてきました

長雨にジーン・ケリーの影潜む

青春は 25 までと
聞いたので
もう少しだけ足湯にいます

ゆきどけ   は
いつも
いのちのところから

レントゲンうすく曇って
家族だと思えなかった人の隣で

みぞおちという水際に揺れながら
言葉はすべて濡れていること

遠い春 きみのまぶたが開くまで

なごり雪 星のかたちに握りしめ

感情の散骨として雪はふり
宛先の人肌に溶け入る

甘酒は夏の季語

遺伝子の海辺
いなくなったあと
寂しくないようしおりを投げる

私にも誕生日しか話さない
お守りみたいな記憶があるよ

月影は巨人の列を従えて
ガードレールを夜で洗った

洗濯が終わるまでは銀河を見てる

なんの意味もない
オムライスの上に書いた
ケッチャプの文字食べながら

病室に春めいていちまいの絵

木の芽時
コロッケ二つ抱えて

長葱の白い部分が寒そう

春一番メキシコではそよ風となり

足場がひとつひとつ
組み上げられて春の空

駅に父が迎えに来ていた。
父は私に自分の傘を差し出し
持っていた傘を開いた

ドーナツの曲がり角を過ぎた辺り

さわがしい友達だけど
みずうみに
沈めたままの浴槽がある

祈っても
願ってもなお
凪のよう

冬木立わたしの影を預かって

春光にトライアングル響かせる

家族ってものは努力で成り立って
いたりいなかったりして　春嵐

いわしぐも五つの頃はやさしくて

真夜中に
羽化をしているアコーディオン

音の無いトムとジェリーが
繰り返し流れる待合室で眠った

傷口の春光はもう細胞に

福寿草泣く場所くらい決めさせて

ルンバどこいくのそっちは冬の海

星月夜めでたしめでたしの続き

めがさめて
わたしになるまではすもも

ぼくがぼくでいること
パンはやわらかいほうが
おいしい気がしてること

隣人が泣いてるのかと思った
生まれ変わってゆく雪の音

言えたはずのことを
舌の上で踊らせる夜
初雪はゴミ袋のようで

春の雨
濡れた道路は
玉虫の背

２階にボールの音が聞こえてくる
夜明け前の子犬の遊び

白い雪　ルージュのような　
頬の色

月光がうすく糊化してぼくたちを
寝かしつけたらほんとうの夜

作文のなかにだけいる兄と凧

23まで封印されてた記憶に
午前十一時の小学校の匂いがある

羽根のある
生き物だった時の夢を見る

別れは春の所有物

春のかぜ
ひよこのまわりで
大はしゃぎ

実はもう忘れてしまっている鳥を
もとのかたちにもどしてあげる

白菜を買いに行ったきり鎖国

時計屋が人を銀河に返す夜

パンケーキ裏返すたび嘘をつく

正解かどうか
いつも
社会の顔色　うかがってる

しちゅーぱんの
ように
籠もったやさしさで
祖母のちいさな背を拭いている

ばんそうこう
剥がしきれずに夜光虫
など
をあなたと見ていたいだけ

じだんだを
すすきのように受け流す
母の　ほっきょくぐまのまなざし

いつか街は
遺骨の君をそのままに
その復興を讃えられるだろう

二階から目薬二月からやる気

出逢ったら過失の開始冬構え

ふかふかの雪をもちもち走る犬

目覚ましのスヌーズ遠い寒の入

熱燗を舌ったらずになるくらい

春隣る双極性に秤揺れ

春雨に
良寛なでる髑髏（クラニアム*)

 *cranium

草の芽の露に躓く誕生日

否定してしまうあなたと同じ土俵
立っていたいと思っています

水温むまっすぐ栞紐垂れる

謝れるかもアネモネの中でなら

いつまでも
着地できずに戸惑っている、
羽根たちがわたしを泳ぐ

ひかりへと
まっすぐ溺れていくひとの
呼吸よ、しばしさざなみを待て

胞子舞う穴の底にはママがいる

手際よくピザを等分するときに
耕耘されるかつての地平

きみたちがやってくるから
ぼくたちもむかっていくよ
おうだんほどう

この話
言わないでくれ
と言われたので
この話
言わないでくれ

何度目の春風を咬む
鮫の歯のように職員室は変わって

三つだけ好きなジャンルを
選べると
閻魔に言われ優柔不断

世界史の一問先に広がった
戦場をまだ僕は知らない

おとうとが靴をはくとき
やわらかくきいろくかたむいた
ランドセル

下道で喜怒哀楽のダムへいく

豆苗がここまで伸びたら髪切ろう

緩やかに煮崩れしてる日常に
ピンクの花の首を飾って

完熟をすぎた果実のくるしさの
かつてひとつの花だったこと

レントゲンうすく曇って
家族だと思えなかった人の隣で

みぞおちという水際に揺れながら
言葉はすべて濡れていること

人災の政局をただ、天災と
受け止めることしかできなくて

地下鉄で
ゴルゴ13をとりだすマダム
最強説

美しい砂漠に潜る夢を見た
紫陽花だけは手放さぬ雨

ざわめきに耳を塞いで芹の香

鳩の眼がこわいこわいと怯えつつ
その胸の虹に惹かれてしまう

うまく飛ばない紙飛行機の
ミュージアム
巡りたくなる春雨の午後

飛び越えて掟破りのタコライス

いまできた宇宙のように
髪の束
ほどけるうちに
滅びる星も

レタスを見ながらキャベツを買う

霊柩車を前に長野への高速
後部座席で僕はまだ孫

おじさんもね、
で始まって
居場所が欲しいんだよ、
で終わる川柳

鍾乳洞に踏み入るように君を知る

あなたから見れば
たくさんいるうちのひとりで
わたしは人々の々

手から手へ口から口へ透明な
檻から生まれる透明な檻

好きと得意が比例しなくなった
そのとき心と身体は近づく

真夜中の入り口として野の鯨

ルンバどこいくのそっちは冬の海

龍淵に潜むシンバルの微動

春雷にやわらかそうなとこがある

許せないことばかり増え花の雲

黃の足をつっぱって鴨の着水

春の陽を飲みこむ
枝のしずく見て
ぱちくりぱちくり
すずめ驚く

実はもう忘れてしまっている鳥を
もとのかたちにもどしてあげる

白菜を買いに行ったきり鎖国

土器ひとつ眠る両手で抱く赤子

よざくらの発光
じょじょに淡くなり
きみの眼窩のみずぎわを　押す

鳥の一人性　白い息のなかで
喋りづらそうに喋りつづけた

満員の電車にいると
代えのきく誰かになれた気がして
安らぐ

空き缶とまだねむる君
窓外に夜の本体だった裸木

少しずつ傷つけられて光り出す
こころの一番透き通る場所

ヒラメの目ひとつ多いわ
買ってくわ

人混みを海に喩えて漂えば、
俺は機雷となれる。

さわれよ

逃げようにも、
ここは性器の星だから
脱ぐしかないし
笑うしかないし

何人も
春一番が吹いた日に
性器の所持を自供すること

歌うより投げるにちかい
はつなつの
肺はきゅるきゅるさわがしくなる

本殿の屋根から落ちる
雪解けの水だと思う
あるいは炎

その昔
獣だったにちがいなく
４つのタイヤで買い物に行く

中古書のラインマーカー掠れゆき
最後の落雷はひかりだけ

何度目の春風を咬む
鮫の歯のように職員室は変わって

トツーツー
トト・ツー・ト・ツー
ト・トツート

声が聞こえる　窓の外から

蜂蜜がはるか上から垂れている 
そして下へとまた垂れていく

研ぎ澄ませ 地獄の声が
的を射る

付け襟は人が神様に許可された
天使にすこし近づく手段

読点が羽毛のように散らばって
食い千切られた句点を撫でる

縁切り神社の電柱が
赤い毛玉の腹巻き出して

七歳のなやみふわ雪追っかけて
何処かへ行きたいな通学路

犬のあくびを見ていた僕は
心なしか悪意に満ちるようだった

鳩の眼がこわいこわいと怯えつつ
その胸の虹に惹かれてしまう

いまできた宇宙のように
髪の束
ほどけるうちに
滅びる星も

目をとじる　
あけたら雨は止んでいて、
切られた髪にも重みがあった

引き出しに折れたプリント
飛行機雲が僕の影をなぞる

白地図で国を覚えて境界の
脆さは知らずにいた地理の時間

遠浅のみずうみ
布団の外に出た足から
夜に浸されていく

柔らかくぬくい重みで犬が乗る
ふしあわせだと思ってたのにな

爪を切る＝地を掘り返す
うがいする＝神はいないし
明日は土砂降り

春雷にやわらかそうなとこがある

祖母の手にみる
募る鍾乳石の
うつくしさ

詩以外で
あなたを数えたときにある
光を持たない明るさの針

実はもう忘れてしまっている鳥を
もとのかたちにもどしてあげる

しちゅーぱんの
ように
籠もったやさしさで
祖母のちいさな背を拭いている

ばんそうこう
剥がしきれずに夜光虫
など
をあなたと見ていたいだけ

よざくらの発光
じょじょに淡くなり
きみの眼窩のみずぎわを　押す

鳥の一人性　白い息のなかで
喋りづらそうに喋りつづけた

じゅうにひとえを
漢字で書いて
私じゃなかったと
微笑むあの子

段落に番号をふる
窓際の君は小説そのもので、
０

空き缶とまだねむる君
窓外に夜の本体だった裸木

空には星を求めるくせ
空っぽが滲み広がるの
線路沿いのマンション

わたしたち夏の検体
すごかった、
ただすごかった暑さを生き抜き

雨の日は、
むきゅむきゅ靴が鳴ってしまう
眠らないまま　生きていけたら

強風と知らずに使う春一番
ただ楽しいだけをあげたくて

春光の中に鏡が一つ足りない

友だちの友だちとして生きてゆく
かつてあなたも北風だった

烏と白熱灯

本気で伝わるまで、本気を

思い出の証人みたいに思えてきて
切るにしてもここまで
がいいです

胞子舞う穴の底にはママがいる

逃げようにも、
ここは性器の星だから
脱ぐしかないし
笑うしかないし

ここにいるぜんぶに名前をつけた
長いこと
手すりにもたれかかりながら

ここにいろってゆうのは
犬に言うことで
ブランコがまだ、揺れていました

春、猫が急にいっぱい産むみたく
カメラロールの写真がふえる

七三もセンター分けも
角刈りもマッシュルームも
雪積もる屋根

きみたちがやってくるから
ぼくたちもむかっていくよ
おうだんほどう

何度目の春風を咬む
鮫の歯のように職員室は変わって

マックの２階の窓辺から
明るい人を見ていたよ
唾がかかるかと思ったよ

モノクロのビル 光とか好きかも
ポッケの中が散らかっている

蜂蜜がはるか上から垂れている 
そして下へとまた垂れていく

花野越え俺の側まで来てくれた

肩に乗る
桜に触れずに呑めばいい
電脳なんて泳がせていい

背中に月がある。
年老いる届かなくなった

悲しみが染み付いている家にある
ペットボトルのボウリング場

平日の
わたしはひとり
これも雪？

点滅を律儀に守っていた頃を
思い返すと空は膨らむ

絵の家は西日で浮かび
裏側は燃えかすだろう
額縁を折る

苗字から砕いたあだ名呼ぶ声を
抱きしめてなお鎖国する春

灯籠を浮かべるように丁寧な
投資を  氷河期の合間にて

レントゲンうすく曇って
家族だと思えなかった人の隣で

放置した
キレートレモンの空き瓶が
花瓶みたいになってく季節

トンネルの出口付近の横風が
木星に縞模様をつける

十分前に止まった時計ののしり
立ち尽くす木々の香り

青すぎて二人に雲が欲しくなる
リヤカー揺られ秒針とおい