ともしびとして愛犬を抱きしめる

蒼穹へ三億世代目の小蠅

通知表にぎりつぶしてキアゲハの
影をひゃりりと追いぬいてゆく

さもえど
の
毛なみに
頬をうめながら
来ないてがみのへんじを思う

鈴懸の木に吊るされるわたしたち

口下手で梅のしたまで来てしまう

病院にいるような音楽の聞こえ方

冬の雷うしろに立たれるのが嫌い

月命日ミモザの花のこぼす錆

仔熊座の柄杓の歪み余寒です

春の闇死児たちの弾く曼徳林(マ
ンドリン)

冬の星風船ガムの苺味

無表情、逆光、すすき、
銀色のナイフ、呼気、
たぶん美意識がある

枯芝に落ちて
心臓泣きじゃくる

踏み台に乗り立春の手術室

月冴えて仕舞う学芸員の椅子

夜が明けて潜水艦がしずんでいく
ようにゼリーの中はとうめい

うたた寝の
あなたばかりが眩しくて
ゆるくぶつける睦月のボート

熱が出たつぎの日
朝日がいつもより眩しい

橋という橋悉く鮫を焼く

またそんなようけ貰ても困るがな
子どもの頃の好物ばかり

異界への入り口として目を伏せる
夜の小さなライトスタンド

そこだけが楽園であるかのように
ひかるレモンサワーを飲む夜

雪国のふるさとのためビル群の
影に残った雪道を行く

水中にうすく瞼をひらくとき
世界は夜のように重たい

純粋な心持つ母に育てられ
僕らはカモとして生きている

電車の中で誰かが言った
「フトアゴヒゲトカゲ」
が忘れられない

レゴリスの煌めく夜や雪見酒

鳥籠のオウムは雨の降る夜に
昔の地球の夢を見てる

キリンでも飼うつもりなの三月を
こんな明るい吹き抜けにして

群れるため拳を下ろす　
夕焼けは低温火傷みたいな痛み

大理石の床を星を剥ぐように
朝まで磨く死者たちの夢

厳寒にぐわんぐわんと老木よ

雲雀啼くザクッと切られ黒髪よ

春惜しむ千手観音の残光

なんてことないしあわせの蕨餅

朝日から照らされる日も減り受験

少しずつ膨らむ気球を抱きしめて
若草色の約束をする

穏やかに父眠らせてノースポール

鳥
    眠り
風の冠
        花曇

狗尾草
本当の友達をさがしている

ソーラーフラワーに近づく
母は白昼夢を見るだろうか

春あした
甘いバターを削るナイフ

ひだまりを口に含んで父に会う

水だった頃の記憶を旋律に
きらきら零すグランドピアノ

必要とされた風から光りだす

竹林をのびちぢみして石鹸玉

石段に合わせる歩幅つくづくし

レシートをまっすぐ折って花曇

花冷の糸に重たいティーバッグ

平刷毛にペンキ乾いて春茜

泣くための時間が少し要る二月

繋がれに行く犬春の雲降りて

卒業歌鼈甲色の教室に

風船のアーチくぐれば消える影

採寸のメジャーの戻る春の昼

春の三日月リカちゃんにピアス跡

鶏白湯そして雪にはならなかった

雨粒とおんなじ音した銃声は
画面の向こうまだ降り止まない

しゃぼん玉やるため
駆け上がる屋上

犬用の音楽がなぜ効いてくる

マフラーの毛羽立ち方が恋みたい

わる口を言うときのこえ冬かもめ

水蜜桃の幽霊を飼う

はずせない画鋲ばかりに
照らされて
教室はときに夢の監獄

バターナイフまずはながめて
静脈のあおむらさきに思い出す夢

貝のうちに真珠ふくらむ春の日の
どうしようもなくきいろい眠気

地に足をつけて宇宙に浮かぶ人

さふさふと
マッシュルームを切る音が好き

ラッシュアワー
ほうれんそうを
想っている

まだ夢の
佐保姫
レモンジンジャー茶

別れて駅に甘く灯点る春霙

銀花よ銀花翡翠の湖沼眠らせて

神仏は大切だけど
じいちゃんを敬う方が
ご利益がある

板チョコは千円で良い
先輩が
フェアトレードを支持する夜は

英会話教室のアンドリューの
靴のサイズは34cm

巨人は長生きしたのだろうか
小人は短命なのだろうか

唇を触っても春来ないしね

納豆によく付いてくる責任感

ミルフィーユ
ざぐざぐにして
出来合いの理由ばかりで
きみを拒んだ

すずらんのように
うなじを光らせて
眠るあなたがまぶしい始発

干しいも
の糖化速度でくもりゆく
記憶のきみは
やけにしずかだ

ざわめきを遠くに覚え
ぺんぎんのさみしさで行く
母校のろうか

飛んでいく綿毛を掴む
手を開く
また飛んでいく
こんなにもただ

チョコレートドーナツを
分けて風の日
埋まることのない喪失感

泣いたあと頬はすずしいさみどり

日が昇りきる前に
白藍の空が広がる
あの時の私は正しかったと思える

初恋が実った春の喜びを
思い出せないブラックコーヒー

氷柱のしずく
光の蜜をたくわえて
いまわの冬の
くちびるに

いきさつも
結氷した
瞳孔に
月

草陰の
裂果
遠ざかるほど
湿る髪

無念を継いで
征くときの
前傾
草いきれ

青麦よ雪いちめんの反駁よ

最小の感情としてシネラリア

制服のボタンに触れる
僕がまだ水流だった頃のまなざし

下駄屋のおミツ
八百屋のスエ子
スナックのママ
みーんな  寡婦

春一番が吹いた日に
まさか失恋するなんて
面白いじゃん人生って

新宿駅
行き交う人々の間を抜ける
レーシングカーの俺

あおあおとした
友達が手を振る日
わたしは単語帳をながめる

野菜断つわたあめに勝つんだから

髪も手もいつも濡れてた
火の鳥の
転生前夜みたく密かに

絶望をするように
盲信するように
切手の糊にふれる舌先

面接に落ちた。
カツ丼を食べて一歩進む。

悲しい事はいらない
嬉しい事だけがいい
ひょっこりひょうたん島を
歌いながら

寝ぼけ眼で
小さな液晶から
今日起きる理由を探している

軽薄なカツオドリから泣いている

大根にリボンつけてもいいですか

床に僅かに届かない
カーテンの足のひら
光がたまってゆく
瞬間的な後悔

科学少女だったけど
魔法少女になりたかった

空を仰ぐ
目を閉じる
首を天に差し出すように

点滴と雪の速度が重なって
離れるまでの
息の止め方

神様の似姿として
僕たちの
握れば骨の浮き出る拳

雨音が二段ベッドに迷い込む　
あの母シャチは、多分、泣いてた

形のある未来を掴むのに
必死だった
趣味じゃないスカートが
壁にかかっていた

新宿駅　太宰治
黄色い線の内側でお待ちください

霜柱黒ひげ危機一髪ゲーム

しょんぼりは
こんなかわいい音なのに
ひとのかなしみのせてうつむく

目覚めたら散歩に行こう
冷たくしめった木が
しくしくときしむから

ススメ　ススメ
進んで
追い抜け

朝市の瓦礫の隅の菜の花よ

そういえば起きてからまだ
コーヒーを飲んでないなという夢
を見た

いまも雛芥子ゆれている
泣くのならまっさかさまの
こころのままに

レジ袋に入ったままのお手拭きを
カラカラにする六畳の部屋

変声がもう近いのね黄水仙

いつだって誰かの息がくるしくて
天動説がすこしいとしい

恋かしら食欲かしら海かしら

おぱーるの
ような
あなたのうたごえを
抱いてぎんがのほとりをねむる

さもえど
の
毛なみに
頬をうめながら
来ないてがみのへんじを思う

就活のはなしをされて
ものくろの躑躅を
ひろうようにうつむく

口下手で梅のしたまで来てしまう

月命日ミモザの花のこぼす錆

冬の星風船ガムの苺味

月冴えて仕舞う学芸員の椅子

手術室に繋がる電話冬菫

夜が明けて潜水艦がしずんでいく
ようにゼリーの中はとうめい

不完全なわたしでも認めて欲しい
ら抜き言葉の聖書のように

星ひとつ見えない夜のベランダで
空のまぶたのなかをながめる

日の入りが伸びて嬉しい
花いちもんめ

そこだけが楽園であるかのように
ひかるレモンサワーを飲む夜

春風のアンダースロー受け止めて
生まれる前の草原にいる

キリンでも飼うつもりなの三月を
こんな明るい吹き抜けにして

大理石の床を星を剥ぐように
朝まで磨く死者たちの夢

雪原に言葉を拾いに行く朝の
わたしは冬の楽器になるの

穏やかに父眠らせてノースポール

鳥
    眠り
風の冠
        花曇

狗尾草
本当の友達をさがしている

ソーラーフラワーに近づく
母は白昼夢を見るだろうか

ひだまりを口に含んで父に会う

レシートをまっすぐ折って花曇

採寸のメジャーの戻る春の昼

この部屋の常夜灯ですヒヤシンス

鶏白湯そして雪にはならなかった

エレベーター
閉じるボタンにいるちょうちょ

似たような店の並びを行きながら
この雪は雪のまま強くなる

マフラーの毛羽立ち方が恋みたい

わる口を言うときのこえ冬かもめ

チェリーパイの横顔を
絵にしてからは
あとがきめいてひとりねむった

バターナイフまずはながめて
静脈のあおむらさきに思い出す夢

さふさふと
マッシュルームを切る音が好き

ラッシュアワー
ほうれんそうを
想っている

別れて駅に甘く灯点る春霙

初雪に
すっぽかされて
通学路

ざわめきを遠くに覚え
ぺんぎんのさみしさで行く
母校のろうか

私より桜に近い
早咲きのあなたに見せる
ぐりこの歩幅

翅だった、あなたの晒す掌が。
春の待合室からずっと

魔法瓶くちびるで散る牡丹雪

どうしてもわかりたくない海は青

セーターのもけもけは
冬のあとがき

日が昇りきる前に
白藍の空が広がる
あの時の私は正しかったと思える

絵の具とは冬の空からできたもの

Gうまく弾けないわたし
休日の陽の光あと五分で消える

草陰の
裂果
遠ざかるほど
湿る髪

青麦よ雪いちめんの反駁よ

避妊具のデザインをした人と会う
地下水脈が好きと言われる

制服のボタンに触れる
僕がまだ水流だった頃のまなざし

雪の果おべんとう残してごめん

あおあおとした
友達が手を振る日
わたしは単語帳をながめる

息がしたい　海への
切符を買うように
鳶色の毛布を脱ぐように

大根にリボンつけてもいいですか

耐えかねて
生まれ変わった初夏の庭
あなたであった芍薬に会う

国旗疲れて春風にただ相槌

蒼穹へ三億世代目の小蠅

通知表にぎりつぶしてキアゲハの
影をひゃりりと追いぬいてゆく

就活のはなしをされて
ものくろの躑躅を
ひろうようにうつむく

口下手で梅のしたまで来てしまう

舌先でふゆの木のモノマネをする

冬の雷うしろに立たれるのが嫌い

月命日ミモザの花のこぼす錆

野の石を涅槃像とし巣箱に匿す

山眠るうずまき管というとぐろ

冬の星風船ガムの苺味

ぜんぶ後手に回っていいんだ
生まれつき
頭突きしてみたことの無いまま

演劇は噓をついてる
嘘をつくことに慣れたら
そこが崖だよ

枯芝に落ちて
心臓泣きじゃくる

幼子の
急に静かになるときは
悪さをしてるような大雪

踏み台に乗り立春の手術室

ぼおっとする２が頭を支配して
１とはなにが違うんだっけ

うたた寝の
あなたばかりが眩しくて
ゆるくぶつける睦月のボート

マネキンを担いで川へ
ほら光は春だけど
まだ冷たいでしょう

折り紙は
折り紙の何とかになるから
偽物なんて呼ばれずにいる

２号車の２すら消えたり願ったり

おちていく幸運ほどに気が抜けて
春のクレープ屋の前に立つ

きらきらと跳ねたらにどと戻れな
い海が光を抱きしめている

白ばらの摘まれたあとをふりかえ
り雨は春からさえぎっていく

春風のアンダースロー受け止めて
生まれる前の草原にいる

キリンでも飼うつもりなの三月を
こんな明るい吹き抜けにして

落葉を引っ掻きながら抱きよせる
こんもりとただ兵士のように

テトラポッドが
泣いた実父の色だった

立春の夜に確定する目眩

朝日から照らされる日も減り受験

塩漬けの桜
あなたの優しさが
早生まれの性質を持つこと

花びらは涙のための洋食器

穏やかに父眠らせてノースポール

狗尾草
本当の友達をさがしている

水だった頃の記憶を旋律に
きらきら零すグランドピアノ

必要とされた風から光りだす

竹林をのびちぢみして石鹸玉

石段に合わせる歩幅つくづくし

レシートをまっすぐ折って花曇

花冷の糸に重たいティーバッグ

足だけで布団を整えている夜
シーラカンスのあくびの長さ

君の名の発音を持つ英単語めくる


風が止まっているね

繋がれに行く犬春の雲降りて

雉鳴いてまた迂回する鬼ヶ島

採寸のメジャーの戻る春の昼

春の三日月リカちゃんにピアス跡

友人がたくさんいるような岩肌
その前で写真を撮った

マフラーの毛羽立ち方が恋みたい

致死量の核家族を浴びる

雲間からのびた光につままれる

幽霊が遅刻してきて夜の梅

バターナイフまずはながめて
静脈のあおむらさきに思い出す夢

地に足をつけて宇宙に浮かぶ人

どうすれば普通なのかと
考えてしまっているから
いま北極にいるのだろう

ラッシュアワー
ほうれんそうを
想っている

コンプラは
天麩羅のころも
みたいなもん

唇を触っても春来ないしね

木耳を食べるフルート奏者たち

納豆によく付いてくる責任感

どっからが孤島か亀に選ばせる

ざわめきを遠くに覚え
ぺんぎんのさみしさで行く
母校のろうか

飛んでいく綿毛を掴む
手を開く
また飛んでいく
こんなにもただ

翅だった、あなたの晒す掌が。
春の待合室からずっと

春めいて眼医者の気球も浮遊して

魔法瓶くちびるで散る牡丹雪

野菜のサブスクから消えた白菜
祝雷が来た
私を置いて春になろうとするな

もういくつ寝ると石蕗みんなやだ

いぬねこと舫枕の大寒夜

カルメ焼きつもる大雪いきぬいて

しなやかな痛みを伴う
シュウマイの寝言を受け取れば
爪楊枝

昔の僕に会いに行く
まずは抱きしめたいので
護身用の拳銃は隠しておく

息がしたい　海への
切符を買うように
鳶色の毛布を脱ぐように

おもちゃの正しい遊び方しか
知らないままだから
今更間違えるんでしょう

悪の表面張力世界に春

軽薄なカツオドリから泣いている

神様の似姿として
僕たちの
握れば骨の浮き出る拳

新宿駅　太宰治
黄色い線の内側でお待ちください

麦秋の色のにわとり抱っこして
深く吸いこむ西日さす庭

ススメ　ススメ
進んで
追い抜け

変声がもう近いのね黄水仙

いつだって誰かの息がくるしくて
天動説がすこしいとしい

もう一度会いたくなって
水だけで妊んでしまう花園にいる

就活のはなしをされて
ものくろの躑躅を
ひろうようにうつむく

どうしたら星になれるか考えて
なれる頃にはなりたくなかった

冬の雷うしろに立たれるのが嫌い

三月のシャワーヘッドを
引き寄せて
そろそろ生まれ変わってしまう

からだにまともなところが
ひとつもないつめだってもう
のびほうだいだ

一駅で息継ぎをして青空を
尾まで満たして潜る地下鉄

素足で歩けばずずずっと
素手で掬えばさらさらと
あぁ君に命があったなら

マジックの種を明かして帰るたび
あなたの部屋が遠くなるよう

竹林をのびちぢみして石鹸玉

繋がれに行く犬春の雲降りて

採寸のメジャーの戻る春の昼

冷や飯に優しい言葉をかけてみる

爪切りがえんえんと吐く細い月

さふさふと
マッシュルームを切る音が好き

陽が透けて宝石めいたセルフレジ

銀花よ銀花翡翠の湖沼眠らせて

あさがおをこころの中で
抱えてる　
ピーヒャラ、ピ　　
ずっと会いたいよ

ざわめきを遠くに覚え
ぺんぎんのさみしさで行く
母校のろうか

さみしくて
ポストのようにさみしくて
君の手紙を食べてもさみしい

最小の感情としてシネラリア

あなたへの橋は今でも増えており
いくつかは水鳥にかわった

しつりしつり
雨の糸が
たばこの煙を撃ち落とす
しつりしつり
雨が長い

ひだまりのけものになって
きみを待つ
転生の終わりに
天気雨