メリーゴーランドの馬は
ぶつからない

帰ってきたヨッパライの
ＣＤをくれた上司は
帰ってこないヨッパライ

お宅のワンちゃん
ようけ吠えよるね

(貴女にはね)

我が家が出したゴミに
私より詳しいおばさんの
「ご親切」に震える

決断すると
すぐにいそがしくなる
決断しないと
やがてとてもいそがしくなる

偽りのない笑い声は
書き起こすと
理解不能な文字列になる
きっと原始の発音だ

かつて被災地から
間違い電話があった
同じひとから二回

おれは出られたけれど

「詩」は、ひと文字の詩。

この世界の
裏側を見てしまったが
意外にも真っ白だった

地図の話

最も美しく
飽きのこない絵画は
白いままの
キャンバスだ

子宮出身・地球在住です

ほう、いまどき珍しい
私は試験管出身・火星在住です

しりとり、の次はりんごの帰り道

エコバッグ忘れた僕は
食パンの神様みたいに
店を出るのだ

直進すれば海左折すれば大仏

鳥になる前に地面に落ちた卵
ほんの数秒でも感じたろうか
飛ぶ
という気持ち

おままごとは
どっちかが飽きたら
急に
殺伐とした家庭
みたいになるね

夢で彼の頬が
青黄色く腫れていて
目覚めてあれは
勿忘草とたんぽぽの色
と思う

老犬が乳臭い仔犬の頃の眼をして
私を必要欠くべからざる者にする

私的可愛い言葉辞典には
無論
『三角定規』を採用する
『分度器』は目下検討中

にげろー
幼い声に振り向けば
柴の仔犬が転がってきて
諸々殺人的に愛くるしい

傘の下ふたりでひとりぼっちの恋

三日月を指で挟めば六センチ

ねえムーミン あっちむいてホイ

テレビつけっぱなしで
散歩にいきましょう
世界は何も変わらないから

二日酔い
昨夜の恋の種明かしする前に
先ず、お水をください

少年の日の夏
あの子の家で飲んだカルピスは
すごく濃くて羨ましかった

悩み事があって
二時間歩いて出た答えは
悩んでもが仕方ない

だったりする

マネキンに話しかける人を見た
と思ったら
二体とも
マネキンだった

死に損ないの美しい人が
夕陽を背に
ひとり
ソファーに座っている
私

体操着
あの子とあの人だけが知る
同じ回数折った袖口

二人で見上げた星
デタラメに名をつけた

ひとつはスキデス
ひとつはワタシモ

この世界には美しいものはない。

そう呟く君の横顔は、美しい

「騙された方が悪い」と言う人は
絶対に信用しないことにしている

春の坂道を君と歩く
春は春で
君は君で
僕は僕だった
それでもいいと思っていた

僕の目を見ながらはめてと
言ったでしょ
パズルの最後の１ピースは

生きるために、生きている
そんな人の方が
多いんじゃないかな

痒いところに手が届


……いちゃった

死の間際に生を美化するよりも
一椀の雪を汲ませた人の
事実は小説よりも貴い

「告白」という言葉の意味は
高校生までは
ひとつしかない

嫌な記憶は
封筒に入れて
しっかりと封をして
破れないように捨てましょう

「前にも言ったけど」
　って言われないとほっとする

桜舞う
肩に花びら
「とらないで」

総理大臣＝お金持ちだと
皆で勘違いして書いた
「もしもなったら」のページ

ピエロにならなくて
良いんだよ
私の心に
送ることば

ただ水を
あげてるだけで
花が咲き
あげないだけで
葉が落ちる

現行犯
ハイビスカスの葉の穴は
てんとうむしの
お食事の跡

ひきだしがこわれてしまったと
言って愛をつたえてくれた君

スキップがじょうずね。
おひざに菜の花いれてるの？

瞼を閉じると君がそこにいる幸せ

アルバイト
クビになるたび
神保町

計算ドリルやるこどもみたいに
ワクチンで練習する免疫

心にも風の通り道を

どこから　どこまでが
生きて　いるのだろう

ぬぬぬぬぬ……
何度も上書きして
心臓ができた

たった一基のベンチ
どれだけの心臓に
安らぎを与えただろう

冷えたつま先
にぎりつぶした葡萄

大人ぶる十三歳みたいな金柑

あと一歩って
自分の歩幅も知らないくせに

八百屋できゅうりを買った
おかあさんに、
しんそこ、
なりたい。

ティディベアは
皆うつぶせ
こっちを見てるから

芝のジュース
夏休みの匂い

受話器の向こうを
ウミガメが泳ぐおよぐ

ていねいにむいた
蜜柑の皮
けんかがほぐれる

冷えた窓枠
ナツメグ球に冴える二十六時

息苦しいけど
堂々と歌える帰り道が好き

ジンジャーエールの泡たちが
弾けて空に逃げる度
死にゆく私の一部分

どこでもないどこかに
家を建てて
玄関の前で眠れたらいいのに

夜の隙間に人差し指を引っ掛ける
黒く染まった手に天の川

誰も夢の本当の終わりを
知らないのです

父の袖口は
何かを避けてのびていると
はっきり知る

お母さんをやめて
鏡のいろして
しゃべる生き物になって

三月の終わりは
四角い砂糖のようで
きれいな別れをぐるんと混ぜる

いっせーのーせ
で光になる演技

船の名を忘れて海に会いに行く

あいうえお順に並んで米を研ぐ

ピーマンの空洞だけが頼りです

海に降る雨
暗闇で手をとるはずだった

生活の助走
起きぬけに飲む水道水

バスタブが狭い
なんにも悲しくない

焼き畑をじっと見る
そこになかった火

類語辞典
言葉はみんな恥ずかしそう

椿落ちてなお重さを信じない

メリーゴーランドの馬は
ぶつからない

魚影が先か
慰霊が先か 

暗室で
鵞鳥にされたことがある

雨の日は保健だよりに二人乗り

寒村が
チョコレートからあふれ出す

着払いで枕詞を送られる

花守の
代わりに
貂のぬいぐるみ

「ばんぺいゆ」って
唱えてすぐに
夜の底

そよ風の
ために書式がそろわない

弦楽器と
見分けがつかない
小学生

一月は銀紙がすぐ底をつく

東京都には
お似合いのへびいちご

そう遠くないうちに火を
絶たれるよ

春の蟻天動説の美しさ

春は曙鏡台に梳鋏

魂が
肉体離れていく瞬間
モニターの波形が
滑走路となる

独活


酢味噌和えも
きんぴらも
お一人様も好き

ファミリーツリー
たまに手折りたくなる
いくつかの枝葉

桜並木のアスファルト
ピンクの水玉模様
一家離散の跡

竹の子が
昼寝をやめろと
背中突く

経済の背を 追うように
空模様まで 冷え込んだ
死装束の 花々が
滑稽なだけ 散歩道

名前で訝しむのは偏見だ

コロナビ－ル一杯どうですか？

無知から生まれる恐怖。
そんなものに怯えるなら
明日のご飯を考えなさい。

ちょっとだけ 残しておいてと
頼んだら
一口弱しか 残さない父

てるてるの頭ばっかり 照る落雷

おはようと おやすみなさいが
同居する
３LDK 四人と一匹

ああ眠い いやはや眠い
まだ眠い 
ツツジの花でも 吸いすぎたかな

ポッカリと
浮かんだままの 入道に
包まれてたい 全て忘れて

逃げてゆく2月が遠いまだ子供

医者の説明はつづく
耳の遠い祖父は
おれを見ている

かつて被災地から
間違い電話があった
同じひとから二回

おれは出られたけれど

おれの右心房は
うれしんぼう
おれの左心房は
さみしんぼう

祖母は最近
見えないだれかに
しきりに手を振って
なにかを待っている

拳闘させていただきます
折って連絡いたします

ビジネスは
このくらい暴力的だ

厳しい
と
正しい
は
他人の空似

オオマナブトキシロを
標本にした
ラベルを書こう
大、学、時、代と……よし。

ほおづえを解いた

時間よ
そんなに急いでどこへ行く

かかしとなった長男が
旋回するカラスにからかわれ
穀風に震えている

肩に彫られたあの鳥は
正午になると
壁掛け時計へ出勤し、鳴く

世界の終末
占い師は
水晶玉で
ボーリング

とおくに行きたいと思った
やたら柔らかいバナナをむくとき

めくりめくる夜
ステープラの強さの単位は枚

電源を切っても
赤いランプのついたテレビ
そんな感じの朝早く

眠れないのなら
おにぎりを握ろう
溶けてゆく塩のおと

掻いてくれと
服を脱いで丸まる父の背中

わたくしから はみ出たものを
なかったことにして
カミソリは光るのを止めた

街灯で止まれのれが光っている

もうそんなに青くない部屋で
花瓶の反射が天井を揺れる

左手に染みた匂いは遠くからする
あの河原歩いた日

さんずいと林の間でねむる
足はちょっとはみ出して

しりとり、の次はりんごの帰り道

人生を鍋で煮込んでみたら
底が抜けた。

友人と云うには遠い人の自死

薄い胸の中に宇宙を飼いならし

自らの首に縄をかけるとき
やっとあの人の気持ちがわかる

月の夜きみを迎えにゆく魚

ペンギンの眠る駅まで逃避行

霧中を駆け抜けるための赤い靴

冬薔薇 切られたあとの赤い茎

魔法瓶の魔法がとける時間頃
お茶しませんか 猫舌の君

並木道
落ち葉の乾く甘い香は

亡き祖母の居た部屋に似ていて

目覚ましの音より早く目が覚める
今日はあなたとさよならする日

エコバッグ忘れた僕は
食パンの神様みたいに
店を出るのだ

図書室は
ちょっと春までねむります。
ひよこが来たら
おこしてください。

春眠に脳をがぶりと食われてます

山肌に墓石ささっている四月

食パンのくぼみ戻らぬ春の宵

炎天の足裏の影と支え合う

取れそうなささくれ取らぬ春の暮

山肌に墓石ささっている四月

炎天の足裏の影と支え合う

行く春に食器重なる音一つ

静脈は手にあおあおと寒卵

流れ星この村に皆生まれ死ぬ

重力に永久に溺れて蝶も人も

寒卵割っても君は出てこない

冬の雷出席に○ゆっくりと

腐らない桃があったら捨てなさい

解いた折り鶴を戻せなくなる

焼きそばの皿に胎児のようなえび

遠雷よ水子は兄か姉か

行く春に食器重なる音一つ

少し開く金魚のえらに真の闇

短日のうどんぽろんとざるを出て

麦わら帽逆さに持つと軽くなる

行間を泳ぐ魚が句点食う

ビル街の心臓めいている桜

実家から帰って
上着の犬の毛を
黙々取って
すんすん泣いた

クラスの子みんな
大好き
な猿

葬式の帰り
妹まだ泣いてて
わたし
田んぼ数える

こどもの泥玉砕いて夕飯

ほっとくと鳥になっている子供

カマキリの結婚式を挙げる姪

ママ、おんぶして
って母が泣いて言うから
私は母をおんぶする

じゃあお母さんが
おにんぎょう役ね

卒業アルバムで
笑ってる方の佐藤が
死んだ方の佐藤

むずかしいかんじを
しらなくてごめんなさい
でもこれは
うつくしいうみ

野球部の安藤が轢かれたのって
ラブホの駐車場やって
すごい大人やん安藤

母の運転する赤いミラージュで
私たち家族は
どこへだって行けると
思っていた

爪楊枝の旗みたいにそっと
さよならのフラグが立ちました

社会の先生の自慢は
お兄さんが
阪急電車の車掌さんてこと

おままごとは
どっちかが飽きたら
急に
殺伐とした家庭
みたいになるね

蝶の鱗粉
指先の黄色を
半ズボンの裾で拭く

少女が四人
閉じたチューリップのように
頭つきあわせ
誰かが秘密を打ち明ける

リボン
解けて落ちて信号はまだ青で
なのに
もう取りに行かないのね
わたしは

水泳バッグを蹴り蹴り歩いた
あの時のうなじの熱を
今なら孤独と呼ぶだろう

小説を読んでるうちに
日が暮れて
薄闇の部屋は
ニベア缶の青

畳の上に
脚をにゅうにゅう投げ出して
台所のトウモロコシのこと
考えていた

ダンゴムシは
丸く身をちぢめて死ぬのだな
ころころと
風に乗りやすい
かたち

まどのすきまから
とうめいのへびみたいに
かぜがするする
はいってきたよ

山羊の眼と珈琲豆は
やけに陽気で哀しいし
空なんか
馬鹿みたいに高いだけ

土鍋で飯を炊く
吹き零れる瞬間を待ち
白から透明になりゆく
米とわたし

病棟には
いのちが漂っていて
黄色い液体とか
銀色と
マーブル模様を作ってた

若い土筆は苦いから
お父さんにあげる

夢で彼の頬が
青黄色く腫れていて
目覚めてあれは
勿忘草とたんぽぽの色
と思う

けぶる春の薄闇
目覚めたら
幼い私と老いた私が
ここにいて
万能感が寂しく薫る

外国の空港の椅子で
足が床につかなくて
子供のように
走り出したくなりました

桜餅買って
電話帳くらいの厚さ
とか
隠居した比喩たちが暮らす
シェアハウスへ

あのピアスは
花びら散る春の夕闇に
ほろり、と
わたしを捨てて行ってしまった

あの子に放たれ
ちゃんと私を刺してから
ミツバチみたいに死んだ
不憫な言葉

朝　温かい一杯のココア
大変な今だからこそ
小さな「いつも」を
続ける

365日の紙飛行機
口ずさむたびに

学校へ行きたい

真新しいＴシャツのような

時間

こいのぼり
２メートルの
距離をとり

時計の針が六度進む
東はいいねが十増えて
西は十の命が消えていく

もしも私が死んだなら
宇宙の果てを確かめて
三途の川をわたります

教科書の偉人たちは
みな
サングラスをかけた
ちょい悪になっている

世界地図を眺め
空想の世界も
自粛している自分がいる

大きな声の悪口は
声よりあなたの
目が怖い
心がシュンと
しぼんでく

周りの友人が
パワフルすぎて
自分らしくが
見えてこない

ぽぽぽぽぽ
春は一気に
やってくる

君に会うためにどうやら蝶が要る

限界を決めたら蟹に怒られた

遠雷と言葉が流れ込んでくる

海月の子ミサの火種のように浮く

梅雨の星
キリンの濡れた目のなかに

八月が終わる
卵に黄身ふたつ

告白をするには月が大きすぎる

ビーカーに星の明りをためておく

「ごみ箱を空にする」
「初雪が降る」

こちら操縦席まもなく春の月

リラ冷えの異国の夜に舟を出す

知らない街で
知らない定食屋に入り
知らない道を歩いて帰る
私の日曜日

僕が君を好きだと言ったとき
君は風が強いねと言ったんだ

歯の抜け落ちた象の花子が
真っ赤な林檎を食べるところを
ずっと見ていました

レタス剥く空いっぱいの終末論

牛乳パックを
綺麗にたたみ地平線

五で割って八を掛けたら春の水

幾何学模様の空
ゼッケンの数字が
見えなくなるまでが
僕の青春だった

君の悲しみの角度はいつも鋭い

プールのあとの数Ｉは
夏の匂いが心地よく
６がクジラに見えました

母の名に子を足したのが私です

雷鳴の夜に臓器を抱え行く

箱詰めにされて飼われている春愁

焼きプリンの底に
夏を追い払う
月が潜む

青い静寂が
咥えタバコで
哲学していた

幸福とは
深爪した親父が
缶ビールを中々開けれず
なお　微笑むあれだ

僕の小さな世界は
くしゃみやしゃっくりの
風力発電で動いてる

猫が座禅を組む
側で
僕は尻尾を立てている

逆立ちする犬
群がる信者たち
DOG GOD

母が見せてくれた
僕の母子手帳は
まるで詩集のようだった

僕は陶然とした不老不死の蝉

SALE!　を
去れ！　と
読んだあの子は無事
反消費主義に育った

星を見渡すって
給料日前に
残った小銭を
机の上にひろげるみたいだね

私が自然体でいるために
あったことにされた二重幅
無かったことにされた産毛

廊下
風がさらりと吹き抜ける午前

夏の匂いが消えていた

生きる実感を得るために
自ら波風を立てる君

柔軟剤が人気なせいで
駅のホームを
忘れたいあの人が
何人も通る

胃に溜まった生きづらさが
喉の奥から
とっぷりと
水銀みたいに上がってくる

寒さをタイツに染ませて
立ち漕ぎの坂道

父の人間ドックの結果が届いて
私は少し自立した

束の間の閃光になる為に死ぬ
なんて癪
至る処に爪痕を残す為
生きると決めた日

誰かの為に生きたくて
愛を押し売りする相手を探してる

湯船に張られた溜め息の模様

象徴が横断歩道で死んでいる
この場合だと象徴は鳩

醜くも美しくもない人たちと
レジに並んで順番を待つ

目が覚めて、
まだ許されていたいから
俯瞰で痒いところを探す

安かった鶏むね肉の状態を
気にかけながらする遠回り

パック寿司に
値下げシールが貼られてく
儀式をみんなで見守っていた

東京に埋もれちゃってるおじさん
の骨を拾ってあげたい、全部

ある日から車を恐れぬようになり
数日後には死んでしまった

先輩が日高屋のドアに挟まれて
ぼくらの星はまだまだ遠い

珈琲をこぼした時に
君の言う
すごくきれいな川を見たんだ

自販機に信州そば茶があるだけで
守られていると思える

火になって皆さんに優しくしたい

高橋さん、
そっちには北極しかないょ

人が好き　強い力でみかんを握る

先祖代々の墓から
はみ出てしまいそうだ

しにたいつくえのかどがするどい

正直な犬だね絶えず変化している

郵便太郎が遠くに行って死んだ

まだ大丈夫な人の自画像かな

びしょ濡れの短歌の僕が先に行く

中野区で網の目をすり抜けている

明け方の良い川が語りかけてくる

ポエジーが天井裏で死んでいる

友だちを作り続けている宇宙