詩のない場所で
くつ下のかたほうをみつける

花束をつぶさぬように
乗り込めば
アンテイアめくバスのひととき

さくらいろの
もうふに
犬はくるまれて
春のめがみのつかいに変わる

うえはーす齧れば春の火の匂い

保冷庫の
青いひかり
　に濡れながら
受胎告知のちんもくを抱く

きりたての前髪
風になびかせて
たるとたたんのようなきゅうじつ

瘡蓋をやぶりエーデルワイスの火

おとうとのねごと
を聴けば
はみんぐのように
編まれるわたしのなまえ

三月の雪
あこがれた大人ではなくても
雪がうれしいままで

降り出した雨の向こうに
あまりにも
パステルカラーの整形広告

目覚めたらインカ帝国春の夢

ＭＴ車のブレーキガガガ春の暮

ウィスキーを注ぎ氷のララララ

春雨に濡れるがままの三輪車

肉球のぶあつい春の雪の原

嘆きの谷ミモザの花の散る深さ

山朧指を濡らして土筆摘む

春の日は少し怖いくらいでいい
ウィルキンソンの強炭酸とか

答案用紙
はなびらのように
湿って

死亡したと聞いた日の
とてもあかるい陽のようだった

ゴスロリを着たかったこと
図書室の前の木枠の大きな鏡

バスは私を震えの中に閉じこめて
どれだけ眩しい朝も走った

卒業の日の青空の透けている

蚕蛾がなくした口のその分を
震えるためのちいさな翅

胸の矢を抜かずにうたえ
血の色は花の色より遠くへ届く

羊羹を薄めに切れば春の昼

ヒヨドリに揺らされて散る
花びらの
ように
野原に呼ばれてしまう

誰なのか知らせなくても
バスはただ
にんげんのため少し傾く

宿怨は砂鉄のように
しゃらしゃらと
雨のにおいに引き寄せられる

どの嵐の中も妙に明るくて
シンクの銀は夏の仮縫い

仇になる優しさを受け逆光の
なかのミモザへ目を逸らす午後

槍っぽい雨をかついで労働者
なぜ透明になろうとするの

紅梅も扁桃腺が腫れてるの

朧月パトカーの点滅寂か

この国で生きていくから
受け取った印鑑を
白紙に何回も押してみる

雪柳　魔法少女のいた世界

モネの匂いを
クリームパスタに絡める

カクレクマノミが桜になってゆく

赤べこのちいさくゆれて風光る

星ひとつない晴天に
マシュマロの
表面だけを丁寧に焼く

くしゃみしたら百人

銅像は海を見下ろし草若葉

鞦韆の鎖が濡れていて滲みる

三月の醤油をはじく目玉焼

透明にはみ出すボンド木の根明く

一列に置くランドセル鐘霞む

病窓をテトリスみたいに牡丹雪

月が消えたら
探しに行こう
紙の袋に
入れっぱなしの
種々の種

忘れ物の
スマホはまだ鳴り続いて
上海はいまごろ雨

バイト後釈迦らしく寝て春の雪

適度に踊れる六畳半
を探しています

四月って
燃え盛る炎
東京の新生活も
震わせていけ

朧夜の
マフィンぽそぽそしてさみしい

犬から出た預金

妹の裏側に降る桜雨

新しい男の部屋の匂い
仄かに漂わせて
朝の通勤電車

アトリエに人魚の恋が落ちている

あたらしいことは
いつでもこわいから
これも
くさかんむりのかみなり

淋しさを確かめるには
はしゃぎ足りない
卒業したての春の海

幸福の初速は不幸

ツバサたちいいかいこれが花の雲

猫カフェで大統領を食べなさい

引っ越しの如雨露が重い春の月

丸窓の
丸い
日溜り
風信子

泡立ちの濃密になる二月尽

春雪の鉄路をあおくあおく去る

哀しみを
黙す
ちむたむ
蓑虫　父さん

るなちゃんはかぐや姫です
怒られて月に戻ると笑っています

じいちゃんに聞こえるように
神棚へ挨拶するときっと叶うの

曾祖母が
毛糸の帽子編みおえて
子ども食堂まで歩いてく

戦争でニ発撃たれたじいちゃんの
精霊流しオレンジ綺麗

潮騒を抱えて帰るひとの
うずまき管は
巻貝としてある

バス停の椅子には浅く腰かける
バウムクーヘン食べてるまひる

もちもちと
硝子に雪を描かれて
バスは樹洞のしじまを運ぶ

野苺のかたちの
えくぼ持っていて
きみは
どこでも生き抜けそうだ

四部休符
みたいなきみの
はねぐせが
春一番を抱きとめている

放課後の窓辺にすわり
惑星の心地で
すすめる未来のはなし

めぐすりの光まぶしく
すこしだけ
溺れてみたい春風がある

つまずいて
ふと出した手は空を切り
広がる手押し相撲の花野

ハチミツ色の街に紛れて羽をもつ

桜を喜べない春も蓄えてコインラ
ンドリー

海で私の声がしたら
それは偽物です
窓辺に置いた花瓶の中を
よく見てください

春愁で明日の句会は休みます

川底をさすらって
割られて磨かれて
苔にふわり抱かれ
小石になった
ばあちゃん

父の背を
うどんのように踏み捏ねて
部長の愚痴を延々と聞く

朝日さすベッドの母の手を取って
死なんといてと言えばよかった

空爆の続く街
瓦礫の陰に並ぶ犠牲者の入った袋
右から三番目が私の死体だ

透明な色をした
涙より軽い
風船

好き

海の色は
抱卵の鬱
風切羽が
おちている

遠ざかる舟
とけてゆく岸
雨音の
うすい麻酔に

ゆめの
つぼみ
もうすぐにがい
糖衣錠

雨のリズムで
地下の画廊へ
芳名帳には
花の名を

旋回している
影の禽
摘んではいけない
花ですか

花朧はがきは龍のあいまいな消息

日榊の匂いこぼれて羽のある

んめ、んまと父はいってた梅と馬

LINEが生命線ですふきのとう

春愁をまどろむマルドロールに拳

幸せがバレないようにホルン吹く

バターを切り分ける
パンに塗る
バターの残りを冷蔵庫にしまう
すこし泣く

なにもかも許したくなる青空に
日和ることなく行けモノレイル

小雨降る図書館の静けさを聴く

ほっとみるく
あったかいのは
おとうとが
ミトンをはめて運ぶから

マリッジブルー
三角コーナーに
銀杏切りのにんじん

はじめまして、よろしくね参考書
私が三代目の持ち主です

海亀にうまれたような午睡のあと

桃に刃を滑らせるとき
思い出す男の子がいる
影絵のような

青鬼灯まだ夢で泣くことがある

春霞口紅の蓋に傷がある

友は性適合手術選ぶ早春

思い出の中でも勝手に歌うひと

桜の中
ランドセルは
入学の子の有り余ったちからで
めいいっぱいふりふりする

素人じゃないとの、
事に就いて全くの素人

憧れのヘアバームで知る
マグノリアの香り

陽炎のピアニッシシモ猫の鈴

難しい事を言われても困ります
前世は蟻ですから

水底のダイヤモンドの自転車は
三日月の日だけ浮かびあがる

春色の切符を五枚切る仕事

ぬるい風置いていかれて雪柳

狡いから尻尾をひとつくださいな

抱擁を習えなかった腹いせに
スワンボートは純潔ばかり

億年を蔵う待ち針春の星

花束の抱きしめ方が分からない

逆上りしなくても羽化するからね

履歴書の空白に鳩が出ますよ

靴紐を結び直している人の
膝の丸みに降りそそぐ春

姉さんの雪路もきっと解かすから
ミモザおまえを火のように抱く

やさしさを
あなたはいつも間違える
ガーゼハンカチ
風にひらいて

平日の日比谷をゆけば
白昼夢みたいに影のない映画館

薬指だけ冷えたままの手で握る
傘の柄 たぶんまだ雨は降る

ケーク・サレ
数日分のつくりおきするとき
未来は鮮明になる

足跡としてのみ今はひかりだす　
月のかけらの混ざる砂浜

真っ白な生クリームが桜味
こういう女になるね
じゃ、また

タンブラーに
白湯を入れて持ち歩く
ひとりで生きる準備みたいに

少し遠くをがに股で歩いてる
ファーの頭巾
被った君は雪のライオン

僕のやさしさはきみ由来です

さくらいろの
もうふに
犬はくるまれて
春のめがみのつかいに変わる

うえはーす齧れば春の火の匂い

きりたての前髪
風になびかせて
たるとたたんのようなきゅうじつ

瘡蓋をやぶりエーデルワイスの火

おとうとのねごと
を聴けば
はみんぐのように
編まれるわたしのなまえ

音域の届かないミモザになるの

降り出した雨の向こうに
あまりにも
パステルカラーの整形広告

ウィスキーを注ぎ氷のララララ

おのおのが傷つきながら花器の花

雛あられ受ける左手の欠損指

死亡したと聞いた日の
とてもあかるい陽のようだった

桜がまだ記憶を持たなかった頃
わたしはよくＵＮＯを言い忘れた

胸の矢を抜かずにうたえ
血の色は花の色より遠くへ届く

羊羹を薄めに切れば春の昼

三月の夜の青さを押し上げて
黄色くひかるテーブルランプ

誰なのか知らせなくても
バスはただ
にんげんのため少し傾く

ゆびさきを思い出すほど溶けてい
く雪のあなたは盲目だった

三日月に春の夜空は支えられ
椅子の形がくっきり見えた

どの嵐の中も妙に明るくて
シンクの銀は夏の仮縫い

トライアングルの
余韻にくすぐられ
春はやさしい積み木と思う

槍っぽい雨をかついで労働者
なぜ透明になろうとするの

冬眠のあとのあなたを抱きしめて
小川のような告白をする

モネの匂いを
クリームパスタに絡める

赤べこのちいさくゆれて風光る

風船にそっと指紋を奪われて

病窓をテトリスみたいに牡丹雪

空のベビーカー滑る店に春の夕

八朔でできた海月の青い毒

ツバサたちいいかいこれが花の雲

おろそかな地下街の少女とサロメ

Tシャツのうさぎの
プリント白すぎない？
（天使を殺せば雪のにおい）

マグカップの持ち手
インテグラルみたい
たぶん
進路の話をしてる

潮騒を抱えて帰るひとの
うずまき管は
巻貝としてある

九九ぜんぶ言えたひとから生前葬

バス停の椅子には浅く腰かける
バウムクーヘン食べてるまひる

もちもちと
硝子に雪を描かれて
バスは樹洞のしじまを運ぶ

四部休符
みたいなきみの
はねぐせが
春一番を抱きとめている

指先が
鍵盤を離れそうでいま離れる、
遠く月面がある

花びらの川面は
春の寝姿をかたどり、
浅くオールを入れる

朝日さすベッドの母の手を取って
死なんといてと言えばよかった

海の色は
抱卵の鬱
風切羽が
おちている

遠ざかる舟
とけてゆく岸
雨音の
うすい麻酔に

席譲り車窓から見る昼の星

差別語をすごくやさしい人が言う
わたしは木造建築になる

バターを切り分ける
パンに塗る
バターの残りを冷蔵庫にしまう
すこし泣く

海のこどもだった
今でも
ペラペラの
布団みたいな
冬も含めて

十二時間思いがけずに寝た後の
世界を救ったような静けさ

マリッジブルー
三角コーナーに
銀杏切りのにんじん

春霞口紅の蓋に傷がある

鳥たちは裸祭りの夢を見る

人は10cmで溺れるらしいから
食後のコーヒーなみなみ注ぐ

しぼしぼと
雪のかけらがとけてゆく
フロントガラスはことりの温度

正解の音をください
なにもかも
手から溢れて残らない夜

春色の切符を五枚切る仕事

億年を蔵う待ち針春の星

一人乗り用のすりガラスのからだ

寝たふりのおもちゃを
全部茹でてみる

平日の日比谷をゆけば
白昼夢みたいに影のない映画館

日当たりの良いリビングの
夕暮れに
苺のために隙間を空ける

ケーク・サレ
数日分のつくりおきするとき
未来は鮮明になる

たまご割る指のかたちに朝が来て
このまま春を待つことにする

皹割れの掌に余る冬銀河

まひるまの
あなたに毛布をかける日の
手つきで海苔をおにぎりに巻く

ラブソングみたいに傷心したい
けどあいにく今日の夕飯は
とんかつ

狼狽えてなぞる手の傷春の雨

あぐらに慣れる前にうどん来る

うえはーす齧れば春の火の匂い

保冷庫の
青いひかり
　に濡れながら
受胎告知のちんもくを抱く

きりたての前髪
風になびかせて
たるとたたんのようなきゅうじつ

音域の届かないミモザになるの

気がつけば骨肉の愛沈丁花

ウィスキーを注ぎ氷のララララ

おのおのが傷つきながら花器の花

肉球のぶあつい春の雪の原

胎児のころ見てゐた春の森に今

雛あられ受ける左手の欠損指

山朧指を濡らして土筆摘む

春疾風口語の時代はまださむい

　　　　　＊奨励賞受賞の報に。

春の日は少し怖いくらいでいい
ウィルキンソンの強炭酸とか

春風や頭丸くて地球かと

答案用紙
はなびらのように
湿って

死亡したと聞いた日の
とてもあかるい陽のようだった

楽なんだ。
右に死人を運ぶより、
俺が左へ歩いたほうが

卒業の日の青空の透けている

蚕蛾がなくした口のその分を
震えるためのちいさな翅

春の星動物園に人多い

無花果に教えるひとはいないのか

どの嵐の中も妙に明るくて
シンクの銀は夏の仮縫い

夏が過ぎ水鉄砲は空っぽで
通り雨の語彙は顔見知り

仇になる優しさを受け逆光の
なかのミモザへ目を逸らす午後

トライアングルの
余韻にくすぐられ
春はやさしい積み木と思う

文脈は線路を渡り花びらの
ような歯型がうっすら残る

槍っぽい雨をかついで労働者
なぜ透明になろうとするの

ぶらんこは無敵の風に繋がれる

夜尿症ここに繋いでいるための

亀鳴けば結婚してもよいですよ

冬眠のあとのあなたを抱きしめて
小川のような告白をする

眠らない理由にきみを呼び出して
金平糖の数をかぞえる

私小説だから椿は美しい

カクレクマノミが桜になってゆく

赤べこのちいさくゆれて風光る

バスタブで抱えた膝に波寄せて
危うく浮かぶ領土を侵す

くしゃみしたら百人

三月のくしゃみの前の
一瞬の裏声のような
人になりたい

吐くために吸う息もらう春の土手

焼き鳥の一番奥に届かない
いちばん空に近かった声

朝早く遠くでビンを捨てる音
目覚めよソプラノ委員会

顔という顔がひらいたひなまつり

犬から出た預金

あたらしいことは
いつでもこわいから
これも
くさかんむりのかみなり

たよりなく伸びてゆく蔓
ふたりとも
手紙を書いたことがないから

酸性とアルカリ性と白鳥性

哀しみを
黙す
ちむたむ
蓑虫　父さん

木星とぼくの義眼でできていく
星座がぼくを見放していく

バス停の椅子には浅く腰かける
バウムクーヘン食べてるまひる

ガラクタを

必死に握りしめている
手放せば君と
手を繋げられたんだ

ミルフィーユ
全部の層にお化けいる

ほたるの灯
受け取るようにあなたから
借りる
おみくじ代の百円

受け売りの感情を曳く
筆圧は
なぞりがきドリルをさまよって

缶入りのドロップくらいには
きっとひとは皆ひとり

春愁で明日の句会は休みます

川底をさすらって
割られて磨かれて
苔にふわり抱かれ
小石になった
ばあちゃん

なめくじの蝸牛となる日退化論

んめ、んまと父はいってた梅と馬

幽霊のまちにはびこる風船語

ABCできればEがあるといい
あなたの山はまだひかるもの

味方じゃないよ
敵が一緒なだけさ

バターを切り分ける
パンに塗る
バターの残りを冷蔵庫にしまう
すこし泣く

たんぽぽのわたげ
とんでったけど
お前はどうするの

なにもかも許したくなる青空に
日和ることなく行けモノレイル

海に来て主語述語ある独り言

ほっとみるく
あったかいのは
おとうとが
ミトンをはめて運ぶから

海亀にうまれたような午睡のあと

桃に刃を滑らせるとき
思い出す男の子がいる
影絵のような

春霞口紅の蓋に傷がある

決して開けてしまうそんな僕だよ

遠くまで漕いでゆくため忘れるの
花の名前も櫂の重みも

億年を蔵う待ち針春の星

花束の抱きしめ方が分からない

急行が自由が丘に停まったし
次の秋には猫を産みたい

茨から逃れて娘をやめる朝
岬に立って岬になって

ケーク・サレ
数日分のつくりおきするとき
未来は鮮明になる

瘡蓋をやぶりエーデルワイスの火

音域の届かないミモザになるの

線香を焚く海亀の目を借りて

春の日は少し怖いくらいでいい
ウィルキンソンの強炭酸とか

死亡したと聞いた日の
とてもあかるい陽のようだった