みんなが仕事終わったころに
目が覚めて
暗いベンチでレシートを読む

少しずつ名前が嫌になってく春

家系図に太字で載っている君だ

全員で
画鋲を踏んだこともある

鳥曇り
閉じ込めてくれそうに本

春泥を掬えば俺に舟がある

狂った水で魚を煮る

ぎりぎり届く
妙な箇所に生えた
強い毛を
一生抜きつづける
この数奇な運命

素麺の素の字に惑わされて私たち

今は型から外れるため
縁をなぞっているところ

君が落とした名前を回収している

ストローの反対側でまってるね
溶けた氷で薄まる日差し

雨音の夜にこの身を沈めては
石だったころを思い出してる

六月に鏡とじゃんけんして負ける

花と打つときは花火の火を消す

君の声は言うなれば
上手に焼けた
五枚目のホットケーキみたいな
きつね色

うつむいたら
シロツメクサに埋もれた爪先
宇宙の
そう悪くないところにいる私

枇杷の葉の穴を覗く

こどもの眼を見つめる大人
ではなかった父が
見ていた風景

モッコウバラの重みに耐えかねて

死んだおじさんが作った
アーチ
最後の春

死んだ姉の名を持つ樹が
庭に作っていた木陰を
瞼の奥に探す

ざるの目で
ブロッコリーは
自我に目覚める

まだ声がするうちに雪を見に行く

白魚たちみんな僕の目を見ている

春の夢を
バッテリーに貯めて出かける

角砂糖の角をかじって春って言う

嫌なこと標本にして春を出る

ただ春があなたの隣にいるだけで
鉛筆の芯の減りが早い

君が去るこの感情に名を付けた
ヒポポタマスに似た発音で

春を裏返したら
波打ち際の光が閉じ込められた
海の匂いがしたのです

８番のネジと６番のネジを
間違えて組み立てた椅子に
座っている、ずっと

だし巻きの中からほろり
春の底
雨は夜から滲み出てくる

母さんは眼を閉じている父といる

ＸＹＺのあとの春の海

レシートの長さに
目眩する夜明け
朝がみるみる大きくなるよ

君の言葉の余白に負けた

長い長い旅でした
これが最後の改札口です

たましいに蝶がとまっている

転生前夜

オムライスに
ケチャップで書いた
ガンバレが
ラップで潰された夜

私が死んだ後の夕焼けの美しさ

母さんの匂い回転ドアの中

ひらがなのきょくせんににた
はるのよる

２番出口の階段を上る間の感情
だけ連ねた日記

翻訳機もらって捨てた春の闇

あんずいろ
炙られてゆく
あきらめないゆうやけ

ドロップス融けて固まる春の宵

写真館で
盛られて
消された
わたしのホクロ

母からお下がりで貰った
「どうでもいい部屋着」が
捨てられない

小田原には
自販機がありすぎだった

思い出はそれだけ

今でも混同する
あの時海に落とし
ゆっくりと見えなくなったのは
網か
自分か

風光る真っ白な靴の子ばかり

幸せに暮らしましたと呟いて
今日で全てを終わりにしたい

春　呪う為にいちばん美しい私

嘔吐する全てがきれい　ジャム・
プリン・食パン・イチジク・
ヒアデス星団

悲しみが脳と心の引力を強めて
胸のあたりがきしきし痛む

驟雨
明日が来なくてもいいと思うのに
スニーカーを汚して
歯医者へと行く

ねむい
あおぞらを
扇風機でまぜる

世界のしゃっくりで
よるがあけていく

妹の保存液から
ころがった右のレンズが
風呂場を睨む

絡まったままのあやとり
ひきだしの奥で
明日も昨日を生きる

５年前の祝ったワインのシミが
残っていたトートバッグ

詩の言葉は飛躍して
その度私は地面に叩きつけられる

いつもより死が透明の季節来て
あらゆるひとの爪がみじかい

ゆうばえが人生にみえる
ゆっくりと
スプーンから逃げてゆくおかゆ

あきらかに正しくなくてこの私
桜をちぎることしかできない

きれかけのファンデーションの味
わたし、まだもうすこし、にんげ
んでいたい

地球のこと流れ星にしてください
十四歳の絵馬に降る雨

すきだとか言い合ったりして
放課後の教室のなか独りがふたり

うつくしい花瓶をこわす　雨の音
月へいけたらあなたを殺す

木の幹をゆっくり剥いでいくよう
にしずかな時間です　走馬灯

それはそれは春です　線路沿いに
もうかなしみがひとり佇んでいる

僕はこの色を
そう
黒と呼んだ

みんなが仕事終わったころに
目が覚めて
暗いベンチでレシートを読む

指しおり　駱駝が春を濡らしたら

鳥曇り
閉じ込めてくれそうに本

春泥を掬えば俺に舟がある

いつか
名前も読めない店で
よくわからない料理を
吐くほど食べ
散財してやる！

スニーカーの空き箱くらいには
使い道のある思想を渡したい

影が散りきるまえに帰る

地下鉄の中で始まるイグアナの話

おおかみがいなければ
わらの家に住みたかった

春だねだったか針金だったか
言いのこして消えた

六月に鏡とじゃんけんして負ける

何もない街だ紫陽花夜を光る

ヤクルトを飲むときの
得も言われぬ期待感
母のおまじないが未だに

効いている

藤の花はまだ咲いてない
手持ち無沙汰のくま蜂が
日傘の上をついてくる

うつむいたら
シロツメクサに埋もれた爪先
宇宙の
そう悪くないところにいる私

枇杷の葉の穴を覗く

こどもの眼を見つめる大人
ではなかった父が
見ていた風景

祖母の肌から立ち上る香りを
私はなぜだかずっと
紫水晶の匂いだと思っていた

モッコウバラの重みに耐えかねて

死んだおじさんが作った
アーチ
最後の春

名前は知らないけれど
彼のロバみたいな笑顔が好きだ

花びらが
気になる「まて」の
子犬たち

パリパリ　レタス
チギル　ムシンノ
じかん

だし巻きの中からほろり
春の底
雨は夜から滲み出てくる

細胞のような孤独が笑ってる
逆立ちしても影がない僕

母さんは眼を閉じている父といる

カルピスの白より薄く
悲しみの果てよりは濃い
僕らの憂鬱

祖父がくれた臓器の一部で
私は今も生かされている

オムライスに
ケチャップで書いた
ガンバレが
ラップで潰された夜

ゆうゆうを旅をする
もこもこを服を着る
だらだらを夢をみる

西日さす帰りのバス停留所まで　

　おしころす　わ
いてくる
　くちにする　な
　　　けてくる
あらわれる

閉店しました
の貼り紙

熱をもつ
セロハンテープの光り

母さんの匂い回転ドアの中

ひらがなのきょくせんににた
はるのよる

睡蓮の光を見つめる笠智衆

櫛形のレモンを搾る
絶え間なく静けさだけが
匂ってくる朝

さよならの輪郭を追う夕暮れの君
は真っ赤なシャツを着ている

咳が出る　　　　手が遠くにある

さくらさくらもうずっと頭が痛い

さくらばな水の行く末を見ている

まだ海が緑青色だった頃
ビーチカスプの数式を
砂浜に描いた

有言不実行ばかりが貯まる東京

爪を切る余裕のある時に思う
明日の昼は何食おう

ホームで聴く
鳥の鳴き声


鳥を知る人が居なくなっても

ビル上のクレーン揺れる藤の花

今日は春雨スープの日

煮干し食う
祖母の教えに従って

得意だった懸垂を
しようとすればするほど
悲しくなった

最近の兎の切手糊弱い

淋しかった

目的もなく
ひとり熱海へ行った
曇天の日

ぼくは宇宙生命体という概念を
そもそも疑っている

二十年近く前
渾身の詩を
友達に鼻で笑われた傷が
今もしつこく残っている

子を育て直面したのは
こんな母でごめんね
と思う出来事たち

土砂降りの航空プラザで
パイロット適正ありと診断される

三つめの観覧車から数えてはない
けどこんなに遠い東京

驟雨
明日が来なくてもいいと思うのに
スニーカーを汚して
歯医者へと行く

ねむい
あおぞらを
扇風機でまぜる

しっぷ　はる
ぼんやり　春雨

亡くなった人の記憶が
ワタボコリだっていうから
掃除はしない

花の名を
たくさん知ってる
いじめっ子

妹の保存液から
ころがった右のレンズが
風呂場を睨む

絡まったままのあやとり
ひきだしの奥で
明日も昨日を生きる

鞭打つ様な　春の雪
中途半端に溶けながら
体と心にへばりつく

５年前の祝ったワインのシミが
残っていたトートバッグ

七面鳥みたいな顔の人間達
自ら電車に入っていって
朝の喧騒を奏でています

この星のかたちをつたえるもの
として空を落下してゆく飛行機

地球のこと流れ星にしてください
十四歳の絵馬に降る雨

それはそれは春です　線路沿いに
もうかなしみがひとり佇んでいる

遠く響く明日がくる
雨の夜
カッ　カッと
ぼくに沁みてくる

白木蓮の花びらが
道に落ちて
はじけた風船みたいに
散ってる

誰か宿題を出してくれたなら
どんなに楽だろう

大樹よ
全てを肉体とせよ
ボクは百年をかけて
ゆっくりと死んでみせる

忘れられて
妖怪化したジャガイモの
紫の「眼」をやっつける

花泥棒は罪じゃないって
ジャン・ジュネも言ってたし私
日々が嫌なの

ビニル傘に
春の最後が
切絵貼り

少しずつ名前が嫌になってく春

ぐるぐるに巻かれて水の通り道

人新世さくらのしたの殉死から

春泥を掬えば俺に舟がある

あのころなりたかった
ティラノサウルスには
まだなれていない

忘れ物した子が
校門の格子を抜けていく

素麺の素の字に惑わされて私たち

夜のチューリップは
非行少女の目をして

君が落とした名前を回収している

ストローの反対側でまってるね
溶けた氷で薄まる日差し

六月に鏡とじゃんけんして負ける

飛び降りやすそうな崖にかすみ草

まだ声がするうちに雪を見に行く

もう胸のあちこちに君ねむり花

角砂糖の角をかじって春って言う

嫌なこと標本にして春を出る

映写機とフィルムの缶を抱えて
スクリーンに光を放つ祖父の
白い背中

ＸＹＺのあとの春の海

飛び降りるために行列できている
私の会社のビルの屋上

吻　　　下
接　　　の
も　た　春
度　し　と
何　を　君

私が死んだ後の夕焼けの美しさ

母さんの匂い回転ドアの中

ひらがなのきょくせんににた
はるのよる

２番出口の階段を上る間の感情
だけ連ねた日記

まだ海が緑青色だった頃
ビーチカスプの数式を
砂浜に描いた

翻訳機もらって捨てた春の闇

高架下のダンボールに降って
さくら
さくら

あんずいろ
炙られてゆく
あきらめないゆうやけ

ドロップス融けて固まる春の宵

賞味期限切れのお粥を食べる

風光る真っ白な靴の子ばかり

幸せに暮らしましたと呟いて
今日で全てを終わりにしたい

春　呪う為にいちばん美しい私

世界のしゃっくりで
よるがあけていく

貝殻をおとしてしまった少年が
海のゆくえを心配している

花の名を
たくさん知ってる
いじめっ子

ストローを、囓れば夏が来る予感

桜に雪が積もり散らしていた
のちの若葉を待ち侘びた

皮膚だけをあたためるから電気
ストーブは人間と同じくらいすき

きみはいつ初潮を迎えたんだろう
スローモーションの花火をみる

ゆうばえが人生にみえる
ゆっくりと
スプーンから逃げてゆくおかゆ

きれかけのファンデーションの味
わたし、まだもうすこし、にんげ
んでいたい

うつくしい花瓶をこわす　雨の音
月へいけたらあなたを殺す

黒板に残る「好きです」好きです
の主語考える十月の朝

殺人現場の
月は美しかった
まるで　ぼくを
生に促すように―

全員で
画鋲を踏んだこともある

一般に春の水より消える仮死

お魚くわえた飼犬
泥棒だ

自称恐妻家に真の恐妻家はいない

あのマンドリルは
死んだという

カラになった檻は
哲学だった

春だねだったか針金だったか
言いのこして消えた

うつむいたら
シロツメクサに埋もれた爪先
宇宙の
そう悪くないところにいる私

角砂糖の角をかじって春って言う

ストローの袋を幾重にも折って
水滴垂らす
明日も四時起き

死ねばいい

※これは個人の感想です

追伸がリボン結びを抱いている

たましいに蝶がとまっている

転生前夜

どうしても変えられないものが
この世界にはあって
謝り方ばかり
上手くなる私

泣いています
土の匂いが
かくしきれずに

愛　無　し
は　君　無
し　で　夢
無　し　は
僕　無　し

「こんな歌詞だったのか」
好きになる曲またひとつ
経験値の測り方

例えば
LINEを返す前に
ツイートする人種

さくらさくらもうずっと頭が痛い

這うように雨をあつめて春の泥

なぜ少女はあり少男はなく
青年はあり青女はないのだろう

今でも混同する
あの時海に落とし
ゆっくりと見えなくなったのは
網か
自分か

最近の兎の切手糊弱い

生来の性格否定されるから
やってられずに社会問題

相手の言ったこと
理由をつぶさに探して
大袈裟な笑顔で肯定する自分が
嫌いだ

どうしたって
美人にはなれなくても
綺麗になりたいんだから
仕方ない

間違ってないよと言ってほしくて
ひとりごとばかり言っている

生き生きと葉桜ゆれる廃病院

嘔吐する全てがきれい　ジャム・
プリン・食パン・イチジク・
ヒアデス星団

んー、あー、だけで
通じてしまえる
幾重にも複雑化した先で私たちは

花の名を
たくさん知ってる
いじめっ子

鍵の束の
きょうだいのようで
ちがうやつが
錆びているから
入れてあげない。

思い出も
ただデキゴトに成り果てて
USBに似てきた僕ら

木の幹をゆっくり剥いでいくよう
にしずかな時間です　走馬灯

また道に迷った
また道草をした
死ぬまでにたどり着くのか
はて
ゴールはどこだ

自分はやっぱり騙せないみたい
カラダと心が喧嘩してる

辛いときほど軽くなれる
捨ててもいいものが
はっきり見える

霞む山脈は
幻
動脈は太陽に透けて
実

隙間を異材で埋めてみる
これがね
案外いいんだよ

筋を失った
自在と引き換えに

経験は視力を奪う

僕はこの色を
そう
黒と呼んだ

認識よりイメージが
現実よりイデオロギーが
犬より猫が
大事なんだって

向かうは山か畑か異世界か
なたを担いだ楽しげな君

指しおり　駱駝が春を濡らしたら

家族たち
寝静まってる
丑三つどき
鯛のあら煮と
一人の時間と

雨音の夜にこの身を沈めては
石だったころを思い出してる

たましいに蝶がとまっている

転生前夜

大学の裏門が好きだったな
気取ってなくて
半透明な瓶の中にいるみたいで

咳が出る　　　　手が遠くにある

きみはいつ初潮を迎えたんだろう
スローモーションの花火をみる

今日出逢った鶺鴒と
不可分
昨日出逢った鶺鴒と

口笛で
少し待とうか布袋葵の
ある駅は
バスの裏口開けた事ない

フロントガラスについた
春の名残り

狂った水で魚を煮る

再収穫予定だった
豆苗がわずかな光に向かって
伸びるのを見て
ハサミを置いた

お魚くわえた飼犬
泥棒だ

警笛が鳴り
右を向いたが、なにも来ず
左を向くと
運命の輪が鼻先をかすめた

よくもこんなに遠くまで
はじかれたものだ

夢や理想から

あしたは早い
枕元で秒針がくすぐる

哀しくない人生も
どこかでは
配られているのだろうか

表現欲求は幽体離脱する
まつわる愛や死すら
空中から俯瞰して

世界を覆う膜や
自分の殻に
穴を穿つべく
空想と現実のはざまに
鑿を突き立てる

カンガルー
つま先立ちで
哀しい目

地下鉄の中で始まるイグアナの話

春の日に川の背骨を追いかけて
流されてたら遅刻しました。

廊下にてみんなの歓声聴きながら
今日も教室入れない僕

ソラマメの抜け殻 残る父の皿

雨音の夜にこの身を沈めては
石だったころを思い出してる

小波の打ち寄せる岸辺では
入れ替わり立ち代わり
人が水を綺麗だと讃える。

三人で影踏みをして
みっともないほどはしゃいで
それぞれのきもちを隠して

おひさまみたいなこどもらは
大人より
天国或いはあの世或いは死の
近くにいる

まだ声がするうちに雪を見に行く

白魚たちみんな僕の目を見ている

春の夢を
バッテリーに貯めて出かける

卒業の日
机の落書きの「死にたい」
に足した言葉は

「くらい愛してた人」

砂の城のトンネル
そっちと
こっちで
君と繋いだ手が
今も、海沿いの家で眠る

春を裏返したら
波打ち際の光が閉じ込められた
海の匂いがしたのです

映写機とフィルムの缶を抱えて
スクリーンに光を放つ祖父の
白い背中

細胞のような孤独が笑ってる
逆立ちしても影がない僕

春になるといつも
独り言が増えて困ると
祖父が独りごちる

伝えるために花びらを運ぶ風
ドミノのように季節は駆ける

明日が幸せであればいいなと思わ
ずにはいられない穴ぼこだらけの
夜がある

君の言葉の余白に負けた

たましいに蝶がとまっている

転生前夜

かぜのおとがするねと
君は葉と葉をゆびさした

私が死んだ後の夕焼けの美しさ

西日さす帰りのバス停留所まで　

柔らかい新芽に
襲いかかる遅霜は
人生の暗転と同じく
予測不可能

バイクのミラーに映った
いやに青く光る空
雨降りなのに