歯ブラシを買って夜桜持ち帰る

パキケファロサウルスが好き
春一番

内側の水を与えるように
指先から溢れてゆく祈り

波の背に投げすてた灯は咀嚼され
しずかにきょうがまどろんでいく

拳は貝に似て
オリオンを握りしめる

車窓から見る人の群れ
たましいは
こうして見ると
みんな
眩しい

さんずいの
ように
途切れたちんもくへ
きみは母音のといきをもらす

はなびらの
   点字を
たどるいもうとの
髪にながれる夜風のひかり

さくらばな、ほどの
微熱を
きょうこつに
かかえて蛹化する  ひるさがり

あの人のためのマーマレード
私のためのブルーベリージャム

花韮とおんなじようにくたびれる

皆さまもホタテと比較してみては

大人しくしてれば鱈になれたのに

ひらがなの町の夕焼け
野良猫に移されたかもしれない
あくび

５限目の鐘　寝る前にロンドンの
小さな夜と名づける木陰

訊かれたら話せる秘密テラリウム
として飾った小さな鳥居

鈴蘭がいまうなづいた一人暮らし

肉体の窮屈感　日永

百年後
ふわふわしてる
芋虫に
なって葉っぱを
齧って眠る

たましいに雲間の記憶花盛り

砂利音のきれいな更地薄い月

迫り来る飛行機の喉松林

花朧ガンマナイフで剪る腫瘍

花更けて火宅の人の口漱ぐ

生前葬春風に鳴る硝子壜

小糠雨の午后
古い井戸の記憶

真鍮の栞
窓から射し込んで
わたし
わたしの続きのわたし

レタスの葉を洗う雫はうつくしい
誰と生きなくても構わない

そうか、
君の神様は春が好きなんだね

花に鳥
ホモサピエンスにあるぴえん

　大学に
謎の絵がある
燕来る

ハンカチを落としましたよ
るっきずむ

ルービックキューブ
　　　　　きらきら
　抱卵期

たった今
指紋認証した人の
肩に桜の花びら一つ

旅客機として朧夜をやり過ごす

飛行機の来て遠ざかる春の月

ドライヤーの音が聞こえて胡蝶蘭

透明な水がふりつもった海の
磯巾着に訪れる
夜

桜蕊降る自転車を停めていく

みずうみを想う睡眠法でまた
水底うごめいて巨大蛸

コンセントさすときの音花曇

小さな薬局を秘密基地と呼ぶ

実家での思い出として茶の間には
森本レオが出ているテレビ

ポスターの裏に
誰かがいるような気がして
めくらずにおいておく

まだここに合格祈願ストラップ
大学生も浪人生も

白日のライオンわかるよ君のこと

捨てられない
片方だけのイヤリングみたいに
自分を大事にしてる

眠りから現に落ちて
夢の尾が
ラムネのように光に溶ける

目の裏に光る鬱の金魚でも
花の名前とかは教えたい

カルピスに
海が透けたら起き上がる　
洗濯が山盛りの日曜

両の手を器に桜、受け取って
あの世の底を日だまりにする

直線を鋏ぐらつき断ちながら
選ばなかった国に行きたい

眠れない夜が遠くを歩いている

傘だけが一人歩きする街中で
バターを売りたい気分だったさ

傷を負い太陽たっぷり盗まれる

ぐぅおうおう、ゆれて　滝桜

春眠にワオキツネザル
ふぁ～と鳴く

惜春に無知なペンだこ甘やかす

イカ耳は蒼白で待つ遅春

懐かしい母の紫煙の香
造船所の明滅に灯る蝋燭の炎影

履歴書に書くためだけの俳句詠む

片思いしてるあの子への同人誌

気分だけラクダのまつげ春疾風

満月の香りだけ掛かるマットレス

おかえりの狼煙を上げて光る米

猫の毛が付かなくなった
リビングで
スーツを着ても寂しいもんだ

桜吹雪で前も見えないから
今日は学校行かんとく

この日々が金平糖になるように
小さな棘を舌で転がす

良い夢も食べていいよと獏に言う

たましいを光に少しずつ混ぜて
いつか琥珀になる私たち

春の日に
住む ぜつぼう は
穏やかで
ふふふ とそっ と
流れてく

気晴らしに生きている
種蒔いてみる

ぶらんこに月光
学校にうさぎ

卵の殻を剥く
小さい頃の将来の夢を
ゆっくり剥がす

オトナになるために

サルビアが心臓なら　鳳仙花は癌
母さん、戻ってこないけど

ずっと言ってんの

泣いたから証明写真また明日

真っ白な一日などなく
壁の蜘蛛見ながら食べる作りおき

命って形で揺れる干した烏賊

先ほど夜明けに喩えたカップ洗う

腕時計
うつむく人だけの惑星

消火器の横で心に擬態する

笑顔振り撒き月曜の頭痛薬

翼竜の助走の速度夏あらし

夜桜がポップコーンに見えている

食用のアザミの食べられない部分

自転車を徐々に追い越す
明日で19

プーさんの傘さす児童右折して
住宅展示場が明るい

永き日の水面掠める背鰭です

透明な消毒液も遅日です

優しくないバイトの大人春の鴨

光の束をさくように
過ぎる四月の時計

眠る子の頭をなでるたび
胸の小瓶にたまっていく星の砂

もしかしてこの眠気
火星産

冷や波に沈むかかとが恋しくて
行くとこリストに追加する海

高層ビルの
影をつめこんだような百貨店跡

川面の照り返しは、眩し過ぎる

瑞々しい絶望が胸に溢れ、流す

さみしくてかわいいの。
夕暮れの童たち

ヘッドホン外して冬の星を増やす

生きていて扇風機売り場を通る

秋の灯の声から悲しみがうつる

忙しない季節がやってきたぞ
戦ぐ風に負けぬよう
僕は大きく　くしゃみをした

ぱなぱなに蝶ぱな蝶ぱとぴうつる

薬が増えてくる
歳ばっかりとってゆく
先が見えてきて　
未練が深くなる

パキケファロサウルスが好き
春一番

視神経の星座に連なる青絵具

波の背に投げすてた灯は咀嚼され
しずかにきょうがまどろんでいく

つま先が触れる
あなたは
海だから
凪いでばかりで目を覚さない

母さんが母さんをやめたいと言う
真昼の月のような寂しさ

さんずいの
ように
途切れたちんもくへ
きみは母音のといきをもらす

はなびらの
   点字を
たどるいもうとの
髪にながれる夜風のひかり

さくらばな、ほどの
微熱を
きょうこつに
かかえて蛹化する  ひるさがり

こいびとのあたまを胸に抱きこん
でねむればぎんがけいめく小部屋

みもざ咲く丘を
あなたと駆け下りて
こどう をえいえんにしたかった

ねむれない容積の中で
よるの頬杖を組み立　　ててから

はつ夏の木は隙だらけでしたので

夜の神経

朝の裸木

鏡台　散らかる
I MY ME MINE

古本の活字ふやかすような雨

私の見つけた秘密が暴かれて
あのひとはきょうはなよめになる

洋服を着たまま
シャワー浴びてみて
やっぱり体が嫌いだった日

あばら家に「鑑定無料」ある枯野

花に鳥
ホモサピエンスにあるぴえん

透明な水がふりつもった海の
磯巾着に訪れる
夜

コンセントさすときの音花曇

何も無い冷蔵庫だけが暖かい

起き抜けの空が青くて僕はもう
あの星までの切符手放す

感情を四つにわけて話すとき
わたしの舌の根にある砂漠

てのひらは内側だから明け渡す
ように繋いで　透けゆくあわい　

夜桜に少女の声で呼ばれ、見る
帰り道がわからなくなる

骨さわる
合鍵とかもつくったし、
そろそろながい旅にでますね

読みさしの本に栞を挟む手を
海沿いを行く電車が阻む

貝殻の模様の模写を繰り返す
夏、病室のカーテンを裂く

眠れない夜が遠くを歩いている

いつまでも未来ばかりの人生で
ニュースタイルにゅーすたいる

履歴書に書くためだけの俳句詠む

おかえりの狼煙を上げて光る米

 河になるから、
すくってください
できたら両手で、
すくってください

薬物の防止ビデオの幻覚が
美しかった　を消しゴムで消す

殺虫剤吹きかけた後のつやつやの
ゴキブリと床の冷たいにおい

ひとこと多い私
来世はフキノトウ

春闘のニュースつづいて町中華

順番にサランラップで包む
タンポポが動き回らないように

鉄琴が遠くで欠けて春霞

マラソンに遅れて話す菫です

こんぺいとう　珈琲透けて春の闇

なにもかも私のせいにする人の
パンツを今日もきれいに畳む

我慢などしなくていい
と言っている
1000円丁度のレシートがある

ヘッドホン外して冬の星を増やす

生きていて扇風機売り場を通る

知られたくない
過去があるわけじゃない
落としたキーホルダーを
自分で拾う

深海にひかりを配達する業務　

プルタブ取る
ゴッホの耳を取るように

生まれる直前の
逆に一人欠けているような

復讐に少し足りない円周率

車窓から見る人の群れ
たましいは
こうして見ると
みんな
眩しい

つま先が触れる
あなたは
海だから
凪いでばかりで目を覚さない

さんずいの
ように
途切れたちんもくへ
きみは母音のといきをもらす

はなびらの
   点字を
たどるいもうとの
髪にながれる夜風のひかり

さくらばな、ほどの
微熱を
きょうこつに
かかえて蛹化する  ひるさがり

こいびとのあたまを胸に抱きこん
でねむればぎんがけいめく小部屋

皆さまもホタテと比較してみては

🥺🥹🥺って
ふざけた面で上目遣かう
誰でもよかった分の１、君

鏡台　散らかる
I MY ME MINE

ふわふわのクマになって
そばにいる
よだれをぺったり
つけてもいいよ

ブラウスのほつれを犬歯で切るよ
うに惰性で春を生きたくはない

迫り来る飛行機の喉松林

洗い物は言い訳しながら
水やりはあやまりながら

春の風鼻にクリームついてるよ

生まれたら
育ってゆくしかないひかり
透きとおるまで愛してほしい

通過する
私のやばんを見抜け、
彗星。

小糠雨の午后
古い井戸の記憶

ゆーとぴあそんな程度の学歴で

死ぬまでの長い小路を
何気ない
詩が一緒に歩んでくれる

「ていへんかける
たかさわるに！」と
青葉風

たった今
指紋認証した人の
肩に桜の花びら一つ

嚥下排泄婚姻生殖死
くちぱっちは簡単に
越えていたのに

欲望が放射状に散らばる街で
綴る日記は右に傾く

春にいる技師が桜に指示を出す
大きく吸って止めて週末

比較的歩きたくない千歳飴

感情を四つにわけて話すとき
わたしの舌の根にある砂漠

マスカラを塗る間に開く朝桜

捨てられない
片方だけのイヤリングみたいに
自分を大事にしてる

死んだことある人は水っぽく笑う
一周、太陽から遠いので

見たくない
ものは見えなくなるでしょう
桜が降っててくれる間は

ひゃくねんを川べりで産み
目のふちを小指で掻いて
菜の花を摘む

両の手を器に桜、受け取って
あの世の底を日だまりにする

澄みわたる青空よりも
灰色のあかるい午後に
あぜ道は海

惜春に無知なペンだこ甘やかす

イカ耳は蒼白で待つ遅春

菜の花が次第に減ってゆく日々の
夏への速度息継ぎ浅く

喝采を浴びている夢平日の
午後に西陽のソファでねむれば

気分だけラクダのまつげ春疾風

猫の毛が付かなくなった
リビングで
スーツを着ても寂しいもんだ

風景に溶け込んでいた歩道橋
はじめて渡る　恋と認める

 河になるから、
すくってください
できたら両手で、
すくってください

海底の人が生まれた源に

命って形で揺れる干した烏賊

蝌蚪になりかける
震えは夜にある

顔にモザイクをかけることは
愛です　静かな朝焼けの

春愁を
切って錆びゆく
メトロノーム

鉄琴が遠くで欠けて春霞

プーさんの傘さす児童右折して
住宅展示場が明るい

永き日の水面掠める背鰭です

殺ったのはケーキ
だけど
ナイフはケーキをかばう　
それがユートピアだから

ここにいちゃいけない神を匿って
優しさについて考えている

白菊を挿すほどに瓶括れゆく

待っている人も待たれている人も
いない待合室の空き缶

生まれる直前の
逆に一人欠けているような

花韮とおんなじようにくたびれる

迫り来る飛行機の喉松林

むきだしに、春だ
折り込む袖口がひかる
夜空の摩擦に飢えて、

コンセントさすときの音花曇

あのときに破った卵の殻をまた
日傘代わりに使いたい夏

カニの殻ぱきぱきぱきぱき授賞式

本題はするめの味のするするめ

ベランダは月の容れもの
ありふれた口約束ほど
ひかってしまう

死んだことある人は水っぽく笑う
一周、太陽から遠いので

動物の愛情として首筋を
噛んでそのまま歩いて行って

貝殻の模様の模写を繰り返す
夏、病室のカーテンを裂く

臨月の微睡みのなか
缶切りの擦れる音は
星のなきごえ

おかえりの狼煙を上げて光る米

先方と肺を褒め合う緑の夜

永き日の水面掠める背鰭です

眠る子の頭をなでるたび
胸の小瓶にたまっていく星の砂

なにもかも私のせいにする人の
パンツを今日もきれいに畳む

潰されたおにぎり何度も思い出す
笑うことってプライドだった

生きていて扇風機売り場を通る

白菊を挿すほどに瓶括れゆく

深海にひかりを配達する業務　

目刺噛む草むらにアーッがひびく

さんずいの
ように
途切れたちんもくへ
きみは母音のといきをもらす

ねむれない容積の中で
よるの頬杖を組み立　　ててから

すぐスマホ落とす女の子と那須へ

分かち合う家族の秘密蝌蚪の紐

洗い物は言い訳しながら
水やりはあやまりながら

白鳥の背も蹴られたら青くなる？

通過する
私のやばんを見抜け、
彗星。

ゆーとぴあそんな程度の学歴で

飲めますね
これは、飲める　と
生垣の向こうの
桜を覗いたりした

旅客機として朧夜をやり過ごす

「斃れる」の読み方
わからないけれど
もうそこにきみがいないことだけ

あのときに破った卵の殻をまた
日傘代わりに使いたい夏

p.104、10行目だけ個包装
君の旅路の栞にしてね

続いたらスポーツだった春眠

春の日に少数だけが名づけられ
味噌汁作る一口コンロ

比較的歩きたくない千歳飴

厨歌しか知らなくて通れない

感情を四つにわけて話すとき
わたしの舌の根にある砂漠

夜桜に少女の声で呼ばれ、見る
帰り道がわからなくなる

「さよなら」で
　　割れたくす玉みたいだね
　　　　この世の果ての団地の桜

貝殻の模様の模写を繰り返す
夏、病室のカーテンを裂く

ひゃくねんを川べりで産み
目のふちを小指で掻いて
菜の花を摘む

直線を鋏ぐらつき断ちながら
選ばなかった国に行きたい

病棟の色鉛筆の貧しさを
バックパックで進んでく日に

手紙から午後の靄だけを吸う息子

おかえりの狼煙を上げて光る米

まるい窓に
退屈でないヨーグルト

葉脈のような傷跡
真っ白なからだに着替えるのは
百年後

サルビアが心臓なら　鳳仙花は癌
母さん、戻ってこないけど

ずっと言ってんの

夜行バス今日の占いもういいよ
案外いい日あと十二分

顔にモザイクをかけることは
愛です　静かな朝焼けの

順番にサランラップで包む
タンポポが動き回らないように

マラソンに遅れて話す菫です

殺ったのはケーキ
だけど
ナイフはケーキをかばう　
それがユートピアだから

眠れない人だけが知る花筏

知られたくない
過去があるわけじゃない
落としたキーホルダーを
自分で拾う

二等辺三角関係　遠いから
私はハッピーエンドじゃないね

ルマンドの地層にもぐる
ルマンドの欠片を拾う
わたしと目が合う

このひとに海老のビスクを
食べさせる

視神経の星座に連なる青絵具

春泥は水彩の滲み
胡麻化さないで描く怒り

胎中に掃溜めたまるシャガの花

プルタブ取る
ゴッホの耳を取るように

絶え間なく静けさだけを搾る夜

さんずいの
ように
途切れたちんもくへ
きみは母音のといきをもらす

みもざ咲く丘を
あなたと駆け下りて
こどう をえいえんにしたかった

はつ夏の木は隙だらけでしたので

知りたくば命を削れ蝶生まる

古本の活字ふやかすような雨

白くともタフでなければ辛夷の芽

春の泥鼻血と雑ざるゴーリー忌

(2000年4月15日没)

生まれたら
育ってゆくしかないひかり
透きとおるまで愛してほしい

ツツジには聴こえまくってる
（あたらしい
　ぞわぞわ
　ぬるい）
風の手がかり