夜と朝
春と夏との句読点
見つけられずに
粕汁煮る四時

丑三つ時
イカの塩辛ワタを混ぜ
混沌とした夜も寝かせる

蝿が首元を通り過ぎた　
光はあっち

君だけが居ない世界より
僕だけの世界の方が
断然マシ

シャンプーで
落ちきれなかったものたちが
つもりつもってあたしたちです

ひらがなにすることで得る免罪符

小言まだ耳に居座り大根切る

遠雷

魚は
暗い海に
居る

蝶に触れ
言葉の
　　鱗粉
　風へ

この寝ぐせくらいの　反骨精神

いまごろ
豆を食べなかった
二月を
思い出す

日めくりの
カレンダーを
早めにめくる

雨だれが
予告もなしに
蚊に落ちる

春の日は脳に砂糖が溶け残る

神さまがコーラを開けた時の風

二百個の手が繋がれて夏祭り

ベランダで春を看取ったあと
新しいサンダルを買いに行く

サイコロの一面にだけ降る驟雨

真っ青な空を泳いでいると
ふと、死んでしまった事を忘れる

安楽死させてください
音楽に生まれ変われる気が
するんです

古井戸に投げた小石の音を聞く
空蝉ひろい持ち帰る夏

もう絶交かかとで引いた線一本

しあわせの
二、三歩先にあるバナナ

端っこに写っているのが
父さんです

遠足の日
君がくれた卵焼きを
落としてしまった
その日から
人生うまくいかない

ビギナーズラックのように
生きている
綺麗に剥けた茹で卵食む

骨は骨　煙は煙　父は父

人間が決めた見えない国境の
右と左で赤い実がなる

ゼロコンマゼロ３の目で見てる海

梅雨時の日差しの白さ

図書室で二人並んで窓を見ている

僕たちはいつでも死ねる
バス停で祭囃子を背にうけながら

大洋の真上で染まりゆくバナナ

張りつめた林檎の背骨に夏がくる

鈍色の大団円の
外側を歩くための靴を履いて
水溜まりの底を探す

まなじりに渚が消えない五月病

君を他人だと思った日から
空が割れないよう祈ってる

なくしもの
行き場としての潮が抱く

背骨が許してくれないから
仕方なく見つめ合う

体と心と風の
変わり目に光る粉のような
十二歳の体操大会

勝手に失望された日も
つめだけはカワイイ

初夏の追いかけないと死ぬ電車

性愛が貨幣みたいに傷だらけ

ぺきぺきとエビの素肌を暴き出す
手つきで触られてる　くやしい

腰骨に花火みたいに咲く痛み

五月闇取り次ぐだけの電話切る

世界平和なんて
暫く訪れそうにないから
綿毛を吹く

言葉は葉っぱ。裏返せます。

認知症の祖母は

辻褄の合わない小説家になった

棺桶の中に水素水が入れてあった
のが気になった

管理者おらず
数年ほったらかしで
中身もすっからかんの
自動販売機を
写生する

今　何しようとしてたんだっけ
ってときって
大体
定規を探してるとき

貴方を刺繍する
何度も針で刺しながら

磨き残しが
歯石となって
生き方を
責めている

言い切れば舌先に火花が散る

deleteキー
押された文字は
地平線のしたへと落ちて
星くずになる

波の音にくちをつぐむ。
なれないハイヒールの
きみは人魚姫だろう。

炭酸のはじける泡のひとつぶで
これからだってただのひとつぶ

みずをくれない人に恋して
いちばん濃い花を咲かせる

命がないから
あんなに
からみあう ケーブル

室内で帽子をかぶるのは
命のうすれてきたあかし

手違いで地球にやって来た
火星人の顔して
物理をまなぶ

擦りむいた
ひざっこぞうに血が滲む
今日の夕日もこんなにまるい

だれの匂いも受け入れない
生きるなら
わたしはひっそり春の釣り堀

シャンプーのゆびさき　星の
まんなかでひかりになっている
さがしてよ

新品の笑い方で特許とろうか

夕焼けの　ポッ
朝日の　キャ
どちらも
いい声だ

晴れた日は　どこか
傷ついているのか―
太陽が　それを
修復してゆく

ロウソクを
吹き消せば
時間の周りに
湖ができる

墓石屋の暗がりに言葉を選ぶ

その人は
確かに何処かにいる
大抵は
一生会えないけれど

朱夏わたしあなた死んだら家族葬

信号の二色のもとの僕たちの
何を見ている傾く月は

全国のカラオケ舘のタンバリン
思い思いの旋律で飛べ

きれぎれの会話ばかりの教室で
干支を逆算してるキリスト

後輩に適当言っているときの
あたしの目が生きていてごめんね

浅はかな返事をしたり
愛したりしてあなたから
もらえる火種

控えめな場所を選んだ寄せ書きの
似たひとばかり集まった場所

卒業とともに校舎は閉ざされて
それでも光る廊下があった

先輩のいない夢でも泳いでいた
エイを水と抱えるガラスの厚み

晴天の街の中心　知人の知人から
生まれたての信仰を聞いた

羊羹にそのままかぶりつく夜の
四月のような寮の流し場

拝啓と書いて頭をあげるとき
あなたのように動かない月

終礼で配られた聖書が重い
循環バスの混んでいること

お土産のことで電話をした最期
そのままあなたへ向かう郵船

隣人が夜勤へ向かう
単色の麺をゆがいて
まだ生きている

梨を剥く
あなたはいつも騙されて
騙されるとき目を閉じている

白鳥のように眠っているそばで
あふれてしまうあなたの名前

鬱々と桃を食うから救えない

絆創膏に手描きのハート夏衣

手をつなぐと
君の形に手が歪む
恋をするとは
わたしを歪ませることなのだ

自分に嘘はつけないから
せめて野菜ジュースは飲む、
毎朝

かたつむりの足音が
聞こえそうな霧雨

みんなして
カップ焼きそば食べている
院生室よ
窓に花びら

一年に一回自殺する人がいる寮
その庭の白木蓮

補講から逃れて帰る　まだ明るい

朝日やわらかエスカレーターも夏

水を
そそぐ。
飛び跳ねているのが、
僕。

子供らを叱る自分も
草臥れて
庭の雑草すくすく伸びゆく

丑三つ時
イカの塩辛ワタを混ぜ
混沌とした夜も寝かせる

カレンダーを暗記できた
幼いわたし
発達障害という
言葉がない時代

子供服じゃ幼くて
婦人ものはぶかぶか。
そんな娘は
不機嫌な谷間にいる

誰かと誰かが結婚しても
変わらない僕の歩く速度

クッキーが焼き上がるのを
待っている私が一番
可愛く見える

とびこみの遅延に怒らぬ程度には
今朝のわたしはやさしいひとです

恋なんか知らないくせに
チョコレイト

焼却炉めいて夕焼けのワンルーム

遠雷

魚は
暗い海に
居る

蝶に触れ
言葉の
　　鱗粉
　風へ

金管楽器は
ずっと
影をひそめたまま

マスクの中は
隠したいあたしが
いっぱい

春の日は脳に砂糖が溶け残る

ちこくちこくちこく
アネモネみてちこく

僕たちが傷つけるものは
いつも
手の届く距離のものばかり

川沿いに乗り捨てられた自転車の
サドルの熱が叫ぶ　午後二時

消費期限が過ぎてるような
スリッパを擦り歩く父の音

教室の床の軋みに棲む孤独

ティッシュに唾をつけて
幼い私のほっぺの汚れを
拭いてくれた母へ捧ぐ日

古井戸に投げた小石の音を聞く
空蝉ひろい持ち帰る夏

死ぬまでの短いホームステイだよ
笑って生きて行こうぜみんな

飴色の蝿取り紙が揺れていた
田舎の祖母の六畳一間

子が生まれ
つけなくなった
イヤリング

もう絶交かかとで引いた線一本

しあわせの
二、三歩先にあるバナナ

端っこに写っているのが
父さんです

遠足の日
君がくれた卵焼きを
落としてしまった
その日から
人生うまくいかない

ビギナーズラックのように
生きている
綺麗に剥けた茹で卵食む

骨は骨　煙は煙　父は父

ひとり旅　片手はいつも写らない

母だけが家族のために生きている

あの夏のキリンが今でも家にいる

あの日
うさぎ小屋の鍵をかけ忘れたのは
私です

砂場のどこかに隠された
わたしのスコップは
結局、
最後まで見つからなかった

春まではまだ恋だった
白鳥が無声映画のように羽ばたく

梅雨時の日差しの白さ

図書室で二人並んで窓を見ている

株主総会が近づく春日傘

あの老人は次の私であり
あの若者の次が私である


時間

人生はいつもぼんやりした曇天

積みあげた本に
マンモスのフィギュアを乗せる

鈍色の大団円の
外側を歩くための靴を履いて
水溜まりの底を探す

下ろし立ての服
ほつれた肌着
バランスをとって、
今日も私は私

宇宙の端ってたぶん液晶画面

駅前にいた画家さんは今何処へ

世界平和なんて
暫く訪れそうにないから
綿毛を吹く

晴れた日でよかった


陽光が好きだったから

梅雨ですね
ゴミ出し網の下に
三匹の子蛞蝓が
世界に戸惑い
相談をしていた

大切に育て
笑顔を期待して
渡したミニトマトを
先生は受け取ってくれなかった

ゴミ袋のガサガサ音が
テレワーク会議中の
きみの邪魔にならないよう
気遣う

利息じゃなくて重みが欲しいから
今日も五百円玉を
梟の貯金箱に入れる

できる限り上を向いていたい
下を向くと二重あごになるので

炭酸のはじける泡のひとつぶで
これからだってただのひとつぶ

真昼でも仄暗い部屋
めだまになって
熱い恋のおわりを観てる

梅雨なら
黒髪にブルーベリーでしょ

過去を抱きしめないと
夏がどんどん痩せていく

もの思いするときは裸足になる

擦りむいた
ひざっこぞうに血が滲む
今日の夕日もこんなにまるい

「好き」過ぎて段々辛くなってゆ
く君と探している流星群

君と映る写真の空が青すぎて夏と
はいつもいつもあなただ

考えるな、好きとか。

ありとあらゆる可能性が
フッと浮き上がって
くることがあるね
毎日に・・・

―ケンカをするな
腹が減るぞ―
ネズミ男の　この
言葉が好きだなぁ

トマトサラダのある
風景が
なぜか好きだ

近所に住む
異星の友人と
ビー玉交易

浅い緑がよく映える
団地の鉄筋コンクリート
老女は独り一日を繰り返す

形状記憶とか軽いとか
速乾とか言ってるけど
私だけが知っている雨のにおい

イチゴの香りを飛ばして
梅を詰めた透明な瓶
しばらくおやすみなさい

父親は２キロ太った報告を
姉　母　僕の順で伝える

全国のカラオケ舘のタンバリン
思い思いの旋律で飛べ

後輩に適当言っているときの
あたしの目が生きていてごめんね

控えめな場所を選んだ寄せ書きの
似たひとばかり集まった場所

卒業とともに校舎は閉ざされて
それでも光る廊下があった

もちもちのぬいぐるみから
触れられて
水槽みたいにあかるい出店

先輩のいない夢でも泳いでいた
エイを水と抱えるガラスの厚み

天井に嵌められている蛍光灯の
落下を思う授業の合間

初日から居残り組に含まれて
うまく着崩しはじめた制服

晴天の街の中心　知人の知人から
生まれたての信仰を聞いた

羊羹にそのままかぶりつく夜の
四月のような寮の流し場

この近くではひとりの少女として
意識する歳月に生かされていた

予備校の寮へと宛てた林檎酢の
暗きに思う教室がある

年齢のわりにスーツが似合うから
そのまま歩く夜の公園

客のない店の
わたしがシェフであり
おすすめのとか
こだわりのとか

隣人が夜勤へ向かう
単色の麺をゆがいて
まだ生きている

なんとなく卒業をした
わたしだけ
此処から打ち流されてさびしい

手をつなぐと
君の形に手が歪む
恋をするとは
わたしを歪ませることなのだ

かたつむりの足音が
聞こえそうな霧雨

みんなして
カップ焼きそば食べている
院生室よ
窓に花びら

ここから飛び降りた先に
ほんとの僕がいる、
そういう人から煙草をもらう

花を摘む度に花瓶になる掌

補講から逃れて帰る　まだ明るい

転院は
はらわたを曝け出すように
服を脱ぐように問診に答える

梅雨寒の傘は傘立てごと倒れ

遠雷

魚は
暗い海に
居る

迷子に
なれない
街に
時雨

蝶に触れ
言葉の
　　鱗粉
　風へ

空がハープを
弾いたなら
七色ぐもが
おんぷとなる

広告の文字
まとった
四月のたね

雨だれが
予告もなしに
蚊に落ちる

ふたばの絵は
得意だ
熱心は観察日記は
そこで終わっている

二百個の手が繋がれて夏祭り

階段を踏み外した時の
衝動に、似た真夜中の半夏生

七十億人が生きてる
この星でスケッチしている
自分の意思で

真っ青な空を泳いでいると
ふと、死んでしまった事を忘れる

安楽死させてください
音楽に生まれ変われる気が
するんです

はじまりの夜に浸したマドレーヌ

味噌汁が冷めて温め直す夜

目を凝らせば、暗闇にも
青い場所があるんだよと
あの夜君は教えてくれた

胡瓜を切る時も
不安になるから
向こう側が
透けて見えるくらい
薄く切る私

わたしたちの祝日
魚たちの水葬

初夏の追いかけないと死ぬ電車

天の川夢中で開けたドアのこと

五月闇取り次ぐだけの電話切る

青嵐というよりただの嵐です

ムラサキの雲から
夏の足跡がうまれて
ぼくらは汚れていった

炭酸のはじける泡のひとつぶで
これからだってただのひとつぶ

ヒマワリの夏はいつも遠くて
時間の角が削られたみたいだ

坂道のどまんなかに寝ころんで
わたしと空はいまからともだち

生きなくちゃいけないきがして
制服の肩がふるえる　たぶん六月

中学の同級生がエンコウを
やめたらしい　電話線光る

不織布をまっかな口紅でぬらして
話しつづけた星のこと　夜明け

プリーツに吸いつく蝶を凝視して
わたしはあなたになりたかったよ

ながされる涙のわけをタクシーで
雨がふるようにほんとうの話

シャンプーのゆびさき　星の
まんなかでひかりになっている
さがしてよ

「好き」過ぎて段々辛くなってゆ
く君と探している流星群

君と映る写真の空が青すぎて夏と
はいつもいつもあなただ

夕焼けの　ポッ
朝日の　キャ
どちらも
いい声だ

泣く泣くかよった
そのバス通りで
気がふれてしまった
少女よ―

シネバイイノニ
柚葉に光る玉につぶやく

灯台に
　　夏を感じて
　　　　　かくれんぼ

あめふりのあと
しずかなとろみで
せかいが
うるおってゆく

やすらかに
ねむってるね
天の川

端っこは一人の方が似合うから
イヤホンをして、手をかくす冬

　このままの僕を認めぬ参考書
　「アップグレード」
　そういっている

父親は２キロ太った報告を
姉　母　僕の順で伝える

朝練の後のコンビニ
赤飯のおにぎりを買う堂々と買う

控えめな場所を選んだ寄せ書きの
似たひとばかり集まった場所

卒業とともに校舎は閉ざされて
それでも光る廊下があった

床板がシーシャに焦げた一昨年で
自傷を終えてしまったという

学校を目の前にしてここからは
噓ばかりが言葉になっていく

天井に嵌められている蛍光灯の
落下を思う授業の合間

裏門はわたしのために開かれて
窓から見える警備のひかり

年齢のわりにスーツが似合うから
そのまま歩く夜の公園

お土産のことで電話をした最期
そのままあなたへ向かう郵船

隣人が夜勤へ向かう
単色の麺をゆがいて
まだ生きている

白鳥のように眠っているそばで
あふれてしまうあなたの名前

才能はここまでだけど春うらら

絆創膏に手描きのハート夏衣

転院は
はらわたを曝け出すように
服を脱ぐように問診に答える

鯉のぼり食用ならば大味か

月餅を食べます。
金華猫が眼を閉じたから、
私が月になります。

身長計に沿わない背骨を
すこし怒られた

ひらがなにすることで得る免罪符

遠雷

魚は
暗い海に
居る

蝶に触れ
言葉の
　　鱗粉
　風へ

花を親を君を
ついでに
死を忘れ
三十六億年の
孤独

遠ざかってゆく
人から発される熱気
渦中の直中
照りつける
光を、光とは。

優しい人になどは
決してならぬよう
優しい人になどは
決してならぬように。

六月を目前にしては、
六月の根拠ならでは、
沈澱する塵芥の枠組み。

もしかしてもう
ただわたしのために
生きているのかもしれない老犬

来客に
あーどうしよう
あーどうしよう
猫は尻尾で訴える

上野駅は今、
異国の言葉を
聞きにいけます、
啄木さん

童謡を
短調にして
吹いてみる
まるでこの世は
世紀末

ティッシュに唾をつけて
幼い私のほっぺの汚れを
拭いてくれた母へ捧ぐ日

ポケットに手を入れたまま
さようなら

ハンガーに揺れるブラウスの
白さに衰えを見せはじめる陽射し

しあわせの
二、三歩先にあるバナナ

骨は骨　煙は煙　父は父

自律する羊に潰えた計画
健康のための安眠

君の睫毛に腰掛けて
牡丹の崩れるのを
見ていた
見ていた

逃げ出したこともありうる蛇苺

　てんくうを
　　　　とんでる
　　きみが
家族になり
　生きたあかし

世界平和なんて
暫く訪れそうにないから
綿毛を吹く

認知症の祖母は

辻褄の合わない小説家になった

波の音にくちをつぐむ。
なれないハイヒールの
きみは人魚姫だろう。

ヒマワリの夏はいつも遠くて
時間の角が削られたみたいだ

命がないから
あんなに
からみあう ケーブル

運命と気まずい関係

ありとあらゆる可能性が
フッと浮き上がって
くることがあるね
毎日に・・・

―ケンカをするな
腹が減るぞ―
ネズミ男の　この
言葉が好きだなぁ

ロウソクを
吹き消せば
時間の周りに
湖ができる

僕の言葉は
凶器か
ギフトか
笑顔の奥の
君だけが知る