何度でもだるまが転ぶ花曇

人間のかたちを崩す花衣

卯の花こぼれる道を歩く
これがあたしの希望です

世界、おれより楽しそうで悔しい

世の中は持たざるものに厳しくて
持つべきものもわからないまま

人生がどうにもならんときにだけ
涙を猫の背で拭いていい

パチモンのドクターマーチン
履き潰す十七歳を駆けた日のこと

金魚は名前を付けると溶ける

びしょ濡れのぬいぐるみ
真夏が軋む

仔犬抱き上げ
木洩れ日のファンファーレ

顔も知らぬ
父の生家に向かうとき
わたしウォーターリリーのつるぎ

むーみんのように
陽なたのあぜみちを
ぽちてぽちてと駆けるおとうと

そらんじる
ための
詩歌をだいている
ふたりで花を見せ合いましょう

さみだれの底を
素足でかえりくる
祖母の鬼火のようなあしどり

雨あがりの坂を
もむもむ駆け上がる
いなほのようなこーぎーの足

ずんむりと
濡れたからだを引き上げて
くるぶしに棲むにんぎょのなごり

毛玉の必要性ってなんなん？
私の中の小さな
アルキメデスが叫ぶ

自己暗示とけてポプラも怖くなる

告白の間になりそうでラフを描く

Ｉ　ｍｙ　ｍｅ　ｍｉｎｅ
桐の葉落ちるたび

咲いて落ち咲いては落ちて夏椿

ほどほどに地軸傾く木の芽時

黝く朽ちる肺葉若葉雨

アタラクシア護る生垣枳殻若葉

解読できないまぶしさがある

持ち合わせた宇宙がなくって
へんなところに
しわをつくって、
笑う

青空にありおりはべりいまそかり
これまで生きているということ

十二歳、五月くもりの自習室
おまえの孤独をみごもる午睡

昼枕で
神に近づく
安息日

千円以内でいいもの食べたい！
お昼休みのささやかな祈り

雨のにおい
わかる、アスファルトだと
特によくわかる

なすすべはない

改行後のことばがさびしくて
春

盗まれていいものだけしか
持ってないわたしが
砂浜に着きました

三人称単数として夜の街をゆけば
鎧のように住宅

抽象画ばかりの閉鎖病棟で
アイロンビーズのかたちを決める

感情の一覧にある百合の花

はなび
　はなび
　　空が渋滞する
　　　未来

幽霊と喧嘩

痣って宇宙色

重力に慣れすぎているジギタリス

ナベシャツを風は通らず熱帯魚

えいえんがえーえんになる
目を閉じていても
光を感じてしまう

二人称としての先生春一番

コンタクトレンズを
ひとさし指に載せ
さわさわ窓に揺れる新緑

薔薇の雨シナモンロール温めて

病院の中にローソン花の雨

真夏日の前に
Instagram消す
きみはネモフィラを
きっと見に行く

陽だまりで
幽体離脱を試みる

気から病になりたくて
どんよりとした雲を浮かべる

春の暮寝具売り場の大きなベッド

爪を切る音にすべての桜の実

公園の遊具は母の代役として
寂しさをうやむやにする

いつか見た油まみれの動物は
それでも瞼を開き続けた

大喜利のように不幸を自慢する
誰かが笑ってくれる気がして

透明な強炭酸の水泡の中の
光の中の光の

辛夷咲き大卒として家業継ぐ

初夏の大学病院購買部

朝餐の木香薔薇と白い皿

身勝手に違う季節を生かされて
悲鳴すら透き通る氷よ

昨日へと日差しのようにさす嫌気

点滅をするのは亀までにしてね

キリンを脱いで整える息

核心にとおい会話をつもらせる
わたしを守る堤防として

出会いたい人に
出会えぬ気がしてる
薄暮の中で干した洗濯

春雨のような銀髪きらきらと
未亡人には桜が似合う

またひとつ
記憶を失くした人の持つ
やわらかい繭、又は薔薇の棘

その家が幸せであると
言い聞かせている
揺れてるマリーゴールド

幸せに形があるとするならば
例えば桃の淡い輪郭

黄金の海をモーセのように割り
気付けば遠いところまで来た

輸液にも
似かよっているひとたちの
ばいばいのたび、てにふれるくせ

雨乞いは雨が降るまで止まなくて
無駄打ちされるホチキスの芯

クリスマス　独りぼっちで
クリオネの捕食動画を
繰り返し観る

靴下に 縫われた鳥がうれしい
平日の朝

初鰹
ランゲルハウス島へ行く

ぐぬぅぅぅ～～～
ショクオウダイコンニャクの夏

サイダーにタツノオトシゴ
ぴゅるる。。

きっと躑躅の蜜を吸う星人

私ではありません
私でもありません
ただ逃げたいだけが
重すぎる

妹に南蛮漬けを食わせる日

遠い街で
やわらかな胸に包まれて
動きつづけている心臓よ

街ひとつ
洗濯槽に閉じ込めて
その音を聴いているような雨

クリオネの牙は透明だとおもう？

切り花の蕾が開く
はじまりとおわりの曖昧な白い朝

 父さんの夢を見るね

と書き記し、
ぎゅっと重ねた５歳の掌

五月雨の円周率の千桁目

ドア横の脱毛広告夏の草

しーあーわーせー
と、背伸びをして起きる代休

嫌われることも正解しゃぼん玉

薔薇
ぼくら
雨やみの空
さようなら

父さんへ
ビッくらポンが当たっても
黙って片手で開ける午後です

三人の国語便覧を重ねて
押し花をしたシモキタは初夏

お茶会に
行かない子だけ飼っている
ティーカップの中にイルカを

チョコレートがない父が帰らない

火曜日は神経衰弱の途中

昼寝覚ああそうだった母だった

玉入れの入りきらない五月闇

子の熱に波打つ初夏のシフト表

言いっぱなしの「ただいま」を
脱ぎっぱなしの靴下が迎える


「おかえり」

一撃の豊かな心が眩しいよ
くずしてたべよう
あなたのために、

明け方のシナプスほどく冷凍庫

監視カメラを避けて立つ
彼岸花

長靴が落ちた陽だまり糸を引く

祖父が居た実家を
どうやら手放すらしい
窓際でチューペットが溶けてる

昼寝から私に戻るまでを雨

麦の秋普通に走る救急車

病室にいつも長袖五月尽

孤独とは自分に忘れられること
私を見つけ光る自販機

雨音に目覚めた朝は
残像が打ち上げられた浜辺を歩く

こどもの日
あたりばかりのあみだくじ

助手席に目高を分けてもらう瓶

才能を愛されている夏の馬

葛餅の蜜ことごとく弾かれて

連結を何度も見せてくる電車

晩春は猫を効率よく撫でる

最後まで咲いてつつじの
ぐちやぐちやに

僕たちが過ぎ
枇杷の木はさみしい木

おばけだよ
点滅しているよ
嗄れたついでだ
きもちよさそうに
蒸発しているよ

ひつじさえ
さかなのようなくちをしてねむる
ゆうぐれ　しんくのにおい

私は優しい 
周りはおかしな人ばかりだが
私は優しい

人間のかたちを崩す花衣

暑いねといって包丁振り下ろす

死と向き合うとき
神様に出会う
星の呼吸を抱いて眠る

祈ることばかりが多く青嵐

クレヨン指でぼかすみたいに
星をなでる

金魚は名前を付けると溶ける

春終るあさっての約束だけで

初夏の薄き眠りよ緩和病棟

黝く朽ちる肺葉若葉雨

未来へと向かう
からだは便箋ね
どうか、
やさしく記されていて

青空にありおりはべりいまそかり
これまで生きているということ

すきだった絵のこと、海

盗まれていいものだけしか
持ってないわたしが
砂浜に着きました

サイダーと肌とみずとの境目が

「    」の緊急連絡先、晩夏

この土地で
私が寝起きしていたら
母が私を
土地の名で呼ぶ

二人称としての先生春一番

病院の中にローソン花の雨

透明な強炭酸の水泡の中の
光の中の光の

生きている
人の祈りが遠くって
雨に打たれる建設現場

｢写真立てになった彼が、
本日の日付をお知らせします。｣

キッチンで静かにひかる銀食器

世界から色の名前が消えてから
みっくすじゅーす人種のぼくら

コピーアンドペースト繰り返して
星へ

とうめいなピエロに口を塞がれて
ひとりとむらう「あのね」の音色

靴下に 縫われた鳥がうれしい
平日の朝

雨をこぼしそうな雲も
風に揺らされている電線も
みんなひとつになればいい

街ひとつ
洗濯槽に閉じ込めて
その音を聴いているような雨

お魚が骨になったら
精霊になることを知る
春はあけぼの

流れ星ほんとはずっと旅してた

夕焼けに世界がぜんぶ燃えている
夢を見ていたバス小一時間

保健室のカーテンを頬に当てる
泣けば泣くほど庭になってく

チョコレートがない父が帰らない

続柄に何も書けない遠花火

母の日のエプロン箱に入れられて

明け方のシナプスほどく冷凍庫

麦の秋普通に走る救急車

才能を愛されている夏の馬

さやさやと風のかたちに春の雨

すきまかぜ着陸地点に
焼き菓子を置いて
わずかにもてなしている

外国の海の写真集
波音がページいっぱいさざめいて
私の胸の汀まで

目の端で
血がたりていない
ためいきが
言葉に
なりかけようとしている

志望動機のない履歴書
ボールペンのインクは
まだ残っている

何度でもだるまが転ぶ花曇

ささくれを残した指のままの月

暑いねといって包丁振り下ろす

何も悪くないと
自覚したまま謝るとき
背中に篠突く雨の音

クレヨン指でぼかすみたいに
星をなでる

金魚は名前を付けると溶ける

海を描く
汗がその一滴となるまで

梨を剥く
アドリブに毛が生えている

顔も知らぬ
父の生家に向かうとき
わたしウォーターリリーのつるぎ

さみだれの底を
素足でかえりくる
祖母の鬼火のようなあしどり

雨あがりの坂を
もむもむ駆け上がる
いなほのようなこーぎーの足

ずんむりと
濡れたからだを引き上げて
くるぶしに棲むにんぎょのなごり

書き込みを消して
おくれよ走り梅雨

ほどほどに地軸傾く木の芽時

夕永くほぼ幸福な窓の数

青葉陰売った会社の噂読む

どうやって泳いでいるの
こんなにも流れの早い
今にいるのに

あきらめてた
ことのいくつか
あつくなる
生え際、羽根

目薬の上手に差せない夜である。

青空にありおりはべりいまそかり
これまで生きているということ

もうみんな
プテラノドンを知っている
プテラノドンは
もうずっといない

忘れちゃう
集合写真の僕の目を
からっぽな猫と言われたことも

自転する車を漕げば月の下

三人称単数として夜の街をゆけば
鎧のように住宅

春風がDNAをくつがえす

重力に慣れすぎているジギタリス

何回も
僕の話の腰を折る
人らが僕のスポンサーです

妻がいう
だからやだっていったのに
だからはやだな
たのにもやだな

数学と別れて水羊羹を切る

コンタクトレンズを
ひとさし指に載せ
さわさわ窓に揺れる新緑

玄関を開ければみどり映り出す
ピアノがあってキッチンに雨

ジャスミン茶麦茶カルピス等間隔

コンビニなお蕎麦をほぐし
なさるお水（どこから？）

自分らしさが
なくなるからこそ
生きられるそうとも言える
と母の目のしわ

クッションを入れ続けても
折れる骨

金閣が燃えているのに鼻づまり

好きだった
だったにすると今日決めた
抜けない棘は今から皮膚だ

色の輪郭が濃くなる
駆け足の雨と逃げても
捕まる、夏に

たいていは嘘なのだから言葉など
白紙にちかい地図とおなじで

左目の視力が落ちて灯台で
水も飲まずに囓るバケット

思いきり引っ張るんです
よく見ると垂れてるでしょう、
耳から糸が

ニッポンと
呼ばれて振り返るのはだれ？　
政府、天皇、それともわたし

生きるとは
こぶしをぎゅっと握りしめ
それから降らしてゆく紙吹雪

網戸から入り込む網状の夜

ドア横の脱毛広告夏の草

月面に兎が跳ね続けるくらい長い
ママとの手繋ぐ時間

脱色の眉光らせて家を出る
私が夏のいいなづけ

花は皆茶釜の狸
さながらに葉っぱは化けて
彩とりどりに

続柄に何も書けない遠花火

母の日のエプロン箱に入れられて

ゆうゆうと
あるきあるけば
たまてばこ
一手間かけても
ひらかれませぬ

居眠りの国語を離れ夕立は
鼻毛引き抜く漱石に降り

鳥帰る英語にすれば長くなり

麦の秋普通に走る救急車

りんごは生でみかんは死

計り知れない等式が結ぶ
生死の境界線

水かきがあったであろう場所に
子が挟んだままのしらす一匹

わずらわしさに
　　守られていたと知る　
　　　　　　新生活

ぼくたちはいかなるときも美しい
ミートソースで赤いくちびる

つむじ風
あなたが前をあるくとき
わたしの心は渦を巻いてる

僕が「それ」を掴んでいれば
涙で時間は固まり
「かたち」になる

線として描くべき雨十二月

まっしろいロールケーキに
倒れこむときだけみえる
教会がある

最後まで咲いてつつじの
ぐちやぐちやに

目の端で
血がたりていない
ためいきが
言葉に
なりかけようとしている

すず、ことり、わたし。
みんないい。ごっちゃになる。

鮟鱇のなかの波打ち際のこと

私は優しい 
周りはおかしな人ばかりだが
私は優しい

あぁ
孤独かもなぁ

何も悪くないと
自覚したまま謝るとき
背中に篠突く雨の音

金魚は名前を付けると溶ける

浜辺で貝を避けるみたいに踊る

ずんむりと
濡れたからだを引き上げて
くるぶしに棲むにんぎょのなごり

悪いところを撫ぜてみて

空想上のわたしのしっぽ

十二歳、五月くもりの自習室
おまえの孤独をみごもる午睡

彼ら半樹上性のうたがい
登り次第ピアスガン撃つぞ二発

アウトの球だけ
のけといて
あとでまとめて
土の下にしまうつもりでいるよ

金平糖最後まで噛み砕いたら
もう取上げ婆に怯えなくてもいい

この土地で
私が寝起きしていたら
母が私を
土地の名で呼ぶ

押入れに潜って冬を越してきた
夏服たちの長い息継ぎ

生きている
人の祈りが遠くって
雨に打たれる建設現場

風が吹く 思わず腕を広げ
ふと思い出してる鳥だった頃

濁点の多い薬に包まれる

出会いたい人に
出会えぬ気がしてる
薄暮の中で干した洗濯

車窓にもうつらない顔 桃のかご

本物よりも長命な
蛍光灯がまたたいて死ぬ

雨乞いは雨が降るまで止まなくて
無駄打ちされるホチキスの芯

たましいを捜して針が回ってる
時計見てると、ふくらはぎつる

ポッケ底
ビスケットのくずの感触
もしかしたらやさしさの骨

お気持ちで大丈夫です
の言葉で気付く
小さな自分

始業のベルが鳴り響く
僅かな窓から青空が見える
会社という名の牢獄

街ひとつ
洗濯槽に閉じ込めて
その音を聴いているような雨

脱色の眉光らせて家を出る
私が夏のいいなづけ

夜ひとり森のかけらで飯を食う

昼寝覚ああそうだった母だった

玉入れの入りきらない五月闇

かねめあて
言葉を呼んでみだりなり
大きな心でどかんとつぶやく

瞬間冷凍した幸せ
るるる　るるるの解凍音

孤独とは自分に忘れられること
私を見つけ光る自販機

バスガイドの手旗の触れる若楓

れんこんの穴はわたしの穴でない

生まれたての卵白逃げる
ぬらりらと
そんなに怖い思いをしたの

ポケットがたくさんほしい
しあわせは
歪なかたちに砕いていくこと

俺と同じように
四足歩行している犬と
眼があう
恋がはじまったら
どうしよう

ときに雨ときに喋れて日はながい

自己暗示とけてポプラも怖くなる

極まっていく天気予報は
かわいくて見て見て、
泉屋のクッキーだ

何分間かの記憶がぽっかり
消えている
柿の季節と寝てばかりいて

持ち合わせた宇宙がなくって
へんなところに
しわをつくって、
笑う

自転する車を漕げば月の下

数学と別れて水羊羹を切る

どうしても
ポン酢のポンはオランダ語
あの夏のことは早く忘れて

銀河の彼方からズレ始めた靴の
靴ズレの痛みは銀河の彼方から

点滅をするのは亀までにしてね

車窓にもうつらない顔 桃のかご

あけ放つ 放たれなかった産声へ

とんでもない日常は
もうとんでもなくないから
鳩の増殖のまち

雨乞いは雨が降るまで止まなくて
無駄打ちされるホチキスの芯

紫陽花を燃やす雨夜の信号機　
君の寝間着の色も奪って

なんにもね　ないと鳴く鳥
コッゴッコ
器の底同士合わせリボン

このままじゃ
景色が馬鹿になってゆく
やかんを打ちに雨あっけらかん

エレベーター
上がって下がる、光見る
ナイフとフォークを
間違えて星

雨は降る
貧乏ゆすりに童顔で
心の襖にだれもいなくても