徐々に冷えていって
あなたに許される

春の電気を
つけっぱなしで

真夏日に炭酸で割った
ゆずシロップ
故郷の雪が喉に流れる

かあさんが身を立ててきた
工業用ミシンは異国語で
引き取られていった

実家から野菜が詰まった宅急便
湿気ったメモ紙滲んだ母の字

傷口に水を避けている水無月

元旦はＡ４だった
この年も今日を過ぎたら
Ａ５になるのか

波打ち際まで来た　海から

長い目で見るときみは蛇

病室の窓の
空ばかりが夏

生きてるか確認をする
青痣をおす

上京を夢見る君にご報告
キジバトはここでも鳴いている

ふれていないというのに、
どうしていきているとおもうの

いるのいないの？

そう聞かれたら
そうっと上を向く

死ぬ前の蛇は無限のかたちして

ハンカチに水の刺繍をしてあげる

逃げてきた人専用のハンモック

美しい訛りで
夜を見渡せば
色づいていく
おかえりの声

地続きのような輪廻を繰り返す
いつも何かを忘れて生きる

悲しみの着水の音　菊花店

夏の日のプールの後に見た夢は
歴史の教科書１２ページ分

あの人が投げた茶碗を取りに行く

靴下に蟻が一匹住んでいる

斜向かいの家が燃えた

観覧車がよく見える

ある夜
雑誌の付録のポーチが
山のように出てきた
きっと
幸せもそんなもの

満月に毛布をかけてから眠る

笹舟を流す
ダイオウイカによろしくと
子どもが手を振る
糺の森で

水羊羹に早起きした夏が
映り込む

ブラウスのボタンがとれて
見る花火

二番目の母が一番好きだった

はじめて覚えた影絵の
ハトみたいに
どこかぎこちないけど
飛べたあの頃

息子からオモチャの剣で
斬られてる
明日は早朝会議のある日

忘れているだけで
きっとまだある

あの日の　市民プールの　青空

夕暮れに
連れていかれた
おじいちゃん
椅子を一脚
暗がりに置く

自動改札に引っ掛かる私の憂鬱

いたたまれなさ

フロントガラス一面に海

心臓よりも足音に生かされる

喉に銀河を飼っている

枕下　スイカの写真　入れて寝る

悪いな加藤
今日はカレーじゃなく鰹の
気分なんだ

三と五は近くて
四と六は遠くて　二は他人で
一と零は表裏一体
分かるでしょ？

花粉取り除かれて買う白百合は

プリズムの後ろ髪追う

焙じ茶色の土埃が舞うこの町の
何処かに青大将がいることを
ぼくは知っている

いろいろな
ことやものたち
できるだけ
無添加でいて
色褪せてくれ

手の届くところが痒くて困ってる

こんなに暑い日に
プラットホームの下に
暖かそうな手袋が
片手だけ落ちている

かさばりますか？　ぼく

愛用のポストが忽然と姿を消した
実は
最初からなかったのかもしれない

雨が好きってまだ言えない

自分にも横顔あるの忘れてた

母も祖母も捻挫した場所へ
金のアンクレット巻きつける

腕時計になる。

夜の空を飛ぶ。

あのひとはわたしを
紺色の壺に納めた鶴です
と紹介してまわった。

砂時計をひっくりかえす仕事

夜空には引っ掻き傷があるだろう

月に生える
最初の
雑草になりたい

友だちと喧嘩した日
火星移住をかんがえている

悪い子は眠れ眠れ
その舌に
ガムシロップを
たらしてやるぞ

会いたいと言ったら負けの真夜中
を勝たせてあげるマニキュア零す

愛かもな　泥酔のあとのスーパー
で値引かれる分の三割五分は

雨蛙よう
お前は俺の大きさに
全然びびらねえんだな

誰もいない時間が恋しくて
自分のために家出する
冷蔵庫に夕食を入れて

湿布のにおいで
祖父母を思い出し
花を飾り風呂敷を包み直す

僕たちがいくつも
知っているベンチ
雨が降っても濡れないベンチ

平積みにされたまんまの僕たちが
大人になれば仕舞われる棚

東京の一階に引っ越してすぐの
あたしが盛り付けた海鮮丼

姉の死ぬ夢の残響髪洗う

我々が
文字を擦っているとき
世界の一部も削られている
ものを失くす理由です

ブランコ漕ぎ、ミシミシ漕ぎ、
地球のてっぺん見えた気がする

くじゃくが羽、広げると
新緑のざわめき、にくるまれた。

きみの耳元で
泳ぐピアス、
からずっと、聞こえていた
砂時計の落ちる音

かあさんが身を立ててきた
工業用ミシンは異国語で
引き取られていった

給料前セコいおかずを詰めながら
自分ってすごい！と自己欺瞞の朝

悪友は今頃
賽の河原で石を積み
相変わらずキレてるだろうと
仲間で笑う

お祈りメールの先には
同じ未来も喜びもない
虚しさだけ抱えて走る

推敲のない人生を生きている
香水の匂いがしている

病室の窓の
空ばかりが夏

ハンカチに水の刺繍をしてあげる

僕たちは
脳内にいるのか
脳外にいるのか
どちらだろうか

不確かな明日が靴の底で眠る

一日の中でも風の無い日向

孤独にはカフェラテＭは多すぎる

暑い日に独り住まいの母思う

初夏の風吹き抜ける朝
メロンパン

降りしきる「雨」に
「こどく」とルビをふる

あの人が投げた茶碗を取りに行く

斜向かいの家が燃えた

観覧車がよく見える

満月に毛布をかけてから眠る

朽ち果てた流木

かけがえのない無意味さを
震えるほど抱きしめる

規則正しく並んだ
ホテルの窓みたいに
私たちは
綺麗に孤独です

おふくろと同じ匂いがする地球

水羊羹に早起きした夏が
映り込む

炭酸がみるみる抜けていくように
夜空に星が瞬いている

星屑を空いっぱいに詰め込んで
こんなに遠くまで来た僕ら

ねえ、母さん
電車のベッドは大きいね

二番目の母が一番好きだった

もし骨が真っ黒だとして
それでも僕らは
海に撒くのだろうか

弁当がまだ温もりを持つ
梅雨の一時間目の古典の授業

自動改札に引っ掛かる私の憂鬱

いたたまれなさ

フロントガラス一面に海

金魚すくいで
破れた色とりどりのポイを
宝物にしていた
夏の終わり

染色体みたいな知恵の輪が
いつまで経っても解けない

喉に銀河を飼っている

祖母の目の輝きだけを覚えてる

顔のサイズのおにぎりを
食べたいと請われ
母たる女は寿司桶を取り出した

悪いな加藤
今日はカレーじゃなく鰹の
気分なんだ

焙じ茶色の土埃が舞うこの町の
何処かに青大将がいることを
ぼくは知っている

人ひとりから好かれれば
充分幸せだ
そのひとりが
たとえ
自分であっても

手の届くところが痒くて困ってる

ケーキ屋の
砂金のようなマスカラの
店員さんが親切で好き

校門横の木に生えた
立派なサルノコシカケの目視が
日課だった少女時代

かさばりますか？　ぼく

混沌とした夢の中で
死体だけが異様に精密だった

公立中学校の夏は
芝生が燃えている

母も祖母も捻挫した場所へ
金のアンクレット巻きつける

ワンピースは
いつも長くするの
空から落っこちてくる
子どもたちを包むために

月に生える
最初の
雑草になりたい

友だちと喧嘩した日
火星移住をかんがえている

逝く祖父が
一人寂しくならぬよう
夜通し折った白い鶴

貴女の爪は―
なんだね
風が起こりそうな程
明るいね

電信柱も歴とした
母性である
灯火で　優しく
帰る人を見守っている

水晶の空気を吸い過ぎて
そのまま
空中で破裂した
黒揚羽蝶よ―

人を幸福に
するだけの
空があれば
充分だ

南天は
さかさまに
墜ちてしまうのか

夜は

罌粟があれば、
それだけで良い

たくさんの春の風です
それぞれが負けを
経験してる風です

明らかに厚さの違う赤本を
隣り合わせで解いていた場所

朝顔が吊られるように咲いていて
拒めずにいる母校の記憶

そういえばそうじゃなかった
歩いてて急にわかってきた
子どものこと

つるつるって
おでんのたまご吸うときの
どこかでおかしくなってる時空

東京の一階に引っ越してすぐの
あたしが盛り付けた海鮮丼

姉の死ぬ夢の残響髪洗う

潔癖なくらいでいいよ柚子香る

きみの耳元で
泳ぐピアス、
からずっと、聞こえていた
砂時計の落ちる音

鳩の群れ
かきちらしていく
息子の小さな影
羊飼いの少年みたいな
嘘

来ない
君からのライン来ない
ハーゲンダッツとろり溶けた

五才と三才
でんぐりがえし
でででん
どんどこどん
どんぐりのせいくらべ

ふわふわ　わたがし
シュモクザメ
めからうろこ　こどく
くさったパン

つめのすき間から
消毒液のにおい
コロッケのにおいが
よかったのになあ

二十億光年の孤独に
思わずくしゃみ
水曜二限

「あー」だけで
感情示す赤ん坊だ。
「あー」だけで
理解し動く親だ。

川べりの夜の桜の散るちから、
ちからのはなびらを浴びている

国境の片側で待つ午前二時

出し物で貸した制服に染み込む
薔薇の香りが夏を知らせる

徐々に冷えていって
あなたに許される

ここだけが常に明るい場所だった

かあさんが身を立ててきた
工業用ミシンは異国語で
引き取られていった

実家から野菜が詰まった宅急便
湿気ったメモ紙滲んだ母の字

推敲のない人生を生きている
香水の匂いがしている

波打ち際まで来た　海から

病室の窓の
空ばかりが夏

生きてるか確認をする
青痣をおす

夏芝を保育士さんが猛ダッシュ

サイレンが
遠くに消えて

蛍

紫陽花へ

友は其処へ
置き手紙へ

虚像が
温故知新だとか、
私を吹聴します。

曲がり角
ふうりんの音
あかね雲

死ぬ前の蛇は無限のかたちして

ハンカチに水の刺繍をしてあげる

美しい訛りで
夜を見渡せば
色づいていく
おかえりの声

ランドセル蹴られて歩く帰り道

降りしきる「雨」に
「こどく」とルビをふる

斜向かいの家が燃えた

観覧車がよく見える

ブラウスのボタンがとれて
見る花火

湯上がりに
底の見えない明日がくる

二番目の母が一番好きだった

耳元で半音上がる羽の音

もし骨が真っ黒だとして
それでも僕らは
海に撒くのだろうか

信号が点滅してる
親だけが渡り切ってる
子が泣いている

薬局が多いね
君の街はそんなに人が
傷ついてるのか
だから勇者が必要なのか

yuki と打ち
変換されるその文字が
「由紀」から「雪」に
変わったこの冬

コピー用紙の白にも
安心できない明日

　　　　　　　　　　　　君上ル
　　　　　　　　　　　　僕屋ビ


月

【ご報告】
かねてより同棲してた
羽毛布団と一体化します

街灯が走っていく
私を置き去りにして

黄色い線までお下がりください

ぼくたちのかわいい性嫌悪は瀕死

俺がピザをナイフで切る前で
上手に手掴みで食べていた君よ

悪いな加藤
今日はカレーじゃなく鰹の
気分なんだ

滴りを頂く父と遠い過去

友人が死んだと聞いた日に聞いた
友人の妊娠

腕時計になる。

夜の空を飛ぶ。

遮光瓶の内まで響く蝉の声

砂時計をひっくりかえす仕事

夜空には引っ掻き傷があるだろう

顔文字で終わった別れ話

ペットボトルをふたりで
いっぽん分けながら
夜中を葬式みたいに泣いた

会いたいと言ったら負けの真夜中
を勝たせてあげるマニキュア零す

きみとぼく約分してもきみとぼく

安心してそのまま俺を抱いてくれ
俺は雪だよ　君で溶けるよ

誰をも拒まない
この公園は
夢のように
両腕を広げている

月はどんな味がするのかな
おひさまに聞いたら
わかるのかな

氷って静かだ
静かって冷たいんだ

中の餡が溶けない
何度握っても違和感がある
体積、それは
あなたの欲望

ごっこ
まま
ごっこごっこ
ままごっと

ひねもす眠り
よるに飽きる

今日は生ごみ、燃えるゴミの日
なんで昔のことばかり
思い出すのだろう

平積みにされたまんまの僕たちが
大人になれば仕舞われる棚

丸筒は卒業証書を抱きとめて
一人になったわたしを放つ

おにぎりを
雑にまるめていていつも
ほんとはもう一品あればうれしい

東京の一階に引っ越してすぐの
あたしが盛り付けた海鮮丼

死んでも春生きても春で春るるる

姉の死ぬ夢の残響髪洗う

潔癖なくらいでいいよ柚子香る

愛想だけ生きて来世は檸檬がいい

くじゃくが羽、広げると
新緑のざわめき、にくるまれた。

アンテナ下がった
白の軽
あなたみたい
わたしみたい

いつだって
モノクロ映画の僕だから
反則なんだ君の青さは

誰からも愛されなかった日曜日

耳元のおはよう
（朝がこんなに眩しく感じるのは
きっと荒井さんのせい）

先生が言いたいことの二番目は、
「安全第一」だと言うことです。

求め合った後に
アンパンチの正当性について
真顔で語らう夜のいとしさよ

二十億光年の孤独に
思わずくしゃみ
水曜二限

国境の片側で待つ午前二時

嫌い嫌い
みんなあっち行って
でもひとりにはしないで

私たち二階に行くと
子供達　一階に降りる
砂時計の家

長い目で見るときみは蛇

内濡れた
マスクを
振れば
国旗めく

虚像が
温故知新だとか、
私を吹聴します。

いるのいないの？

そう聞かれたら
そうっと上を向く

腎臓の手触りに似た君の嘘

僕たちは
脳内にいるのか
脳外にいるのか
どちらだろうか

地続きのような輪廻を繰り返す
いつも何かを忘れて生きる

紫陽花が咲けば
余白が多すぎる

地球儀が熟成していて回らない

純白のごはんが満ちてくる
夜明け

はじめて覚えた影絵の
ハトみたいに
どこかぎこちないけど
飛べたあの頃

もし骨が真っ黒だとして
それでも僕らは
海に撒くのだろうか

息子からオモチャの剣で
斬られてる
明日は早朝会議のある日

実家では
残した物は
父が食べ
足らない物は
母がくれるの

夕暮れに
連れていかれた
おじいちゃん
椅子を一脚
暗がりに置く

僕は本音を持っていない
嘘の傍らに置いたまま
もう何年も忘れたまま

何をもぐどんな手首を思い出す？
世界は滅びちゃいけません

枕下　スイカの写真　入れて寝る

花粉取り除かれて買う白百合は

数列の朽ちれば麒麟草まわる

表現の自由という名目で作った
凶器を振りかざすのはもうやめて

亀のひと声じゃ
何も変わらないってさ

シ福の時間～
ごろつく母に
シってどんな字と尋ねた
ワタシの私と教えてくれた

いろいろな
ことやものたち
できるだけ
無添加でいて
色褪せてくれ

わたしが求めていたのは
貴方の意見じゃなくて
貴方の相槌

校門横の木に生えた
立派なサルノコシカケの目視が
日課だった少女時代

かさばりますか？　ぼく

目が覚める
隣に人が寝てること
未だに慣れず
朝陽と驚く

自分は
存在するだけでいいらしいけど
存在しないだけでもいい

できるだけ ちいさく
わたしに愛を教えてください。

君は僕を
英語辞典へ飛ばしたんだ。
知ってることが
知らない言葉で紡がれる。

素麺は青い絵の具で描くんだよ

顔文字で終わった別れ話

三人称の話題ばかりであたしたち
こんなに近くで近づけずにいる

君のこと「好き」とはどこか君の
こと「嫌い」と思うこと　花の雨

平凡は痩せ衰え
特殊は肥え太り

奇人変人狂人大馬鹿
一人になって夢を見て
いらん売れ線
このヤロ拝金者

良いものには必然性がある

そうさ
そいつに殺されたのさ
　遺言
「おぎゃあ」

雲に溶けた
川に流れた
山に消えた
煩悶の行き先

君は
僕の瞳に映る君を
それだけを
見ている

ペンギンとキリンが
仲良くできる時間と季節
羊はお守りを脱ぎ捨てる

整える時間の足し算
期限までの引き算
気持ちの掛け算
鎹が掛け算

参拝が歩かずにできる
賛成が協議なくできる
散歩も無意識はダメでしょ

いわし雲かき分けてゆく飛行機に
影響のない水仙の毒

天使には鼓膜がないとするのなら
その優しさの辻褄が合う

八重歯など牙の退化だ青りんご

朝焼けに
肌を翳して衣替え
しようとねだる烏おひとり
あなたも黒いままですよ

らいおんのたてがみ揺れた、
そのとき
窓越しの風鈴が揺れていた。

子猫に追われているわたし、
百合のなかへと姿くらまし
息を潜めて

金曜のよる
ため息がして
ばきばきと、背骨を鳴らす
街灯に、お辞儀をしてみる

谷底に広がった
花群に横たわる
犀の子どもの寝言で目覚める
皆の衆

虹の足
久方ぶりにみてみたが
乾麺ほど細くなく
むしろ
太い

雨を雨としか
捉えられない人だったから
別れたんです
顔は好きだったのに

「平均台より平均的なものが
どこにありましょう」
昨夜の夢の記憶の一端

つめのすき間から
消毒液のにおい
コロッケのにおいが
よかったのになあ

夏休み母は仕事で
さみしくて
洋服の匂いを嗅いだりしていた

イラストで必ずふたつひと組で
描かれるさくらんぼが羨ましい

ランドセル蹴られて歩く帰り道

手持ち花火を
消える前に
わざと
水に入れた時の
あの音のトキメキ

湯上がりに
底の見えない明日がくる

何をもぐどんな手首を思い出す？
世界は滅びちゃいけません

やさしい寄生虫をください