透明な
瓶に砂糖を入れ替える
身体表現は得意ではない

自己陶酔するメタファーに
食べさせてやる天牛

悪意に鈍感になるな
木下闇を通る
洗い立ての白シャツが
こんなにも青く見える

ふじ　かずら
絞め殺されて枯れるまで
邪魔をするなよ
それだけの劣等感で

長い旅路
二年ごとの賃貸の更新
誰を待つこともなく
欄干に等間隔のウミネコ

言葉じゃんけん
かわせみが
勝ちになる

よかった、
エナジードリンク飲んでいて。
腹痛に理由がつけられるから。

万緑に囲まれ抗うつ剤の眠気

踊り場で息継ぎをする
遠くに夏の海

雨に冷えゆく拡声器

星々の溶け出す眼鏡拭きをれば

朝昼晩と処方されたお薬
一日三食を強制されてるみたいで
息苦しいな

換気扇の雨音
ふたりきりになる

会社でも家でも味方なのは夜

下書きのような声で母を呼ぶ

あの日のあこがれが発芽する

何枚も重ねたお皿を手に持って
純文学をあきらめている

雨の日は耳をすませる
公園の遊具から血の香りがしてる

ぽむぽむと花開く紫陽花通り
いもうとがわたしの手を離す

父さんが新聞紙で作ってくれた
兜が誇らしかったあの頃

うそみたいだね、
って　きみが語りだす
性のはなしは時雨のにおい

山菜というから信じたんですよ

哀しいというのにカサゴ釣り日和

ボストンバックに数日分の貝

鬣で黒板がみえません

アルパカの純愛を妨げている

温室のあそびたりない瓜の花

割り箸の先にわさびをすこし付け
そば湯につくるゆるやかな渦

和室にて他人行儀に寝る祖母の
静かな固さはロウソクに似る

つぶれた目玉焼き
殻の入ったオムレツ
世界一美味しかった父のごはん

暗い雨の夜は一人で
留守番していた日々を
ふと思い出す
計算ドリル片手に

古書店の空間がすき
狭さも匂いもほこりさえも
父と最期に来た時のまま

父の書斎は秘密基地
懐中電灯を持って
忍び込むのがすきだった

父親参観日
拙い作文をいつも
褒めてくれたから
今でも書くことが大好きだよ

あめふりくまのこ
歌いながら水たまりに
突進する　いもうと

壁越しに初めて父の歌を聴く
二人暮らしがひと月目の夜

絶版の本を破いて
花占いを教えてくれた人に
怒られる

天文学は天の文学水絞る

月蝕を穿つ部隊が
まひるまの商店街に
ひとり足りない

君の香を夢に持ち込み夏薊

布団敷くのだりぃや
奨学金返しきるまでは生きるか

人生の喜び苦しみ慈しみ
キャベツを食べるウニを見ている

髪を切る
耳がすーすーする夜に
電子マネーの決済ちゃらりん

ＢＬＴサンドをスッと切るような
別れ　言葉が鋭利で助かる

鼻唄でシャウト四月の給湯室

押入のリカちゃん函館の夜も

平仮名がないパスワード終戦日

心臓のあたりに牡丹もったりと

地平線めく校庭の夏休み

先生の赤いペディキュア祭笛

猫の恋
徒歩圏内にある
平和

見られたら光ってしまう

しゃぼん玉

風も
陽も
雨も
ゆきどけに忙しい

愛の
日の
塔の
灯の
黄の　　　　　目の奥に

あ、
それは
わたしのトマトわたしのトマト

人に詩がなかったとして鳴く蚯蚓

紙袋わしゃわしゃしても春終わる

滝飛沫浴びた髪見せ黙るひと

星餐に青梅を煮る神變忌

＊塚本邦雄忌＝神變忌 ６月９日

簡単なことなんてない
珈琲が湿らせている
君の唇

春眠の氷砂糖の芯濁る

詰め替えのシャンプーあふれ
春の風邪

目薬が溢れて揚羽蝶が遠い

弟の瞳の明度夏の風

水筒の氷鳴る坂若葉風

熱帯夜キレートレモンの瓶溜まる

佳作にも
選ばれなかった書き初めが
飾られ続ける床の間の夏

ティッシュ越し潰した虫の感触が
指紋を侵してゆくような午後

眠れない夜に齧った白桃の
罪が漂う六畳の部屋

天気雨の一粒呑めば
さやさやと
光の風鈴めくのどちんこ

コーンの缶を重ねるところがいい

平日に会えるタイプの
友達と
日が暮れるまでの
消しゴム落とし

人形を燃やして明るくなる街へ

兼用の日傘を持って
四季通り、と名付けられた
レンガ街を俯いて歩いた

犯す気でいる刑法を読む　じっと

仏像のことかわいいって
言っていたから信じてたのに

ぬばたまの硯に残る墨汁と
この世に生まれなかった言葉

兄ちゃんは「教えてやった」
妹は「聞いてあげた」と
母に伝えた

小雨降る展望台に登る
ほらあすこら辺が象の見る夢

精神科の空気清浄機日を浴びて
静かに光る白いはつ夏

つやつやと胎児の模型　風薫る

話し込む非常階段　夏休み

煙草とか芝とか鮭の匂いがする
窓を一日開け続けると

るるるるる
しつこいくらいこぎつねを
呼ぶイントロじゃないんだからさ

人間を諦めないから生きている
あざみの花を摘み取るように

電灯までの導線
箱ティッシュを踏んづける

露天風呂行ったけど
私よりスタイル良い人いなかった

夏の星鏡は何も通さない

本棚の一角
リキュール特区を設ける

カブトムシの匂い
積乱雲は

めいめいに朽ちているのは
双子葉

今日も空焼きをする

権力を演じることが上手くない
高校演劇部の演出

夏の庭鳩にオーロラ痣残り

このまま誰も迎えが来ないことを
怖れて一人待つ保育園

階段に集まる足も夏になる

唱和する水兵リーベ
僕たちは
海の上ではちっぽけだった

我々に月を与えた神様は
小学校に赴任したがる

踊り場で息継ぎをする
遠くに夏の海

雨に冷えゆく拡声器

青白く光るワイシャツ
顔のない父が
ただいまを言わなくなった

雨の日は耳をすませる
公園の遊具から血の香りがしてる

ビー玉に夜を閉じ込め眠る朝

うそみたいだね、
って　きみが語りだす
性のはなしは時雨のにおい

全部間違い全部間違ってきたおれ
の靴に白亜紀の砂がつく夢

世界とは
回避
夕暮れを
すする　風

紫陽花に言い負かされて明けの空

愛情を求めるあいだじゅう８℃

おとうとの手首の傷を
誰も聞けないままでいる

街とは
しろい凹凸と、風だけです

　

すっぱそうな
レモンのほっぺた

誘蛾灯どうして僕は生まれたの

地平線めく校庭の夏休み

星がまだなかった頃の春の闇

三月が賞味期限のサラミ
　　　　　　　　　　夏

平素より
お世話になっているセロリ

夏休み最終日
海はなぜ青い

大根が安かったのよと言う君へ
缶ジュースを買わないでおく日

蛇口には星の通った跡紫陽花

そらがまわっていたとしても

だれも風にならないで

手のひらは所詮、
あおぞらだってこと
後れ毛がいたむ

ほどけてゆくわたしの表層
秒針だけがなめらかに動く

つやつやと胎児の模型　風薫る

話し込む非常階段　夏休み

これはもう降っていないといち
ばんに君は気づいて少し急いだ

六月の映画が始まりそうな音

傘の奏者は六月の雨

カブトムシの匂い
積乱雲は

夏帽子風に攫われ船となり

唱和する水兵リーベ
僕たちは
海の上ではちっぽけだった

自己陶酔するメタファーに
食べさせてやる天牛

悪意に鈍感になるな
木下闇を通る
洗い立ての白シャツが
こんなにも青く見える

裏の田んぼでうるさく鳴くのは
放し飼いにしているうちの蛙です

何枚も重ねたお皿を手に持って
純文学をあきらめている

不をつけて妥協しながら
生きている
可能、幸せ、
愉快、平等、

人形の目に針を刺す
子どもらの
目の輝きに似た朝が来る

あいされること
あいすこと
平坦
になりゆく　ような
夕映えだっ　た

存分にかけた餡すら夢なのか

おれは悔しくてイ段を軽んずる

雨粒や信号機にも愛情を
見出しているアルツハイマー

あまがえる
跳んだつもりで
ながされる

壁越しに初めて父の歌を聴く
二人暮らしがひと月目の夜

きみの字の
横線のなだらかなへこみには
猫が隠れてるらしい

「恋愛」は狂気の免罪符なのかな
みんな内臓触りたがって

天文学は天の文学水絞る

近寄れば惚れてまうやろ心太

嫌いなら殴ればいいさ梅雨の冷え

誘蛾灯どうして僕は生まれたの

傘を打つ雨音すこし強くなり
君との距離が縮まっていく

型に嵌めるは期待してるとも
予想外は失望とも言い換えれる

起きた瞬間
今日はもうだめだって分かる
その日のぶっかけうどん

心臓のあたりに牡丹もったりと

炎天をじんじん登る殉教地

銅像が手綱を握る青嵐

あ、
それは
わたしのトマトわたしのトマト

夕立は
止むまで降っているらしい

春雷と貝の共通点を挙げよ

手を放し君が乗れた自転車は
振り向かず空の高さ漕ぎ行く

滝水が蹄に沁みる一角獣

青簾吊って自意識鎮めたく

ｈｕｇ（ハグ）したく
殻ぶつけ合う蝸牛

それぞれの罪それぞれの渦
かたつむり

水の香に胸のほたるが喘ぐ宵

梅雨の闇
かすかに呻（うめ）く新生児

虹消えて眼の中にある水分

きんつばを転がしておく熱帯夜

朝の蜘蛛眼鏡を取れば目が合って

世界中のひとが
わたしに窓から手をふっていても
わたしはさみしい

目の粗い
しあわせの中にいたら
忘れられそう

せんせい、かぎかっこ
閉じたくないです
あとから痛むの知ってるんでしょ

履歴書の広い余白にうちの犬、
犬でも貼っておきたいけれど

オパールの遊色効果が映し出す
曖昧なまま終わらせる愛

コーンの缶を重ねるところがいい

芒野を抜けて

獣になっていた

犯す気でいる刑法を読む　じっと

手の届く高さに宇宙樹の腐り

ぬばたまの硯に残る墨汁と
この世に生まれなかった言葉

北向きの屋根にも
南向きの屋根にも平等に
雨が降ってる

小雨降る展望台に登る
ほらあすこら辺が象の見る夢

君と会う日が
終わったらそこからの
自分を思い描けなくなる

「来世ではぶどうになる」
と
クレヨンはすり減りながら
ドラゴンになる

カブトムシの匂い
積乱雲は

花柄の傘捨てられし谷崎忌

島国の貧しさに耐えわが青田

夕焼けの終わり全てが鎮火した
後群青の空の畑々

露草の地へのしずくの届け方

退化した犬歯を覗かせて
上手く笑えるようになった人間

怒られている僕を
割れて生まれた窓の断片が映す

もういいよ深海の話はわからない
回転寿司だよぼくはここだよ

山笑うなよ
花粉が飛ぶだろ

朝一番に教室へ

部屋いっぱいに大きな薬指

狐の嫁入りだ
誰か
俺にブーケを投げてくれないか

物語をひらく
そこにあってないものも
認識することで存在するなら
陽炎が立つ

畏れ

人間であることを
わからせるように
花鋏で切り落とすアナベル

生誕祭　人は一枚の不在票

バッタと気づいたバッタ
念仏唱える茎

下書きのような声で母を呼ぶ

あの日のあこがれが発芽する

人形の目に針を刺す
子どもらの
目の輝きに似た朝が来る

全部間違い全部間違ってきたおれ
の靴に白亜紀の砂がつく夢

まばたきの度に栄えて消える国

アルパカの純愛を妨げている

運動会の整列みたいに美しく
ぱりんと良く割れそうな漢文

カーテンに影を吸われて
共犯になるならなれよ春の葉桜

どん、どん、
と重たく喚く雨垂れにどこか
わくわくしてたりもする

傘小突く。
午後から雨が降るらしい。
逆さの傘を、も一度、小突く。

あ、
それは
わたしのトマトわたしのトマト

カランコロンカラン
　　寝冷えの独り言

水の話は春の水澄んでから

文明が氷になって神の暇

青春が五類となって薄っぺらい
ぼんやりとした消えそうな病

蝿飛んで当たる鏡の裏の奥

蛇口には星の通った跡紫陽花

夕立を見る心臓のやわらかさ

世界中のひとが
わたしに窓から手をふっていても
わたしはさみしい

夕立を私のなかに隠しもつ
いつか名を呼ぶ我が子のために

折り畳み傘も
寂しくなるらしく
わたしの髪の毛ばかり食べる

病室はひかりが溢れている
いのちのひかりか天のひかりか

芒野を抜けて

獣になっていた

ぬばたまの硯に残る墨汁と
この世に生まれなかった言葉

君に会いたくて　唱えた。
まじない　墓石　まじない
墓石。

さみしさは底抜け
ばけつによく似てる
遠い故郷の豪雨を思う

未開封りんご酢奥で光る梅雨

雨に濡れるということは
私がまだ獣であることの証明

椅子の背が光を浴びて元気

一本道地球の腸が飛び出して
いるみたいどこまでも続いて

雨蛙跳ねて娘もオクターブ

荒れ地だった畑
畑だった荒れ地
荒れ地だった庭
庭だった荒れ地
荒れ地だった

朝一番に教室へ

部屋いっぱいに大きな薬指

透明な
瓶に砂糖を入れ替える
身体表現は得意ではない

全て眠る　滅びたいって本当すか

絵の中でしか重なれない静物

拭い去る
火は火であって君じゃない

夏至　楽器だったことを忘れ歩く

西瓜糖　辿り着けない墓地にいる

言葉じゃんけん
かわせみが
勝ちになる

炎天かち割り
国語の丘に
呼びかけて

冷蔵庫の中でも腐るものがある

カーテンコールが鳴り止まなくて

何枚も重ねたお皿を手に持って
純文学をあきらめている

重心を前世の夜に置きながら
一から十を逆に数える

ひかりにも厚みがあって
本名を名乗らなければならない
世界

押しボタン式信号は押されない

さよならまでの長いお話

ぽむぽむと花開く紫陽花通り
いもうとがわたしの手を離す

独学のせどりによって建てた塔

恋人の拍手笑いに揺れる池

鼻をかむ予定で黒いカレンダー

砂時計さかさまにしてから速い

存分にかけた餡すら夢なのか

お膳立てありがとう白馬の毛並み

十円の価値だけドライヤーをして
あとは夜風に乾かす鱗

立ってれば
ツインテールはなびいてて
床につかない
ミクになりたい

あの人と生きていきたい
と告げるとき
足裏にある神社の敷居

運動会の整列みたいに美しく
ぱりんと良く割れそうな漢文

均等な薄さで
スライスしてください
それがマイホームに至ります

のびやかに電脳世界を巡りゆく
きみのこころが生み出した
楡

フルハウス、
ひとみで君が避けている
話題が分かる春があったら

このゲームはもう
どこにもありません　

どの演奏も同じではない

アルファベット
散らばる床に寝転んで
ふやけたように喜ぶばかり

泡立たない波の中へと飛び込めば
知ってるリツイートだらけです

回る寿司の皿はかるくて　
しつけ糸うつくしい
きみの語彙を聞きおり

人生の喜び苦しみ慈しみ
キャベツを食べるウニを見ている

髪を切る
耳がすーすーする夜に
電子マネーの決済ちゃらりん

起きた瞬間
今日はもうだめだって分かる
その日のぶっかけうどん

平仮名がないパスワード終戦日

完熟梅箱いっぱいの揮発性

梅雨寒の瞳が硬いぬいぐるみ

パイプ椅子

並べる
バミる
風光る

筋肉痛
まさか桔梗の花束で

鯛焼のもう許しての
目から食う

麦茶飲む
すぐ前をゆく僕のため

雛祭
眠れば朝になる家で

二個二枚いつも二だった日用が
一になって無花果の実

すれ違い
スカートわずか腿にふれ
背伸びはしない　桃の花

買わなくていいや世界は広いから
聞こえてくるよ風鈴の音

詰め替えのシャンプーあふれ
春の風邪

虹消えて眼の中にある水分

ドアに足挟んで夏の月見えず

目薬が溢れて揚羽蝶が遠い

朝の蜘蛛眼鏡を取れば目が合って

叫ぶ呼気飲み込んだから蝸牛

夕立を見る心臓のやわらかさ

たかい音を出したら
四捨五入できる気がして、
歌っています

手のひらは所詮、
あおぞらだってこと
後れ毛がいたむ

休みの日、わたしを吊るす
天井が剥がれるくらい
おもたいひかり

夕立を私のなかに隠しもつ
いつか名を呼ぶ我が子のために