消毒液まみれの地球
その少し離れたところにある
冬の月

平成の怪物堂々引退す
平成の凡夫は今日も
鞄を振るう

奇術師が旱をぴてぴてと歩く

生きるとか死ぬとか氷店に旗とか

夏の高校野球
母校の初戦敗退を
じゃがいもに敷かれた
新聞で知った

ばあちゃんの葬式の日には
祭壇で傷みしたたる
デラウェアを見ていた

無観客の復興五輪
福島のソフトボール会場には
熊が観に来たそうです

このマンションで
一番みどりのドアに入る

残高が777のSuica持ち
あなたに逢いに行く星今宵

紫陽花を亡子の脳と思うまで

指鉄砲撃って
わずかに
　蝶
しずむ

昼休みの
ここは　
浴槽みたいに　静か　
あたし　ひとり

嵐の日もあたしは灯台みたいに
かわいい末っ子の姿で立っていた

声を枯らして　幸せを叫ぶ
狭くて　深い　井戸のなかで

フウセンカヅラの窓辺
カルピスの包み紙を
もう一度
瓶のかたちに戻したね

水筒をなくしてきたのは
向日葵が
怪鳥のように
わたしを狙ってたから

寄り道はしてない

溝の中に立って
長靴の間をすり抜けていく
雨水を見てただけ

前の席のおじさんの頭の上に
てんとう虫がいる
雨の日の昼間の病院行きのバス

虫たちを入れたまま
どこかに忘れてきた虫かごが
わたしの罪

麦わら帽のリボン
黒に替えることを許されず
フランスの男の子になれない
七月

緑萌え立つ公園で幼いわたしが
みどみどしい、
と言ったのだと未だ母は笑う

病院で父の足の爪を初めて切った

人ごみで父はいつも
私と手をつないでいた
こどもが風船の糸を握るみたいに

あやふやに揺れる世界が
不意に濃密になる所
例えば
赤ん坊に握られた指先とか

とうもろこしは
はじっこの
雨の味のするとこが好き

生まれも育ちも
銃後
片蔭だけがある

スパイにはなれない
春が好きだから

申し訳ございませんと
何度も頭を下げて
帰路につく
家では父として生きている

亡くなった人が
笑っているポスター
忘れた傘を
受け取りに行く

校庭の隅で冷たくなっていました

夕立のあと骨となる　大根煮る

下駄箱のみんなの靴を裏返す
もちろん自分の靴もそうする

天気雨　下五に戻るフラミンゴ

月を見に行くと告げて
犬の散歩に出たっきり
一人目の母は帰らない

季節を飼い慣らせない僕らは
いつも
真夏のリードに引きずられる

少し背伸びをして
コーラを飲んでた
あの頃
世界は瓶の底のように
美しかった

女ひとり　一合の米を研ぐ
忘れたいことがあり過ぎて

中学の国語の先生は
答案用紙の裏に書いた
私の詩にも
はなまるをくれた

妻を抱く力点少しずれている

水溜りの深さを知りたくて
少女は
赤い長靴を履いたが
水面に映る空を
踏めない

ラジオ体操のスタンプが
可愛くて通ってた公園

今では
見向きもしない仕事帰り

朝のプールのあとの
耳から抜けない水が
午後の
数学の教科書の
円を歪めた

祖母とあんみつを
食べたあとに乗った
急行列車は
いつもよりゆっくり走る

三途の川は
バタフライで渡ると
決めている

巣が駆除されたことを知らずに
同じ軒下を
何度も何度も
何度も飛び回る
親燕

娘の名前をひらがなで呼ぶ母

あの日抜き忘れたままの
まち針で　今も
私は夏に貫かれている
痛みはもうない

イカ墨のパスタが
上手に食べられない
そろそろ人を
やめたい夜更け

火炎瓶投げてる人が父に見え
ニュースをはしごしている夜半

お下がりのワンピースはいつも
やんちゃな
姉の夏の匂いがした

試供品ひとつもらって
この街の
一番静かな場所まで
歩く

臨時速報のニュースが流れてる
あなたに別れを告げられている

夕立のあとに駆けてゆく命日
わたしはひとりあなたとひとり

あなたを試すための余白

イオンで光まみれになっている

パワートゥザピープル
ドンキの内奥で
呼び込みくんを抱きしめている

半個体のアイスと
半液体のわたしの
あやふやな境域

くちびる
剥いたらいけないって
分かってるけど
早く羽化したくて

試されるべきはこぐま座
落ちてきて

注射痕ばかりかがやく錦糸町

ひと段落すると
からっぽになった気がして
焦って牛乳を飲み干す

発展したくないね、と
名も知らぬ花に
しゃがみ込んで囁く

よりによらず今日が雨だなんて

どこかのネジが落ちてて
どこのかがわからず
どこかのネジとして
放置してある

タップひとつで消せちゃう友人

四度目くらいにオオカミが来た

三面鏡
永遠に並ぶ自分の中に潜んでいる
偽のわたしはどれだろう

複雑に泣いたところでムラができ
上手く焼けないアイスクリーム

祝福と共に切り売りされる
月の土地

ダークチェリー 滴る
世界はここだけみたい

茹であがった豆が
いっせいに手を叩いた

道徳の時間にかかった
虹なんて信用できない

ぼくの帽子
しらない名前が書いてある

氷を齧っている少女
ときどき
片想いになりますように

夜祭りのひよこの爪が伸びるまで
何もいらない　神さま待って

スパゲティ
トマトのソースを選んだら
円満退職できる気がする

もういいかいの終わりが来ない

死んだあと　それはかなしいかも
しれず六割くらいは花にされます

帰り道「じゃあまたね」って言い
合えばああ誰にでも生活はある

逆光のかみのけゆれる　たましい
は星になるときいちばんほんとう

屋根に落ちる音
雨は重さを持つと知り
私も在ると知る

隣家にはみ出た枝を落とした
地下のことは分かりません

意味までは
用意されていないんだね

残り湯に浸かって風呂を洗う
イルカの背に乗る白昼夢

色鉛筆の赤と金を
８月中に買い足さなくちゃ

半透明なものはみな宝石だと
いう 
　　君の 
のむ 
　　麦茶 

紙製の街にて紙を買い漁る

ねえ鉄が
死んでるみたいに冷たいの

色鉛筆の黒でごまかす

まだ昨日なのか

一つ一つの細胞に何か書いてある

ちたちた
と血を滴らせ灰色の
空とおんなじ　鉄は眠れない

生きていたねこの心地を思うこと
ねこのいないソファーの布溜まり

数学がわからないから降りる駅
降りて歩けばきれいな夕日

空白を楽しむくらげ□のなか

夏めいて句点は息を継ぐかたち

渇きさえ知らぬ存ぜぬ私は春だ

死に夏は含まれますか大都会

鼓膜を破って破って破って
潜って潜っ潜潜
って潜

あなたの脳に寄生する

スマホ覗く私の顔を
巨大な蜘蛛が覆ってた
笑ったら
長い手足がジクジク動いた

風には膜が張っていて
みんなは亡霊みたいに
それをかぶって
歩いてるんだよ

月が透けてる。
殻を破れずしんでった
いきものたちで
いっぱいだった

恐怖とは
ドラッグストアの真向かいに
有刺鉄線があるということ

マカロンの良さを
とうとう突きとめた
霜柱ふむような歯ごたえ

治らない瘡蓋に
ふと、父を思う
だからどうとか言うわけでなく

教科書に折り目をつける瞬間と
まっさらな雪　蹴散らす瞬間

生命はぽつぽつと逝く
カーテンの一つ外れた
フックのような

タクシーの
深夜料金の額から
プルメリアの散る
九月の道路

二回目の
ティーバッグへと湯を注ぐ
ピサの斜塔のような死に方

にやにやした蛇みたいな
彼の部屋の壁のしみ
躓いたふりしてコーヒーかけた

烏龍茶の「うー」が
鳥では無いと知った日
僕はユニクロで
喪服を買った

そこで死ぬこともある

丸々と粒を湛えた玉蜀黍をもぐ
子供の頃故郷で聞いた
鶏の骨を折る音がした

「ら」の濁音が発音できなくて
ゲームオーバーで目覚めた朝

わざと落とす
僕の代わりに誰かが
志を継いでくれると願い
ポイントカードを

火星にいる大好きなひとに
地球のラブソングは
ラブソングのまま
届くのかな

隅っこに去年の夏は履けた靴

授業中君の耳が透けていた
消えてしまう前に
つまんでしまうかもしれない

ノートを破り、
ノートを破り、
ノートを破り、
光の春に飛び散っていく。

溺れそうに続く雨夜の屋根の音を
星の果汁と思って眠ろう

資本主義以前のスイス高原に
座って待っている子守唄

応援の歌に合わせて
傘を振る
少し大きくなった気がする

差出人空欄白樺の樹液

奇術師が旱をぴてぴてと歩く

月彦全句集を抱き汗の腋

生きるとか死ぬとか氷店に旗とか

上の子とわたしが
下の子をサンドイッチ

かつてしていた優しい遊び

私の胎にある
子供達の部屋を
共有した子たちが
二段ベッドにいる

自己啓発ワードから
逃げている
人に押し付けられる
そんなん
いらないから

そろそろ硬い桃が食べたい

モンモは硬いうちに食べるもんだ

弟の携帯の表示に
姉一号　姉二号　と
映し出されるのをみた
姉二号です

福島で
オリンピックの
プレイボール
復興なんか
してないのにね

昼下がり　蝉の声
灼けたレールに
踏切の音

あの夏と同じだ

街灯の燈火がやけに揺れ流れ
灯篭のよう
八月が来る

白びかりした証明写真をはる今夏

指鉄砲撃って
わずかに
　蝶
しずむ

小さい弟に
ピアノを教える夢を見る

洗濯槽に放置していた六月を
軒下に干す雨上がり
小鳥たちの声が
転がってゆく

嵐の日もあたしは灯台みたいに
かわいい末っ子の姿で立っていた

風鈴を割ってしまいました

もう
庇ってくれるひとのいない夏

フウセンカヅラの窓辺
カルピスの包み紙を
もう一度
瓶のかたちに戻したね

水筒をなくしてきたのは
向日葵が
怪鳥のように
わたしを狙ってたから

泣く理由が見つからないのに
とても泣きたい
午前四時
新聞がポストに落ちる音

水を捨てても
黄色いバケツの底には
悲劇みたいな
黒の絵の具が残ってた

寄り道はしてない

溝の中に立って
長靴の間をすり抜けていく
雨水を見てただけ

前の席のおじさんの頭の上に
てんとう虫がいる
雨の日の昼間の病院行きのバス

押し花にした朝顔は
玉葱の薄皮みたいで
こんなの先生も
見たいはずないのに

病院で父の足の爪を初めて切った

あやふやに揺れる世界が
不意に濃密になる所
例えば
赤ん坊に握られた指先とか

犬も子どもも
那智黒飴みたいな眼で
見つめる生きもの

具合が悪いって犬に言うと
それはいけないねって
一緒に寝てくれた

入道雲に
虫取りあみでぶらさがり
おとうさんが帰ってくるのを
待ってた土曜日

とうもろこしは
はじっこの
雨の味のするとこが好き

積乱雲そびえ立つ
わたしは今や
乱暴で弱っちい大人だと気づく

雹をよけながら帰る
映画のワンシーンのように

大事なものは
たいてい
洗濯機の中で
ぐるぐる回っている

兄は
ひろゆきの言うことは
信じるが
母の言うことは
聞きもしない

生まれも育ちも
銃後
片蔭だけがある

ストローで氷を混ぜている時の
氷の気持ちになっている夏

豆腐屋の笑顔の店主の傍らで
鼻血を出して僕を睨む子

からっぽの自分が悔しくて
笑う
通勤電車の窓から
見る月

一日の終わりの母のシルエット

作戦名「金庫に今日も雨が降る」

街の灯はもえているかい
ハムサラダ

月を見に行くと告げて
犬の散歩に出たっきり
一人目の母は帰らない

少し背伸びをして
コーラを飲んでた
あの頃
世界は瓶の底のように
美しかった

女ひとり　一合の米を研ぐ
忘れたいことがあり過ぎて

青空と共存する
どこか誇らしげな
少女の　麦わら帽子

中学の国語の先生は
答案用紙の裏に書いた
私の詩にも
はなまるをくれた

室内の涼しい部屋で聞いている
工事現場のダダ　ダダダダ　ダ

二人とも確かなことは口にせず
駅まで歩く
冷たくなった陽だまりの
跡を踏む

お子様ランチの国旗を
こっそり持ち帰った
私の誕生日
父と母が
仲が良かった頃

林檎の花の白さに
私達は
過度の期待を抱く
その花に触れ
その脆さを知るまでは

マトリョーシカみたいな
可愛い五人のおばあちゃんが
並んで
牛乳を飲んでいる

目で文字を追うことが
出来なくなった母に
父は毎夜
母が好きな詩集を
朗読した

負けても胸を張って帰る
高校球児のように働けたなら

お下がりのワンピースはいつも
やんちゃな
姉の夏の匂いがした

試供品ひとつもらって
この街の
一番静かな場所まで
歩く

齧ったパンを
スープに浸すように
私は憂鬱を
いつも誤魔化している

蔑むも
苛まれるも
さよならも
さ、ではじまるね
寂しいことば

父の姓を捨て
正真正銘、母の子として
生きていく

この母と永遠に生きるために剥く
林檎を三つ買いに行く

七月の終わりの校長室に画鋲

親元を離れて暮らす街でまず
銀行口座を開けと言う母

母がうちわを使う音が
なんだか怖かった
夏の夜

自衛のために消えていく執着
【大人】は薄っぺらくて強い

生きる。

日焼け止めは母の匂い

街中でダブルピースしてもひとり

　　夕闇
　　変電所
　　　　の
小気味よい
　　　直線

いくら時効とは言えど
恋文公開されるのは
わたしだったら
嫌だなあ

小雨の日
小石を蹴って思い出す
たくさん届いたお祈りメール

あの時人を待ってた
オサマ・ビンラディン氏殺害の
速報流れる改札前の柱で

世の中の楽しみを
確実にわたしより知らずに
育ててくれたお父さん

ニキビの転生輪廻に悩まされてる

不確かな明日と
不機嫌な周りの目が怖くて
不満だらけのレールを歩く

蕾の中で腐っていく

おさんぽ、なんていうけど
君の心臓を連れ歩く責任感。

世界で
いちばん着づらい
民族衣装の国に
生まれたこの奇跡

氷を齧っている少女
ときどき
片想いになりますように

くちばしのまるい折鶴
ヘビイチゴ
たんぽぽの束
点滴チューブ

クリームソーダは
アルファベット練習帳を濡らす

ルリタテハ
入道雲をくいとめて

いつもより深い
おふろに浮いてきた
おもちゃから
たちあがってくる影

夏風邪をひいたから
水蜜桃を食べられます

味見　味見！とせがまれ
足元にまとわりついた
あの頃の君を愛しく思い出す

金ピカだったシーサーの
色褪せるほどの
都会の日射し　
都会の癒し
都会の幻

発電機の音と蝉の声
日射しで溶けそうな
工事のおじさんだけがいる

燕にサヨナラが近づく
またおいでと
赤いコーンが仕舞われる

かすかな頭痛は
日射しのせいか
クーラーのせいか
泣きたい気持ちの具現化

色鉛筆の赤と金を
８月中に買い足さなくちゃ

鱧も鳴く季節外れのゆゆゆゆゆ

ある
いていると
うのはなが
えんどうにさく
おかのうえ

引きずれば破れてしまう優しさの
明け方に在る影の満ち引き

好きなように飛び交う蜂を
避けながら
自転車で漕ぐ町のまぶしさ

もうだめで少しも眠れない日々で
歩いて行ける静けさへ行く

夏めいて句点は息を継ぐかたち

からっ風
葉を落とし
日を落とし
少しだけ、重たい世界を傾ける

片手に金魚
額にうすらと浮かぶ汗
ひとつぶひとつぶ
鏡になって
花火が灯る

刻んだトマトの切り口から
あふれる真夏の銀の眼差し

　　　　　　　　　　　夜空の
最も淡いところで暮らしている

雲海で夜が沈むのを待つ日の出

風には膜が張っていて
みんなは亡霊みたいに
それをかぶって
歩いてるんだよ

月極を読めない季節があるものと
知っているから優しくできる

花被る年頃、になるらしい

あのときに
鴉を恐れていた子

生命はぽつぽつと逝く
カーテンの一つ外れた
フックのような

二回目の
ティーバッグへと湯を注ぐ
ピサの斜塔のような死に方

新居の
大きな大きな、大きな窓
見える空はいつもより青く
いつもより遠い

鯨が食肉に変わる最期の
血まみれの潮吹きが
瞼に焼きついて離れません

点滴を「相棒」と名づけることで
辛い時にも
仲間がいるのだと思い込む春先

鶴を折れることが
どうして世界平和に
つながるのでしょうか

枯らしたサボテンを眼前に
愛だけで渇きは癒えぬ事を悟る
結婚前夜

丸々と粒を湛えた玉蜀黍をもぐ
子供の頃故郷で聞いた
鶏の骨を折る音がした

何度でも立ち向かいたい。
諦めない心をもちたい。
ばいきんまんのように

「ら」の濁音が発音できなくて
ゲームオーバーで目覚めた朝

てづくりのカレー皿に
レトルトカレーを注ぐ
大雨洪水警報の日

「シャチのおなかは何色なの？」
と、図鑑と人形
両手に問う息子よ

稲妻が
入道雲を
わしづかみ

月彦全句集を抱き汗の腋

生きるとか死ぬとか氷店に旗とか

白びかりした証明写真をはる今夏

七月が生えたね　
青いね

指鉄砲撃って
わずかに
　蝶
しずむ

昼休みの
ここは　
浴槽みたいに　静か　
あたし　ひとり

泣く理由が見つからないのに
とても泣きたい
午前四時
新聞がポストに落ちる音

入道雲に
虫取りあみでぶらさがり
おとうさんが帰ってくるのを
待ってた土曜日

とうもろこしは
はじっこの
雨の味のするとこが好き

去年の夏
箱に閉じ込めた星は
まだ息をしている

蝉がなく
夏の掛け算
真っ盛り

スケボーに
希望をのせて
風となる

一日の終わりの母のシルエット

少し背伸びをして
コーラを飲んでた
あの頃
世界は瓶の底のように
美しかった

真夜中にあなたに
寄りかかっている
深夜バスの行き先は　春

娘の名前をひらがなで呼ぶ母

残業をしていた父の目も
きっとこんなに真っ黒だったか

お下がりのワンピースはいつも
やんちゃな
姉の夏の匂いがした

試供品ひとつもらって
この街の
一番静かな場所まで
歩く

初期化した　いもうとの
たましいが　まだ
僕を忘れていない気がする

七月の終わりの校長室に画鋲

夕立のあとに駆けてゆく命日
わたしはひとりあなたとひとり

母がうちわを使う音が
なんだか怖かった
夏の夜

プールの中で
じっと死んだふりをする
夏が終わらないように

早朝四時の国道に
クリームパンが轢かれていた

砂の音を知っている
あなたは優しい大人になれる

ぼくの帽子
しらない名前が書いてある

氷を齧っている少女
ときどき
片想いになりますように

ルリタテハ
入道雲をくいとめて

死んだあと　それはかなしいかも
しれず六割くらいは花にされます

将来の夢はあめんぼ　しりたくて
しったことなどひとつもないよ

潮風にかこまれながら夜はただ
ひかりの無さ　あなたはあなた

逆光のかみのけゆれる　たましい
は星になるときいちばんほんとう

小論文指導を受ける友のその頬が
夕焼に染められてゆく

発電機の音と蝉の声
日射しで溶けそうな
工事のおじさんだけがいる

鱧も鳴く季節外れのゆゆゆゆゆ

とりけらとぷす
ちっぽけな
つまさきみつめ
てんじょうに
とまるむしねむる

ねえ鉄が
死んでるみたいに冷たいの

ある
いていると
うのはなが
えんどうにさく
おかのうえ

かるいいし
きっくしあるく
くもをみる
けむくじゃらな
こねこのさんぽ