感情を空瓶に入れて流す
梔子の花は
少しでも触れたら
茶色く濁る

現実味のない昼下がり
木陰で休む烏の濡羽色
この世の全ては光でできてる

葉桜に水玉
虫食いの光の影を通し
いっときこの世は万華鏡

唇は残らない　昼の火葬場

午後の
往診
向日葵迷路に
園児が消える

欲望に基礎をおく国山滴る

月光にピアノの蓋を閉じ卒業

梅雨明けかしら
卵かけご飯アレンジして食べる

お姫様みたいな顔で待っていて
来世
うなじで溶けてゆく雪

くちびるの
ままに
あなたを歌うとき
すべての夏がらいめい　だった

海沿いの花時計
２時間待ったことを思い出す
麦わら帽子だけでよかった夏

熱帯夜道路がちょっと浮いている

にんじんの
ナムルが冷蔵庫にあると
言ってふたたび母は眠った

さん付けに戻してそそぐ烏龍茶

アリバイがあった花から帰らせる

蛇口を見ると
空をめがけて
すべて全開にする
ふたごのおとうと

私は今もこの街に生きています
きみと出会った学び舎で
国語教師をしています

蚊取り線香の匂いが好き
田んぼが好き
貝殻が好き
孫は祖父に似ている

職場への
抜け道二つ
蝉しぐれ

雪だるまの鼻を使って
カレーライスを作った
父と過ごした幸せな日々

真っ黒でひび割れて
大きな手のひら
父は誰よりも美しかった

よく眠る術後の父上夏の雨

深くなる夜　掠れていく希望
アプリコットのジャムの
瓶を洗おう

みずみずとした夏だった
布団から動けず
泣いていたあの年は

カルト的建造物がある町の
はちみつみたいに重たい日暮れ

目立ってる君のくるぶし
シネラリア

君と食べるチョコクレープの
クリームを
ちょこんと鼻にくっつけている

リッター瓶半分切ったウイスキー
何故にこんなに惨めに思う

眠れない夜カピバラの咀嚼音

半夏生まばたきだって水の音

涼しげに投票箱の薄い口

確かに君が生きた十七の
夏のシラバス問うて向日葵

浜昼顔ジョバンニの父帰郷する

昼の雷手提金庫も蚊帳の内

煮詰めてくミルクは
だんだん焦げていき
君の部屋のキッチンの冷たさ

いちい
はんのき
おきなぐさ
黄色いアイリス
星月夜

信じ合うことが自然と出来ていた
放課後二人のじゃんけん戦争

美しい骨を遺して死にたくて
花の香りのミルクを選ぶ

日々の暮らしを歌うことを
叩かれたことがある
日常こそポエジーなのに

六畳に家族四人で眠ってた
それがわたしの「福島」だった

嬌声を上げる軍靴、
残照の拍手、
清らかな僕のための
たった一度の水銀

街を操る糸を切って回った
僕は最後の
ジャンヌダルクだったから

大丈夫って何度も言うと
大丈夫じゃなくなる

折々にフラペチーノを飲みながら
僕らは梅雨の終わりを待った

約束を忘れて生きていることの
手首の白さが憎く眩い

スクリーンを流れる誰かの道徳に
隙みせぬようグミ噛み続けろ

幻肢痛 僕らに羽根があった頃

どうしても
茄子のかたちが許せない

もうそれで叱る人などいないのに
アイスは一日一本までで

マスクメロン食べたことなど
ないけれどアイスの味で話を
合わす

どこぞやの誰かが撮った君の写真
そんなに無邪気に笑う君だよ

鳳梨を齧りつつ待つ夜行バス

片足に重心かけてハム切って
麺をだるだる茹でる真夏日

新刊を帯のまま貸す
こんなにも
誰かを信じる朝が来ること

過去形で未来を問われ
もう叶わない夢があることだけ
わかる

はつなつのアイスモナカに
溺れちゃいそうだね、
ここは眩しすぎるね

イヤホン無しの帰り道は
現実を聞いて帰るしか無いのよね

ヘアオイルに髪は包まれ冬林檎

制服に鯨の孤独をしずめている

パパが良いと泣きわめいてそんな
日も園に預けるしかなくて泣く

妻の入院した日見た朧月

ねころびながら夏をなでる
それから
ドラセナにハグする
すこし、いたいけど

均等に切ると
キュウキュウ葱が鳴く

何故かカーネーションがある真夏

ここだけに影がぽつんと炎天下

各駅で帰る愛

鈴懸の花と整列　太陽系

夕暮れの中
ママ　アイス食べたい
そんな一言を思い出して
涙がとまらない

両手に女を抱えたい
でももうおじさんでもいいかも
夏の接触不足

レタスから
虫が出てきたらこわいから
サラダづくりは貴方がおねがい

歳を取ったネコを撫でて
ひさしぶりの鯵の南蛮漬けを待つ

さらら さっ さくら
ぽ・ぽぽっ たんっぽぽ
バランッ。バララン。バラ

風鈴の内臓部分に満ちる闇

安っぽい言葉ばかりね花梔子

午後の
往診
向日葵迷路に
園児が消える

くちびるの
ままに
あなたを歌うとき
すべての夏がらいめい　だった

翼と糞ってぱっと見ちがいが分か
らないそういうものかもしれない
おれらは

まだ当分尽きない米を研ぐ真昼
おれにも人生ってあるのかな

蜜柑の透明な皮
のような夏の夜
のしつど

あいさつが弱くてあたし川に来る

お手本のはずが五台の教習車

トルストイ閉じる君の手青い夏

シャッターが降りた雑貨屋
夜空柄のシュシュから
星がひとつ削れる

半分もミスしてもうた模試やけど
振り返ったら満天の星

半夏生まばたきだって水の音

夏の朝トースト裏のやわらかさ

どうせ、
そうゆうことにするのなら
ほつれ目をください
わたしにも

いちい
はんのき
おきなぐさ
黄色いアイリス
星月夜

浜辺にはあたしの輪郭だけあって
ゆっくり離れていく影の行進

生きる訳が見当たらないから
今日はカレー

多嚢胞性卵巣症候群ですと
名前が付けられて
私のからだはまた遠ざかる

雨の夜は銀河からバスが出ている

うろこ雲 空が大きな魚なら
私はきちんと貝になりたい

あさやけが消え去るまでの十五分
トマトはずっと赤く揺れてる

カツレツのサクサク
ポストカード書く

初めてキミが僕を名前で呼んで
歩行者信号は赤くなった

君の帽子に見つけた
小さなエトワール
しゃりしゃりと光って

新しい事務所は
放送室の匂いがする。

さらら さっ さくら
ぽ・ぽぽっ たんっぽぽ
バランッ。バララン。バラ

プラットフォームの端の方
整列線で反復横跳びする少女

朝顔がひらく
一部始終を
語ることは出来なくて
無理解で殴り合う

風鈴の内臓部分に満ちる闇

舌触りの良い言葉を並べれば
壊しても良い楽器

農民の指先は黒
銀河系

カサブランカまだ題名のない無題

葉桜に水玉
虫食いの光の影を通し
いっときこの世は万華鏡

唇は残らない　昼の火葬場

捨てられない空き瓶みたいに
夏過ぎる

月光にピアノの蓋を閉じ卒業

音読みで誤魔化していた感情が
訓読みされて暴かれる夜

まだ誰も知らないはずなのに
人は永遠という言葉をつかう

仕事って楽しまないとダメですか
楽しくないけど真面目ですぼく

光は目を探して飛び降りつづける

あいさつが弱くてあたし川に来る

蓮の咲くような身体になるかしら

こいびとの胃に数百のしらすの目

ノウハウをあなたの鱧に囁いて

算段があるのであれば骨を貸す

腹話術師になれたなら
世界平和を
口を閉じて叫ぼう

アンパンチで
飛んでいくなら希望まで

もう、そうするしかないでしょう
妄想したけど
もう　もう
もうそうでしょう

学校は水で
きみは定規だったけど
私みたいに透けてなかった

七月の神が難産　湯を沸かす

これほどの暑さを
子どもたちに
手渡すのか

言いさしはうつくしい地図　
はさまれた路地に
なんにも見つからぬとて

足音できちんと君とわかるのに
怒りの声が君だとわからぬ

ユニゾンが水の底から聞こえたら
マッチを擦れば過去は消え去る

右左過去未来或いは又
話を遮る君
文脈は遍在する支配者
俺は文字と大差ない

ぶち撒かれたらば歯痛の帆立貝

塩味の板張りの家水中花

億万の声天高く天のまま

作業着をハンガーにかけて
風呂出れば新しく生む新しく生く

うまい棒
口に咥えて
「吹き矢だ」
なんて　おまえ　
隠密だな

少女の右口角に付いたクリームは
左手薬指で拭うべき

サティの忌まだ手探りをする天使

＊Eric Satie

浜昼顔ジョバンニの父帰郷する

はたた神むつかり
Wi-Fi雷サージ

星祭溢し忘れの盥水

MICO亡くて
パラソル回す熱帯夜

＊弘田三枝子忌　７月２１日

頑張れと言わないで
大変ねも言わないで
ただ
背中の気配を消さないで

こめかみを押せば海月が夜の部屋

わたしはわたしを遠ざけて
生きながらえた、鈴の音がする。

さよならの四文字
予測変換を
使わずに打つ確実に打つ

今ゴジラ和光のビルを壊したぜ
待ってうどんがすぐ茹だるから

何枚か浴衣を買ってみたけれど
一人で浴衣は着ないと気づく

わたしたちはすっかり
「出て行った人」なのに
「福島から来た人」のまま

確かに、君が眉間にのせる花
言葉にまさる欺瞞はないし

世界には元から何もなかったの
かもしれないとレシートの山

思考が親指のスピードを上ま
わるとき、その差分に咲く花

カステラの端だとしても渋さよな

肛門の時代でした
と
言われれば
理解できるような気もするし

ロンサムを夏の艤装に数えれば
過ぎ去るもののひとつとなるなら

どうしても
茄子のかたちが許せない

公園でシーソー遊びする親子
子供と親は交互に重い

生きる訳が見当たらないから
今日はカレー

無理をして話さなくても良いと
言う無理をしてでも生きてる僕に

片足に重心かけてハム切って
麺をだるだる茹でる真夏日

話したらちょっとだけ
楽になりました
晴天の日に嘘は増えてく

二十歳過ぎていますか
こんなはずじゃなかったですか
あたためますか

皮膚炎も乾燥肌も人魚になるため
と思えば許せなかった

過去形で未来を問われ
もう叶わない夢があることだけ
わかる

熱帯夜そっとどこかに冥王星

おい君、
孤独ってのは
共同幻想なんだぜ

酒瓶で殴れば少し痛いものです

労いのネギマをひとつ噛み殺す

制服に鯨の孤独をしずめている

積ん読が京都タワーに迫ります
元は木だからジャックが登る

果物を割高だけど買って行く
お尻の形理想の形

歩行者を優先自転車停まる夏

恋だとかそんな感情ではなくて
君の人権を侵したいだけ

午睡する毛布に割り込み君という
浜辺で溶けるさざ波になる

バスパンが怪しい色の好きなひと

西瓜が重すぎる
ブラックホールができそうだ

充実した生活
自信に満ちあふれた生活
静かに自己疎外の申立をする
右の脳

はみ出した君を救えず嘆く夜
コンロの端のしめじのしかばね

エヘラエヘラは統一への拒否

踏切のアカンアカンを言えてたら
あの子は今も、と
思うもあかん

かたちを身体に沁み込ませ
すべて忘れる
音を受けいれ声に呼ばれ
踊りになる

朝顔がひらく
一部始終を
語ることは出来なくて
無理解で殴り合う

風鈴の内臓部分に満ちる闇

大切にされていないと
気付いたときの
夏燕　雲の峰を越えて

ベランダの
四角さばかり気に掛かる


暑い

夜学から帰れば母はおかえりと
ゾンビのように毛布をはらう

結局はユリの下請けではないか

アリバイがあった花から帰らせる

それ星の瞬きで鳴るオルゴール
天に着いたらねじを巻いてね

旅に出る朝
心踊る
こうやって
この世界に
生まれてきた

足音で
わたしはわたしを分かるから　
知らない動物で死なないで

半分もミスしてもうた模試やけど
振り返ったら満天の星

縁側の茶器の一雫まで春

冷蔵庫奥の夢から取り出すように

冷蔵庫製氷皿に凍る虹

川となれ、
わたしの中を

ものさしみたいに伝う沈黙

どうかこの針の月を
貴方は見ていませんように

索引にたくさん私が載っていた
社会問題と恋人繋ぎ

雨の日の蜘蛛の巣だけが覚えてる
星座早見に残らない星

ソフトクリームの巻き方を
君が
教えてくれたときの
からだを
おぼえてる

下駄の緒の馴染まぬうちに
遠くから響く花火を
くらやみで聞く

咳が出ない咳が出ない電話をしな
いことは壁俺が守られたい

切り爪をさっと揚げれば狐色
わたしかきあげできたわできた

十八のおれだけがいた教室は
でかいものが
死んでいくための広さ

ざらざらの網戸の向こう側にだけ
咲いてる花のほんとの色は

玉の輿燃やした郷に従う海辺

鈴懸の花と整列　太陽系

前略は控えた格子窓の川

落っこちてる雷を拾った
交番に届けるのは明日でいいか

夕暮れに
あなたと別れひとり

わめく蝉

太陽も地面も
私を焼いて
食べたいのかしら

夕焼けにもう味がない違和感に
気付いていても戻れないとき

風鈴の音の沈む海底
暗澹と冷淡のなかには
固い甲羅ばかり育つ

農民の指先は黒
銀河系

どこまで行ったら正解ですか
道の通りで土鳩が鳴いてる
蓮の花降る昼下がり

メガネならなおさら星の倫理観

欲望に基礎をおく国山滴る

いつか焼かれる身体を
少しずつ青く光らせる

ベランダのない部屋　あなたは
全てより一つがよくて両手で拭う

枕カバーやっと外して膝を折る
「やまない雨はない」という雨

福耳、と君に言われてその日から
国語の成績が下がりはじめた

君の家
西に木があれば
栖になり栗を食む
ずっと幸せにお成りね

夏の
糸のような足跡の
　先端になって、
　　　路地をぬけた

台風を生めない口で
つめたい水をのむ
夜中の台所で
電気をつけずに

逆方向に
言っても
かたつむりが綺麗

さくらんぼ　
僕はいたって不規則な
せいかつを　種　もうすこしだけ

陽炎は揺らしてなんぼ　音のなる
靴でこっちにくるまるいひと

川底のぬるっとぼくを好きにして

ありがたい言葉でもって焚火消す

森林をひらいてはテニスの座学

テキストに起こして鳥を可愛がる

雑音が一羽の慣れになる過程

ここは都市、
四十九日の君さえも
見つかりそうな量を抱えて

学校は水で
きみは定規だったけど
私みたいに透けてなかった

前世でも来世でもいい
透明で無垢で無邪気な標本であれ

機械仕掛けの快晴でした
僕が何も言わずとも
君が電話をかけて

足音で
わたしはわたしを分かるから　
知らない動物で死なないで

言いさしはうつくしい地図　
はさまれた路地に
なんにも見つからぬとて

枕なら抱かなくたって許される　
言葉を無限に操るだろう

会いたいを
勝ちたいが穿つ午後だった　
雨は歴史のように落ちゆく

半夏生まばたきだって水の音

七夕でドールハウスは晴れてます

確かに君が生きた十七の
夏のシラバス問うて向日葵

深爪する
槐（えんじゅ）の雨の星まつり

曲線と思っていたのに直線で
ミルクも喉を通らないんだ

君の手に触れない風に触れながら
明日のスケジュールを埋めながら

夏だからじゃないよ
きみが優しくて
水羊羹も美味しく食べた

川となれ、
わたしの中を

ものさしみたいに伝う沈黙

てのひらで崩してしまえ
このままじゃ
生きてなかったことになりうる

特売のたまごの殻のそばかすと
心を通わせたくて雷雨

「の」が並ぶ
ロールケーキの整列を
眺めるような夏でありたい

深夜の重力にかまけて
汗のしみる長電話

シリカゲル
朝凪のなか揺らめいて
夏に仕えることになってる

誰も見ていないからできること
よりも
目が合ったときのぜつぼうが
ほしい

索引にたくさん私が載っていた
社会問題と恋人繋ぎ

僕のいないところで
チャプターが切り替わる

歴史をすべて蓄えた鯨の大あくび

バス停に眠る二人の少年を
起こして散ったひとひらの白

三分後いつもできてるカップ麺
なぜだか僕は君じゃないのに

加害的忘却 僕の追憶に
やけに案山子が入り込むんだ

カステラの端だとしても渋さよな

忘れた　から
　飛んだのだ
映像は
拾い集めた貝に過ぎない

反省はフィンを脱がせた後でする
屋根のガラスが砕く夕立ち

網戸越し
こころを砕く夏の音

俺らの体
全部が詐欺師

太陽が３つにわれた日。
そして私、一人
ひどい目にあった。

夏空に鳩散らかして草ゆけば
忘れたくなる年も名前も

篝火が蛍光灯に変わっても
闇は間取りを考えてくる

鴨が僕ならもう少し離れたね
僕が鴨なら翼は円で

蝉の音は箱　でも夏はそれより
大きいから　まだここにいないと

リノリウムの床に釣り合う口角

産毛にもバージンロード歩かせて

コーヒーのあたりで注意喚起する

スパイスに
てんてこまいな船でいい

雨の止む方向にだけある耳鳴り
僕らは傘を差し続けている

私は今
ビー玉みたいな目して
こんなことを考えています

高原で揺らぐスミレを思うとき
許されていくほころびがある

血は走る太い樹のなか葉の中を
そうして生まれた私のなかを

バースデーケーキの上で
火は消えて
生きた数だけ墓場が残る

夕焼けにもう味がない違和感に
気付いていても戻れないとき

心が骨に鳴り響く贅沢
前進の脚となり腕となり幹を為す

羨ましくて、息をし忘れちゃう。
時間の進みは遅くて
永久機関だし。

風鈴の内臓部分に満ちる闇

感情を空瓶に入れて流す
梔子の花は
少しでも触れたら
茶色く濁る

唇は残らない　昼の火葬場

献花に群れる蟻が持参する蝶