波の音の中に言葉を探すとき
詩とは息継ぎのようだと思う

雪の日のあなたの影として生きる

コントラバス鳴るたび
気泡生むサイダー

ソファにぽつんと
漂着物めく
うつ病の
微笑の
君

追われても
追われなくても来る明日
伸びた分だけ
爪を切る夜

口は父目は母に似て夏休み

神託を受けた
しょうじょの顔をして
ほっとけーきのようにめざめる

うまれたての雲を
両手におどらせる
ようにあなたはピアノにふれる

せみとりに
向かう
背すじのりんとして
五さいになったおとうとは風

海をみにいこう、と
きみが言ったから
ねもふぃらの咲く丘でまってる

飛んでいる
鳥の翼の逆光は
見上げるひとのためだけにある

部屋干しの固まった影
宿題やろっと

虹色のこんぺいとうの袋詰め

露の世を生きて感想でしかない

羊水に還るひかりか日向水

わたしの底が
抜け落ちないように
本を読む

少子化で消えた三年六組の
曇りガラスに映る鶺鴒

十年の訪問看護終えて春

紫陽花の坂に週二の診療所

エコー越しに
胎児のあくびする四月

留守番のインコが話す幽霊語

ペンギンになれますように
　　僕たちは
手を繋いでもゆるされたくて

熱帯魚のいる部屋
ピアノなら弾かないよ

洗濯のまっただなかにある裸足

励まされ何も言えない夜がある
夢を見るのはいつも朝方

交番の
若き巡査は
拾得の権利を
放棄できると言った

琥珀流し朝から攣ったままの脚

水蜜桃ほどの透明感で泳ぐ

夕方が来るから窓を開けなさい

梅雨入りのみんな帰って
猫みたい

皿洗うときの指輪のあたる音

春は毒だ
ひらひらとこぼれ落ちて
街を青く染める

誰一人殺さず死んでいく人の
育てた花で祖父を弔う

本当はもっと
悲しいことがあるはずだと
フードコートで泣いた

開演に先立ちまして
劇場は誘導灯を消灯します

黙るためペットボトルに口つける

「母の白髪を読み解きなさい」

つなぎたいと言って繋ぐ手　
未来ではなくて来世の
ことを話して

いもうとになったことしかない
星は風が吹いてもゆれたりしない

寂しさに気づいてほしくて、
会う日にはいつもきちんと
マスカラをした

胸のゴミ山で見つけた本心を
子猫のように抱き上げた夜  

海底に眠る宝の箱はある
コークの瓶の底に棲む虹

一輪でサーカス小屋を震わせた　
「パパ、獰猛な薔薇を飼いたい」

子ウサギの役が抜け切れない夜の
一オクターブ高い「おやすみ」

いつだってゆめなどみない
100均に
健気なひかりはまるくたちよる

月光の涙をしぼる髪飾り

馴染めずに
もさっとバナナ生温く

誤字なんてくぅ～うっ。梅干

もにゅもにゅと
葛饅頭は不器用に

あだちたろうより伝言
損失は
気にしないごとに大きくなる

ふろしきで
届いてチンする白樺の花

咲いてから花だとわかる夕さりに
ボーカロイドの間違える歌詞

中身がわからないタッパーが
冷蔵庫の隙間を埋めている

何もかも上手くいかずに
泣きながら焼いたハンバーグが
母の味

コーヒーはカップに満ちて
月の夜のカフェの
やわらかな喉を映した

パンケーキの写真より
今朝すこし降った
雨の動画を送りたくなる

ホワイトノイズ　短夜の羊水

この街を抜け出すための
予備校の照明が星たちをかき消す

和太鼓の町にさよならを言って
足裏がちょっと痛かっただけ

メトロ乗る季節の軸に近づいて

会いたい人の
会いたくはない人として
生きていく、空があかいね

去年今年伸びるキリンの首湿る

万緑の中ツチノコはきっといる

ける。
　　　　　　　　　　ける。
　　夜がないている、

初心忘るべからず
いつまでも少年であれ

ラムネ色のプールサイド

雨の日の蝶々みたく
スレスレを
フラフラぐるぐるしてる
七月

同僚にロボットがいる南風です

ミルクセーキ子供に風のような歌

本も食事も同じ机の花野です

風呂でやっと自分と向き合う

亀を連れ実家に帰る外房線

ふるさとの廊下の木目に射す朝日
ふと思い出す亡き猫のこと

冷たくて、味気のない、単調な

鉄の道を砕く
暖かい雨を待っている

私だけ躑躅を吸ったことがない

夕立は音に遅れて島の森

身をよじるたびに放しそうになる
ちいさいかぶとむしなんだけど

竹とんぼ　飛ばして落ちる
数秒のあいだ
私は空洞だった

チリトマトヌードル
うなだれながら九月

憂鬱な日のモロヘイヤコーポ３

帰りの会のつづいた世紀

くすくすと早桃の水をもてあそぶ

妹に似たパプリカをもてあます

みんな眠くて柔らかい椅子

昔むかしの玄孫の話

祈るのが恥ずかしくて
代わりに床を磨いています

バッタを助けたら
蜘蛛に恨まれた金曜日

祖母の家
木彫りのゾウもつつがなく

七月は海の写真
ぽんと置かれた河内晩柑

愛　望み　祈り　希い　
漢字の練習帳みたいに
繰り返せば分かる気がして

詳しくは把握してない時刻表
急げばなにか乗れる気がして

夜を知らずに花は咲く、
花を忘れて舟は征く。

蝉が短く叫ぶ夜、
腐るマンダリン、ぬるい風。

雲は夏わたしは自由席にします

ビール注ぐ
つばさのひらく音たてて

もう淡い火曜日のこと水芭蕉

無言劇フィナーレの風船を子に

駐車場もう夕立の欲しいほど

軽トラの窓に肘おく夏の朝

わたしの中の子どもはいない
妻になり母になり
逃げていっちゃった

一階に美容師が住む夏休み

業務スーパー日焼の警備員走る

冷たくなった魚から
　　　　　　　　
　　　　　　　檸檬の香りがする

寝かしつけ
赤毛のアンの夢をみる　
白い林檎の花匂いたつ

枝先にかけて何度も
裂けてゆく枝よ
年ごと葉を手放して

胸の中の夏雲へ呼びかけている

眠らないありとあらゆる神様は
影を踏んでいて、みんなやさしい

たましいはずっと桜の動きして
空気を撫でるように生ぬるい

立ち会いのない分娩室

私が産むんだ、

このおなかの中のを

「来年は旅行に行きな」
と緩和病棟の君は言う

刺すような日差しの中
　　　　　　　　影だけ少し元気

雨影に沈む港町
寂れた商店街
古びた舟
源平の侘しい話
雨色に染まっていく私

君の「うん。」は
海風の檸檬

ソファにぽつんと
漂着物めく
うつ病の
微笑の
君

神託を受けた
しょうじょの顔をして
ほっとけーきのようにめざめる

生きたまま雪を歩けるふしあわせ

にんげんを水辺に誘う夜の声

星のなかホルン正しく組み立てる

さよならのらが聞こえない孔雀草

わたしの底が
抜け落ちないように
本を読む

大根をもらう外来 窓若葉

月冴えて移植のための家畜たち

誕生日ってだけの日に下手な短歌
送りやすい連絡先数えたら十一個

振り返ることなく
プールを歩ききる
長い長い少女期だった

夏だから冷たい保健室の先生

本当はもっと
悲しいことがあるはずだと
フードコートで泣いた

とくべつの証拠がほしくて
うたをかく
みずいろのかみさまがほしくて

全て壊れている夜に
光がさす
わたし早く死にたいの

風鈴が自分の声で語りだす

チョコミントアイスを掬う
わたくしの
内なる川を鎮めるために

口が図書館になったとき
何度も泣いた

自販機の種を浜辺に蒔く子供

飛行機雲の出産に立ち会う

ホワイトノイズ　短夜の羊水

和太鼓の町にさよならを言って
足裏がちょっと痛かっただけ

胎盤を破って出てきそうな夏

ける。
　　　　　　　　　　ける。
　　夜がないている、

サイコロを
６が出るまで振るような
日曜だけが私に還る

「ふれてください」
　少し寂しい夜の信号

ひとくちの
酸素で夜を巡回す
水銀灯に褒められたくて

転がってきたイヤホンを拾う手は
有線的なぼくらのつながり

本も食事も同じ机の花野です

氷菓持ち走る子らより塩素の香

寝返りをしてまだ耳にいるプール

白樺はねじれて湖の熱帯夜

半月のような西瓜を切り分ける
ふいの夜風によく似た味の

かなしがられて星座にされて

てにをはの助詞の降る島青葉闇

あまりりす静かに麺をすするひと

妹に似たパプリカをもてあます

傘の中の雨音は心音みたい
胎児の余韻

ビール注ぐ
つばさのひらく音たてて

もう淡い火曜日のこと水芭蕉

軽トラの窓に肘おく夏の朝

冷たくなった魚から
　　　　　　　　
　　　　　　　檸檬の香りがする

改札のお礼みたいに目立たずに
風と並んでふるえていたい

鯨が鳴くと
死んだ仲間の骨が光るらしい
君の背骨が光り始める

雪の日のあなたの影として生きる

せみとりに
向かう
背すじのりんとして
五さいになったおとうとは風

冷蔵庫の不安な気持ちに
応えたいアーリオ・オーリオ
おめでとうだよ

口づけで殺してあげる花氷

黒点を失くした犬よ片かげり

地肌揉むと地肌動くぞ夏の星

静かさに残るのは生の余韻
昨日まで生きてた君の

出窓をつよく叩いても
みんなは明日を見てる

茹で時間の割に幽霊だった

エコー越しに
胎児のあくびする四月

ペンギンになれますように
　　僕たちは
手を繋いでもゆるされたくて

肉食と草食ともに野の獣
広い布団に添い寝させる子

本日の台詞を全ていい終えて
パタリと眠る三才の役

歌詞にある全ての「あなた」が
一日で固有名詞になってしまった

ばたばたと肉塊を生むライフルは
まだ
せんそうの
いみをしらない

春は毒だ
ひらひらとこぼれ落ちて
街を青く染める

いもうとになったことしかない
星は風が吹いてもゆれたりしない

線だったぼくらは点に戻るから
結ばずにおく北斗七星

胸のゴミ山で見つけた本心を
子猫のように抱き上げた夜  

照明を灯して生まれた
新しい夜が
静かに息をはじめる

相性占いとか
同じものを好きだったりとかで
あんなに世界が
騒がしい日々よ

息継ぎの度に溺れるクロールと
同じで上手く生きれない君

青空へ
落下してゆくシャンデリア　
掻きむしるほど言葉は遠い

チープ・ピンクのプラコップ
そんな休日をおくる

死ぬことの
ひとつに
生きることがある

水を飲む深夜の助手席そのあとの
記憶曖昧だけど七夕

その先が崖でもいいと思うほど
夜の水平線はかがやく

死に際の人に泣きすがる夢をみた
暑いから目が覚めて、
看取れなかった。

口の中に広がる流星の甘み

おにぎりの値段が上がる世の中の
君の笑顔はいつも控えめ

革命の太字からんとラムネ玉

冷たさを望んだプールに裏切られ
ああ　この温度を僕は知ってる

「ふれてください」
　少し寂しい夜の信号

空蝉に触れるものに風と指

世界一かわいい花が胸に咲く
吾子が初めて
「は、な、」と喋れば

諦めとよく似た尊重
風車

母親の三歩後ろを
結婚の仕方も知らない僕らが歩く

寝返りをしてまだ耳にいるプール

半月のような西瓜を切り分ける
ふいの夜風によく似た味の

月をしまうための
毛布を編むための
毛糸のための
羊を数える

とろけてしまえば
楽かもしれない
でも理解されず
家族はしょうゆをかけてくる

くすくすと早桃の水をもてあそぶ

てにをはの助詞の降る島青葉闇

ラムネ飲む
愛されているという罠

ねむの花酔えば楷書になる声の

あまりりす静かに麺をすするひと

ケチャップのとめはねはらい
雲の峰

妹に似たパプリカをもてあます

妹の足跡だけに繁る羊歯

おはようおやすみ
いつかさよならだだんだん

迷いこむトロルに日傘差しながら

祖母の家
木彫りのゾウもつつがなく

私は傷付けない、私のことも
優しさがすれ違っただけ
ほら、線香花火

ビール注ぐ
つばさのひらく音たてて

童顔で筋肉質よ七月は

軽トラの窓に肘おく夏の朝

夏盛りアボカド割れば海と島

薄らいだと思う
忘れられないと蘇る
ただ色濃くなるだけのこと

ぱらっぱら　ぱたたたことん
雨傘で　あのこを迎えに　
雲に飛び込め

舟は湖岸にひきとめられる
櫂という対のつばさを
やすませながら

眠らないありとあらゆる神様は
影を踏んでいて、みんなやさしい

そそそそって鳴く換気扇
陽射しが足りないから
扇風機になれない嘆き

箱の味
箱の林がたっている

にんげんを水辺に誘う夜の声

水仙になってもいいですか疲れた

冷し瓜つむじが見えるうちに抱く

水底となるまで泣くよ蝸牛

地肌揉むと地肌動くぞ夏の星

公園になって尻尾に触れてみる

「コインランドリーぴえろ」に
　本名聞きにいく

あなたにもつめたい針に冷える海

堂々と水飲む よわい花のまま

この袖の端からここまで宇宙です
わたしと旅をしてくれますか

青空へ
落下してゆくシャンデリア　
掻きむしるほど言葉は遠い

誕生日母が早めに帰ってて
町には小さく餃子が降った

棒アイス
食べたら消えるものだけがほしい
あいつは来なかった補講

傷つきましたねと言われ月実る

去年今年伸びるキリンの首湿る

香水の又貸しされる空元気

ふるさとの廊下の木目に射す朝日
ふと思い出す亡き猫のこと

恋のためならとぐろも巻くわ

ラムネ飲む
愛されているという罠

ねむの花酔えば楷書になる声の

「演じたい」なんて嘘だよ
ほんとうは
殻を被って愛されたいだけ

駐車場もう夕立の欲しいほど

夏盛りアボカド割れば海と島

私は私がいちばん怖い
目覚めたらやさしい写真を
撮る人になっていたい

舟は湖岸にひきとめられる
櫂という対のつばさを
やすませながら

眠らないありとあらゆる神様は
影を踏んでいて、みんなやさしい

戦するあなたの脳へ
入り込み何があなたを
そうさせたのか知りたい

　　　家にいても帰りたい

桃じゃなく図書館を剥く
生い立ちをしばらく眺めて
図書館を出る

生きたまま雪を歩けるふしあわせ

冷蔵庫の不安な気持ちに
応えたいアーリオ・オーリオ
おめでとうだよ

黒点を失くした犬よ片かげり

新聞の切り抜きみたらサメ映画
あなたは周りをよく見てくれてる

うなずくと、枯れるもの
きみの奥底を護ってる

茹で時間の割に幽霊だった

どの鍵も入る鍵穴
どの言葉でも泣くあなたに
わたしは錆びた

生活費のことを訊ねるオーナーに
わたしは砂時計で喩えた

海ねむる
かなしい春の
海街の
地上の
カサゴ釣りするわたし

夏だけが
早く過ぎてく
年寄りが
時計の前で寒そうにする

千年に一度の女の子のとなりの
女の子が飼っているサワガニ

早朝の蝉は昨日のそばにいる

いもうとになったことしかない
星は風が吹いてもゆれたりしない

だけどもねロシアの本も音楽も
余さずあびて死んでゆきたい

老眼で掴めていない許可の雲

ゆうれいは絵筆とゆれて
一人部屋

あと少し
あと少ししたらやるからさ
花の香りの静かな流れ

文旦を一つください
犬の名を世界に向けて発音したい

咲いてから花だとわかる夕さりに
ボーカロイドの間違える歌詞

私の鼻血/貴方の生理
優しさは
解らぬものからできますように

誕生日母が早めに帰ってて
町には小さく餃子が降った

傷つきましたねと言われ月実る

頑張って付けたリボンの散る季節

似た人を沢山見たらそれは距離

伏せただけ睫毛が落ちた渓谷に
あの犬もいる　いずれ私も

とろけてしまえば
楽かもしれない
でも理解されず
家族はしょうゆをかけてくる

作家性ありきで浮かぶ天の川

駐車場もう夕立の欲しいほど

たましいはずっと桜の動きして
空気を撫でるように生ぬるい

鯨が鳴くと
死んだ仲間の骨が光るらしい
君の背骨が光り始める

手のひらを返す
花火の音だけが聞こえる

会いたいなんて言えない

泣きがおに
咲いた花なら見えるのに

さよならのらが聞こえない孔雀草

ごめんなのなでビンタされ夏の雨