最後に図書館が生まれて
それから僕が朝顔を
覚えるまでの暗い道

水の店には水の客
買い物は
死んでからが本番だから

耳に溜まった生ぬるい水から
神様の声がした

父は星を見上げる時
すこしつま先を立てる

段ボール持つ
りんごの重心を集める

月光
ダンサーの
しなりの
無音

文明は砂に喰われて流れ星

荼毘に臥す唯々諾々を
素麺へと紫蘇を刻みつつ
夕映え
夕映え
夕映え、

コトコト鳴く鍵盤の
木製のオルガンからは
森を抜ける風と
けもの達の声がした

薄曇り
蝉の声
揺れるカーテン
花瓶の底の水痕みたいに
行き場なく滲んでいた私

夜の雷
そのたびに
空の裂け目から探されている
いまのところ
隠れおおせている

デスクトップは
人生の花だらけ

会社で怒られるたび
ヒーローのフィギュアを買う
棚いっぱいに並んだ
正義

鉤括弧をはずせば君は戻らない

俯けばこぼれる君の　痛くない　
痛くないのに痛い弾丸

告白ももんじゃをひっくり返す
のも上手な君の泣き顔が見たい

良い香りの桃の
淡いとげが
かくれんぼの闇を誘う

音

日が立ち上がるとき足りないもの

夕方
口を開く、
名付けるために

深く、
足を折り
木のなかの
水の流れ

ラーメンの汁を飲ませたがる父の
指毛のひとつひとつ意志がある

祝日のロータリーひとさし指を
栞のかわりにして立ち尽くす

警官はたんぽぽに職質をしない
すごく危険な思想家なのに

終わりました
眼鏡の上から目薬を
落としてそれを笑った時間が

夕焼けを眺める人の目の中に
抜け道があるかもしれないよ

人生に夢を見るとき
吹く風にも強いスカーフを
巻いている

諦念で何も解決しなかった二人で
荷造りする昼日中

夏風は拳をひらき撫であげる
おとなしい子の肩甲骨を

力強い歌声だったね
違うよあれは
身籠ったんだ、１７歳で

惑星の残像なんだと知って以来
時々嘘をついてくる光

味気ない日々に
名前をつけるため
キラキラネーム辞典を開く

まっぷたつにした春キャベツの
真ん中で明日の朝日と
待ち合わせする

こぴいあんどぺーすと
こぴいあんどぺーすと
月は
　しだいに
　　小さくなった

水をのむ
のむだけのんで放置する
体任せが多すぎる夏

もぐもぐと虚空を咀嚼して揚羽

いいハムも棄てる亡父の冷蔵庫

乾きゆく柔軟剤と
ぬるい風
古里の二階で少しねむった

剥き出しのスイカより
個包装のチョコを選んでしまう
お盆の和室

二十四時ころまで
みんな起きている
それが僕の掛け布団だった

片手鍋に
こびりついたなにかを擦る時
あの夏の日の母を思う

娘と手をつないで
憂うことは何もないと
うつむく前髪が揺れている

ノスタルジック・ノスタルジーカ
夏の夜の
ベランダはしずかに燃えていた

春風を指のすき間で梳くように
きみのロビンを撫でてやりたい

きせきとキセキと輝石のように
ぱちぱちと
まばたき聞こえるぐらいの距離を

こめかみに
蒲公英の絮を突き付けて
すべてのものはふるさとを持つ

繰り返し滅びるようにほほえめば
蔦はすべてを薙ぎ払いゆく

覆すためのボートを抱えてる　
僕がいちばん僕を知らずに

一時間おきにオフィスで
席を外す君
火星で石を拾っている

戦争をじっと見ている秋夕焼け

蜉蝣の影を踏んだら星になる

恐竜も追いかけたのさ赤とんぼ

傘を畳みながら
夕餉の献立を考える
薄暗い
玄関の匂い

生きている横は死んだら縦になる
グッピーの水槽に教わる

エアコンとラムと啜り泣き
一つの事実と僕らの真実たち

追い風と向かい風に挟まれて死ぬ
わたしが花なら栞になれる

サマードレス地下鉄の風だって風

お母さん朝顔咲いたから起きて

群青の水着バケツに浮く日暮れ

切り株も傷口の色秋の声

萩の花音信不通を思い出す

裸婦像に静脈走るにわか雨

昼寝覚め内くるぶしのうすい脈動

爺ちゃんのピンクのひよこ精霊花

きうきうと鳴く長茄子の袋詰め

片虹をおぎなう力ペダル漕ぐ

バナナ剥く
次元が変わったりもする

店先のダリアこれから住む故郷

向日葵のどう見ても複雑骨折

クルトガを分解してて夏終わる

蝸牛菅銀河のせせらぎ繋がって

たましいを切り絵に抜いて
アンデルセン忌

その過去も畳み直すか古浴衣

風鈴の歯痛（はいた）に滲みる
音（ね）の尖り

迅雷に樹々の木霊が迫り上がる

虹の和音聴き取るための七線譜

遠蜩十年前に言えたこと

新涼に
栞紐（スピン）の硬い新刊書

今日のお月は光る穴
いわゆる過去ってやつです

薔薇咲いて指の先まで目を閉じる

あやまって
ほたるぶくろをでてしまう

蛇口を捻って戸を閉めて、僕等
ちぐはぐな愛し方で
いのちを誤魔化してきた

私という結び目を
沢山、つくりすぎると
音が滞ってしまうよ

ひたむきに声を匿って、
雑踏は木漏れ日のようだね

わたしの組み立て方を間違えて
今日もボタンがひとつ開いてる

隣村の地蔵盆
どこの村の子か、
答えられなかった
夏

うろこ雲と
朝霧の境目に
三角になって
ぶら下がる

飲みかけのサイダー
生きかけのわたくし

そっと手を重ねるような薄暑光

またじわじわ固まりゆく瘡蓋に
少しの花模様を見つける

あの人は精霊馬に乗って来て
その湾曲を自慢するのだ

泣き顔を覆い隠した君の手に
見知らぬホクロが一つ増えてる

ようやく牛を作ろうと
茄子を買い

まだ居てほしくて
煮浸しにした

　夜明けは
　毎回違う青
　そのたびに
　君に
　近づける気がした

　君は優しい
　でも
　私より
　上手に
　蝉をとれる

四次元ポケットにも入りきらない
入道雲

冷蔵庫を捨てにいく
夜
踊り場のむこう

りんごが落ちる

眠いなら起きなくて
いいゆりかもめ

雨雪の境界線を探る旅

いぬふぐりに光の芯が刺さってる

屠蘇の香の洋間にしんと鹿の骨

泣き虫の鬼と眺める春の星

くすくすと日日草の座談会

引っ越はあした西瓜のよく冷えて

スカートに二百十日が攻めてくる

石ころの呼吸さらさら秋の川

留守番に慣れて西瓜と二人きり

ロイヤルホストって
なんの店だっけ

もっかいここから始めよう

朝顔で色水やるの
すれ違う人全員に教えている子

仰向けの蝉をすくえば
ゆるされるような気がして
八月二十日

風鈴のちりーんの
んが融けた時
あなたに何か言うべきですか

観覧車
てっぺんに着く
ドアが開く
カムパネルラが落っこちていく

柚子ソフト
てんてん溶けていく速度
新生児らのあくびの速度

まばたきがやけに鮮明に見える時
ああこの人も死ぬのだと思う

いつか血が
細いぼくらを抜け出して
怖いおばけをたべますように

我忘れ怒鳴る父の背中には
昔わたしが見つけたほくろ

絡まった髪の毛
ほどかず切るような
友が教師となり慕われる

帰りたい
ミシン踏む母
うなじの匂い
甘く酸い
川のように流れる藍の布

最後に図書館が生まれて
それから僕が朝顔を
覚えるまでの暗い道

耳に溜まった生ぬるい水から
神様の声がした

世界はどうしようもなく
僕に冷たい

まずは玄関先の蝉の死骸を
どうにかせねば

秋晴のフェリー陸自も乗っている

雨後の森
すこし
暗くて
母胎めく

段ボール持つ
りんごの重心を集める

都会にいても
夜は森から風が吹いてきて
上手にわたしを孤独にする

薄曇り
蝉の声
揺れるカーテン
花瓶の底の水痕みたいに
行き場なく滲んでいた私

夜の雷
そのたびに
空の裂け目から探されている
いまのところ
隠れおおせている

蝉を怖がる猫

雀に立ち向かう
大カマキリ

空を久しぶりに見たよ

受験生の夏は短い

「ただいま」のあと
真っ暗な家に入る虚無感

残り三日で
宿題全部終わらせる
ような気概の
蝉の声

デスクトップは
人生の花だらけ

会社で怒られるたび
ヒーローのフィギュアを買う
棚いっぱいに並んだ
正義

くたびれて帰宅した父の背中に
足跡があると教えてあげる

丸める前のわたあめの
ように広がる雲がいる
「夏だけど秋」と君は言った

ねえ先輩若気の至りやりましょう
そんなんだから嫌われるんだよ

自転車の回ったままのリム
ちりちりと
　　　　　　　　のぼる
　　　　入道雲

良い香りの桃の
淡いとげが
かくれんぼの闇を誘う

昨夜の夢は
お風呂の観覧車に
憧れのあの人と入っているの
水着は着ているのよ

菩提寺とのやり取りはファクス
酒か玉子か油揚げ
枠外に描き込みたい衝動

蜜蝋と
密猟が
似ている

夕方
口を開く、
名付けるために

深く、
足を折り
木のなかの
水の流れ

警官はたんぽぽに職質をしない
すごく危険な思想家なのに

アパートの
ぱちりぱちりと
消耗を受け入れている蛍光灯は

窓際で大きな犬が見つめてる雨の
全速力のはじまり

夕焼けを眺める人の目の中に
抜け道があるかもしれないよ

すやすやの魔法を待っている
わたしひとりの夜のさみしい広さ

１００年後も
君の伝記の片隅で
蛍光ペンを引かれていたい

春先の風のふくらむあの頃は
ページを取る手が止まらなかった

ヘッドフォンを外せば
世界が逆流入
僕対僕でない人の街

惑星の残像なんだと知って以来
時々嘘をついてくる光

幾千の雨が不時着するように
不意に街へと降り立つ僕らは

味気ない日々に
名前をつけるため
キラキラネーム辞典を開く

金髪の根元に黒が増えてきて
生きているらしい今日も私は

畳の目のように並んで
私たち集合写真に収まっている

人のドライヤーの風が心地よく

母さんは
とっくに蛹じゃなくなったから
もう何にもなれないの
ねえ

ひとりきり
保安検査場を通過して
一緒にいたくて泣いていました

夕暮れ時
遮光レースの影絵劇
窓枠の仙人掌が
ただ、老いていくだけの

巻雲が
僕らの灰汁のようでかなしい
人は元々繊細で
珊瑚みたいに白化する

もぐもぐと虚空を咀嚼して揚羽

もし燃えたら
俺は、どれだけの煙を出すことか

　

体中ゼンタングルに満ち満ちて
破裂しそうだ
揚羽蝶
詩情の権化みたいな羽は

ディズニーに行ったことないまま
はたち

やり直したい人生もない緑蔭

白玉大きい？
写真じゃわかんない笑

眠ること諦めて
仙人掌を枯らさない

迷子放送私の兄の名前の子

秋晴や鳥好きな母、猫嫌い

せつせつと石鹸玉吹く部屋のなか

いいハムも棄てる亡父の冷蔵庫

乾きゆく柔軟剤と
ぬるい風
古里の二階で少しねむった

ひかがみに手を当てたとき
風薫る超文明の感じしました

再生に閉じ込められて　
過ぎていく真水をここに
眠らせておく

一時間おきにオフィスで
席を外す君
火星で石を拾っている

台風の雨に合わせてジャズを聴く

傘を畳みながら
夕餉の献立を考える
薄暗い
玄関の匂い

お姉さんのは
かかとの高い華奢なやつ
私のはマジックテープ

まだひとり電車に乗れなかった夏
映画のあとのクリームソーダ

あの時のごとく眠たい

水泳のあとの制服あたたかかった

西日、十字路、家路の子
後悔ばかりを鳴くヒグラシ
日々の破滅にふやける私

鈴虫をせっかちと笑う
素足を刺す廊下

母と散歩して…
それだけの、

それゆえに幸せ

立秋のプリン逆さにして落ちず

秋めいて魚群あをあを昇りゆく

見納めの三つ編みおさげ総代答辞

お母さん朝顔咲いたから起きて

いそぎんちゃく
クーハン
木のうろ
育児嚢

切り株も傷口の色秋の声

これは風邪薬の眠気カラジウム

蟷螂に甘い匂いの河原石

店員の呼び名カタカナ海の家

球場の背番号三桁も夏

昼寝覚め内くるぶしのうすい脈動

龍淵に潜む紫煙の換気扇

落人を誇る看板宵蛍

爺ちゃんのピンクのひよこ精霊花

夏海に免罪符めく駐車券

夏至だから今日の浮橋よく揺れて

店先のダリアこれから住む故郷

校庭は芝で裸足がよく光る

クルトガを分解してて夏終わる

綿虫の空が大きく暮れてゆく

平和は猫の顔をしている

青春とは
海に叫ぶ「バカヤロー」である

浴衣着て心許なきトランクス

二階から降りて仕舞湯古浴衣

晩夏なるスープカレーに泛く脂

邯鄲の骸軽くて耕衣の忌

新涼のばんどねおんの濃い蛇腹

刷りたてのレターヘッドよ涼新た

新涼の空にヒョウタンツギの雲

なんですか

踏まれる所におるのが悪いんやろ
東京。屈強な男になりたい。

ガワだけエロ同人の
ぴゅあぴゅあの初恋

青黒チノのズボンが並ぶ電車の端
アスパラガスみたいな頭が揺れる

写真はすぐに消します
だって重たいんですもの

ネクターが飲みたい
冷たくて甘くて淋しい
線香花火はすぐ消えるから

日焼け止め振って
水たまりの気持ち

石段の途中で少しストレッチ

あやまって
ほたるぶくろをでてしまう

私の気配がする
夏が嫌いだ

私から離れたところから、
私の声が
するはずなんてないのにね

寂しさを束ねて、
君への合図にした

ひたむきに声を匿って、
雑踏は木漏れ日のようだね

お守りがくすぐったいポケット

この恋が私のものではないみたい
額の汗ときみがつく嘘

そんなことだろうと思ったよ、
きみは木漏れ日に疎い人間だから

わたしの組み立て方を間違えて
今日もボタンがひとつ開いてる

ゆうだちは
郷愁をはらみ
明日はこんなに
寂しくなければいいのに

暗い湖を
潜らなければ
出られない夢

草原に
記憶の夏の
阿弥陀堂

清々しい気持ちに
水さす母親

　　貴族になりたい。
　　　　　晩夏です。

　　　ぽるぽると向こうで
　　　電話、なっている

台風が来る前だけの爽やかで
どこか苦しい香りがしている

あの人は精霊馬に乗って来て
その湾曲を自慢するのだ

さりげなく咲いてた花に
神話から
取られた意味があった寂しさ

あの人が幸せだったと言っていた
それが嘘でもいい
恐山

本州の端に咲いてた鮮やかな
風車
からから

恐山からから

まだ少し
しゃりしゃりしているかき氷
溶けて仕舞えば楽になるのに

　夏の楽しい、楽しいは
　花火みたいに
　寂しくなる
　セブンティーン

　部屋の隅で
　どうしたの？
　また
　猫みたいに
　すわって

　思わず
　空に
　透かしたくなる
　ような
　キラキラ

　君は優しい
　でも
　私より
　上手に
　蝉をとれる

　パズルのピース
　もうすぐはまる
　予定。

　電卓以外の
　文房具は好き。

　子供だからさ
　裏側
　みたくなっちゃうんだ
　なにがあるかなって

　とにかくさ
　全部の絵の具を
　混ぜないと
　気がすまない
　子供だった。

朝枕
そんな感じの寝起きです

四次元ポケットにも入りきらない
入道雲

冷蔵庫を捨てにいく
夜
踊り場のむこう

りんごが落ちる

天ぷら鍋がほしい、盾になるから

うつ、らうつ、らとしている子、
ようこそ

そう、それは
道草だけどレボリューション

眠りたくない子のための
ソケリッサ

いぬふぐりに光の芯が刺さってる

風薫るブルーの移動図書館車

秋高くぐんぐん高く熱気球

河童忌の卓に並べるビタミン剤

羽抜鳥信濃の太陽はでかい

伊勢志摩の海女の盥に銀の沫

帆立貝投降兵のように開く

間の持たない僕と父さん零余子飯

パラソルをくるる片えくぼの少女

星祭おなかすいたって短冊

栗飯とこくごノートの十五マス

生きものはだめと母の言う夜店

コンビニのドリアチンする秋夕焼

七夕の猫を眠るまで撫でる

スカートに二百十日が攻めてくる

留守番に慣れて西瓜と二人きり

骨だけのビニールハウス新豆腐

ゴムの緩い靴下だと
歩けなくなる幼いわたしは
育てにくかったそうだ

巣立とうとする子と
脱皮しようとする子

真夜中に車で街を駆け抜ける
ステレオで叫ぶ尾崎豊は

来週は有給休暇を取りましょう。
雲に名前をつけ、新しい星座を作
るために。

朝顔で色水やるの
すれ違う人全員に教えている子

あまりうまく
言えないけれど
この街は
ずっとぬかるんでると思うの

まばたきがやけに鮮明に見える時
ああこの人も死ぬのだと思う

いつか血が
細いぼくらを抜け出して
怖いおばけをたべますように

着飾ったひれが邪魔して泳げない
オランダシシガシラみたいな私

恋人未満花火の先でキスをする