聞こえないふりして耐える
サンカヨウ
雨ゆっくりと透き通るため

祈るように暮らす
もらったすももを
傷がつかないよう
そっと洗っている

雷雨の中でまだ固い桃を剥く
愛さない理由だけをおしえる

キビタキの声　招かれる
サンドリヨン

いつまでも子どもでいたい
コンビニの
前の空き地に降る流れ星

閉園後の
動物園の静寂
夏だけが
忘れられたように
息をしている

一人称変えて葉月の風に立つ

じてんしゃで
風
をおいこす
夏の日のきみが
せかいのはじまりだった

十九のいま揺らぎつつ
はつこいの終わり
へ
まっさかさまの晴天

感電のように
ひらめく
夏に居て
孤独はだれのみかたでもない

靴紐をほどいて死のようなかたち

ペディキュアの動画字幕の独り言

霜の夜の誤字に修正液厚く

「妻を待つ」回文のみの我が晩夏

身を裂いて咲く濃紫牽牛花

月命日トルコ桔梗のふちの青

私まだ泣けます
風鈴がなったり
夜にビールをのんだり

にぎりしめたままの形で
展示されている
雪、

失恋の
痛みの軽さ
百日紅

まよなか洗う
月灯り
とうかんかくの
角砂糖

夾竹桃の茂みに
隠れているほうが
本物です

六月からずっと戻り鰹がいる
もう季語とかにならない

病棟の中庭ひかりあう五月

向日葵の花
リクガメの足の裏

野仏に名前をつける夏休み

団栗に満ちた発泡スチロール

秋を待つあなたの本棚を見たい

レイシストと眺める秋の海閑か

聴診器を胸に当てれば
きこえる
星がぶつかり合う音

初夏のハーバリウムの底に砂

稲妻とおくフランス菓子の缶

香水のひとふき中の子鹿たち

ひまわりが空にぶつかる
生きている間に解ける
呪いはいくつ

夏の果て貴方が風になった日が
混ざってしまいそうな涼しさ

真昼間に目を閉じるとき
透きとおる夜の布だとおもう瞼は

眠たさとたたかわないで眠る日の
ナイフを離すようにひらく手

銀色を溶かすはんだごての煙　
夏の間は蝉がよく死ぬ

海の匂いのスリッパの持ち主の
誰も知らない過去の筆名

草原の包帯を解く明るさで
夏のあなたが回す地球儀

おかあさん
お菓子美味しいね
15時20分位までいてね

やるせない。
オクラぬむっと。からむ夜。

ゆきなさい
ただアラザンが
降る中を

ビー玉をなぞって夏の夕方の朱

この部屋を
明日には出ていく私
靴下だけ干す

就職できなかった町の物件の
ブックマークをそのままにする

八月のわたしの骨をたしかめる

街
夕立
猫の寄り道
花樗

淋しい炎だった
　　　　　　　　　僕ら花野へ

夏空と
ハイビームのまま乗ったカブ
誰も教えてくれないままだ

錦鯉の陽だまりにまた生きる水

子規と背がおなじの君の草団子

花野原出れば次なんてもう、ない

窓開けて風を呼びこむ
誰からも
拭かれなかった看護師の頬

人間の書類審査に落ちた蜘蛛

花野へと続く胎内仄白く

花火が破裂した
独りだけ

幼かったあの頃の残心

「たわらまち」を
「田原町」と変換するPCで
　短歌を調べる
　八月の朝

四面楚歌
父の麦茶が恋しい

陽だまりの
サンダル履いて街に出る
親孝行はまだ間に合うか

足浸す
星座が混ざる夏の水

朝焼けに溺れる山に目もくれず
尿意に駆られ降りる階段

文末に 添えた 
「あはは」が乾いてて
傷の深さを測りかねてる

ぎんいろのきつねのしっぽ
ゆらゆらと
まどろむような嘘を聞かせて

泣き止んで
肘から先の感覚も
入道雲も
なくなっていく

今日ひま？
ペットボトルロケット
あるんやけど

台風の夜のまかないにトースト

おはじきの裏は初秋の手触り

釉薬の白の冷たさ花曇

乗り出せば船体見える涼しさよ

炭酸の息づかい
しゅらしゅらと鳴って
私ごと浮かせてほしかった

日は縦に落ちて水着を絞りきる

死にたいし死にきれんし
かみさまとんぼ

原付の籠にごろりと祖父のゆず

文庫本を書架へ戻して月鈴子

水のような顔をしている黒葡萄

さみしさを言葉にすればかき氷

木登りという必修科目

朝焼けに絞って気付く檸檬の痛み

本当のことをいうと
あなたが好き
縁日の
掬えない金魚みたいに

泣きやめ泣きやめ、
狐の子。
お嫁の足元、
雲がたつ。

きぬかつぎ
女みたいなことばがぬっ

前の世の月の浜まで松林

大切を独り占めしてたら
いつのまにか価値がなく思えて
正直ほっとしてる

平明なことばで暮らす夏の菊

水彩絵の具のような　雨の日　

シーン、
シンシンシンシンシンシンシーン
せみくん、
君うるさいんだよ。

耳底に遠く鈴音夜の秋

鳳仙花咲けば弟の泣いた訳

赤い靴遠くサルビアの蜜吸って

波打つ一つのバケツ

月がぽちゃんと堕ちてきた

山積みになった雲が傾いて

返信は来ない　夜がはじまる

夕日　お山に食べられちゃう？
大丈夫　明日も会える
あの時のじいじのおんぶ

ククツツとみんなが笑い
乙女座のカタツムリさんは
潰れたのです

合唱に　気をとられる
別室登校

志望校前の通りのレシートを集め
内緒のお守りにする

頂きの風と気温は
すぐ変わる

雲は巨大な万華鏡だし

この星の風速計は小指です

かたち
さき
た
想像の糸が　たわんでいる

ビル風、霧雨、電灯
某日、台風接近につき
眠れないので
飛び降ります

雷雨の中でまだ固い桃を剥く
愛さない理由だけをおしえる

夏蝶の誘う方角死の匂ひ

長月の雨はささやくように降り
和らいでいくわたしのこころ

同じ曲ばかり聞いたらだめだよと
汽笛のようにおしえてくれた

靴紐をほどいて死のようなかたち

向日葵の折れる形に祈る人

立秋の陽を首に受け読む句集

にぎりしめたままの形で
展示されている
雪、

ひかりはそれだけで、
旅をするというから
わたしは私を産むようにして

オクトーバーは
吐瀉物のようにひろがり

病棟の中庭ひかりあう五月

秋を待つあなたの本棚を見たい

手のひらに
本のせたまま寝る母は
腕相撲負けた人みたいだ

ちちははの
にかげつまえの
せーよくが
けーきのうえの
ろーそくともす

初夏のハーバリウムの底に砂

稲妻とおくフランス菓子の缶

種からあかく崩れてゆくすいか

一月の冷たさ走る自習室

真昼間に目を閉じるとき
透きとおる夜の布だとおもう瞼は

眠たさとたたかわないで眠る日の
ナイフを離すようにひらく手

その海を前にとむらう
きみたちのために
わたしも罪人になる

銀色を溶かすはんだごての煙　
夏の間は蝉がよく死ぬ

馬鈴薯のくぼみ部分が指定席

群舞するアスタリスクよ金木犀

レモネード優しい人になる素養

たんぽぽの歯茎に紛れ込む夜景

八月のわたしの骨をたしかめる

街
夕立
猫の寄り道
花樗

柔らかい踵
　　　　蟹踏む
かすかに
　　　　　　死

花野へと続く胎内仄白く

「たわらまち」を
「田原町」と変換するPCで
　短歌を調べる
　八月の朝

小津映画
知るはずのない走馬灯

飛行機に花火の音の届かずに

草原に掲げる遺影
明日から
あなたをちゃんと他人と思う

おはじきの裏は初秋の手触り

釉薬の白の冷たさ花曇

夏雲はそう見えるだけでうれしい

酷暑日を切り分けていく心地して
これは涼しいほうの赤色

継ぎ足した色に名前をつけながら
あなたのための庭は涼しい

あきかぜに頬泳がせて横田君

文庫本を書架へ戻して月鈴子

有音のh（アッシュ）のように
秋の雲

えいえんに徒歩圏内のながれ星

葛西くんの国語の教科書の
有り難うには傍線が引いてある

日付印一つ回して原爆忌

子供らの奇声しずかに立つ雷雨

オロナミンと雪の宿　曾祖母の味

鳳仙花咲けば弟の泣いた訳

瞳にはラピスラズリを埋め込んで
すべての夜を溶かして浴びる

リビングの　　
　　　床に溶けてく
　　　　　　　　午前二時

波打つ一つのバケツ

月がぽちゃんと堕ちてきた

どれだけ空が薄ら寒くても
その下にぼくらはいる
綺麗な空だと思う

返信は来ない　夜がはじまる

飴玉の欠けた鋭い切先が
透明でいるためのお守り

合唱に　気をとられる
別室登校

志望校前の通りのレシートを集め
内緒のお守りにする

信号無視して黄落に止まる父

いつまでも子どもでいたい
コンビニの
前の空き地に降る流れ星

つかもうとすればするほど
崩れゆく
灰には灰の輪郭がある

閉園後の
動物園の静寂
夏だけが
忘れられたように
息をしている

一人称変えて葉月の風に立つ

感電のように
ひらめく
夏に居て
孤独はだれのみかたでもない

マシな日に柘榴の実る木がひとつ

靴紐をほどいて死のようなかたち

向日葵の折れる形に祈る人

卒哭忌待たず日暮れる花野です

喧嘩なら声透き通る蝸牛

夏の星欠伸の後に涙でて

失恋の
痛みの軽さ
百日紅

まよなか洗う
月灯り
とうかんかくの
角砂糖

ドラゴンに記憶はいらない
張りぼての炎をこいて
どっかを歩く

ドラムソロから始まったこの破局
もう楽しくてファズばかり踏む

ドアノブを
舌を這わせるように持ち
卵のように右に回した

記憶とはひかる馬らし獺祭忌

月影のかたちに頭蓋骨欠ける

書簡体のまま死にたい死にたくて
飛行機からこぼれ落ちようと恋情

野仏に名前をつける夏休み

団栗に満ちた発泡スチロール

水たまりのように
天を仰ぎみる
人の不幸が
パシャリとはねた

甘酒にリップクリーム混ざる夜
犬歯のふがいなさ一段と

もし
だったら
だったとしたら
だったのだとしたら
線路は港へ続く

稲妻とおくフランス菓子の缶

生きるため飲みほした水が
生きるのを拒否するように
目から出てくる

さわやかに金メダル数える人が
次に伝える戦死者の数

折りたたみ梯子は軽い木製で
裸足でのぼる前提で買う

ひまわりが空にぶつかる
生きている間に解ける
呪いはいくつ

雷が顔にもたらす可能性

ああ、きっと
あなたは恋をしたんだろう
前よりそっと椅子に腰かけ

湖が枯れてしまっても鳥は来て
なんで来たのか忘れて帰る

卵黄を夜空に吸われ洋皿に
死体の真似のような卵白

波の音きしむ濡れ髪伏目がち
ありがとうって
日差しに紛れて

トイレットペーパーで
  シンデレラが上る為
     だけに積んだ階段

天王星に着いたなら
永遠にタオル畳もう縦の自転で

柔らかい踵
　　　　蟹踏む
かすかに
　　　　　　死

からまった紐
からまったままに置く

一つずつ
両足の海
踏み抜いて

帰りたいと叫ぼう帰ったら

珈琲のカップに月が当てはまる

窓開けて風を呼びこむ
誰からも
拭かれなかった看護師の頬

ががんぼの足の刷られる図工室

ふろ自動みたいに麦茶注ぐ母

花野へと続く胎内仄白く

陽だまりの
サンダル履いて街に出る
親孝行はまだ間に合うか

肋骨の隙間に隠した狐火が
逃げて寝冷えの朝祭り明け

夏野よこれは
スクロール後の世界です

浴槽で 重ねるふやけた左手で
老いたあなたに 
会いたいと願う 

からまった螺旋を
そのまま置いといて
いりのてかん
満月だった

野を分ける
風の強さに息はいて
品薄の米が
窓に現る

幸せになろうよ触れない範囲まで

おはじきの裏は初秋の手触り

実石榴をもぎる半回転させて

飼っていいか聞かないで飼うユニ
コーン
庭が広くてよかったと思う

這うように便箋の上を泳ぐだろう
熱を隠したブルーテトラは

東洋を水槽にいれ飼っている

文庫本を書架へ戻して月鈴子

水のような顔をしている黒葡萄

みどりごとあかごを脱色する仕事

お祭りの面を外せば冠菊

胴長で短足だった遊園地

みっちりと卵空論されている

目を開けて
目を閉じてこのあたり秋

きぬかつぎ
女みたいなことばがぬっ

暁の始発かたんと秋に入る

子供らの奇声しずかに立つ雷雨

もし空に
一人称があるならば
一日ごとに
変わるだろうか

革命は
めだかの学校からはじまった
すべての痴呆を撃ち抜け濁流

錆びた拳銃を磨く真夜中
恍惚も慟哭も知らんぷり
ああ畜生　白濁白濁

ああもう
きみが微笑むのがいけないんだ
いちいち床が抜ける

起床する。
野菜ジュース飲む。
宗教の始まり。
天気予報、たぶん雨。

ククツツとみんなが笑い
乙女座のカタツムリさんは
潰れたのです

聞こえないふりして耐える
サンカヨウ
雨ゆっくりと透き通るため

感電のように
ひらめく
夏に居て
孤独はだれのみかたでもない

ゆうれいの布のあまったとこに
書く
雪だるまは白い影がほしい

急がば眠る
旅銀尽きれば畑打とう

靴紐をほどいて死のようなかたち

霜の夜の誤字に修正液厚く

にぎりしめたままの形で
展示されている
雪、

照明には羞恥心がないのだ
だから嫌い

聞き返しても
もう言ってくれないんでしょ
耳から　音　戻す　方法

ドアノブを
舌を這わせるように持ち
卵のように右に回した

されて　あり　翅
のこ　の　むれ
が　だけ
せみ

熱帯魚ぼってりとして常夜灯

水たまりのように
天を仰ぎみる
人の不幸が
パシャリとはねた

オパールの翅は乾いて背は虚ろ

種からあかく崩れてゆくすいか

静かの海に、ひとかげがある
乾いた躯をだれもが
見ていた
見られていた

別れへと急ぐ銀杏に無理がない

本当はパピコではなく
身体ごと分け合いたかった
遠い夏です

ゴミだらけの部屋でも よくて
死ぬ朝に
あなたが読んだ本から、栞

起き抜けは
おもたい水を堪えてる
テレビを点けて探す雨量

やるせない。
オクラぬむっと。からむ夜。

スイカ割りきみは戦わなくていい

この部屋を
明日には出ていく私
靴下だけ干す

美術館よく行く人がきれいだと
つぶやく先の積乱雲

海溝の診察に行く聴診器

ふろ自動みたいに麦茶注ぐ母

砂の入江の守り人が
夏果に聞く
町のリゾート化の噂

死にたさを抱えて走るとき
すこしだけ人間は隕石になる

死にたいと言いつつ
しめじカゴに入れ

冗談で済ませたいのに花が咲く

砂浜のブルーシートに置くために
赤ちゃんを抱くみたく、西瓜を

炭酸の息づかい
しゅらしゅらと鳴って
私ごと浮かせてほしかった

日は縦に落ちて水着を絞りきる

あきかぜに頬泳がせて横田君

部屋まで響く夏の号砲
奥まで届く殺虫剤

分け入つても
　分け入つても外回り電車

空がない星で読まれる人生訓

平明なことばで暮らす夏の菊

睫毛から飲み込まれた百合の花
の輪郭たちに名前をあげる

きりんの首を視線でなでる　
しんぞうの位置がみえない　
走り抜けたい

透明人間となり
死後も孫子の様子見に

黄昏に
指先で弾く
網戸の雨蛙

君のまつげの影を見てる
これ、まだ、間に合いますか

ワッハッハ
文字は笑ってる
君はどう

「好きです」が
「好きでした」へと変わるよう
　ゴミを分別する水曜日

ゆうれいの布のあまったとこに
書く
雪だるまは白い影がほしい

同じ曲ばかり聞いたらだめだよと
汽笛のようにおしえてくれた

まよなか洗う
月灯り
とうかんかくの
角砂糖

箱ふたつ並べて
これがバスの停留所

体を自由にさせて

向日葵の花
リクガメの足の裏

稲妻とおくフランス菓子の缶

共感もカップケーキの崩れ方

助かったなんて言えない　
ケーキ屋にケーキが
並んでいる限りは