これまでに生まれた人をすべて
思い出すあいだに
シロップは月光に固まる

封筒にどんぐりいれてみる眠る

知的好奇心だな秋雨浴びまくる

鯛焼きの可愛らしさ。

前かごの
卵が段差で割れる時
フラット社会が
遠いことを知る

詩を書かなくても
りんどうは思いがけない場所で
咲いている

内側から鍵をかけられた夜空に
どんなに叫んでも雨が降るだけ

ゆっくりとしたたる血
未明の空に
潜む鮮やかな新芽

記憶の中の湖は真水でした

粉々に砕けた空を見上げている
明日を選ぶのはいつもわたしだ

ねえ母さんこの風は何を
歌っているの　夕闇に
火薬の匂い　立ち込める

かつて蝶が舞っていた小道に
迷い込む
水銀のような空が
夏の終わりを告げる夜

腐肉食動物みたいに
私は
毎晩、あの日の記憶を貪っている

東京の夜は出口が多すぎて
転生前夜に見た猫がいる

明日は絶対
悪いコになってやるんだと誓い
目覚めるとすっぽり忘れてた
十二歳

精肉店と
口に出して
繰り返して
秋

ぬくい　　粘土
の　　　ように
手のひら　　に
眠た　　　　さ。

言わなければ
いけないことはいくらでも
あるあるけれど雪降る街よ

人事課の見回りがない
書庫の天井に
カメラは設置されゆく

雨音のするビル群はどこまでも
鮮明　両手を振って歩いた

どれほどの
酒を飲めば
月を喰えるか

私だけ左に進んだあの夏も
入道雲は高く続いた

辻褄の合わない嘘を
笑え、もぐら

流れ星
ですから兄は派遣社員

弁当のドレッシングが漏れている
浅い焦りと相模線、朝

観覧車や宇宙が
何年前にできたのか
知らなくていい気がしてる

　　　　　　八月
　　　　私は佇む
　　羊羹みたいな
私の日陰に凭れて

直立の警察官が浮いている

故郷の星は
夜の空気穴。

冷蔵庫をあさったりして

ノートパソコンの夥しい手垢
暮照に乾いて
動物園のにおいがしたの

鶏頭と芙蓉が咲いて帰ります

苧殻火の君が僕らをゆるさない

木犀や鏡濡らしてから拭う

秋晴れの匂い
五年前の日記

立葵の作った陰に
夏空をみて
最後の日に庭に集まる

鯨のお腹にいる娘は
不憫だと
母の手が震える
車椅子

湿った地面が足裏を包む
枯葉はクシャッと言う
小石が刺さるが気にしない

ありあけのトーテムポール
眩しくて
言いたいことを言うべき、君は

夜をただ神経衰弱するように
あなたの憂いを裏返しゆく

金木犀君のくるぶし見ていたい

太陽に光る簪水蜜桃

ファミレスで
「なかなか来ないね」と言って
欠伸するとき目をつむる人

五月雨が僕にだけ降る不登校

過呼吸が止む
雷の音がする

待宵草の開花やわらかすぎて皺

台風の前夜塊肉を買う

新メニューの合格祈願カツカレー

異界から転移してきてポポーの実

柿食べて山の地層は海の跡

大試験の問いは命令形ばかり

ベビーカーの幌の半球神無月

木炭の素描を擦り芒原

骸骨の歯列に個性草の花

まな板が滴るほどに梨を剥く

渡り鳥献花の列に曲がり角

春泥が化石になるまでの時間

マイナポイント
気にするな
お前はもう管理されている

九月に蔓延するのは
ただぼんやりとした幸福

おじいちゃん
あしたあめなので
おむかえおねがい
けいろうのひ
おめでとう

原材料に不法労働は、
一切使用しておりません。

オーボエのリード削れば野分晴

素足に履く木靴の湿り秋桜

野分立つ熟成を待つジビエ肉

墓濯ぐ水の昏さに鬼やんま

秋暁のひかりの素足に履く木靴

ロシナンテ少し休もう秋の雲

秋の雲ここより先はどれも帰路

私に縋りたいのだ
私自身に。
風の吹く日に。

身を投げ出したくなるような
いいと思うよ、なんか
メンマみたいだラーメンの

肌寒いくらいがいいね
あなたの手はあなたが
思うよりも温いよ

露寒の噛む葡萄味果汁グミ

匿ってくれよ。
匂う夕陽のさみしさは、
ため息たちを包むつぼみだ

黒板の痛みを私に転写して
歴史がこだましている身体

千切られた
ことば、ものがたり
きみの声
つなぐみたいに瞳を閉じる

密やかな恋に
瞳を費やして
私の泉は碧く濁るわ

果樹園でぽろぽろと泣く男たち

冷える朝コンクリートに椿の実

墓参り
揺れるソニーのヘッドホン

ふるさとで

育った葡萄を食べ終えて
わたしの帰る理由はもうない

湿った正露丸の匂いが
広がる引き出し
晴れた日の長い
まつ毛

アレルギーでも入れるか桃源郷

やや少し涼しくなってきた朝に
余った水まんじゅうに
孔をあけてみる

いつまでも私の犯した失敗を
晒す町内会にまだ居る

無駄なのに
ロマンティックな死に方を
模索している十七の秋

転校の後にも友であることが
どれほど貴重か知らないひぐらし

夕暮れになるまで
ぶらんこ漕いでいた
大人の事情を知らないでいた

　猫と高倉健は
　不器用ですから。

　トビラの向こう側で
　世界がわらった
　音がシタ。　

文化祭
⇅
ボトルキャップを集めてます。

雨刺さる
テスト前日の
帰り道

自由には二種類あって
ゼリーみたいのと
どんぐりみたいの

猟解禁どよむ浅間の第二火口

白靴を踏んでやったの健気でしょ

龍天に登る双子の冒険譚

納沙布の灯台守のとる夜食

松過の父の黄ばんだ漫画本

青梅も天王星もパリグリーン

涼風至るパン屋の屋根の風見鶏

八目鰻忌々しいほどの星夜

何買いに来たっけ鰯雲だっけ

重陽の麵麭にたつぷりマーガリン

晩秋のたこ焼が温いんだよな

スーパーの百合根くすくす町の恋

いつだって面倒くさいが口癖の
二十五歳の着ぐるみパンダ

水澄んで
ずんずん地底走行車

トルコアイスの
茶番みたいなやりとりを
愛せる人になろうと決めた

ボンゴレは
あさりを食べるためにある

八年と言う年月を生きていた
遺影の義父だけそのままでいる

仲間外れの子でも
濃厚接触者なんだね

先生の名前を変格活用し
笑い転げたセブンティーンは

仏壇のビールで
天ぷら粉を溶いて
墓参の代わりの
彼岸の夕飯

着ない服を捨てられない
アドレス帳も消せない

無アクセント地帯出身
そういえば四声が身に付かず
中国語も苦手だった

犬も白髪になることを知った
お前も子育てをしてくれたよね

パジャマにも向上心があるはずだ

砂浜に文字を書いたら現れた

実は今
あらゆる町のクレーンが
二足歩行で踊ってるんだ

独り身の紙皿染める黒葡萄

締め出され銀の芒でひらけゴマ

本棚の教科書抜いた隙間埋める
夢見つからず埃降りつむ

雨上がり黒い路面を駆け抜ける
銀輪の轍みちみちと鳴る

向日葵であった
瞳は影を向き
死は視界へと染み込んでゆく　

火蜥蜴と廊下のくらい鍼灸院

天井の高い図書館の、
あの席に孤独があるよ、

狼の引くそり 先に白夜いて

貝の血から真珠ができるまで夜寒

バス停の「松本さん家前」小春

甘茶飲む
鉛が弾になる前は
祈りの匂いがしていたのにな

時差酔いの視界にバザールの熱さ

2022 9/19 10:26
鈴蘭台　無風
　　　　無雨
　　　（無職）

2022 9/19 21:20
鈴蘭台　暴風
　　　　小雨
　　　（無職）

撃てば死ぬ為政者である
社会科の授業は聞いていなかった

けど

気の抜けた朝だったんだ
解剖は虚しく彼の死因はハミング

口伝てに
聞く口づけや
愛のない
相合傘は
右肩が濡れる

褒められるのきらい
秋雨に打たれたい

暗室でシャワーを浴びて歯を磨く
午後五時過ぎに人間になる

刈稲に座って一休み


空が高い

封筒にどんぐりいれてみる眠る

人妻を少し傷つけ冬の花火

フラスコに走り書きした夏

昨日の悲しみのために
傘の右側を空けておく

かつて蝶が舞っていた小道に
迷い込む
水銀のような空が
夏の終わりを告げる夜

フランスのお菓子の包み紙みたい
に夕焼けは朱くあなたは美しい

あ、い、う、え、お
がぜんぶ音楽になる鳥

救うとき同時に何かを見捨てると
知れば二月の風鈴が鳴る

意味ありますかと生徒に訊かれて
る　意味の代わりに笑顔を見せる

おまわりさんのあしもとの
れつつくるありさん
おうちにかえるとぎゅうぎゅう

昼は
ピーマンの中でいう
朝

ホルンの曲線
ぼくは立ち上がる

ぬくい　　粘土
の　　　ように
手のひら　　に
眠た　　　　さ。

わり算の
あまりのように
佇んで

流れ星
ですから兄は派遣社員

ロマンスカーすまして田圃を横切
った当たれば死ぬしかない速さで

啜るよにフリスクたべるおじさ
んのカフスボタンを眺める車内

薄っぺらい透明については既に、
出られなくなっているのでした

グラノーラが陶器を涼しく滑る音
優しいミルクはここにないこと

金平糖の瓶をポッケに入れておく
夕日に透かしておいしく食べる

危ないよ歩道においでアゲハ蝶

廃番のチークみたいな秋夕焼

もろこしが
　　　　捥がれるように
　　　　　　　　　　傘折れて

おにぎりはあたためますか秋の昼

古本に長夜の凝りグラシン紙

古書店の観音開き小鳥来る

弟の虫の形の声を聴く

昼こおろぎゆっくり回る観覧車

トランクのなかから蜻蛉賢治の忌

＊宮澤賢治忌=９月２１日

ランドルト環が下欠けばかり
秋彼岸

ロシナンテ少し休もう秋の雲

夕立の一粒ごとにある鏡

十月の靴の下敷ふわふわふわ

水平線を断頭台にして眠る

墓参り
揺れるソニーのヘッドホン

躊躇わずバターをごとんと放る君
テフロン加工に広がるしあわせ

空にはイワシ
地には釣船

野原はみんな海になったよ

教室の隅はぽかぽか秋の蝶

くだら野の踏切わたし怒りん坊

るらるらと魂ふたつ波の花

母の日の小瓶に割れたアメジスト

めだかって書いた名札と夏の雨

十月の時計の螺子を回す指

冷やかに蹴った空缶バカだもん

先生の飲み干す白いカルピスに
なりたくはないグラスになりたい

まだ熱いゆで卵を剥き気がついた
この部屋はひどく冷えていたこと

羽ばたきの影踏みながら立夏ゆく

バス停の「松本さん家前」小春

春の都内バス 本を読むための

カマキリも侵略者になる千年後

褒められるのきらい
秋雨に打たれたい

私は布団を売るために生まれ
実際たくさんの野菜を売り
よく壁をながめていた

渦になる過程に
あかるい部屋がある
私は　少し笑っている

ポケットの中に
もうひとつ小さなポケットがある
みたいな裏切りに出会う

いちばん
疎かにしちゃいけない人間関係に
いちばん
甘えてしまってる

救うとき同時に何かを見捨てると
知れば二月の風鈴が鳴る

ホルンの曲線
ぼくは立ち上がる

言わなければ
いけないことはいくらでも
あるあるけれど雪降る街よ

絶景のために私が目立たない
旅の写真の意味おもしろい

斬新さだけでは勝てないと知って
君が晒した胸元のあざ

マトリョシカの
いちばん中で
待っていて

内側にまあるい闇を匿って
麦わら帽子は心臓がある

血の路がひとすじ便器に続く午後
これですべてに説明がつく

慎ましく生きているなら君みたく
いやな女に恋しないだろう

「病む理由：考えすぎ」でも考
えるだけの葦です人で居たいの

それはまるで
どこかの虹は
三色で出来てることを
言うような比喩

雑なところが大嫌いだった
父の横で
私は一番雑でいられる

美しい稲穂を見れば
ごめんなさいと
思う呪いをかけられてるの

聞き手として羽ばたきながら。
うっすらと
広がっていく色を見ている

テキストに落書き多数破蓮

弾丸の飛ぶ方向に散る紅葉

鈴虫のトンネルの先ワープ谷
帰ってきた者はなく

蛍よ蛍ここでは何番目に
僕は死ぬの

春の雷悪い子探す響きあり

ファミレスで
「なかなか来ないね」と言って
欠伸するとき目をつむる人

暮れのセピアも薄紅も
眼裏か棺の中
毎夜僕らは事切れる
透明な来世を望んで

キャラクター葬という名の卒業式

渡り鳥献花の列に曲がり角

本心と違うことをしようとしても
できなくなったんだ

月がDかっこよく言えば上弦

幸福は、何の犠牲の上にも
立っていない。

何かを得るには
何かを捨てなくてはならない
というのは「気合」の様なもの

「コツコツやれば良い」は
気付くのに十年
実行するのに二十年
と思えば良い

嫉妬は
「こんなはずではなかった」
自分を鏡で見ている様なもの

足下の闇を踏み抜き踊る盆

コスモスに影だけ映す
迦陵頻伽(カラヴィンカ)  

雨温（ぬる）く
蟋蟀の蹴る闇の皮膜（かわ）

寅丑の鬼門を避けよフロイト忌

諦めることと受け入れることの
違いがまだ、分からないのだ

私に縋りたいのだ
私自身に。
風の吹く日に。

朝が来る、花が枯れる。
ろくろを回すということは
それらを無視しないこと

こんなにも縋りたいのだ
窓を開けて雨でも浴びるか

生きているむすび目、

手を繋ぐ

向かいあう
矢印たちのまんなかの
空洞こそが
愛なのですよ。

まなざしで、ひりりと
私の朝に折り目をつけていく
あなたが嫌い

相槌を打つ、
鍵のかかる心

　　　信じるこころが
　　　いちばんこわい

　　枕に耳を当てる。
　　心音がきこえる。
誰の心音だろう、と思う。

墓参り
揺れるソニーのヘッドホン

アレルギーでも入れるか桃源郷

灯台の光が流れたその先に
ある学校が僕は嫌いだ

モニターの中にあります
パンドラの箱は
とにかく場所を食うから

　こだわらなきゃ
　何でもコンビニで揃う
　ウルトラセブンイレブン

草刈る人は
種蒔く人と
シルエットが
同じなのさ

スノーフレーク機関銃から万国旗

田水沸く河童の皿の密猟者

ホチキスがしん十二月八日来る

何買いに来たっけ鰯雲だっけ

はい、円楽さん
死んでる場合じゃありませんよ
歌丸師匠じゃないんですから

貝の血から真珠ができるまで夜寒

バス停の「松本さん家前」小春

受精卵
叙情詩人に壊されたプロセス
もっと、もっと、分裂せよ

撃てば死ぬ為政者である
社会科の授業は聞いていなかった

けど

ジェノサイド
天然繊維であれ化学繊維であれ
君を覆うものは死だ

墮胎せぬ保証無けれど一先ずは
卵割　太鼓が打ち止まず　雨？

さかながつつく
さおはうなづく　
まどろみまどろみ
ゆめのなかへ

僕の字が
君のはらから
声帯を
伝って、ぱっ。
くちびる踊る

腹減って
むかついたので
宣戦布告
戦を告げる　
法螺貝が鳴る

封筒にどんぐりいれてみる眠る

扇風機に問う
我々はいつ宇宙人に
成り下がったのか

笑いながら君が叩いた
手のひらの音
翌朝にはなくなっている

内側にまあるい闇を匿って
麦わら帽子は心臓がある

どんぐりで支払う姪のハンバーグ

古書店の観音開き小鳥来る

団扇置くブラウン管の奥行きに

足下の闇を踏み抜き踊る盆

蟋蟀(ちちろ)鳴く
危ない８ミリ鑑賞会

雨温（ぬる）く
蟋蟀の蹴る闇の皮膜（かわ）

心にひだが多いほうが、
おもしろい色に染まります

気長に待つよ鉄塔引っこ抜いて秋

見え透いた嘘だ　
そんなの解ってる
だから高めの梨を貪る

原色の子　唇の皺に住む妖精

歌留多読めば獣みたいな子供の目

マスク姿の合唱コンクール
表情がない歌声

締め出され銀の芒でひらけゴマ

天井の高い図書館の、
あの席に孤独があるよ、

手の甲にテスターの跡 秋夕焼け

排卵と同時に劇化した〈月夜〉

欺瞞に満ちた〈性〉を撃ち抜け

私は布団を売るために生まれ
実際たくさんの野菜を売り
よく壁をながめていた

ガチャのカプセルには
母の模型が入っていて
午後から雨だと教えてくれる

渦になる過程に
あかるい部屋がある
私は　少し笑っている

こどものころに
踊れたものはもうなにも

月の季節に壺を磨いた

雨でふやけた自動車が
橋を過ぎると束になる
まだ　聞き流してくれるなら

これまでに生まれた人をすべて
思い出すあいだに
シロップは月光に固まる

秋の水際
(あれから彼に針のような
夜が数回だけ訪れた)