来るかもわからない
人を待っている
自らの蜜で開かない
芍薬をぬるま湯で拭く

ゆくゆくは未完成になる国家

終戦日空映るまで磨く靴

好き勝手言って
誰もいなくなった後の
焚火をそれでも守る

紫陽花の方の出口で待ってるね

さみどりの部屋を一輪挿しの影

さよならの雨のぬるさを思い出す
シャワーヘッドの位置
下げながら　

働きに行く人波をさかさまに
ゆうゆう泳ぐ喪服のあなた

アレのあと
アレレは避けたい
青写真

不合格
枝豆しょっぱい
もう寝よう

大学は
まだ夏休み
秋彼岸

透明な花瓶に透ける棘

小さな女の子が
分厚い花言葉事典を読んでいた
どこまでも行けと
叫びたかった

縁取りだけ徐々に
濃くしていく　生活
雨の日は銭湯が似合う

背骨からプラハまでの距離を測る

月の裏側に埋めたままの詩人

くるしいね、

こころを
晴れ　にする音を
まなこに溜めて　くろねこは来る

卵がけごはん
のような
やさしさで
ひかりへ落ちるぶんちょうのはね

読みさしの本をあなたに貸す朝の
前日のカレーを水で薄める

車線に沿って満月を見る

土地勘のないクリオネをあそぶ月

もらいすぎた朝日せつない
生徒会長といると着く桜台駅

バイトをサボって
静かな映画を見る
明日から奨学金を返してく

踊るとき鳴る床九月なのでしょう

来世あるはず心に象を住まわせて

うつ病になった生ハム置きを
慰め続けている。

食卓の消えない輪染み送り盆

蚕ふしふしふしと不死噛み砕く

匂い立つような雷鳴銅版画

コスモスをくすぐりながら下校班

秋晴れは素数階段かもしれぬ

腹痛に呼吸を合わす秋の虹

星屑をぬぐって、
わたしたち、
生きることにまみれて

粛々と林檎を食べる園児たち

寝ぐずりする犬は
耳をひたすら掻いている
にいちゃんと同じだね

寝ている人以外は
スマホをみている　
発光する地下鉄

天高くメルカリで翼さがしてる

木の芽晴れ
抜けたばかりの歯を投げる

天の川 森に墓石の廃棄場

ぬれている市役所の建物のように
限界なのよなんとなく、こう、

さびしさは上の方から
急にほら、現れるでしょ
ひろばがきらい

厚底の分だけ秋の雲に近い

東京に恋置いてきて春の雪

数学のiは虚数を表すと
雨の日も混み合うニューヨーク

逝く君の顔キリストに似て九月

日曜の君のえくぼに日の差して
ちゃんとお米の味するごはん

ペンギンのように飲んでみる
健胃剤

月高く抱えて帰る晩白柚

じゃがいもに
もし生まれたら何になる？
みたいな話ばかりまじめに

竹炭のシャリシャリ感が残る
心の闇

悲観主義なのに
フルートも吹けないんですか？

エスプレッソを飲み、
死地へ向かう

ぬおーんと哭いて黄昏つむじ風

体育祭終わり僕らのしりとりは
ルイ十六世、インド、ドレーク

無花果と
心臓の
なまあたたかいおもたさ

七色の水性ペンを忍ばせた
この筆箱を世界と思う

青春、
と
置いて
後を持て余す

幸せは
セロリに乗って
やってくる

顔洗う姉の背中におはようと
抱きつきパジャマのやわらかい秋

いつもある
母が買うわたしのメロンパン
今日から自分で用意しなくちゃ

廊下が軋むたびに懐かしい
花の　匂いがする部屋

羊皮紙を破いたような秋が来た

夕暮れの小さな本屋になりたい
あなたが来たらほうっと灯る

秋めいて白き夕暮れ水中の
氷という名の鈴が鳴って

天井を泳ぐクラゲの白昼夢
点滴バッグは深海めいて

パーソナルスペース日傘で保つ街

耳鳴りを鈴虫として飼い慣らす
虫籠みたいな１Ｋの部屋

右耳を背中につける
しん　しん　と
降って重なる粉雪の音

あの世も
あんなことも
そら豆のあんこも

まぜまぜこまぜ
おおまぜこまぜ
まぜまぜちゅうまぜ
ちゅっとしますぜ

真夜中の高速炊飯
遠い人が遠いまま
真夜中の高速炊飯

推し活と終活中のおばあちゃん

昔むかしは校庭に
でっかい向日葵咲いていた

こもれびに
殺されるようなしあわせを 
冬の図書室で噛みしめて泣く

あめ降るかなあって私に言った
虹だよって泣きながら言う
霊安室

真夏の電車は牛のにおい

ペガサスが滅びた街の図書館で
雪降る夜に握るたてがみ

しとしと
震える夜雨が石畳を濡らしてゆく
朝を待っている
静けさのなかにいる

猫の恋浦風が荒れ始めている

どれだけ早く走れるか、
ではなく、
どれだけ夢中で走れるか、
なんだ。

歩道橋ゆらそうよって飛び跳ねる
あなたのポニーテールは自由

地球儀のてざわりが雪を欲しがる

どちらでもないに丸して夏休み

ある夜の長さは海へ向かわせる

遠い　遠い　制服に似た服を着る

採集日　見知らぬ街のバスに乗る

控えめに言って大好きヒヤシンス

夜の水族館
海月はピアノの音に溶ける

誕生日の日記のページをちぎる

前カゴに
アサガオの鉢　積む２輪

卵がけごはん
のような
やさしさで
ひかりへ落ちるぶんちょうのはね

読みさしの本をあなたに貸す朝の
前日のカレーを水で薄める

両ひざにルビをふりたくなる寒さ

くちびるが夜の広場をさかなでる

夜だけが
生きがいである少女らに
ＣＭもなく白夜は始まる

バイトをサボって
静かな映画を見る
明日から奨学金を返してく

成り行きで寝たわけじゃない
赤ダリア

コスモスをくすぐりながら下校班

長い夜　自動音声最後まで

鉛筆が落ちた音は秋めいて
膝折る少女〈夕焼け〉拾う

鳳仙花の赤散らす雨シムノン忌

(1989年9月4日没）

ドライヤーをかけるのが
当たり前になったことの
静かな空白

クレンジングバーム
ひんやり虫の闇

俳句好き片付けきらい星月夜

おむすびのラップどこから青葉風

羽化、
ひらがなのように
ほどけた
ひかりと生きて

寝ている人以外は
スマホをみている　
発光する地下鉄

たましいを模して夏の雲

カーラジオ
死体を埋めにゆく晩夏

夜半の春
留守電「ごめん」で始まって

ぬれている市役所の建物のように
限界なのよなんとなく、こう、

厚底の分だけ秋の雲に近い

ビニル袋にフェラチオの後の夜食

東京に恋置いてきて春の雪

逝く君の顔キリストに似て九月

賞味期限切れの月を冷凍する

コインパーキングのでかい看板へ
落ちる夜雨になりたい
光りたい

保冷剤首に巻きつけ駅までは
ショートケーキのつもりで歩く

艶やかに耳朶を濡らした
吐息からきれいなおわりが
はじまりました

君が知らなくてもいいこと。
傘を閉じる方法とか、
みかんの剥き方。

藍色の空にだけいるくじら
街灯のない国道沿いの猫

ひき肉になりたいのに
あたし渡る
青信号てくてくと

顔洗う姉の背中におはようと
抱きつきパジャマのやわらかい秋

プラットフォームの灰色と

少女
整列線を
反復横跳びする

この私に溶かしたのは
イーハトーブの虹から
掴んできた青です

電子書籍のページをめくる度に
秋をポケットに詰めていく

誰かが詰めた食パン
貰った果物
早起きしたわたし

夕暮れの小さな本屋になりたい
あなたが来たらほうっと灯る

ビニールの廊下は光りうねるから
夕焼けの海にいる放課後

参考書から顔を出すカラフルな
付箋はきっと赤ちゃんの虹

血液をうすくしろーくできたなら
天使になれる、かも生理の日

少しだけ静かになればリビングへ
冬光がこぽこぽそそがれる

過去はいつも僕から離れる一方で
そこにハガキが一枚届く

押されて出たんです私じゃない
私と私の表面には水があります

やわらかな指を持つ人
スカートの砂を集めて
星だと言った

来るはずのない精子を待ち続け
律儀に流れる月の血液

晴れると庭のあちこちに
傘が咲いていた
私のそれは錆びる
母のようになれない

やすらかに
発火している
びじゅつかん

てきとうに祈ってた
時間のすべてで
星がいちいち死んでいた川

死んでもきみには会えないって
感傷ふりかけたごはんが
おいしいね

ぼくの足跡に空き缶一つ

放課後を落とし物ボックスで待つ
双子の姉の青の縄跳び

ペガサスが滅びた街の図書館で
雪降る夜に握るたてがみ

なにか忘れている気がするから
もう少しだけ夏でいて。

午後休を着こなして
飛ぶ　ゆりかもめ

歩道橋ゆらそうよって飛び跳ねる
あなたのポニーテールは自由

どちらでもないに丸して夏休み

収穫祭　微熱の君を残し発つ

ゆくゆくは未完成になる国家

終戦日空映るまで磨く靴

乱暴で良いから認められたくて
ゴミ捨て場に立っているのです

背骨からプラハまでの距離を測る

声のない都会の夜を振り向けば
ふるさとを持つ髪の毛が揺れる

期限切れの前に
私は私の道を行く

いつまでもちくわ感覚では困る

Wi-Fiは
防空壕にもありますか
有事といえど歯車なので

自閉症の甥っ子は
今日も鬼の私から
笑顔で全力で逃げ回る

後悔は
状態じゃなく動作だから
幸せよりも海と近しい

軒先に月は脱皮をくりかえす
靴べらで靴　はいて出掛ける

来世あるはず心に象を住まわせて

鳥籠の柵を拡げる力持ち

どんぐりの　
形に宿る　
あったかさ

ノンブルを振らずにおけば
文字たちの嵐の時の隠れ家になる

秒針の音に意味などないと
笑い飛ばせない孤独

風のひゅー炎のぼわぁ水のじゃー
人にはなにがなにができるの

食卓の消えない輪染み送り盆

蚕ふしふしふしと不死噛み砕く

匂い立つような雷鳴銅版画

綿毛ならつまんで飛ばすお節介

エイプリル蛙の目とか借りフール

ひと枡の団栗の集合知賢治の忌

＊宮澤賢治忌　９月２１日

鯉が口開けて外反母趾と言う

匿名の轍、水面にきみは泡立つ。

粛々と林檎を食べる園児たち

仄暗いらんそううんの隙間から
産まれてみたいあたらしいまま

兄嫁と名前が被り
ママチャリで

漕ぎ出す排他的な街角

天高くメルカリで翼さがしてる

だるまさん
転ぶつもりのないのなら
空き家は草で覆われますが

フォト　ショッ　プ
「プ」できみだけを消してやり
いやに笑顔のわたしが残る

股から血を流して
生きてるって言ったら
金星人から二度見されそう

やむを得ず天の川から飛び降りる

北へゆくときどき東にそれながら
一口の郵便ポストは夜も赤い

ボロネーゼ食べさせあって
学友の白昼堂々つくるふしだら

始まりはカオスだったと
言い聞かせ
子らの遊んだ後片付ける

ありとあらゆる往復を
メリーゴーランドと捉えてみる
大きな

落ちていた手帳を拾う明日九時に
ハチ公に行く予定ができる

秋風と遜色なくてキラーパス

再会に水面が揺れて金の斧

離れるはずがめり込んで
抱きしめるはずが壊して
寄りかかるはずが倒れて
ゆく

ビニールの廊下は光りうねるから
夕焼けの海にいる放課後

参考書から顔を出すカラフルな
付箋はきっと赤ちゃんの虹

文庫へと溶け込むほどに
明朝が創英ポップに蛙化現象

パーソナルスペース日傘で保つ街

現像室色変えぬ松見えたから

鉛筆と留守番した日
絵の中の
母には靴を履かせなかった

あなたには
平気なふりをしてしまう
歯医者ではすぐ手をあげるのに

彼岸花あの口ぐせを夢で聞き

まぜまぜこまぜ
おおまぜこまぜ
まぜまぜちゅうまぜ
ちゅっとしますぜ

御茶碗に
ワインを注ぐなと
犬吠える

暗闇で私はずっと
他の人の名前を呼び続けた
気が付くまでずっと

いくつでも
空を目指して良いもんな
老人ホームの硝子上部が
割れている

呼吸より深く本音を吸い込む

ペガサスが滅びた街の図書館で
雪降る夜に握るたてがみ

一人の人と書いて
僕等は大人になるのでしょう

人間の罪の重さは
加害者が何をしたかではなく
被害者がどう捉えたかで決まる

息子が泣いて放したコオロギが
自由良くないネって
夜帰るかな

生きのびてどうか笑って
生きていて
死にたくなったきょうもどこかで

愛された記憶が光そのものだ
わたしの傍に立つ守護天使

地球儀のてざわりが雪を欲しがる

水が下がる
何も言わずに
背を向けて去ってゆく
張りをなくしたガーベラの茎

終戦日空映るまで磨く靴

荷解きのひとつひとつを梳く度に
日常の音がこだまして舞う

頭揺らして林の音をさせてみる
悲しいこともあったことだし

もらいすぎた朝日せつない
生徒会長といると着く桜台駅

白鳥・きらり
・ホワイトクリスマス

瞳の先まで月極駐車場

蚕ふしふしふしと不死噛み砕く

川遊び喧騒ののちずるりと尾

重心がやや上向いた昼下がり
人と空の間にはただ秋

クレンジングバーム
ひんやり虫の闇

星屑をぬぐって、
わたしたち、
生きることにまみれて

いつの日か
心のおもりが無くなって
詩が書けなくなりますように

ペットロスで全部説明できている

寝ている人以外は
スマホをみている　
発光する地下鉄

ぱる
　　ぼる
と迷いが房を成してゆく
葡萄の真ん中で目を瞑る

空港　ノ
オモチャ　売リ場　ニ
ミナミヒトコロシサソリ
ヲ　置ク
ヒッソリ　ト

暮れの夏
雨がやけに力強くて
どっかの　だれかが
普通に生きてる

ｗａｓ　それは　過去のコト
という意味。
私は　それ　をさがしてしまう

曇天が身重のようにふくらんで
何を産もうかたくらんでいる

やむを得ず天の川から飛び降りる

あの夏のカメラロールはやけに青
本気の自由形はきたない

雨粒に当たると自分の輪郭を
思い出せるから傘は差さない

とん、から、どん 。

名前も知らぬ隣人の身支度
どこか心音に似て

会社のトイレの中
破顔　破顔　破顔

夕暮れの小さな本屋になりたい
あなたが来たらほうっと灯る

電車とて減量目指し
朝夕の代謝に合わせ五時に飯食う

流水を浴びる凍った鮭の夢
天国行きの川は銀色

天井を泳ぐクラゲの白昼夢
点滴バッグは深海めいて

黒板に大きく書かれたぼくの名を
見ている同じ服の人たち

病みあがりの休日の朝
からだの中の病気のにおい

両手でつかまえて口の中に戻す
あなたの耳に入る前に
飲み込んでおなかを壊す

内臓を一つずつ取りだして
みんなと同じか見てみたい

地球儀のてざわりが雪を欲しがる

誰が悪いとかではなく
ヨハネによる福音
もう口を閉じる
稲刈り直近の田畑

唯一の郵便局よ秋の波

遠い　遠い　制服に似た服を着る

薄曇り
ひらいてとじてを繰り返す
遊びであって朝は窓際

あの頃は花と暮らしていました
口ずさめる歌が少なくなった

これが骨だよと教えてくれたよね
油性のマジックみたいな声で

卵がけごはん
のような
やさしさで
ひかりへ落ちるぶんちょうのはね

あたらしい靴下を嗅ぐと
あたらしい匂い　春は鈍行で来る

頭揺らして林の音をさせてみる
悲しいこともあったことだし

目の前で風が
一つの街になる
１秒でできる
１秒でこわれる
網膜のうえで

流星の１から９のコンセプト

土地勘のないクリオネをあそぶ月

両ひざにルビをふりたくなる寒さ

月光のテンポに沿ってまちがえる

人質のみんなに見られながら煮る

雨雲のどこからどこまでがナード

もらいすぎた朝日せつない
生徒会長といると着く桜台駅

軒先に月は脱皮をくりかえす
靴べらで靴　はいて出掛ける

ホームステイ
手を振っている兄弟は
火山の影に小さくとけた

踊るとき鳴る床九月なのでしょう

セプテンバー瞳のなかで混ぜる白

ノンブルを振らずにおけば
文字たちの嵐の時の隠れ家になる

長い夜　自動音声最後まで

真っ直ぐな線がかけない神無月

腹痛に呼吸を合わす秋の虹

器用そうだからあの人は大丈夫
みずたまになれ、みんな遠くで

箱の中に入る
からだを折りたたむ
最後にそっとくちびるをかむ

花の匂いに誘われて
やってきた
たくさんの
古代の巨大潜水艦

ぱる
　　ぼる
と迷いが房を成してゆく
葡萄の真ん中で目を瞑る

Organの語源を思う
ルーシーの
胸の小さき膨らみを聴き

産卵に至る電路の一つだけ
君の好みで閉ざせばいいさ

俺は光よりも速く産道を泳いで
サリンの朝から逃げてきたんだ

いま君を邪魔に感じる
右上の小さな小さな×だけ触れる

だるまさん
転ぶつもりのないのなら
空き家は草で覆われますが

僕が寝るベッドは外と繋がって
いるからいつも他所行きを着る

あの夏のカメラロールはやけに青
本気の自由形はきたない

傷跡を避ける脱毛器のうねり
だれもが海を揺らして歩く

悲観主義なのに
フルートも吹けないんですか？

溜息は睡蓮になる
おしなべて咲く前に朽ち
渡り鳥の座標

今までの全部を壊しに出かけよう
辞書よりも僕の方が重たい

再会に水面が揺れて金の斧