星空の本を読む
水道費さえ払えぬ夜に

輸送機の腹開き魚卵ほどに兵

ねこの耳
に
在る秋風をくすぐって
まださよならがすきだと思う

きつね火に似た
かんじょうを濡らしつつ
きみをひつぎとして抱きしめる

水ふうせん
ぱ、しゅんと砕き
えいえんの汀の海を覗かせてやる

いもうとの胸に
月光しずみゆき
葉牡丹のようにじゅうだい終わる

いぬの鼻の
いつもひかりを吸うかたち

寂しさに茄子が実っていたならば

秋の宵飛行機が雲よりも上

定位置の枕の窪み
風のない平野の道に
柩が行き交う

他郷にも勇者の像や小鳥来る

妖精を待つのはこの木寝待月

黄昏のカッターナイフ引き出しへ

たまに上る非常階段秋の風

村人２みたいな日々の鰯雲

はかまいりゆくみちふさぐわれも
こう

受話器越し、
羽化寸前の夏がある

さみしげな君の瞳の中にいる
さかなの群れがまっすぐ泳ぐ

図書館に宿る香りがまだ残る
同窓会の片隅の君

悲しいと先に言うのを待っていた
二人ぼっちの風のピンポン

人間に疲れた夜は
ことさら丹念に
ブラッシングして
犬にも嫌われた

涼風を夜の小部屋に通すたび
秋は酢豚のように濃くなる

風がよく抜ける部屋だな
テレビに出て
お金をもらう想像をする

花冷えて手術終わりの電話くる

病室に秋
みみもとで呼びかける

教わったことも
も無く焚き　無
と　む。火　け
こ　こかを　れ
ういとるえ教ば

一つ目の男が秋の夜にいる

秋の昼

浮腫んだ祖父はただ眠る

チンチラの砂浴び
　　いずれ

月の音

垂れ耳になりたい
九月、橋は晴れ

お供えの水が
だんだん減らなくて
飽きたのですか
いいえ、秋です

晴れの日の葡萄に海のような色

いつも君が忘れてる傘といって
渡す流星が降る夜の貴方は

人生の切断面に小夜風が沁みて
書き上がらない履歴書

光り方
忘れてしまった魂へ
この金魚鉢を貸してあげたい

ヘアクリップいっぱいに秋の髪

娘は
「パパと一緒にうんちしたい」
デートのようなものだと思う

モクレンが咲かなくなって三年目
カップ麺を啜る祖母の背

夏の空置きっぱなしでプール閉め

書くことは火を渡すこと心には
わたしのための蝋燭がある

おはようと蛇口に告げる
どの朝も
自分でない朝などなくて

風に乗せ
大きく回す紙袋
私はワタシを不幸にしない

滅ぶとき、
たぶんあなたは光るだろう
そういう魔法が好きだったから

てのひらに金平糖を出し過ぎて
昼の銀河に出合う弟

夕焼けの匂いは遠い　
行き詰まるとこまで行って
トマトを潰す

若夏のペットボトルに手を濡らす

祝祭を鞄にしまう冬になる

アフロたんぽぽ男
が死んで
早10年

ジャガイモのシルエットのある
秋ポテチ

シナモンの香りが好きで秋になる

輪郭がぴんと濃くなり寝転がる
ビジネスホテルの空調の音

桃色のナイフが僕を刺すせいで
君を嫌いになってしまった

Ice Candy
エラーみたいな賞味期限

面皰ばかりの君の顔が好きでした
チューリップ

子ども食堂の裏手の誘蛾灯

十月のポインセチアは燃える馬

京言葉に慣れて唐辛子のへこみ

カゲロウのため消灯中の陸橋
思い出だけを頼りに歩く

栗の毬爆ぜて戦地に目が覚める

文芸は虚構と言うに
真に受けて
ああだこうだと女うるさい

進路白紙の秋を背に
すれ違う父の自転車

オリオン座しか知らないから
オリオン座が見えると嬉しい

色のない風に
秋のにおいがすごい

季節に死ねと言われるみたい

あざやかで
とげとげしてるものがすき
すべてすてたい、
おまえがきらい

秋の暮チーズに曇るピザカッター

祖母通うスマホ教室鳥渡る

百日紅の円錐花序が夢の形

葉桜のうしろから日の差してくる

青天の奥行きを来るつばくらめ

ひろびろと夕方の平日のカフェで
机を暮らすように散らかして

のしかかる太陽が街をさらって
公園
まぼろしの蝉時雨

虹はにじ傷口を血はひかりつつ

その秋の風鈴売りのつくり歌

梨を噛む雨のち晴れの街がすき

灯籠を流して過去がのびてゆく

母に向かって僕と言う時、
俺の形は少しボヤける

ひとつの部屋にひとつの鏡
菊日和

下校する空が二つに割れたから

お月様の電気が点いたね

シャツ干すは鳥捕るに似て芋嵐

地図には在る店なんだけど
月光

前身頃うしろ身頃の間の秋思

ジャズの中に隠れた林檎

火を見ればまばたきのたび
眼のなかに
濡れながら火が像をなすこと

こんなにも秋の回転木馬たち
眼をしめらせて風葬のなか

人泣いて
ああ、沢山の野鶏頭

紫苑手折って君の頬大人びる

パレットナイフで夜を裂く

指に透ける髪
かえらない日々に
あんずの香り

先輩はヤングケアラー
八つ橋を
ネットで買って我慢するって

数学の公式を忘れないように
あの先生の声を反芻

葬式で寿司代出すよと言うイトコ

われわれは
黙れぬセイタカアワダチソウ
国道沿いになびけたらいい

禾乃登
夜水に
コスモス
咲いている

夢の中菊酒呑んで笑う父

未来ごと引っ張るように
ティッシュ引く

九月のラムネ瓶に朝日があたる

秋の灯のみな飴色で怒られる

いつかまたが
時効になって久しくて
思い出をちびちび燃やしてる

いったいどこが
ハッピーなんだろう
無責任なバースデーがくる

仕事　家事
　子育て　ゴミ出し　猫構い
　　　　走れ輝け　四十の乙女

星空の本を読む
水道費さえ払えぬ夜に

ねこの耳
に
在る秋風をくすぐって
まださよならがすきだと思う

いもうとの胸に
月光しずみゆき
葉牡丹のようにじゅうだい終わる

いぬの鼻の
いつもひかりを吸うかたち

死の匂いのする九月

秋の宵飛行機が雲よりも上

村人２みたいな日々の鰯雲

月光に「俤」という字を学ぶ

悲しみをレシート裏に書き留めて
いつか白紙の上で光って

夏の雨ほつそり伸びる祖父の脚

受話器越し、
羽化寸前の夏がある

面接をすっぽかしてる青嵐

花冷えて手術終わりの電話くる

秋の昼

浮腫んだ祖父はただ眠る

チンチラの砂浴び
　　いずれ

月の音

ヘアクリップいっぱいに秋の髪

しんじゅくと言う電話口にも晩夏

雨の降る夜のカフェラテ
水死体

モクレンが咲かなくなって三年目
カップ麺を啜る祖母の背

夏の空置きっぱなしでプール閉め

さみしい　と掠れる波と砂の音

眠るまで海の背骨を詰めておく

海からの借り物として
球体のように私を
撫でる母さん

夕焼けの匂いは遠い　
行き詰まるとこまで行って
トマトを潰す

ともだちが海のむこうに
いないなら
声帯の満月は震えて

ドア開くたびに休暇明の匂い

豆本できみの取説つくる秋

銀紙につつんだ鹿のなみだ声

祝祭を鞄にしまう冬になる

二泊目の夜に抵抗するように
君は最初にスープをすくう

12から一番星を探さない

風船を連れて真夏の出口まで

シナモンの香りが好きで秋になる

眠たさを許されている真昼間の
クリームソーダ溶けるみたいに

面皰ばかりの君の顔が好きでした
チューリップ

ストローがまだ夏を向く新学期

子ども食堂の裏手の誘蛾灯

血管の内側にあの日から残雪

十月のポインセチアは燃える馬

院に行くけど就活をする君と
してない私が分け合うポテト

殺虫灯
足元献花のなずな咲く

そういえば 
あの子の髪で揺れていた 
飾りのような夕暮れの月

あれだけの夏を
すみちゃん終わらせた

青天の奥行きを来るつばくらめ

虹はにじ傷口を血はひかりつつ

その秋の風鈴売りのつくり歌

下校する空が二つに割れたから

クルトンのような一言小鳥来る

私の子宮を捜してきて下さい

「突風は忘れ去られたおもいでを
抱いてとおくの海へ抜けたよ。」

駅の大食堂の窓を
　雪が叩きつける中
弟は僕のオムライスに
　手を伸ばした

輸送機の腹開き魚卵ほどに兵

ねこの耳
に
在る秋風をくすぐって
まださよならがすきだと思う

水ふうせん
ぱ、しゅんと砕き
えいえんの汀の海を覗かせてやる

あきかぜの波に
寝ぐせをそよがせて
こぐまのようにきょうだい走る

いぬの鼻の
いつもひかりを吸うかたち

寂しさに茄子が実っていたならば

数学のノートにある無数のｘ
ひとつくらい盗んでも
いいような気がする午後

天高し戦士臆病故強く

蚯蚓鳴く来世は月が二つある

月光に「俤」という字を学ぶ

クーラーを付けっぱなしの週末に
黒いバナナを剥くだけでいい？

そんなんじゃない記憶たちで
できあがる泉だ
ここはやさしい泉

悲しいと先に言うのを待っていた
二人ぼっちの風のピンポン

秋風で到達できるそこまでで
いちばん美味い蕎麦屋に入る

風がよく抜ける部屋だな
テレビに出て
お金をもらう想像をする

ＳＮＳに日記を書いて
どうですか
わたしの手負いの鹿の暮らしは

俺もたぶん、排卵後には止む白雨

男なら
前へと進め
もう一歩
便器の前で
立ち止まったら

踊り場の壁にもたれていて夕立

神様は去っていく速さでわかる
針金みたいな三つ編みだった

鉄琴に似ていて転がりたくなるよ
真冬の男の子のひろい胸

ヘアクリップいっぱいに秋の髪

母さんは眠る用の月に行き
手のひらに砂つけていつか帰る

娘は
「パパと一緒にうんちしたい」
デートのようなものだと思う

寄りかかるときに
背中がそっていて
肩しか君とぶつからないや

りんりんと
軒下暮らしが鳴いていた
ならばおいらは踊っていよう

両手でおにぎり食す秋の素描

風に乗せ
大きく回す紙袋
私はワタシを不幸にしない

撲滅をせずとも生きていけるから
死ねないような傷をつけあう

矯正の器具も外して人魚姫

夕立ちで
抜け落ちそうなひらがなを
餃子の皮に包んで守る

てのひらに金平糖を出し過ぎて
昼の銀河に出合う弟

柿食えば脳下垂体くりーみー

三日月の少しいじけた長ゼリフ

おもいでと
呼べば大判のブルーシート
海になったり屋根になったり

受戒して
飛び込んだのは
ビオトープ

銀紙につつんだ鹿のなみだ声

輪廻後に返す予定のイヤーカフ

まんじゅしゃげ
受話器がわりに
耳にあて

祈っても親指を蚊に刺されても
宇治金時の白玉は二個

立てて谷、丸めれば尾根
山羊棲む背

上手に歳を取れれば
それでいいことも
分かっている今日

風船を連れて真夏の出口まで

「夏らしい曲が聴きたい」
と言う友の
右手の熱力学の教科書

剃刀でつくる私の両腕が
星月夜には似合わなかった

イマフレを連れて三途の川渡る

桃熟れる
deleteキーを押すたびに

捨案山子家族ごっこをやり終えて

帰りたい
家にいるのに
かえりたい

いつも途中で
どっか行きたい

万緑の
方程式を見渡せば
いずれ消えゆく
心臓の歌

オリオン座しか知らないから
オリオン座が見えると嬉しい

あざやかで
とげとげしてるものがすき
すべてすてたい、
おまえがきらい

タワレコの袋を提げた都会の子
「でか太」という花火の私

今はまだ
名も無き感情「　」だけど
名付けたらきっと腐ってしまうな

私から私が消えてわたしたち

休学の緩みに牛蒡からの出汁

どちらかといえば私は二枚貝　
肌着に薄くしなやかに秋

ひろびろと夕方の平日のカフェで
机を暮らすように散らかして

虹はにじ傷口を血はひかりつつ

みんな死ぬ夕焼け原にひとりして

君に臆病を使うのは
今日で最後にしよう。

左折しろ。旧正月が目印だ

腐っても鯛がおはよう！ってくる

果てしない亀ですよ

母に向かって僕と言う時、
俺の形は少しボヤける

売名のための復縁きぬかつぎ

笑い声だけがしぶしぶついてくる

きぐるみに
チャックがなくてなまぬるい

対岸で叫ぶボクみたいなボク

シャツ干すは鳥捕るに似て芋嵐

地図には在る店なんだけど
月光

クルトンのような一言小鳥来る

潔く降伏します鰯雲

火を見ればまばたきのたび
眼のなかに
濡れながら火が像をなすこと

白いホリホック花の儘倒れ
人型のように
見て見ぬふりに蒼ざめた
ワタシが過る

期待に応え続ても
私じゃいられないけれど
私の殻を閉じるのも
一体私何だろか

まったきおみなに
なれと育てられたけど
それって男のことなの？　母さん

数学の公式を忘れないように
あの先生の声を反芻

「知らない」は幸せで、貧しい
「知っている」は豊かで、寂しい

街灯は明ける夜へと沿うように
消えてくゆめをみてた気がする。

月極にクルマの群れと石叩き

昔には昔の痛みがあって
現代には現代の痛みがある
比べようがないのだ

萌え袖で抗争してるやくざ衆

未来ごと引っ張るように
ティッシュ引く

天候にも恵まれナイフで
刺されたら困る

被告人に名前がなくて守れない

輪郭にじぶんを押し込んだ
女らしさは鉄の処女みたい

薄給のペールトーン
ブラウスの穴から溢れる
歯車だけをよしとして

輸送機の腹開き魚卵ほどに兵

いぬの鼻の
いつもひかりを吸うかたち

吸血鬼めくきみだけの太い牙

遮熱レースカーテンからの
むぁ～～んは
満月の怒りも含んでいる

定位置の枕の窪み
風のない平野の道に
柩が行き交う

夏の雨ほつそり伸びる祖父の脚

訪れのない病室に今朝の秋

商談に嘘混ぜてみる鴨居の忌

教わったことも
も無く焚き　無
と　む。火　け
こ　こかを　れ
ういとるえ教ば

口紅があくまでわたしを拒むから
鳩サブレーを三度襲った

ミソニコミウドン、っていう
いつもいつも飛び跳ねる生きもの

夏の空置きっぱなしでプール閉め

寂れた公園
人がいないと寂しいよね
あの時を雑草が話す

銀紙につつんだ鹿のなみだ声

まんじゅしゃげ
受話器がわりに
耳にあて

ストローがまだ夏を向く新学期

桃熟れる
deleteキーを押すたびに

冷やかに印影欠けた旧姓印

捨案山子家族ごっこをやり終えて

栗の毬爆ぜて戦地に目が覚める

八方不美人
ストローは非常口を指す

色のない風に
秋のにおいがすごい

季節に死ねと言われるみたい

あざやかで
とげとげしてるものがすき
すべてすてたい、
おまえがきらい

内側のほうからちゃんと
無花果になるために
灯すテーブル・ランプ

好きじゃないものから順に
真夜中へ進む
ミックスナッツの儀式

みんな死ぬ夕焼け原にひとりして

初恋ぐらい遠い雪の記憶。

左折しろ。旧正月が目印だ

お父さんお母さん
お姉さんお兄さん赤ちゃん
指折り数える立ち位置はどこ

突っ慳貪な時計の針

本当に雲があるなら
幽霊もいると思う

こんなにも
人であることは苦しいのか、と
電信柱も
声を上げて泣く夜がある

あなたの笑顔を真似てみるが
あまりに似ていて気持ち悪いので
やめる

火を見ればまばたきのたび
眼のなかに
濡れながら火が像をなすこと

上り月に湖水飲み干して象白い

アボカドの核の完全　誠実さ
を王冠みたいに例えてみて

雪のことが書かれている手紙は
雪を知らない　白の抒情で

『あなたのように』じゃなくて
私は『あなた』になりたいのです

検索窓に告白した
欲望の数だけ
肌ざわりから遠ざかっていく

ストローで吸ったら浮かぶ
古代都市

からんころん
ドロップ缶にこだまする
最後の一粒　いちご味

透けるほどスライス輪郭が残暑

クーラーを付けっぱなしの週末に
黒いバナナを剥くだけでいい？