一人弾く　ギターの音色は
わけもなく　
蛹（さなぎ）のなかで
寂しく薫る

いつも冷たい君は　
まるで返事はしないが　
水を求める植物のよう

昨日とさよならした
今日とさよならする
明日とはじめまして
まわる

友達追いかけた
止まった
一人だ

日曜日
飛んで行く
ビニール袋の気持ち

きっと晴れない空に願いをかけた

冷たくなった魚から
　　　　　　　　
　　　　　　　檸檬の香りがする

ココア飲み
　　七色数える　夕時に
　　　　いつもと違い　波打つ都

二人の背中見て  花屋の紫陽花

眠るイルカのように授業中

どっと出た笑いの中で笑ってみた

 太陽系に表されなかった心の熱

水彩絵の具のような　雨の日　

錆びてしまった幸せに
　何を刺せばいいんだろう

宇宙人がいるなら
　かりんとうを降らせよう

ギターに踏み
　　　つぶされた  
　産声　　　　　

潰れた夢 の中に枯れた花

ああそうだねの 平原に殴られた

熱帯魚ぶって　蜂の巣に

ジャズの中に隠れた林檎

枯れてしまったレモンの歌ヲ 

夢見る準備はできてるぜ相棒
四つ耳の君へ

卑屈を溶かすチョコレート

紅茶をかい変する
　サトウのように
　　消えていきたい

溶けぬなら　
　　　もっと入れよう　
　　かくざとう

ハロウィンのように
       顔の無いヒマワリ

山折り谷折りで　道を作る

お湯の入っていない
お風呂は　
   憎悪のない血だ

消した音も 眠った歌も
   不協和音に

鼓動に撃たれた空　われた風船

背景に同化した苦労　
       きっとあるだろう

涙になれない　小さな　悲しみ

どうしたらいいんだ　砂漠の中で

何もないが　生えた　この地で

小夜時雨　私の心に山茶花ふれ

君のため歌うよきっと　琵琶の花

愛はキスにはならず
　また
羽は鳥にはなれない

美しく咲きたい花は
　沈黙と
　　集合体と歩く

傷だらけの
    怨念は
値段の上に吊り下げられた

サンデー
   保湿クリームを塗る日
        サンデー

同感とコウテイの違い

均等と称して甘んじた

クラッカーのあとの
　　クジラに　
 
歓声が

新しいカレンダーに
 付けた丸は正三角形寄り

螺旋階段は死にたがり

遠くなっている明かりは
　砂糖とミルクより甘い

やるせない事も  温めて　
  ストーブ

塗った後のクリームのような魂

リトライのサイレンが鳴る日

チリチリになった
　コンパクトな
タスクマネージャー

舟は湖岸にひきとめられる
櫂という対のつばさを
やすませながら

枝先にかけて何度も
裂けてゆく枝よ
年ごと葉を手放して

火を見ればまばたきのたび
眼のなかに
濡れながら火が像をなすこと

瓶詰めにされた檸檬が
はちみつや氷砂糖に侵されるまで

あかねさす小さき虹を架けるため
あなたが浪費しつづける水

こんなにも秋の回転木馬たち
眼をしめらせて風葬のなか

ゆめの泉に
ゆめの鵞鳥をなげいれて
金・銀・鉄の鵞鳥をもらう

心が庭であるなら見える限りまで
アイスバーグと呼ばれる薔薇を

川べりに腕をひろげて立っている
あなたはだれへ開かれた檻

塩と嘘かがやく夜半に蓄音機
百合のかたちの口をかがけて

あらゆる風が
名を持つわけではないことの
うれしさにシロフォンをたたいて

声、そしてあなたの息の
しまわれるのどぼとけ
根のように撫でたし

ひと春のひとびとが歯に隠しもつ
金のあるいは銀の王冠

重力に抗わないで垂れる藤
みな禁色の花を咲かせて

描かれて永遠のくちづけ冬三日月

彗星を浴びた向日葵から枯れる

くびすじは世界樹に似て桜まじ

鬼灯をゆびでっぽうで狙いけり

白鳥の翼に蛇腹カルデラ湖

椿落ちるたびに地動説は狂う

ニューロン発火
鳳仙花種子しゅぱぱ

薫風やハーブソルトの粒透けて

三つ編みを辿ってゆけば山滴る

南風吹くナンの脂で濡れた指

紫陽花の小さな部屋をたしかめて

夏服のとてもきれいなよごれかた

夏めいて涙袋にちょんとラメ

沙羅の花それが夢だと気づくまで

くすくすと早桃の水をもてあそぶ

てにをはの助詞の降る島青葉闇

ラムネ飲む
愛されているという罠

ねむの花酔えば楷書になる声の

梅ゼリーするりとほどく筆記体

あまりりす静かに麺をすするひと

ケチャップのとめはねはらい
雲の峰

水のない国に生まれた茄子の牛

水のような顔をしている黒葡萄

鬱の字の缶けりとばし糸蜻蛉

有音のh（アッシュ）のように
秋の雲

秋風は液体・円柱の私

さみしさを言葉にすればかき氷

秋うらら
ふっさりとパクチー添えて

曲線の多いグラスよ秋の蝶

色鳥の色を想像してしまう

待宵のキングボンビー押し付けて

売名のための復縁きぬかつぎ

パーソナルカラーは不明
菊なます

ひとつの部屋にひとつの鏡
菊日和

小鳥来たから
ふんわりしたドリンク頼む

さわやかに
シャコ切るためのハサミのこと

いびきさえビジネスチャンス
そして秋

鳳仙花ついにtutoyer宣言

アメ横のうなぎ安いね駅まで歩く

稲妻とツナマヨ入りの卵焼き

エレベーターなかなか来ないふふ
秋思

初嵐見て恐竜の形のピアス

熟柿とぅるり中動態のあることば

れるられるせるさせる
澄む
隅田川

手話越しの私と出会う冬である

ココア飲めば喉の形にとろりと羽

海老フライ真っ直ぐ揚がる
小春日ね

記憶とは眠る子羊冬景色

蟹玉炒飯昨日見ていたはずの夢

シュトレンに糖衣はうすく冬銀河

日足伸ぶ
花籠がブリオッシュめいて

友達の恋人のみみ
除夜の鐘

むかごめし東京はいつ行けるのか

ウォーキングポール畳めば流れ星

昼の星卵子凍結仄めかす

溶ける肉よ透ける魚よ流れ星

かじかんで手は初夢になりました

スパチュラに
バームまとわりつく夜寒

麦の芽に
不眠の私
過眠の君

声が震える
つららは水を模倣する

ペンギンの腹ふかふかと春隣

ひやしんす
すきのかわりにいうすてき

亀鳴いたかも
皮膜タイプの二重のり

VRゴーグルの子に春の蝿

数式が定規に透けて風薫る

春の月金網に傘引っかかる

春雨の犬の睡眠時間です

目覚めてもまだ風船は天井に

マクドナルドの空の壁紙水温む

また同じアプリを開く春の草

マラソンに遅れて話す菫です

春炬燵腹にたまらぬビッグカツ

ヨッシーの卵割れない四月です

永き日の水面掠める背鰭です

透明な消毒液も遅日です

買うつもりないソファーに休み
春の昼

優しくないバイトの大人春の鴨

昼寝から私に戻るまでを雨

鳥帰る英語にすれば長くなり

ゴキブリを潰して人に会わない日

麦の秋普通に走る救急車

病室にいつも長袖五月尽

関節をきれいに鳴らす夏蜜柑

少年が煙草吸う国夏燕

たんぽぽを吹かせて貰う間柄

自販機の雨にざらつく夏の蝶

苺狩り詩集一冊分費い

空蝉に触れるものに風と指

同僚にロボットがいる南風です

秋の暮肉屋に今日も店主です

ミルクセーキ子供に風のような歌

レンタカーに四人乗り込む
水着のまま

本も食事も同じ机の花野です

烏麦猫の横切るノートです

夏野よこれは
スクロール後の世界です

飛行機に花火の音の届かずに

住んでもう大阪恋し熱帯魚

子供にも諍いのありカブトムシ

二の腕は涙知らない花カンナ

爽やかに話す歌うも同じ口

龍淵に潜む疲れて眠れない

秋の暮チーズに曇るピザカッター

爽やかに今日予約して今日の宿

祖母通うスマホ教室鳥渡る

冬近し絵を描く時のズボンです

冬近く遅れ始まるバンドです

配給の列は静かに竈馬

暮の秋友の嘔吐を離れ見て

秋の夜卵の殻の弾く水

雪催木と木で起こす火種です

雪雲を紛れ働く詩人たち

波音の見える辺りの障子です

一切れの林檎争う猿です

冬ぬくし刺繍の鳥は永遠に飛び

占いに減る魂も時雨です

燃えるものばかりの部屋を冬の蝿

引越しのこと話し合う裸です

石蕗の花吸う時灯る煙草です

爆笑に母遠く居て鏡餅

まとめ捨て
ハンドクリームの缶を冬

凧を追う首輪に慣れて来た犬が

寒牡丹母から匂う私です

雪だるまの体積を求めてください

人間のような天使が炬燵です

焼芋屋を次々抜かす陸上部

目薬は粒の集まり日短

呼び鈴について来る子も春祭

浮寝鳥戦争に布使われて

猫も人の言葉分からず実南天

春近しSNSにすぐに書く

京言葉に慣れて唐辛子のへこみ

綺麗なもの用の鏡に君からの
ブレスレットを映してしまう

メルカリで離婚届を売る　秋刀魚

シンシンとリーリーを
ふたりと呼んで
朝のニュースははちみつの味

秋刀魚に塩振りかけている初対面

ジャンクフードのにおい抱える
秋の暮

桜咲くことがニュースになる国で
光に重さなんてなかった

チカチカのチは点でカは滅である
来世は雪になる信号機

泣いていることを責められ虫時雨

全部嫌で寂しくて秋雨きれい

全員に好かれたいけど
全員に嫌われたくて
今日の深爪

君の名を書いてみたくて
書いてみる
綺麗な光だけ差す部屋で

具の沈むおでん
テレビは二画面に

立冬の明日映りにゆく鏡

悲しいよりも悔しくて
くちづけチーズケーキ

マヨネーズ逆さに置いて初時雨

恋愛から愛を引いたら
マイナスになって
鏡の色で光った

風邪の日の壁が迫ってくるような

母でない女が待っている寒夜

前髪にまばたき触れて雪催

小寒のテレビの照らすカップ麺

先生が好き　水仙の丘にいて

年越の蛍光灯の紐を引く

旅立の日をビロードのような雪

海豚とキスする人を見ている真昼

羊みな耳標を持って冬茜

月冴えて二段ベッドに木の梯子

花束をほどけば寒月の欠片

父だと言われれば
そんな気もしてきて
声が格好よくて嬉しい

風呂蓋に冬蝿がいてそれを流す

スカートからスカートへ
埃が飛んで
電車は冬の陽だまり運ぶ

星屑を口から吐いて生きている
君だからこそ言われたくない

サイリウム一本だけど
わたしの全部なんだよ
燃えた推しが、散ってしまった

魚の骨を綺麗に取れない僕の
代わりに骨を取ってくれる母
それに、なりたい

ともだちになりたかったの沈丁花

文語が口語になる

字に音がついて　口の中で溶けて
メロンソーダの味がする

あの子なら
上手くやれると言ったから
祖母をおばあちゃんと呼ばないの

卵の殻を剥く
小さい頃の将来の夢を
ゆっくり剥がす

オトナになるために

人間はエラ呼吸できない


それなら　人魚は生きる
海の底、誰もいない場所で

おかしいは可能な笑いと書くけど
透いた境界を　超えないでくれ。

サルビアが心臓なら　鳳仙花は癌
母さん、戻ってこないけど

ずっと言ってんの

睡蓮と手の背くらべを　妹と

真ピンクの言葉はどうだろう
泣いた後みたい
のと
笑ってん
のと

海底の人が生まれた源に

宇宙を知るのは
フウセンカズラが弾ける訳に
少し、通じている

世界にはあっが溢れている、盛夏

口じゅうに
大きな暑い旋風を起こして叫ぶ
応援の歌

お魚が骨になったら
精霊になることを知る
春はあけぼの

月面に兎が跳ね続けるくらい長い
ママとの手繋ぐ時間

君としたゲームカードが色褪せて
君の体温　忘れたあとで

言の葉の端々に置く花束は
貴方のことを知りたい合図

せう、をしょう、
そう読むように祖母のこと
ばあちゃんと呼び二人だけ夏

雨粒を穿てば音が鳴るらしい

天辺がどんどん溶けてゆく
ソフトクリーム食べて笑う
兄妹

先輩と笑って駆けた海原に
かぷかぷわらう神様がいた

ステーキを運ぶロボットの足元
すらすらすらと動く足元

きっと好きになれないから
キメラみたいな作品は
堕ろす勇気が欲しい

恋バナはいじめみたいで鳥兜

人格を否定されてく夜の中
創作なんてしたくなかった

おにぎりの値段が上がる世の中の
君の笑顔はいつも控えめ

わたしを充電したら
通知表は泣いてたくせに

和太鼓の町にさよならを言って
足裏がちょっと痛かっただけ

錦鯉の陽だまりにまた生きる水

入道雲を生やして海の瞬き

撥音を散りばめてみて星月夜

綺麗という言葉で歯を磨いて朝

一列の肘タッチにも甲子園

子規と背がおなじの君の草団子

神の生む喜怒哀楽を受け止める
この銀河には星がひろがる

桃色のナイフが僕を刺すせいで
君を嫌いになってしまった

Ice Candy
エラーみたいな賞味期限

面皰ばかりの君の顔が好きでした
チューリップ

白桃を刺して交換日記に★をかく

セーラー服と鈴蘭
傷を抱へながら眠る

剃刀でつくる私の両腕が
星月夜には似合わなかった

体温が下がった今日は
成人をちゃんと祝える
「だからね、お母さん。」

花火大会に
　　行く約束、なんて

　　　　　　君は嘘吐きだった！

母の咳静かになって星座の夜

妹が生まれた
スーパームーンの日だった

初恋は
月が冴えはじめるまでと
決めていたのに貴方はずるい

動脈に火事抱えつつ
存えて
ドナーカードの温さに触れる

羚羊が静かな朝のドライブスルー

ジャック・オー・ランタン
祖母の家に灯り

天国の花　ずっと咲くから淋しい

ちょっと空いた電車で
窓越しに星の瞬きが心臓を穿つ
わたし、冬がすき。

しぐれ虹は
天使が落ちてしまったから

エクレアの空洞に住みたい師走

哀しさは
色も形もとりどりな果実みたいに
すこし酸っぱい

着膨れて
かにくりーむころっけになる

チャイム鳴り青い寒夜は踏切
のうえにじんわり広がってゆく

雨の止むまで待つやうな冬三つ星

柚子湯してぽかぽかの形骸になる

金目鯛ひかって泳ぎきゅうくつな

雪、甘くしてバニラシェイク
あなたの空気が苦手でごめんね

母の好きな少女漫画の
ヒーローが
わたしの好きな人に似ている

クリスマスイヴの昼
青いひかりの粒が空に冷える

カーテンは昏さを抱き冬桜

ストーブの香りを吸って白夜月

怪人の正体を知る初明り

母さんの灯油を借りる冬のあさ

今日は晴れなのでスマホを弄りま
す

翅を捥げば大人になれるから

絆創膏を貼るだけで
正義のヒーローになれる

草臥れた花弁を掌に載せて
突いてやるような　かわいらしさ

寄り弁のトマトはここが定位置と
言うかのようにのってりと照る