ぴかぴかのホルンケースを 抱きしめて友は地球の終点へゆく
旅に出る 誰にもひらくことのない 胸の泉がふるえてるから
かなしみに終わりがあると 知っている肺が大きく 息を吸い込む
青年と少女は踊る 凍てついた花野で 百合を踏み散らかして
寝台に投げた じぶんの身体へと ゆっくり夜が滲み込んでゆく
グラタンが合うので冬の夜がすき
光射す廊下で きみとすれ違う
蟹食えばわさわさ動く表情筋
このひろい銀河に ちまい心臓を抱えて 独り 昼寝している
教室の窓辺できみを 待っている時の私は かわいい。 たぶん
下敷きを挟めば海になるノート 古代ローマに赤線を引く
人生の脱出経路に 線路を選ぶな
水槽を覗けば ぼぼぼぼぼぼぼと 金魚は硝子玉の目をして
青っぽいような 濁っているような 空がにんげんらしくて好きだ
囚われた小鳥が 胸の中にいて 時々 羽ばたこうとしている
しにたい、と言えば おいでと返されて 蠢いている路地裏の闇
ほろほろと花を 零して歩くひとだから 隣じゃなくてもいいよ
月に手が届かないって 知っている従兄弟の 少し膨らんだ喉
にわとりの名前はゆきち だいすきな人に 来週殺してもらう
人はみな淋しい樹木小鳥来る
神様がいるなら あわい沈黙と大海原を そそいでほしい
生きにくい世界を ふっと横切って 光を落とすだけの太陽
秋天が落っこちてきて ぼろぼろの羽を あなたに赦してもらう
殻になるとちゅうの部屋で 抱いていた膝が しずかに発光してる
びんぞこを覗けば 青い春がある
傷つけるための かたちじゃなくなった 硝子がならぶ 指輪の露店
縁側で旧友と酒を呑む父は 若葉風みたいな顔をしていた
ほたる色したコンビニに 祖母がいる
面談を終えていつもの帰り道 夕日がこわいかおをしている
眠れないからだを 海として起こす 花の匂いがする夜明け
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