ぼくだけの殻がほしくて もぐりこむ布団は ずっと冷え切っている
くちびるをもらうための 背伸びを した
君に会う前の 臓器を取り出して ばくばくしない生地に変えたい
後悔のむこうで揺れている蓮華
車椅子からじゅんばんに月の道
スマホびとだらけの町で 繋がれた犬は かしこいかおをしている
理科室のはかりに 乗せたキャラメルを きみがぬすんでいく五時間目
お酒とか 飲める歳まで友でいる テトラポッドの星をかぞえて
湯豆腐を割って静寂から啜る
段ボール箱を ばきょっと踏みつぶし 君が始める海賊ごっこ
呼ぶ声に はぁい、と応え 菫咲く庭を ざくざく突っ切っていく
目薬を注せば 誰もが うつくしい瞬きをする 定めのように
鬼ごっこして秋天に吸われそう
いちにちの ねむりを少しずつほどき まぶたを持たぬ金魚とくらす
たよりない四肢を ちいさく縮めても 夜明けは誰にだってまぶしい
ぼくが話す あなたが笑う 宇宙もこんな感じでまわる
もう見えぬひとみを ぼくに向けながら 犬はささみを下さいと鳴く
らいねん が 四つん這いになって もうそこまで来ている
まだねむり足りない 牛の目に銀河
あごひもをつけてもらって 雨の日も きみは黄色いぼうしと踊る
さみしさをこらえ 呼吸をふかくする 胞子を飛ばすきのこみたいに
とれたてのレタスを剥けば しゃりしゃりと 両手に海の音があふれる
祖母にまた手をふり返す ホスピスの道を なんども振り向きながら
目のうらに 春が潜んでいるような、 ねむけ 灯りのひもをゆらして
寝返りを打って太平洋ゆらす
ふと胸をひらけば あかく膿んでいる 柘榴みたいな孤独 ばらばら
ラクガキが踊る机を寄せ合って 二十年後のぼくらのはなし
アスファルト越しの 地球を踏みしめて 今日はバイトの面接に行く
フルートに あわいひかりを吹き込んで 友が背中に受ける夕暮れ
あたらしい靴を鳴らして たんぽぽの道を ぽぽたんぽぽたんと行く
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