助手席で運転を見る 雪の日の渋滞は長生きの花道
自転車でさみどりの道走りゆく 大学までの静かな朝を
ひっそりと泣くまでもない 一人部屋 歩き回れば鳥になれるかな
切り花がまとまっている 店前のひとつの瓶は 青年のよう
どちらかと言えば わたしは生きていて 冬の傍観者をやめられず
飼い鳥が欠伸の真似をしてくれて 私にたどり着いてくれた日
輪郭が隠れるように 横髪を切ってもらって うまれた三日月
雨降りの山も引き返さないから 弱まりはしないわたしの心
冗談が飛び交っている飲み会の 途中の間の静けさのくらやみ
一人って楽だし 鳥にも取られずに ごはんを食べる方法がある
お守りのように栞は挟まれて 日当たりのいい実家の書斎
富豪系ユーチューバーの 配信を楽しめる 平凡な人生
本当のことを言えずに卒業式 飛行機雲は擦り傷のように
天井で 腕時計から反射したひかりが 必死に泳ぐ学校
語るとき一瞬逆立つ心から 星が産まれて頼もしいひかり
たこ焼きが並ぶパックの宇宙感 ぬけがら星でも生きていたいよ
親愛が深まるほどに喧嘩して 古墳の丘で見る流れ星
絶景のために私が目立たない 旅の写真の意味おもしろい
人事課の見回りがない 書庫の天井に カメラは設置されゆく
絵を手伝う先生を囲む 子どもたちに 想像させるサボテンの花
諦念で何も解決しなかった二人で 荷造りする昼日中
生きている花束を見た わからないかなしみが 君にもあるのかな
大きな庭を駆ける犬たち もし人が留守するときは 未来を見てる
近景に稲穂の揺れている町を 見ながら病院まで歩いてる
すやすやの魔法を待っている わたしひとりの夜のさみしい広さ
人生に夢を見るとき 吹く風にも強いスカーフを 巻いている
休みの日のわたしみたいに ひとしきり嘆いているような 鳥の声
宝石が支えてくれている気力から 生まれる約束もいいよね
夕焼けを眺める人の目の中に 抜け道があるかもしれないよ
窓際で大きな犬が見つめてる雨の 全速力のはじまり
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