お星さまは遠い 隣町くらい
不可逆な時間の流れ 草臥れたオルガンみたいな 鎖骨を愛でる
コンセントのつがいの空間 帯電の静けさをかき消す驟雨
フェルネットブランカ漬けの薬指
汗ばみの君は木陰で ニュートンになる
切り爪をさっと揚げれば狐色 わたしかきあげできたわできた
労いのネギマをひとつ噛み殺す
君の言葉が受肉をしない 一片、また一片と落ちゆく
転がっている肉体に 私は添いてしばらく
酒瓶で殴れば少し痛いものです
めいめいに朽ちているのは 双子葉
カブトムシの匂い 積乱雲は
掌で握りつぶせる 近くより遠くの方が親しく思う
満月が落下してくるその前に じゃがいもの芽を 取りきらなくては
誕生日のソテー
本棚の一角 リキュール特区を設ける
紫陽花が中落ちあたりを這う感じ
胎内で聴いた母なる血流と 似ているから川縁が落ち着く
傘の奏者は六月の雨
一本道地球の腸が飛び出して いるみたいどこまでも続いて
酒ばかり飲む葦
忘れちまった あなたの顔や 黒子の色彩番号や
コーヒーメーカーの吐息
脱皮なんてしなければよかった
影の方へと移ろう光
春一番 サンドウィッチを作ったから
虫の死骸も新生活
雨の匂いの楕円軌道
一人と半分のペンフレンドたちへ
三月の力学 流動体も逆らえない
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