学生証切れたら道に水芭蕉

なみなみとミルク注がれ
しばらくを
私の白い塔として立つ

寝たいから寝かせてくれ世間体

父の背に組体操を縫いつける

菜の花の苦み　いつかは片恋も
春のまどろみから目覚めるの

よくわからないボタン
押しました
ごめんなさい

波浚い続ける君を攫いさえすれば
私を見てくれますか

六日目の朝には
みんな泣いちゃって
おまえが海を思いだすから

プリンセスロッド園児から保育士

紙芝居
柏木カンカン
息をのむ
クライマックス
駄菓子を持つ手とまる

自転車が滑って坂を降ったら
もうそこは海　桜のいたずら

ぶらんこを漕いでは付け足すデス
ノート

春愁をまどろむマルドロールに拳

花びらの川面は
春の寝姿をかたどり、
浅くオールを入れる

ツバサたちいいかいこれが花の雲

　　　ぶらんこ

↑コノコドコノコ↓
反復される追放、宙吊りのままで

これからは
名前でよびあうことでしか
あなたをみわけられない国で

恋愛リアリティーショー
眠い春の雨

揺らめく体が
いつもより重たいのは
4度にあてられたからか

背表紙の日焼け
地球儀にはほこり

潮騒を抱えて帰るひとの
うずまき管は
巻貝としてある

三月に「さらば」と
伝えてゆく子らと
「またね」と返して
ゆく子らの列

青鬼灯まだ夢で泣くことがある

この世では速さが
霧の向こうでは
臆病なタイピングが
すべて

いつも同じの
マルバツゲーム
今日の答えは
バツだった

桜を手折って
添えたかったけれど
今どき
枝を許してくれる桜は
ないなあ

吹き出しを夜の空気に浮かばせて
ばかなせりふで全部充たした

この国で生きていくから
受け取った印鑑を
白紙に何回も押してみる

毛布のような優しさの
内側に秘めたるナイフの先は
誰にも見えないね

どちらでもよくなる名前を
つけられて
カオル、わたしの恋人として

温室や家紋の有無を話しつつ

狡いから尻尾をひとつくださいな

何もかももうつらいのだ
ハックション

ティッシュの山を踏み潰す春

高くて諦めたプレッツェルパンも
走馬灯に見るのだろう

履歴書の空白に鳩が出ますよ

枕元「おはよう」の声抱きしめて
　布団にひっつく鉛の身体

選ばれた役の台詞に線を引く
望まれて生きてみたい誰かに

見たこともない妹がいまもいる

生地はいつからないのだろうか
止め縫いの機能の壊れたまま
花時雨

鎖骨に光を溜めて
スイートピーな朝

花束を撫でた手のひらくすぐった
花それぞれのコソコソ話

生まれる前から趣味だった

ゴトゴトと煩悩線は走り出す
痴呆行き梗塞行きは
お乗り換え
悪夢か否か終点へ

電気屋に挨拶をして春疾風

寄せ鍋の茹でられている大根と
同じ顔して子供らは待つ

遠吠えを
毎夜の月へ
いつだって
会いに行けると
じっとしたまま

城跡にピアノがなくて救われた

空白で全裸で何もできなくて
シャワーが温まるのをみてる

真っ白な生クリームが桜味
こういう女になるね
じゃ、また

コリアン銀行目の前の蘆枯るる

ヒーローの
しーるを剥がす
その瞬間
こべりつくのは
思い出か

バイト後釈迦らしく寝て春の雪

言い訳は花冷えにして
抱きしめて

皹割れの掌に余る冬銀河

「おかしいでしょ？」
勇気の言葉
「気にしないでね」
懺悔の言葉

役目を終えて積まれた教科書
そうか今日で三月も終わり

死体の代理としては歓迎です

目が覚めて、
コーラがぶ飲み、
二日酔い。

歪んでる
父の眼鏡をかけたとき
世界はいつも
歪んでみえる

繁殖の作法にならい膨らめば
胸鰭はもう誰かのもので

優しそうで尖った性格。
健康そうなヘルプマーク。
見えないものがある。

朔風が湖面を白に染めながら
耳もとでつぶやく　踊ろうぜ

艶やかな光と称えられるものは
ペットボトルだけのこの部屋を

ひたすらに
遠ざかって行く
光りを追って
懸命に砂浜を
走り抜けた

僕のやさしさはきみ由来です

幸福の初速は不幸

おとうとのねごと
を聴けば
はみんぐのように
編まれるわたしのなまえ

ラブソングみたいに傷心したい
けどあいにく今日の夕飯は
とんかつ

行間はスペース

等速直線運動で駆け抜ける言霊

僕を救ったような顔で
僕を癒やしたような気で
世界を味方につけた
お前誰だ？

恋文は喪服の襟に縫いなさい

めぐすりの光まぶしく
すこしだけ
溺れてみたい春風がある

内定を
もらったけれど
多すぎる
提出書類に
ブイパンしそう

トンネルを抜けても日常、
サイゼリヤ。

羊羹を薄めに切れば春の昼

いーや、ちがう、ぜったいちがう
を飲み込んだ 
わたし今すぐ 花吹雪になれ

不幸にも
分け合って食べる幸せを
忘れた人を蝕む孤独

かんむりにきみの名前が刻まれて
春は優雅に立ちつくすひと

ムカデでもいいかと職歴を編む

うつな気持ちを
春の新生活キャンペーンで
とばしてこ

きみは月
こころの池にさざ波が起これば
すぐに
海岸となる

バスは私を震えの中に閉じこめて
どれだけ眩しい朝も走った

限界を超えて酸素を吸えたなら
肺と鬼灯ともにぱぁんと

抱擁を習えなかった腹いせに
スワンボートは純潔ばかり

ばらばらに桜は君のいない街

いつもと変わらない十一時の開封

蠱毒蠱毒みづがめは溢れて滝へ

キッチン小窓の豆苗で見る
トップ層と平均層

（多分これで間違っていない
　はずだ）


人間らしさ被って暮らす

夢で四回転半ができた
ユヅの隠れファンの男子大学生

沈丁花胸の高まり春を吸う

トルソーの白い足首涅槃西風

十二時間思いがけずに寝た後の
世界を救ったような静けさ

四月って
燃え盛る炎
東京の新生活も
震わせていけ

空のベビーカー滑る店に春の夕

偉い人が偉くなった理由が
美術館には沢山ある

出世指になりたくて
赤ちゃんが足をうごかす

正しさと正しさ
ぶつけ合う日々よ

平等に科学は春をもたらすが

文学でいう春が来てない

言葉にはならないものが宙にある
かつて青歯王の大行進よ

タンブラーに
白湯を入れて持ち歩く
ひとりで生きる準備みたいに

希望は希望で終わらない
絶望は絶望で終わらない
答えはなくとも愛せるように

春更けて君の形に沿う私

桜を喜べない春も蓄えてコインラ
ンドリー

意地悪をしたあのひとの
言語野のなかで
追いかけっこをしようか

舗装路の多彩に気付く春隣

胸の矢を抜かずにうたえ
血の色は花の色より遠くへ届く

作りかけのケーキのよう　
妹は春の光に濡れて産まれた

北の窓辺にクリスタル。
猫柳の新芽。
どこまでも、どこまでも。

朧月パトカーの点滅寂か

魂の確定申告行えば
必要経費と呼べるストレス

ハッカーが侵入
セキュリティを突破して
君が書き換えた僕の心
好きだ

元気な土偶に
遭遇出来ない
憂鬱な一日が
始まると思うと
憂鬱になる朝

城跡や　二百年前の　笑い声

花を挿す
その手のひらに射すひかり
いつかあなたを刺すペティナイフ

遅れた雪、流氷、桜。
自然は自然に。
ヒトは自然になれない。

匙加減一つで
あなたの寵愛をぶち壊す
私は一人
花曇りの朝

憤りで目が覚めた
心が握り潰される
まんじりともせず
白白と明ける

LINEが生命線ですふきのとう

温泉に　溶ける身体と　浮く心

カルデラ湖

持ち上げた湯呑みの下に

モザイクが外れてそこに海がある

判子が顔に顔が判子に

まひるまの
あなたに毛布をかける日の
手つきで海苔をおにぎりに巻く

少し遠くをがに股で歩いてる
ファーの頭巾
被った君は雪のライオン

忍辱はよろずの母か
春に秋に灯台躑躅むらむらと燃ゆ

いつもの路地裏を通り抜けたのは
　ちゃちゃちゃ　歯間ブラシ

ともだちが回送電車にのこされる

余寒にシンバルの震わされたまま

眩しいみかんの住む小箱

マグカップの持ち手
インテグラルみたい
たぶん
進路の話をしてる

夜の理科室であなたの慟哭を
薄紙として抱きとめていた

家という家のストーブを動かして
冬に炎はもっとも盛る

棺中組手異なり歯痒くて

旋回している
影の禽
摘んではいけない
花ですか

わたしは今は３６で
ときどき３８になる

来世なら
チョークの線の
一粒子がいい

マニキュアの春色
彼にも塗ってあげて

曲名は忘れても
ＢＰＭの一致から取り戻せる
的な

たくさんの夢が立方体の中
浮かんでは消える
朝の爽やかさは
誰かの夢の続き

水甕にみづを献げてゐるところ

転び易い天使を十月にそっと蔵う

モノリスに線を刻む
猿人たちの夜明け

蟻出づる穴を地蔵は見てをりぬ

かちちちち
パリピリピポン
からからり
インドカリーは香りを孕む

さよならを言うためだけに
会うひとと
いま
見ているのは違う寒空

灰色なら延泊できる友の家

人格に境はなくてミルフィーユ

星の王子さまは
電気羊の夢を見るか

摩耗する
すべての皿よ
幻想の畑
ゆたかに走らせてやる

春風が別れの歌枕とされる
いまを変えるべくアクセルを踏む

大蒜に臭いを消せと言われても

水面を鏡のように磨いてよ
見ればなくなる淀川花火

五十年前も五分前もあなた

水仙や点滴の傷跡いえず

しゃべり出す口の気振りの
見分け方概論は優
春セメスターで

ハードパンチャーは
グローブの中を疑われる
宿命と思えば
疑いは名誉

良い事、悪い事。
成功、失敗。出会い、別れ。
万象振り子。

無音にざわつき独り言。
ざわつくカフェで無言。
無のバランスを。

ゆっ
くり
と
声のうねりを掴み上げ
指揮者の指はやわらかに舞う